混血のカレコレとLost evolution   作:Ks5118

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No.9 廃墟探索と幽霊退治〈修正版〉

 俺は今、カレコレ屋のみんなと一緒に、とある廃墟に来ていた。

 

 なぜこんなことになったのかと言うと──それはヒサメ達が元に戻った次の日のことだった。

 

「昨日はホントォ──ニッ! すみませんでした!」

 

 俺は勢いよく土下座した。

 

 床に額がつくほどの勢いで頭を下げる。

 

 理由は簡単だ。昨日の夜、色々な事情があったとはいえ、俺は嫁入り前の娘達と同じ部屋で寝ることになり、しかも裸まで見てしまったのだ。父親として、どう考えても責任を感じないわけにはいかない。

 

 しかし、ヒサメ達はというと──

 

「もう良いよ。私達も悪かったみたいだし」

 

 ヒサメは少し困ったように笑いながら言った。

 

「アーシ達が安心出来るように、一緒に寝てくれてたんでしょ」

 

 カンナも腕を組みながらそう言う。

 

「でしたら、私達にも非がありますので、どうか頭を上げてください父様」

 

 フィーアまで丁寧にそう言ってくる。

 

 それでも俺は頭を上げられなかった。

 

 すると、その時──

 

 ガチャッ、とカレコレ屋の扉が開いた。

 

「ヒサ、居るか?」

 

 入ってきたのはカゲチヨだった。

 

「他に二人もいるなら話がしたいんだけど……って、何してんのおやっさん?」

 

 俺の土下座姿を見て、カゲチヨは目を丸くする。

 

 事情を説明しようとした瞬間、ヒサメ達が慌てて口を挟んだ。

 

「な、何でも無いよ!」

 

「アーシ達の問題だから!」

 

「気にしなくて大丈夫です!」

 

 三人とも顔を赤くしながら必死に否定する。

 

 その様子を見たカゲチヨは、何となく察したらしい。

 

 俺の肩を軽く叩きながら、

 

「おやっさんも大変だな、色々と」

 

 と、妙に優しい声で言った。

 

 それを聞いた俺は、思わず言い返す。

 

「カゲチヨの場合、学校で事を起こしそうだけどな」

 

 するとカゲチヨは、顔を引きつらせながらそっぽを向いた。

 

 図星だったらしい。

 

 それ以上は深く聞かないことにした。

 

 微妙な空気になりかけたが、ヒサメが話題を変えた。

 

「ところでカゲ、どうしたの? 私達に用事って」

 

「あ、あぁ」

 

 カゲチヨは咳払いをしてから言った。

 

「今朝、依頼が来てな。ある場所の建物を調査してくれって内容なんだ」

 

「調査?」

 

 ヒサメが首を傾げる。

 

「そこに行く予定なんだけど、お前らも来るかって聞こうと思ってさ。おやっさんも来るか?」

 

 そう聞かれ、俺は少し考えてから答えた。

 

「まぁ今日は定休日だし、特に予定も無い。構わないぞ」

 

 するとヒサメが振り向いた。

 

「私は良いけど、フィーアちゃんとカンナちゃんは?」

 

「アーシも良いよ」

 

「私も構いません」

 

 こうして、全員で依頼の場所へ向かうことになった。

 

 そして──

 

 到着した場所を見た瞬間、ヒサメとカンナが同時に叫んだ。

 

「「キャアァ────ッ!!」」

 

 二人は勢いよく俺に抱きついてきた。

 

「怖いのは分かるが、何で俺に抱きつく?」

 

 俺が聞くと、ヒサメは涙目になりながら言った。

 

「だって! こんな廃墟を調査するなんて聞いてなかったんだもん!」

 

「お父さん知ってるでしょ! 私とカンナちゃんが幽霊とか大の苦手だって!」

 

 カンナも怒ったように言う。

 

「アーシ達をいじめて楽しんでるの? 本当に最低!」

 

「今度学校で有る事無い事ふきこんで孤立させてやる!」

 

