【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

7 / 52
個性把握テスト

 入学式の次の日、今日から本格的な授業が始まる。とは言っても授業は中学までの感じとほとんど変わらない。

 ただレベルが格段に上がったので比較的頭のいい夏油でも真面目に聞かなくてはならないほどだった。

 

『雄英ってやっぱ頭いいんだね。私じゃさっぱりわからないや』

『すみません。今集中しているので少し静かにしてください』

『おっと、そいつは失礼』

 

 たまに志村と会話しながらも真面目に授業を受ける夏油。授業の合間にはクラスメイトとも交流した。特に隣の席の宍田とは話が合った。

 

「へえ。君も増強型の個性なのか。たしか、個性はビーストと言っていたね」

「よく覚えていますな、夏油氏。「も」ということは夏油氏も増強型で?いやしかし何やら使役する個性と仰っていた気が……」

「そうだよ。呪霊と言う生き物を操るんだ。身体強化はそのエネルギーの流用だよ」

「ほー、それは羨ましい。出来ることが多いのですな。私は暴れるのみなので夏油氏はいい個性をお持ちのようですな」

「いい個性か……そんなことを言われるようになったのは最近だね……ありがとう。そう言ってもらえると嬉しい。そうだ、お互い増強型だし今度一緒に訓練しないか?私は格闘技が趣味なんだが相手に苦労していてね」

「おお!いいですな!雄英にはトレーニングに使える施設が多数あると聞きます。是非やりましょう!」

 

 ちゃっかり宍田と約束を取り付けた夏油。これを受けて嬉しそうに笑う志村。

 

『ふふ、もう新しく友達ができたね、傑。この調子なら皆と仲良くなるのも早そうだ』

『うるさいですよ、菜奈さん。菜奈さんと戦うと山が崩壊しそうになるから仕方なくですよ、仕方なく』

 

 志村はこれが夏油の照れ隠しであると分かっていた。それに自分は死者でありもう居ないはずの人間。夏油の側には生者がいるべきだと考えていた。

 それに対して当の夏油は志村と離れる気はない。それは戦力としてという意味合いもあるが、半年以上一緒にいて情を感じるようになっていたからでもある。

 最初は利用する気満々だった夏油だが既に手放せない存在になっていた。

 

 午前中の授業が終わり、昼休みがやって来た。一人で食堂に行こうとする夏油だったがそこに物間が立ち塞がる。

 

「おいおい、一人で昼食だなんて寂しいじゃないか。僕も行こう」

「私も食堂とやらに行ってみたいですぞ」

「そうかい?じゃあ皆で行こうか」

 

 三人で食堂に行き食事を買うが混んでいて座る場所に困る。

 

「おーい!こっち空いてるぞー!」

 

 そこへ声を掛けてきたのは拳藤だった。ちょうど三人分席が空いていた。

 

「助かったよ、拳藤。さっ、物間も宍田も座ろう」

 

 というわけでその席に座る。拳藤と一緒に食事していたのは同じB組の鉄哲と柳だった。

 

「鉄哲と柳だったかな?同席させてもらって悪いね」

「構わねえぞ!むしろ男子一人で気まずかったからちょうどいいぜ!」

「全然いいよ。夏油だっけ?」

「そう、夏油傑。自己紹介はしたけど改めてよろしく」

「おう!よろしくな!というかもう名前覚えてんのか?俺はまだ全然覚えてねえ!」

 

 鉄哲は胸を張ってそう答える。

 

「たまたま顔と名前を覚えるのが得意なだけさ。拳藤なんてクラスの全員と話してなかったか?」

「そうなのか⁉」

「全員かはわからないけど結構話してるかな?」

「拳藤氏は人気者ですな」

「ハハハハハッ!B組は面白い生徒が多いね!」

 

 急に物間が高笑いをした。

 

「物間、怖」

「どうしたんだい?急に」

「いやね、A組が我らB組より先を行っているという情報を耳にしたのでね。僕たちも負けてないんだぞってことさ」

「入学二日目で対抗心燃やすなよ。協力することもあるかもしれないんだし」

 

 拳藤がそう窘める。

 

「いやー、二人は相性が良さそうだ」

 

