【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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戦闘訓練

 戦闘訓練で集まったB組一同はオールマイトの説明を聞く。

 

「いいじゃないか、皆。カッコいいぜ!早速説明していくが、今日は屋内での対人戦闘訓練をしてもらう!」

 

 オールマイトは屋内の方が屋外よりも凶悪ヴィラン出現率が高いことを説明する。

 

「そして君らにはこれからヴィランチームとヒーローチームに分かれて2対2の屋内戦をしてもらう。今度はぶっ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」

 

 そこから状況設定が説明された。ヴィランがアジトに核兵器を隠していてヒーローは制限時間内にヴィランを捕まえるか核兵器を回収する事、ヴィランは制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえる事が勝利条件になる。

 

「コンビ及び対戦相手は、くじだ!」

 

 くじを引いた夏油はパートナーを探すと泡瀬であった。

 

「泡瀬、君とか。よろしく」

「おー、夏油か!よろしくな。個性把握テスト1位と組めるなんてラッキーだな。俺の個性は攻撃向きじゃないから頼りにしてるぜ」

「そう卑下するなよ。拘束力や応用力に優れたいい個性じゃないか」

「そうか?そう言われると照れるな……」

 

 夏油が泡瀬と話していると、早速最初の対戦が発表された。最初はヒーローチームが拳藤と骨抜、ヴィランチームが物間と柳だった。

 それぞれ準備のために移動する。観戦する夏油たちも地下のモニタールームに移動した。

 

「夏油はこの勝負どうなると思う?」

「委員長、副委員長コンビが優勢かな。拳藤は直接攻撃が強いし骨抜は足場をなくせる。反対にヴィランチームは柳が操れるものがあまりないし物間は接近しないと相手の個性をコピーできない。ヒーローチームが勝つと予想するよ」

「なるほどなぁ。よく皆の個性まで把握してるな」

「私の個性柄、覚えるのが得意なんだ」

 

 夏油と泡瀬が話しているうちに訓練が始まった。夏油の予想通りヴィランチームは苦戦していた。物間は拳藤にボコられていたし、柔化で建物内の至る所を柔らかくして柳の動きを制限していた。結果、しばらく粘った後に二人とも捕らえられ、ヒーローチームが勝利した。

 

「では講評の時間だ!今回のベストはヒーローチームの二人!どちらも甲乙つけがたい活躍だった。それぞれが戦いやすい方の動きを封じそれぞれが捕らえる。事前に打ち合わせしたであろう動きが的確にできていたね。ヴィランチームはもう少し連携ができると対抗できたかな?よし、次のチーム行こうか!」

 

『俊典、意外とちゃんと教師出来てるじゃないか。就任したときは内心心配だったが杞憂だったようだ』

『流石はナンバーワンヒーローなだけはありますね。経験に裏打ちされた言葉には説得力があります』

 

 講評が終わり落ち込んでいるであろう物間に声を掛ける夏油。

 

「残念だったね。そう落ち込むなよ。まだ最初の訓練じゃないか」

「…………」

「物間?物間大丈夫か?」

「あの暴力女め……僕を散々殴り飛ばしやがって……」

「……大丈夫そうだな」

 

 夏油は物間の傍を離れた。

 

「物間どうだった?」

「ああ。怒ってたよ」

「ん?」

 

 次のヒーローチームは黒色、小森ペア、ヴィランチームは塩崎、宍田ペアだった。

 

「先生、私がヴィランとはどういうことでしょう?私は日々神に祈りを捧げながら清廉に生きているのですが……」

 

 塩崎は自身がヴィランチームになったことに納得がいっていないようだった。

 

「塩崎少女、これはあくまで訓練だから……そう、相手を知ることで己を見つめ直せるということだよ!」

「なるほど、そういう考えもありますか。わかりました。しっかり役目を務めましょう」

 

 そう言って塩崎達は移動していった。

 

