アイテム置き屋さん、はじめました   作:面相ゆつ

2 / 14
ブーメラン置くよ

 

 朝、目が覚めた瞬間、ぼやけた頭で思った。アイテム置き屋さんしてぇなぁ。よし、しよう。善は急げだ。準備準備……あれ?呼ばれてる。

 

 

 「師匠~。魔法協会からの招集状来てますよ~?理事会への参加を求む、ですって」

 

 「日時は明日か……随分と急だな。それに普段は私が出ずとも構わないはずだが」

 

 「たまには顔を出してくださいということでは?仮にも名誉理事なわけですし」

 

 「ふむ、一理ある。仕方ない、出るとしよう。それはそうと今日は少し出かける」

 

 「えっ、あ、はい。どうぞ?」

 

 

 

 

 アイテム置き屋さんとはアイテム置き屋さんである!ダンジョンにアイテムを置いていく!勝手に!

 

 

 

 はぁ~……理事会行きたくないなぁ……別に出なくていいよ~、名前だけだよ~って言うから名誉理事になったのに。結局出なきゃいけないじゃないか。めんどくさいなぁ……勇者と冒険してた時が一番気楽だったなぁ。

 

 ……ダメだ!今の私はアイテム置き屋さん!現実から切り離して狂わなければやっていけない娯楽である!はぁ~アイテム置きてぇなぁ~!!!

 

 今日はこれだぁ!ブーメラン!木製のブーメラン!投げたら戻ってくるブーメラン!当たると痛いし、複数体の敵に一気に攻撃できるから便利だ!それにVの曲線がカッコ良いのだよ。

 ブーメランと言えばガキの玩具のように思えるかもしれない。しかし!このブーメランは一味も二味も違う!まず素材!その辺の木材!次に製作者!アイテム置き屋さん!つまり世界で一つしかない貴重なアイテムであるのだ!プレミアついちゃうかもなぁ~!

 

 やぁやぁブーメラン君。本日の意気込みを聞かせておくれ?『えー、世界で一つだけのブーメランとして誇りを持って挑みたいですね。単体にしか攻撃できないような軟弱な武器とは違います。世はグループ攻撃です』とのことです!なんと傲慢で力強い決意表明だ……!これは期待できそうですね!!

 

 最近はブーメランを武器として使う人が少なくなっている。その現状に一石を投じることが出来るのか……それはこのブーメランを拾ってくれた人に左右されると言っても過言ではない!楽しみだね!ブーメラン君!

 

 

 

 さて本日向かいますわゴブリンが大量に出てくる洞窟だ。人呼んでゴブリン洞窟。こん棒を振り回す緑の小鬼野郎がそれはもうたくさんいるのだ!ゴブゴブと鳴いて戦いを挑んでくるぞ!ダンジョン分類的には下の上程度だ!ランクはEくらい!

 いやぁ、ゴブリン。魔物としての強さは囲んで棒で叩けば誰でも勝てる。ただこのゴブリン、意外と可愛いところもある!よく宴会を開いて踊りまくっているし、目もくりくりしていて馬みたいなのだ。それ以外の部分は気持ち悪いって?人による!

 

 洞窟自体はこれと言って特筆すべきことはない普通の洞窟だ。構造は一日毎に少しずつ変化するが、道幅も広く歩きやすい。分かれ道もそこそこあって探索し甲斐もある。これぞダンジョン来たみたではないか!となること間違いなし!

 

 

 ああっと!そう言ってるうちに第一村ゴブ続けて第二村ゴブ発見!サクっとシバかないと仲間を呼ばれて眼前いっぱいにゴブゴブだ!箒で叩かなきゃ。バシバシ。

 ふぅ、倒した倒した。実際はバシ(一殺)バシ(二殺)くらいの力で振っている!こいつらだけは念入りに潰しておかないとな。  

 

 アイテム置き屋さんには強さも必要!なぜならどこであってもアイテムを置いて帰るのが目的だからだ!自分自身が戦利品となってしまえば元も子もない!保険も何もない、それがアイテム置き屋さんだ!

 

 おおっと!第三、第四、第五、第六村ゴブのエントリーだ!バシ(一殺)バシ(二殺)バシ(三殺)バシ(四殺)!よし!!!!