「やーめーろー!」

 

 俺は慌てて叫んだ。

 

「ただでさえ肩身が狭いのに学校での立場がなくなる!」

 

「そんなの今までも無かったじゃん」

 

「やめてぇ! その言葉は心に刺さる!」

 

 そんな言い争いをしていると、フィーアが冷静に言った。

 

「ところでシディはどこにいるのですか?」

 

 それに対してカゲチヨが答える。

 

「シディは配達の依頼に行ってもらってる。だから今回はシディ抜きだ」

 

 するとヒサメがすぐ言った。

 

「ねぇ、お父さん帰ろうよ」

 

 カンナも頷く。

 

「この依頼、カゲチヨとフィーアちゃんがやれば良いし」

 

 なかなか酷いことを言う。

 

 だがその時、カゲチヨがさらっと言った。

 

「今回の報酬、ケーキバイキング食べ放題チケットらしいぞ」

 

 その瞬間──

 

 ヒサメとカンナの動きが止まった。

 

「それって……どこの?」

 

 ヒサメが恐る恐る聞く。

 

 カゲチヨは思い出しながら答えた。

 

「確か、この辺で有名な某レストランだったかな」

 

 それを聞いて俺も言った。

 

「あぁ、あそこか。普通に行けば一人二万は下らないっていう」

 

 ピクッ。

 

 二人の肩が震えた。

 

 そして次の瞬間──

 

「よし、さっさと依頼終わらせよう!」

 

「ケーキのために頑張る!」

 

 さっきまでの怯えはどこへやら、二人はやる気満々で廃墟へ向かった。

 

 俺は苦笑しながら言った。

 

「待て待て。表の入り口は崩れてる」

 

「裏口から入るぞ」

 

 そして俺達は裏口へ向かった。

 

 歩いている途中、カゲチヨが聞いてきた。

 

「どうして入り口が崩れてることや裏口を知ってるんだ?」

 

 俺はヒサメ達を見た。

 

「お前ら覚えてないか? ここ」

 

 しかし二人は首を傾げた。

 

 するとフィーアが静かに言った。

 

「お忘れですか? ここは私達が作られた場所です」

 

「そして父様によって滅ぼされた研究所でもあります」

 

 その言葉を聞いた瞬間、

 

「「あぁーっ!」」

 

 二人は思い出したように叫んだ。

 

 そして俺達は廃墟の中へ入っていった──。

 

 廃墟の裏口から中へ入ると、空気はひんやりと冷えていた。

 

 外は昼間のはずなのに、建物の中は妙に薄暗く、長い年月放置されていたことが一目でわかる。

 

 天井の配管は所々外れ、床にはガラスの破片や錆びた機材が散らばっている。

 

 足を踏み出すたび、乾いた音が静かな廃墟に響いた。

 

「うぅ……やっぱり怖い……」

 

 ヒサメが俺の服の裾をぎゅっと掴む。

 

「アーシも無理……絶対何か出るって……」

 

 カンナまで同じように掴んできた。

 

「だから抱きつくなって。動きづらい」

 

 俺が呆れた声で言うと、二人は慌てて距離を取った……が、すぐにまた裾を掴んだ。

 

「これならいいでしょ」

 

「まぁ……さっきよりはマシか」

 

 前を歩いていたカゲチヨが振り返る。

 

「おやっさん、本当にここなのか?」

 

「ああ。この通路を真っ直ぐ行けば収容室だ」

 

 俺がそう言うと、カゲチヨは少し驚いた顔をした。

 

「詳しいな……」

 

「七年前に来てるからな」

 

 その時だった。

 

「……出してぇ……」

 

 どこからか、か細い声が聞こえた。

 

「え?」

 

 ヒサメが固まる。

 

「今……聞こえた?」

 

「聞こえた聞こえた聞こえた!!」

 

 カンナが半泣きで言う。

 

 もう一度、声がした。

 

「出してよぉ……ここから……」

 

 ヒサメとカンナが同時に俺にしがみついた。

 