 夏油がそう言う。この二日でわかったが物間はめんどくさそうだし拳藤に世話させよう、そう夏油は考えていた。

 

「夏油、私に物間係押し付けようとしてないか?物間のお守りもお世話係もごめんだぞ?」

「ハハハッ、何を言っているのかな、二人とも!お守り?お世話?そんなの必要ないだろう⁉」

「いや、物間氏面倒ですぞ?」

「物間、ウラメシイ……」

「俺はそういうところも熱くていいと思うぞ!」

 

 鉄哲のはフォローになっていない。

 

「皆失礼だな。ただ僕はB組がA組の下扱いは嫌だと思っただけだよ」

「仲間想いなんだな。そこは君の美点だよ」

「わかってくれるかい、夏油!」

「いや、最初に言い出したの夏油じゃんか……」

 

 拳藤のツッコミが入るが物間の耳には入っていない。夏油の耳には当然入っているが無視している。

 

「そろそろ昼休みも終わる。ブラドキング先生がグラウンドに集合と仰っていたから移動しよう」

「それもそうだな。行くか」

 

 

 昼休みも終わり、夏油含めB組は体操服に着替えてグラウンドに集合していた。

 

「君たちには個性把握テストを受けてもらう。これは中学でもやったような体力測定の個性を使っていい版みたいなものだ。テストっていっても今後の参考にするだけで成績には影響しないから気楽に受けてくれ」

 

 ブラドキングの説明を受けてクラスにはほっとした空気が流れる。

 

「じゃあ出席番号順にやるから並べー。最初は50メートル走からだ」

 

 出席番号順に二人ずつやるらしい。そうすると夏油と組むのは…………

 

「またおまえとかよ」

「奇遇だね、私もそう思ったところさ」

 

 何かと縁がある拳藤だった。

 そして始まる前に志村が問いかける。

 

『呪霊、使うんだろう?』

『ええ。恐れられても、遠巻きにされても、私はこの個性に誇りを持っている。有象無象を気にして使わないというのもおかしな話でしょう。それにあなたと出会えたのもこの個性があったからこそですしね』

『有象無象か……それが大切なものに変わるといいね』

『それは……これから次第ですね』

 

 スタート地点で合図を待つ夏油。合図と同時に呪力で肉体を強化し、一瞬でゴールを飛び越えた。

 夏油の記録は1秒台だった。遅れて拳藤もゴールする。

 

「速すぎないか!夏油って使役する個性って言ってた気がしたけど」

「そのエネルギーの流用さ」

「へぇー、便利ないい個性だな!」

 

 そう言って拳藤は歩いて行った。

 

『…………傑?使うんじゃなかったのか?』

『いや、これは要らないでしょう。素でやった方が速い』

『まったく……このゴリラめ』

『そのゴリラと正面から打ち合えるあなたは何になるんです?』

 

 呪力ありで打ち合った場合に周辺の被害が馬鹿にならなくてお互い本気を出せていない。

 

『……私もゴリラだと言いたいのか?』

『ご想像にお任せします』

『仮にも女性に向かって……後で覚えておけよ、傑』

『仮じゃないですよ。あなたは立派な女性だ。一目見た時から美しいと思っていました』

『またそういう。ごまかされないぞ』

『本心なのに。信じてくれませんね』

『そういうことは好きになった女性に言ってくれ』

『やだな、菜奈さん。私が本心をさらけ出せるのはあなただけですよ』

 

 次の種目が始まった。第2種目は握力だ。夏油はこれも身体強化でやった。記録は1トンを超えた。

 

『…………傑』

『仕方ないじゃないですか。呪霊サイズの握力計なんてありませんよ』

『まあ……たしかに』

 

 第3種目は立ち幅跳び。夏油はやっと呪霊を使った。今回出したのはエイだ。これなら半永久的に宙に浮いたまま移動できる。

 

「先生、この場合どうなるんです?」

「どれくらいその状態が維持できるんだ?」

「特に妨害が無ければ永遠に」

「じゃあこれだな」

 

 そう言ってブラドキングは無限を出した。

 

「無限かよ⁉」

「無限なんてあるのか⁉」

 

 B組のクラスメイトたちは驚いているようだった。

 