 ………それにしても他の冒険者が見当たらないな?不思議!

 

 

 うーむ。今日はどこに置いて帰ろうか。アイテム置き屋さんとして、アイテムを置いて帰る場所にはセンスがいる。毎回毎回ダンジョン奥に設置するのは芸がない。芸がないのは面白くない。アイテム置きとはロマン、驚愕、歓喜の三拍子を揃えるべき。「えっ!こんなところに宝箱が!!!??」という風に喜んで拾う者のことを考えるのもアイテム置き屋さんの楽しみの一つなのだ。職人の技が光るぜ!

 

 例えば………ここ!明らかな分かれ道!どちらかが正解でどちらかが不正解のギャンブル!本来の冒険者は正解の道を選ぶことに苦心するだろう……先に進むことが出来る希望の道か、それとも行き止まりの絶望の道か!しかし、アイテム置き屋さんは違う!不正解の道こそが正解だぁ!行くぞ~!

 ふっふっふ。なぜ不正解の道を敢えて選ぶのかってぇ?行き止まりの道には何もない……外れ……二分の一を外したくそ雑魚……そんな負の感情もアイテムが置いてあるだけであら不思議!こっちを選んでよかったーとなるわけさ!あぁ!拾った人の落ち込んだ顔が元気いっぱいになるのが目に浮かんでしまう~!興奮してきた。

 

 こういう楽しみ方もアイテム置き屋さんあるあるなのです。勉強になりますねぇ。

 

 

 どんどん進むぞ!こういった洞窟タイプのダンジョンはあまり明るくないから光魔法を使おうね。明るくするとこけなくて済む!もちろんデメリットは……こんにゃろ!石投げてきやがったなぁ!こんな風に光目掛けて攻撃が飛んでくるで良し悪しはある。でも自分は常時防護魔法使ってるので効きませーん!これを貫けるもの用意してからきやがれバーカ!

 

 うーんでもおかしいな。結構歩いたはずなのに一向に行き止まりに当たらない。まさか正解の道を選んでしまった?いいやそんなはずはない。だってこういった分かれ道を自分で選ぶ際、必ず一度不正解の道を選んでしまう。あまりにも間違え過ぎて「あなたの選んだ道の逆を選べばいいから本当に楽」と言われたものだ。

 今回もきっと間違いの道だと思ったのだけど……む!めちゃめちゃ広い場所に出たな!ゴール!!!じゃなくて!ゴールじゃんこれ!

 

 そうかなるほど!本来の正解の道は自分にとっては不正解の道で、本来の不正解の道が自分にとっての正解の道か!だからこの道こそが不正解の道だったってこと!?理解しにくいなぁ!!自分で言ってて混乱するわ!こんなの!

 

 えぇ嘘何ブーメラン君慰めてくれるの?『そういうこともある』とな?なんてシンプルで大人な慰め方だ。世界が求めるのはこいつのようなブーメランなのかもしれない……

 

 「おい!なぜ一般人がここに……なんだそのタキシード!?」

 

 「あれ?他の冒険者もいるじゃないか。何か御用かなー?」

 

 なーんだ。皆、奥に行ってたから道中見かけなかったんだな。若い重装戦士君がこちらを見て驚いている。おーい!今行くぞ~!

 

 「早くここから逃げるんだ!殺されるぞ!」

 

 「えー」

 

 なんだなんだその慌てようは!まったく、殺されるなんて物騒だなぁ。ふーむふむ。オーガがいるからかぁ。すごい勢いで周囲の人たちが薙ぎ払われている。なんとダイナミック!おぉ!しかも三体もいる!!まるで嵐みたいだぁ。

 でもなんでいるんだろうね?