「今度は勝負にならなそうな面子だな。範囲制圧の塩崎にパワーのある宍田。それに対してヒーローチームは決定打になる攻撃が打ち出せるか……厳しい戦いだね」

「さっきから夏油少年、私よりも君の方が解説してないか?」

「そうですか?こいつは失敬。ただ泡瀬と話していただけなんですけどね」

「いや、いいんだ!生徒の自発的な学習は望ましい!私ももっと精進せねば!」

 

 訓練がスタートすると、塩崎が茨を広げだした。そして宍田は臭いでヒーローチームを感知しているようだ。そこからはワンサイドゲームだった。宍田の感知に従って塩崎が小森を拘束、黒色は陰に紛れて逃げ出せたが宍田に伸されて訓練終了。

 

「さて、講評の時間だがベストは宍田少年だ!感知と黒色少年を捕まえたのは見事だった。それに安易に小森少女に近付かなかったのもいい。ヴィランがどんな隠し玉を持っているのかわからない以上、近付くときは慎重にな!塩崎少女も初手で小森少女を拘束した手腕が素晴らしかった。ヒーローチームは個性の相性もあるが状況が積む前にどう立ち回れば良かったかもう少し考えてみよう!では次!」

 

 第3戦はヒーローチームが取陰と角取、ヴィランチームが鱗と吹出であった。このチームは特に文句をいう事もなく準備しに行った。

 

「今度はどう見ますか、解説の夏油さん」

「そうですねぇ。ヒーローチームは個性の性質上、どこからでも奇襲を仕掛けられます。これにどこまで対抗できるか、反対にヴィランチームは正面から戦えば優位に立つでしょうね……ってなんだこれ」

「実況解説ごっこ。お前見た目に反してノリ良いな!」

「見た目に反しては余計だよ」

 

 夏油が泡瀬と茶番を繰り広げているうちに訓練スタート。取陰はまず目を飛ばして窓から偵察しているようだ。

 それに対してヴィランチームは最上階で下から来るのを待ち構えている様子。これを見た取陰は何やら角取に作戦を伝えた様子。

 

「なるほど、私の予想以上だ。口や足を分離させて階下から注意を惹き、その隙に窓から侵入とは……」

 

 取陰は夏油の発言通り下に続く階段に食いつかせ、角に乗った角取と共に窓を割って侵入した。そして虚をつかれたヴィランチームが混乱しているうちに核兵器を確保した。取陰の作戦がはまった形だ。

 

「それでは講評だ。まずベストは取陰少女!作戦立案から行動までパーフェクト。角取少女も良い動きだった。ヴィランチームはもう少し相手の動きを予想したり、核兵器の場所を窓がない場所に置くなど工夫したりした方が良かったね。さくさく行こう、第4戦だ!」

 

 そろそろ呼ばれるかと思っていた夏油であったが呼ばれず、ヒーローチームは庄田と小大、ヴィランチームは回原と円場だった。

 

「俺たち最後か……今回はどう思う、夏油?」

「うーん……今回は難しいな。戦力差はあまりないように思える。お互い近接と補助というタイプの組み合わせだしな。個性というより地力や作戦、立ち回りが大事になりそうだ」

「皆、夏油少年が言った通り個性だけじゃなくそう言った戦闘に関わる全てのことに気を使わないと命取りになるぞ!……ところで夏油少年、ホントに高1?なんか老成してない?」

「失礼ですね。まぁ苦労してるせいですかね?」

「シット!!これはデリケートな部分に突っ込んでしまった!失礼した。ではスタートだ!」

 

(素直に生徒に謝れる。こういう性格がこの人が人気な由縁だな。それにアメリカかぶれなのも前世の担任を思い出させる)

 

 夏油が内心でそう思っているうちに戦闘は激化していた。2組が丁度かち合い2対2の戦闘になっている。一進一退だったが、小大の手持ちのサイズを変える物が無くなった隙に回原と円場の連携で庄田がやられ、小大も確保された。

 

「では講評に入るぞ!今回のベストは……悩んだが円場少年だ!自分の個性を鑑みてサポートに徹したのが良かったね。回原少年も庄田少年もナイスファイトだった。小大少女は惜しかったが手持ちがなくなった時にどうするのかも考えておくともっといい動きができるはずさ!それでは最後の組にいこう!」

 