「お父さん!!」

 

「やばい!! やばい!!」

 

「落ち着け」

 

 フィーアが冷静に言った。

 

「声が聞こえるということは、何者かが存在するということです」

 

「その者を確認すれば良いだけの話です」

 

「もし幽霊だったら!?」

 

 ヒサメが叫ぶ。

 

「お父さん、この銃って幽霊に当たる?」

 

「知らん。撃ったことない」

 

 その瞬間、二人は武器をしまった。

 

 そして俺の両腕にしがみついた。

 

「絶対離さない」

 

「死んでも離さない」

 

 息ぴったりだった。

 

「動けねぇ!」

 

 俺は呆れながら言う。

 

「そんなに怖いなら帰るか?」

 

 すると二人は首を横に振った。

 

「ケーキ……」

 

「ケーキ……」

 

 どうやら報酬は諦められないらしい。

 

 結局、二人は俺の服の裾を掴む形で進むことになった。

 

 やがて俺達は、大きな部屋に辿り着いた。

 

 檻が並ぶ、収容室だ。

 

 その中の一つに──

 

 子供達がいた。

 

「助けて……」

 

「出して……」

 

 檻の中から、何人もの子供が手を伸ばしてきた。

 

 ヒサメが驚く。

 

「子供……?」

 

 カゲチヨも眉をひそめた。

 

「なんでこんなところに……」

 

 俺は一歩前に出た。

 

 そして装甲兵の声に変えた。

 

「大丈夫か?」

 

 子供達が一斉にこちらを見る。

 

「出して!」

 

「ここから出して!」

 

 俺は少し距離を保ったまま聞いた。

 

「いつからここにいる?」

 

 カゲチヨが小声で聞いてきた。

 

「なんでそんなこと聞く?」

 

 俺は答えた。

 

「ここに俺が来たのは七年前だ」

 

「それより前なら幽霊の可能性がある」

 

「兵士なら情報が取れる」

 

 カゲチヨは納得した顔をした。

 

 子供達が答える。

 

「古い子は六年前……」

 

「新しい子は今年……」

 

 それを聞いて俺は確信した。

 

「そうか」

 

 俺は檻の鍵に銃を向けた。

 

 パンッ! 

 

 鍵が壊れた。

 

 子供達が外へ出る。

 

「ありがとう!」

 

「ありがとう!」

 

 その瞬間だった。

 

 子供達の体がふわりと浮いた。

 

 ヒサメ達が目を見開く。

 

「え……?」

 

「浮いて……」

 

 子供達は笑顔で言った。

 

「ありがとう」

 

「これで自由になれる」

 

 そのまま、光になって天井へ消えていった。

 

 ヒサメ達は固まった。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 カンナが震えた声で言う。

 

「今の……」

 

 ヒサメが小さく言った。

 

「幽霊……?」

 

 その時だった。収容室の奥から聞こえてきた唸り声に、全員が一斉に振り向いた。

 

「ガルルルルル……」

 

 低く、獣のような声。

 

 次の瞬間、暗闇の中から姿を現したのは──

 

 一体のマンティコアだった。

 

 体は焼け爛れ、翼はボロボロ。背中の棘も何本か折れている。まともに戦える状態には見えないが、それでもこちらを睨みつけて唸り続けている。

 

 それを見たヒサメが、カゲチヨの後ろに隠れながら叫んだ。

 

「い、いた……!」

 

 カンナも震えながら言う。

 

「あのマンティコア……! 私達が捕まってた時にいた奴!」

 

 フィーアもすぐに状況を理解したようだった。

 

「父様に倒されたはずでは?」

 

 カゲチヨが驚く。

 

「おやっさん、知ってるのか?」

 

 その問いに答えたのは、装甲兵の姿になっている俺だった。

 

 黒い装甲に包まれたまま、ゆっくりと前へ歩く。

 

「……ああ」

 

 低く、機械越しの声が響く。

 

「七年前、この研究所を潰した時に戦った奴だ」

 

