アイテム置き屋さん、はじめました   作:面相ゆつ

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宝の地図置くよ

 

 さぁタキシードに身を包み、今日も今日とてアイテム置き屋さんだ。そろそろ目を覆う仮面くらいはを違うものにしてもいいかなとも思っている。

 

 今回のアイテムはぁ……これだ!宝の地図~! 

 宝の地図を想像してみて欲しい。羊皮紙に描かれた迷路のような道、探して欲しいのか欲しくないのか理解に苦しむ暗号、一枚にするのではなくせめて何枚かに分けて詳細を描けとキレたくなる内容………………………ワクワクするよな?そこまで隠して何があるのかワクワクするよな!?だって宝の地図だもんな!まぁ、自分だけがわかればいいと言われるとそうだが。

 

 アイテム置き屋さんがこの宝の地図を見つけたのは、数年前に遡る。真夜中の町を散歩している時にひらひらと頭の上に落ちてきたのが出会いであった。天からの贈り物かな?そこからずっとの付き合いだ。決して今の今まで忘れていたわけでも、倉庫を整理したら出てきたわけではない。とんでもなく埃をが被っていたのも気のせいだ。

 

 やっぱりこういう宝の地図って、ダンジョンにあってこそだと思うんだ。ダンジョンで見つけて、さらに違うダンジョンに探しに行く。なんだお使いクエストかよと辟易する人もいるだろうが、それも宝探しの醍醐味!そして仲間と共に宝を探す過程こそが本当の宝なんだよパターンだ。だって、宝自体が期待に沿う物かは運だろうからな。こればかりは人に寄るかもしれないけれど、アイテム置き屋さん的にはそう思うよ!

 

 

 さぁてどこのダンジョンに置こうかなぁ。宝がある場所は難易度が比較的高いダンジョンである。怪鳥の墓地とも呼ばれる、ランクCのダンジョンだ。宝の地図を置くなら、同じ難易度のダンジョンか、それとも少し低めのダンジョンにするのが定石だろうな。あまりにもかけ離れた難易度にしてしまうと、やる気が削がれる可能性がある。

 そうだな……パッと思いつく良さそうな場所は幻惑のダンジョンかな。あそこならきっちりと装備を整えた冒険者が集まるし。自分も結構好きなダンジョンだし。 

 

 よし!!そうと決まれば行こうか!よろしく!宝の地図君!!『ようやく日の目を浴びれるのか……長かった……普通は宝の地図見つけたらすぐにでも探しに行くじゃんか……なんで放置するんだよ』ごめんて。

 

 

 

 

 

 

 ここだここ!幻惑のダンジョン!見かけ上は煌びやかなお城に見えるが、騙されてはいけない。実際は古びた廃墟のお城で、中は幻惑に塗れている。基本は精神汚染に備えてパーティを組んでいくべきだが、そこはアイテム置き屋さん。一人で行く。楽しんでいこうぜ!!

 

 

 城内は綺麗だ。灯りですべてが照らされ、彫像品や調度品は新品同然にきらきらと光り輝いている。ただそれは幻惑に過ぎない。例えばこの壺。高級品の佇まいと宝石が過剰に装飾されており、手に取って触れてみると感触自体はある。だが外部から少し魔力を込めると本当の姿が現れるのだ。本当の姿は、ひび割れてしまったただの壺。これはこれで趣があるけれど。

 

 このダンジョンは常に幻惑で包まれてしまっている。何もかもだ。そんな場所にアイテムを置いても意味があるのかと聞かれると……ちょっと困るがまぁ大丈夫だろう!

 あ!アイテム置き屋さんよりも先に入っていた冒険者たちが意識朦朧になっているぞ!不透明なモヤモヤが周りを浮いているのが目に見える。

 ここにいる魔物は精神に作用する魔法を使う奴ばかりいる。分類するなら、ゴースト系とでも言っておこうか。煙のような不定形の存在で、薄くてふわふわだな。そのゴーストと幻惑が混ざり合い、溶けあい、色々な姿を持つ実体となってしまうのだ。

 

 とりあえずかわいそうだから助けてあげよう! 