 ヒーローチームが鉄哲と鎌切、ヴィランチームが夏油と泡瀬になった。

 

「じゃあ作戦通りでいいんだな?俺の役割少ないけど」

「いいのさ。少なかろうが役に立つ、それが大切なんだ」

 

 夏油たちは最上階にいた。スタートの合図とともに虫を大量に出し、階下に向かわせヒーローチームを襲わせるように指示した。これで彼らの疲労を狙ったのだ。

 

(これを見ているクラスの皆はどんな風に思うかな?恐れるのか、気持ち悪いと思うのか……なぜか泡瀬は気にした様子がないが)

 

 夏油は内心でそう考える。

 そして泡瀬と共に核兵器がある部屋に閉じ籠る。侵入経路は全て溶接済みで破壊しなければ入れないようにした。

 

「でもよ、夏油。お前なら二人相手でもなんとかなるんじゃないのか?」

「まぁそうかもね。でも確実性が大事なのさ。疲労すればするほど動きも判断も鈍る。それを待ってから相手にする方がいい。今も彼らは正面突破しか考えていないようだしね」

 

 

 その頃、夏油の言う通りヒーローチームは正面から虫を相手にしていた。

 

「多すぎだろ!何体いるんだよ!」

「おい、真っ二つにしても生きてるぜぇ、こいつら……」

 

 夏油も自身の脳のキャパや建物の大きさを考えて量を決めたのだが、それでも確実に二人の体力を奪っていった。

 

 

 同じ時、モニタールームではB組一同が驚きをもって見ていた。

 

「こりゃすごい。夏油は相変わらずえぐいね。これではヒーローチームに勝ち目はないかな」

 

 物間が訳知り顔で言う。

 

「あの呪霊とやらに加えて本人も力あるもんなぁ。これは厄介だ……」

 

 拳藤はもし自分が夏油の相手になったらと考えると寒気がした。

 

「私は夏油氏が直接叩くと思っていたのですが、こうまで物量がある個性とは驚きましたな」

 

 宍田は夏油の呪霊の数に驚いていた。

 

(入試の映像を見ただけでも凄さが伝わったがやはり強力な個性だな。しかも本人もフィジカル、作戦立案能力、分析力まで兼ね備えている。これは同じ時期に強敵が現れたな、緑谷少年!)

 

 オールマイトは人知れず自身の後継者にエールを送った。

 

 

 しばらくして、制限時間になるという時に、夏油たちのいる部屋の扉が音を立てて破壊された。

 

「遅かったじゃないか、ヒーロー」

「はぁはぁはぁ、やっと直接ぶっ叩けるぜ!行くぞ鎌切!」

「ヒャッヒャッヒャ!切り刻むぜぇ!」

 

 鉄哲と鎌切が正面から突撃してくる。それを夏油は、

 

「いや、終わりだよ」

 

 鉄哲をその足元から出したワームで拘束。もう一方には飛び出てきた志村が鎌切に腹パンして気絶させた。

 二人に確保テープを巻いて5回戦は終了した。

 

「では講評に移ろう。今回のベストは文句なしに夏油少年だ!特に作戦が良かった。ヒーローチームを疲弊させてから舞台を整えた場で迎え撃つ。捕らえるときも同時に攻撃して連携させない。素晴らしい!泡瀬少年も作戦通りに行動していたがもう少し自分で積極的に動いても良かったかな?ヒーローチームの二人は正面から行かずに、最初に撤退してから別経路を探すなどの余地があったね。だがこれも経験だ!」

 

 オールマイトの講評が終わり、授業も終わりを迎える。

 

「いやー、お疲れさん!しかし真摯に取り組んだ!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!それじゃ着替えて教室にお戻り!」

 

 そう言ってオールマイトは急いで去って行った。

 

 

 授業も終わり放課後、夏油が帰ろうとしたところ、鉄哲に無理矢理引き留められる。

 

「夏油!お前の個性、すげーなー!滅茶苦茶疲れたぜ!」

「…………私の個性が怖くないのかい?」

「怖い?何でだ?強くてカッコいいじゃねえか!もっと色々いるんだろ?今度見せてくれよ!」

 