「は?」

 

 カゲチヨが目を丸くする。

 

「それって生きてるのかよ……」

 

「普通なら死んでる」

 

 俺は腕を組みながら言った。

 

「だが……」

 

 その時だった。

 

「ニャー」

 

 小さな鳴き声が響いた。

 

 全員がマンティコアの後ろを見る。

 

 そこには、小さなマンティコアがいた。

 

 まだ体は猫ほどの大きさで、ふわふわした毛並み。母親とは違い、怪我一つない。

 

 よちよちと歩きながら、母親の足元に寄ってきた。

 

 その瞬間、ヒサメ達の表情が変わった。

 

「子供……?」

 

 カンナが呟く。

 

「うそ……」

 

 母マンティコアは必死に体を張って子供を守ろうとしている。

 

 しかしその体はボロボロだ。立っているだけで精一杯に見える。

 

 ヒサメが慌てて言った。

 

「お父さん!」

 

「ん?」

 

「その子……殺しちゃうの?」

 

 カンナもすぐに続く。

 

「子供いるなら見逃してあげてよ」

 

 フィーアも静かに言った。

 

「父様、襲わないように管理すれば問題はないかと」

 

 三人とも、心配そうにマンティコア親子を見ている。

 

 俺は少しだけ黙った。

 

 そして装甲兵のまま、ゆっくりと歩き出す。

 

「安心しろ」

 

 短く言う。

 

「殺さない」

 

 だが俺が近づいた瞬間、マンティコアは激しく唸った。

 

「ガァァッ!!」

 

 鋭い爪が振り下ろされる。

 

 ガキッ!! 

 

 爪が装甲に当たり、火花が散った。

 

 ヒサメが叫ぶ。

 

「お父さん!」

 

 しかし俺は止まらない。

 

 そのまま一歩、さらに一歩と近づいていく。

 

「……覚えてるか」

 

 低い声で呟く。

 

 マンティコアの動きがわずかに止まった。

 

 俺はゆっくりと手を伸ばし、その頭に触れた。

 

「もう戦う必要はない」

 

 マンティコアは最初こそ抵抗していたが、やがて動きを止めた。

 

 そして俺は治療を始める。

 

 装甲越しに能力を使うと、マンティコアの体に光が広がっていく。

 

 焼け爛れていた皮膚が再生していく。

 

 裂けていた筋肉が修復される。

 

 折れていた棘も元に戻っていく。

 

 ヒサメが驚いた声を上げた。

 

「治してる……?」

 

 カンナも目を丸くする。

 

「お父さん……敵なのに?」

 

 やがて、マンティコアの傷はすべて塞がった。

 

 すると次の瞬間──

 

 ベロベロベロ!! 

 

「うおっ!?」

 

 突然、マンティコアが俺の装甲を舐め回し始めた。

 

 カゲチヨが吹き出す。

 

「懐かれてるじゃねぇか!」

 

 俺は慌てて押し返した。

 

「やめろって!」

 

 マンティコアは尻尾を振りながら、嬉しそうにこちらを見ている。

 

 その横では、子マンティコアがヒサメ達の足元に近づいていた。

 

「きゃっ、かわいい……」

 

 ヒサメがそっと抱き上げる。

 

「ふわふわ……」

 

 カンナも頬を緩ませる。

 

 フィーアが静かに言った。

 

「父様」

 

「この子達を連れて帰ってもよろしいでしょうか」

 

 三人が同時にこちらを見る。

 

「お父さん!」

 

「飼いたい!」

 

「お願いします」

 

 俺は少しだけ考えた。

 

 そしてため息をつく。

 

「……まぁいい」

 

「金はあるし、家を少し改築すれば何とかなるだろう」

 

 その言葉を聞いた瞬間──

 

「やったー!」

 

 三人の声が揃った。

 

 マンティコア親子も、まるで理解したかのように嬉しそうに鳴いた。

 

 こうして俺達は、マンティコアの親子を新しい家族として迎えることになったのだった。

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