 

 「君たち!正気を取り戻すんだ!アイテム置き屋さんが来たからもう安心してくれ!」

 

 去れ!ゴースト!箒で追い払うぞ!このダンジョンのゴーストはあまり強くないけど、油断すると痛い目に遭ってしまう。

 そして三人組の冒険者に平手打ちをかます。幻惑を打ち破るには痛みが最適だ!おらぁ!一平手!二平手!三平手だ! おまけで箒で叩く!よし!!これでいいね!

 

 「う……痛い……ここは」

 

 おっと。気つけ代わりに平手をしたが効果はもちろんあったみたいだ。冒険者の一人が起きてきた。他の二人はまだ朦朧としているが、直に同じように起きてくるはずだ!

 

 

 「気が付いたようだね!君たちは幻惑に囚われていたんだ。ここではちゃんと幻惑耐性のある装備をしていかないと。気つけ薬はあるかな?」

 

 「あぁ、すみません……全部使いきってしまって……」

 

 「それはよくないな!アイテム置き屋さんのを分けてあげよう!でも今日はもう帰った方がいいと思うよ」

 

 「ありがとうございます……あぁ、まだダメみたいです……あなたがアイテム置き屋さんを名乗るタキシード姿の不審者に見えてしまってる。助けてもらっておいて失礼なことを………………………」 

 

 「じゃあ平気そうだ!他の二人もそろそろ起きてくるとは思うから、介抱してあげてね!アイテム置き屋さんは奥に行かせてもらうよ!さらば!!」

 

 アイテム置き屋さんは他の冒険者のことを気に掛けるべし!アイテム置き屋さんは他の冒険者がいるからこそ、存在していると言っても過言ではない!なぜなら、アイテムを置いても拾ってくれる人がいないのであれば、それは無意味な行為である!!自己満足で勝手な行為ではあるが、決して独り善がりになってはいけないぞ!あと目の前で困っているのを見過ごすのはダメ! 

 

 

 

 アイテム置き屋さんは進んでいく。やはりそもそもはお城であるからか、部屋数も多い。右を見ても左を見てもどこかに繋がる扉ばかり。おいおい、こんなにも部屋が多いと、どこに宝の地図君を置こうか迷ってしまうよ。嬉しい悲鳴というやつだ!

 

 宝の地図君はどんなところがいいか希望はあるかな?今日は希望を聞いちゃうぞ~『もう、見つけやすい場所ならどこでも……あなたの手から離れたい……ちゃんと宝探ししてくれる人の手に渡りたいよう……』今までごめんね!!

 

 

 でもね、お城型のダンジョンなら大体の候補は絞られてくるんだよね。まずは玉座。一番のアイテム置きスポットだ!玉座の裏に隠すのも定番だ!次に牢屋。地下に設置されていることが多く、鍵の閉まった牢屋の中に置いておくとレア度が高く見える!その次は王族の寝室。皆やっぱり高貴な人の寝室って気になるもんね!ど真ん中に度ドドンと置くと度肝を抜けるはずだ!

 

 うーん。今日はこの三つから選ぼうかな?

 

 宝の地図君はこの三つならどこがいい?『強いて言えば、玉座が目立ちそうかなぁ』宝の地図君が前向きに検討してくれてる!ありがとう!玉座にしようね!

 

 

 

 

 出てくるゴーストをあしらっていく。箒をべしべしと振り回すだけで一掃されていくゴーストたちの姿は哀愁が漂う。上位のゴーストが出てくるのをここでは見たことがないからか、中堅冒険者にとっても精神異常系の魔物相手の腕試しにはちょうどいいのだ。

 

 玉座へと向かう途中には巨大な扉がある。おぉ~いつ見ても仰々しい!これを両手で開くのがお城に来たんだなぁと実感させてくれる。さぁさぁ玉座のお出迎えだ~!

 

 ………………………むむ!玉座に何者かがいるぞ!!先に来ていた冒険者か!?

 

 『我の眠りを妨げるのは誰だ』

 

 違った!普通に魔物だった!王冠を被り、大剣を携えし鎧を着た骸骨だぁ!ところどころ激しく損傷しているが、その傷は急所を外している。しかも人語を話すのは珍しい!これ本当に魔物か……?魔族の可能性もあるな。

 

 「こんにちは!アイテム置き屋さんです!アイテム置かせてください!」

 

 推定魔物と言えど、話せるのであれば了解を取るのが筋なはず!置かせて~!