『やっと使ったね。誰も怖がってなんかいなかっただろう?』

『それはそうですが、エイは見た目がまだマシですからね』

『やれやれ……』

 

 第4種目は反復横跳びだった。どうやろうか悩んだ夏油だったが呪力で強化してそのままやった。呪霊を使ったやり方は思いつかなかった。

 

「流石にこれは普通の記録だな。いや十分凄いけど」

「そんなにポンポンいい記録にはならないさ」

 

 拳藤にそう答える。夏油の記録は平均の3倍くらいだった。普通の靴では踏ん張りがきかなかったのも伸び悩んだ要因だ。

 

 第5種目はボール投げだ。夏油は何を使うか迷ったが虹龍を呼び出した。

 

「龍だ!かっけー!」

「ほえー、色々出てくるなー」

「龍!漆黒の龍はいないのか……?」

 

 外野が騒がしいが虹龍にボールを持たせ遠くまで飛ばせる。40秒ほどで操作できる限界が来た。

 結果は10キロほどだった。夏油の子供時代に比べたらかなり距離が伸びている。これも夜中にヴィラン退治に精を出していたおかげだろう。

 

 第6種目は持久走だった。全員一斉にやるらしくスタート地点で待っていると、物間が話しかけてくる。

 

「僕の個性ってこういうの向いてるはずなんだけど、君には負けるね」

「それは種目によるだろう。私の個性がこれまでの種目向きだっただけさ」

「そうかい?まあそういう事にしとこう。あと頼みがあるんだが君の個性借りてもいいか?」

「もちろん構わないが私のでいいのか?結構使いづらいと思うんだが……」

「そうでもないけどね?君の個性を使うとなんかこう……力が沸き上がってくる気がするんだよ」

「…………そんなにすぐコントロールできるはずないのだが……君、才能あるね。まあいいや、はい」

 

 夏油は物間に手を差し出し触らせた。

 

「ありがとう、助かるよ。にしてもこのクラス、いい人ばかりだよね。皆嫌がらずに笑顔で力を貸してくれたよ。僕もこういう個性だから一人じゃ何もできないって馬鹿にされることもあったけど、ここじゃあそんな心配いらなさそうだ」

 

『ほら、やっぱりいい子が多いんだって。ヒーロー、目指してる奴らなんだ。個性についてあれこれ言わないはずさ』

『そうかもしれませんね』

 

 持久走がスタートし、夏油はエイに乗ってトラックの上を飛ぶ。虹龍を出そうかとも考えていたが、コーナーを回り切れないと判断していた。

 あまり速度に優れた個性の持ち主がいなかったからか夏油は1位でゴールした。

 

 第7種目は上体起こしだ。これは流石にどうしようもないと夏油が思い普通にやろうとすると、志村が話しかけてくる。

 

『傑、私が手伝おうか?』

『え?知り合いにバレたくないって言ってましたよね?』

『クラスメイトと担任にはどうせバレるだろう?それとも私を学校で全く出さない気か?』

『いえ、そういうつもりはないですけど……』

『担任に知らせるなら早い方がいい。隠していたら理由を問われるはずだ』

『それはたしかにそうですが……わかりました。顔は隠すんですよね?』

『当たり前だろう?俊典や空彦に会うつもりはないからな』

『そういうことならお願いします』

 

 上体起こしをする前に志村が出てくる。それをみてクラスメイトも驚いている様子だ。

 

「またなんか出てきたぞ」

「今度は……人か?」

「人も出せんのかよ!つよっ!」

 

 志村に補助してもらいながら上体起こしをした。記録は全国平均を優に上回る記録だった。

 最後の長座体前屈も同じようにやり、今度もそこそこの記録が出た。

 

 

「これで個性把握テストは終了だ。一応順位は出すがあんまり気にしなくていいぞ。個性が種目に合う合わないあるだろうし、足りないところはこれから一緒に補って行こう!じゃあ今日はこれで解散だ。お疲れ様!」

 

 ブラドキングの挨拶で今日は解散となった。夏油の順位は1位だった。その次に物間がいて夏油は不思議と嬉しくなった。

 

 下校はいつの間にか側にいた物間、それに加えて宍田、鉄哲と騒ぎながら帰った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。