 

 「なぜこのダンジョンにオーガが?」

 

 「やはりただの一般人か……入口の立て看板を見なかったのか!?特別警報中だぞ!」

 

 「見たかどうかは、神のみぞ知る……てね」

 

 「なんだこいつ」 

 

 あったような、なかったような。どっちだろうね!アイテム置き屋さんは細かいことは気にしないのです!肝心なのはいい感じの場所にアイテムを置くことだけだ!それはそうと景気よくオーガが暴れまわっていて、洞窟が壊れてしまいそう。それに段々と倒れている者の方が多くなってきた。ふむぅ。

 

 「見たところ劣勢のようだ。助太刀する」

 

 「あんたが?正気か?」

 

 「アイテム置き屋さんはいつだって正気さ」

 

 「あぁ……正気じゃないんだな……気の毒に……」

 

 「では行ってくる。君はそこで休んでいてくれ」

 

 「あっ!馬鹿!」

 

 

 箒をしっかりと持って、うおー!行くぞー!走れー!オーガの近くまで来たら、箒を振り上げて……えい(一殺)!えい(二殺)!えい(三殺)!勝ったー!へっ!雑魚が!相手を見て喧嘩を売るんだな!ん?自分が勝手に殴り掛かっただけかも?

 あとは倒れてる人全員の傷を魔法で治して………………………………よしよし!うおー!我々の完全勝利だー!!勝鬨を上げろー!

 

 あー終わった!呆然とした重装戦士君の傍まで一応戻ろうか。彼も怪我をしてるみたいだし。治してあげなきゃだ。

 

 「君も治すね……うん、とりあえずこれで一件落着かな?死人が出なくてよかったよかった」 

 

 「えぇ……あんた一体…………?」

 

 「アイテム置き屋さん。アイテムを勝手に置くことを至上の喜びとする者だ。目的があるので、ではさらば!」

 

 「あっちょっ!せめてお礼を!」

 

 

 寄り道をしてしまった!今回アイテムを置く場所は行き止まりって決めたんだから、そっちへ急ぐぞ!走れ!アイテム置き屋さん!駆け戻れ!アイテム置き屋さん!!

 

 

 おぉ!辿り着いたぞ……!今回のベストプレイス!分かれ道の先の行き止まり!へへへ。思った通りおあつらえ向きなスポットだ。

 何と言ってもこの狭っ苦しいこじんまりした空間がいいよね!通ってきた道がどんどん狭くなってきて「これ絶対に反対の道が正解だったな」と半ば諦めながらも最後まで行くしかない。もしかしたら、というありもしない希望に縋りついて進んでいき、結局は行き止まり!「あーあ。徒労に終わったよ……」と思いつつも目を凝らすと、あるんだよ。宝箱が!しかも恐る恐る開けたら出てくるのはブーメラン!

 

 あぁぁぁ!やばい!絶対喜ぶ!嬉しすぎて泣き崩れるかもしれない!そうだ、このブーメランの名は希望のブーメランにしよう!いいよね希望のブーメラン君!!『いいよ』いいらしい!

 

 あぁぁぁ!楽しすぎるぅ!!これだからアイテム置き屋さんはやめられないんだ!

 

 

 

 

 

 洞窟から帰ったあと。明日の理事会への出席するための準備中。

 

 「そういえばゴブリン洞窟にオーガが出たらしいですよ。しかも三体も」

 

 「突然変異種かもしれないな。私には関係ないが、ギルドで調査すべき案件だ」

 

 「無事に討伐したみたいなんですが、面白い話があって。意味不明なことを宣う箒を持ったタキシード姿の不審者が現れたらしいんですって!」

 

 「……へぇ」

 

 「その不審者がオーガを全部叩きのめして、怪我人全員治して去っていったそうで。いやぁ、すごいはすごいんでしょうけど、変人ってどこにでも出没するんですねぇ」

 

 「………………………………変人じゃないもん

 

 今回のアイテム置き屋さんを傍から見たら変人なのは仕方ない!理解している!が!直接弟子に言われるとなんだか悲しくなるのも人の(さが)!もしかしたら意外と善良なのかもしれないよ……?それはそれ?変人は変人?そっか……

 

 

 何と言われようがアイテム置き屋さんは続けていく!変人だと言われようが!!

 

 

 

 





 ・アイテム置き屋さん
 結構偉い

 ・弟子
 タキシードの不審者はヤバいと思う

 ・重装戦士
 幻覚を見てたのかな?と思ってる
 
 ・ブーメラン
 ただのブーメラン
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。