 

 『……アイテム置き屋さん?討伐しに来たのではないのか?』

 

 表情はないが困惑している様子の骸骨に、アイテム置き屋さんも困ってしまう。これ会話できてしまうな。

 

 「………………………明らかな危険性があったり、討伐依頼が出ているなら討伐する。それに私は冒険者ではない、ダンジョンへの無断侵入者だから。その義務もない」

 

 正直線引きが難しいな。行く手を阻んだり、こちらに攻撃を仕掛けてくるなら相応の対応をするだけだ。ただ、今は単に玉座に座っているだけで、しかも会話が成立している。で、問答無用で敵意を向けてきているわけでもない。

 

 『強者の波動を感じて目が覚めたが、その気がないなら我もまた眠りにつくだけだ』

 

 「アイテム置き屋さんはアイテムを置くだけなので!」

 

 『今の時代にはアイテム置き屋さんという職業があるのだな。不思議なものよ』

 

 「そうだ!良ければあなたがこの宝の地図を持っておきますか?」

 

 ドロップアイテムみたいな感じだ。宝の地図君もそれでいいよね?『え、それってまたいつになるかわからなくなるやつじゃあ』いいみたい!!

 

 『よいぞ。我もこのまま眠るだけ故』

 

 「ありがとうございます!いやぁ話がわかるなぁ!」

 

 『王は寛容である。アイテム置き屋さんとやら、今後も励みなさい』

 

 ………………………多分、かなり昔の王様の魂が主人格だな。お城自体は実在しているから、その時代のいつかの王様かな。何かに反応して起きてきただけなら、まぁ危険性もないだろう。それに……アイテム置き屋さんに好意的な反応をしてくれる者は貴重だもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 骸骨の王様に別れを告げ、あとは帰るだけとなった。今日は面白かったなぁ。会話できる魔物?に出会えるなんて相当幸運だ。良いもの見れたなぁ。

 

 ルンルン気分で廊下を歩いていく。そうすると、明らかに場違いな風貌の小さな女の子が座り込んでいる。藤色の髪を背中まで伸ばし、可愛らしい魔法使いの服を着ている。なるほどな。アイテム置き屋さんの姿を認めると、嬉々として話しかけに来た。これは幻惑だな。まぁ、のってやろうか。

 

 

 「ねぇねぇ!あなたなんでそんな格好しているの?動きやすいから?」

 

 「違うんだなぁそれは。理由はカッコいいからだよ。見てごらん、このタキシードを。実は特注品なんだ。色から、装飾品から、体格に合わなければ意味はないからね。全部、自分で決めたんだ」

 

 「そんな手間暇かけてやるのは、ダンジョンにアイテムを置いていくだけかぁ。労力に見合ってないような気もするよ」

 

 「一言で言えばそうなっちゃうね。でも楽しいんだ。いつかやりたいなぁって思ってたからさ。でも本当はもう一人とやるはずだったんだけど、色々あってね。仕方ないから一人でやってる」

 

 「ふぅん、寂しいね」

 

 「寂しいよ。一緒にやりたかったよ」

 

 「未練がましいね」

 

 「未練がましいよ。多分これからも」

 

 「……………つまんなーい。ちょっとくらい動揺してくれたっていいじゃん!あっ!でもその顔いいかも!」

 

 「はいはい。じゃ、消すね」

 

 

 箒を振るうとすぅっと跡形もなく消え去っていった。動揺するほど子どもじゃないのでね。

 

 

 

 

 

 

 家に帰ったあと。

 

 「師匠、大丈夫ですか」

 

 「何が?」

 

 「勘違いならすみません。目が真っ赤になってるから……」

 

 「気にしないで。うん。全然平気だから」

 

 「師匠………………………」

 

 





・アイテム置き屋さん
 宝の地図は持っていても倉庫の肥やしにしてしまうタイプ。
 言葉では強がっているだけ。

・骸骨の王様
 強者に反応して起きだしてくるけど、自分からは積極的に挑まない。
 強いんだけど、アイテム置き屋さんには勝てないくらい。

・弟子
 たまに師匠が目を赤くしているのを見て辛くなる。
 どんな理由で、何故なのかは知る由もないため慰め方もわからない。
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