 夏油はカッコイイだなんて自分の個性を言う人間にあったのは初めてだった。そこに物間が話しかけてくる。

 

「夏油、君が君の個性がどう思われるか不安がっていたのは薄々感じていたよ。それで僕たちに少し壁があったのもね。でも僕らはヒーロー志望だぜ?そんなんで人をどうこう思うか。ねえ皆?」

 

 物間が周りに問いかけると、それに応じる声が上がる。

 

「そうだぜ!もっとお前の個性見せてくれよ!」

「虫が苦手なヴィランなら泣いて降伏するんじゃねーか?めっちゃヒーロー向きだろ」

「斬っても大丈夫な呪霊貸してくれないか?今度一緒に訓練しようぜぇ」

「夏油氏、約束していた格闘訓練もやりたいですぞ!」

「ジャパニーズ妖怪ミタイデェカッコイイデェス!」

 

 夏油は感極まっていた。本人は気にしていないつもりであったが個性について心無いことを言われるたびに彼の心は傷ついていた。

 夏油はここで、雄英高校1年B組で真の仲間を得ることができるかもしれないと思った。

 

「皆、ありがとう。そう言ってもらえて心が晴れたよ。正直この個性はトラブルの元でね。私は気に入っているんだが色々言われてきたよ。このクラスに入れて本当によかった。これからもよろしく頼むよ」

「なに畏まってるんだよ!いつもの不敵な笑顔はどうした?胡散臭さがないぞ!」

 

 そう言って拳藤は夏油の背中を叩いた。

 

「私普段そんな顔してるかな?」

 

 夏油が見回すと一斉に頷くB組。これには夏油も苦笑いだった。

 その後も今回の戦闘訓練について話していると、ふと誰かが言う。

 

「そういえば夏油が出してた人型の女の人っぽい呪霊って喋ってなかったか?呪霊って喋れんのか?」

「たしかにあの人?呪霊は気になる」

 

 紹介するならここだと判断し、志村を呼び出す。

 

「紹介するよ。人型呪霊のレヴナントだ。他の呪霊は喋れないが彼女は喋れるよ。シャイだから顔を隠しているが、私にとって家族みたいな人だ」

「皆、傑がお世話になっているね。先ほどの言葉は嬉しくて涙が出たよ。レヴナントだ、傑共々よろしく」

「喋れるのかい⁉そういえば僕に入試の時に力を貸してくれたのって彼女かな?」

 

 物間が入試の時を思い起して尋ねた。

 

「よく覚えてるね。そう、彼女さ」

「へえー、あの炎すごかったよ。おかげで合格できました。ありがとうございました」

 

 物間は志村に向き直りお礼を言う。夏油の中で物間の株がまた上がった。

 

「俺がもし斬ってたら危なかったか?」

 

 鎌切が不安げに尋ねる。

 

「いや、回復自体は私の呪力を消費すればできる。ただ完全に消えるとどうなるかわからないから人間と同じように死んだら元に戻らないかもしれない。生命力は人間と比べ物にならないけどね」

 

 志村は特に女子に受けがいいらしく、しきりに話しかけられていた。

 

「あぁ、言い忘れていた。レヴナントは私がアプローチしている最中なので男子諸君は横恋慕しないでくれると嬉しい」

「ちょっと、傑、そんなこと言わなくても……!」

 

 これに女子は盛り上がる。男子も興味津々だ。だがそこへ教室のドアが開く。

 

「おーい、そろそろ下校時間だぞー……ってどうかしたか?」

 

 それはブラドキングであった。

 そこで落ち着いたのか下校することになった。そして夏油の傍には当然物間、鉄哲、宍田たちがいた。昨日のように馬鹿話をしながら家路を辿る。

 

(まったく……私も心が弱くなったものだな……猿は殺すなんて言っておきながら新たな居場所を捨てられそうもない。もし私が人殺しなんてしたらこの場所を失ってしまうだろう。どうしたもんかな……)

 

 夏油の心は晴れたが、また新たな悩みができてしまった。彼の悩みはどう解決を迎えるのか……

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