混血のカレコレとLost evolution 作:Ks5118
キリトside
ヨーメイのバイト合格から一週間が経過していた。クリスはまだ人型のままであったが、俺はついに薬の解析を終え、解毒薬を作り始めた。
「薬の解析だけなら三日だったが、解毒の解析に四日もかかってしまったな……。これとこれを混ぜて少し置いておくか。その間に、少し休憩でもするか」
そう言いながら、俺は完成間近の薬を机の上に置き、部屋を出て行った。その間に、クリスがゆっくりと目を覚ました。部屋を見渡すと、俺が置いておいた薬の瓶に気づき、思わず手を伸ばした。
しかしその瞬間、ボティスが静かに部屋に入ってきた。彼はクリスが薬を手に取ろうとしたのを見て、柔らかいが毅然とした声で言った。
「クリスよ、まだその薬は出来ておらん。しばし待て」
ボティスは薬の瓶を取り上げ、元の位置に戻すと、クリスに向かって言った。
「寝ぼけておるようじゃし、顔でも洗ってこい」
その言葉に従い、クリスは部屋を出た。ボティスは静かに俺に振り向き、眉をひそめながらつぶやいた。
「キリトも無用心じゃのう。クリスも所詮は獣、そこら辺に置いとけば勝手に飲んでしまう。その様なことにも気づかんのかのう」
「すまん。その件については謝る。もう少ししたら薬は完成するから、そのときお前が飲ませてやれ」と俺は答え、ボティスの頭を軽く撫でようとした。しかし彼は首を振り、柔らかくも厳しい口調で言った。
「良さぬか。恥ずかしいそういうことはクリスやヒサメ達にやってやれ」
「確かにそうだな……今度美味い酒でもやるとするか」
そう言って、俺は薬に最後の材料を加え、慎重に混ぜ合わせた。
「よし……これで完成だな」
完成した薬を手に、俺はクリスの元へ向かった。
「クリスゥー! 薬が出来たぞ、飲め!」
クリスは目をぱちぱちさせながらこちらに近づき、期待と不安の入り混じった声で言った。
「ご主人、出来たんですか……?」
「ああ、これを飲めば元に戻る」
俺は薬を差し出すと、クリスは慎重に口に含んだ。その瞬間、クリスの体から白い煙が立ち上り、ゆっくりと体を包み込む。
「グルルルルッ……」
その声が部屋に響き渡る。しばらくすると、クリスの体は再び元のマンティコアの姿に戻っていた。
ボティスが微笑みながら近づき、俺に尋ねる。
「キリト、お主、成功したのか?」
「ああ、無事に戻れたぞ」
そのとき、玄関からヒサメ達の声が聞こえてきた。
「ただいまー!」
「ただいま帰りました」
「疲れましたぁー!」
俺はクリスに向かって言った。
「ヒサメ達の所に行っておいで」
クリスは軽やかに玄関に向かい、ヒサメ達の元へ駆けて行った。玄関では、三人が目を輝かせて歓声を上げていた。
「ワァ────ッ! クリスちゃん元に戻ったんだっ!」
「人型のクリスも良かったけど、アーシはこっちの方が好きだよ」
「私もクリスが元に戻って良かったと思います」
「すみません、クリスさん、また撫でて良いですか?」
三人の喜びに、ヨーメイも加わり、恐る恐るクリスの頭を撫で始めた。それを見たヒサメ達は、抗議するように声を上げる。
「アーシ達だって撫でたいのにっ!」「早く私達に代わってください!」
ヨーメイは得意げに言った。
「早い者勝ちですぅー、遅かったあなた達が悪いんじゃないですかぁ?」
俺は苦笑しながら、注意を促す。
「お前ら、うるさいぞ。そんなに騒ぐなら、今月のお小遣いなしだ」
ヒサメ達は顔を真っ赤にして反論した。
「お父さんやめてっ!」「アーシも友達と遊ぶ約束している」「私も新しいトレーニング用品を買おうとしていて」「私だって課金したくて……」
「ヨーメイ以外はわかった、あまり無駄遣いするなよ」
ヨーメイは悔しそうに口を尖らせて言った。
「何で私はダメなんですか? 嫌がらせですか?」
俺は軽く肩をすくめ、注意した。
「お前はアルバイトしてるだろ、自分の給料内でやれ」
ヨーメイは小さく「ウギギギギッ」と悔しそうにうめいた。
[何で俺、ヨーメイにもお小遣い渡してたんだろう……]と、ふと我に返りながらも、その日の朝の騒ぎは終わった。
??? side
キリト達の生活から離れた場所。雨が降りしきる、廃れかけた倉庫の中に、怪しい男の笑い声が響く。
「フハハハハハッ! ついに! ついにあいつを倒せる! これでようやく、あの方に認めてもらえるっ!」
その声に応えるかのように、獣の低い唸り声が響く。
「グルルルルッ!」
闇に紛れるように、男の背後に影が蠢く。雨に濡れた鉄骨の隙間からは、わずかな光が差し込み、男の瞳が冷たく光った。その目は、まるで計画の成功を確信した者のものだった。
男の手には、見慣れぬ武器が握られており、その先端からは青白い光が漏れていた。獣は男の足元で身を潜め、低くうなりながらも指示を待つ。
「さあ……始めるか……」
男はゆっくりと前に進み、倉庫の暗がりで立ち止まった。雨音と男の息遣いが倉庫内に反響する。今、すべてが動き出そうとしていた。
キリトside
クリスが元の姿に戻り、ヒサメ達やヨーメイとともに朝食を囲む光景は、普段の穏やかな日常を取り戻したかのようだった。俺は手早く朝食を整えながら、心の中で今回の騒動を振り返る。
「しかし……この一件で、俺の作る薬の精度がますます問われるな」
ヒサメ達は、クリスの元に駆け寄って撫でるのに夢中で、俺の言葉には耳を貸さなかった。ヨーメイもまた、クリスの毛並みに触れながら小さくうめいている。
「……ああ、羨ましいな、俺も撫でたい」
つい、独り言のようにつぶやく。するとヒサメ達が声を揃えて抗議する。
「お父さんまで……!」
「そ、それは……!」
俺は苦笑しながら手を止め、クリスが落ち着いて食事できるように配慮した。その間、クリスは慎重に食べ物を口に運びながら、ボティスのそばで落ち着いていた。
「ボティス、クリスの世話はありがとうな」
「無用じゃ。お主がこうして手を貸さねばならんのだろう?」
「……ああ、まあ、俺も少しは役に立つだろう」
俺は小さく笑い、朝食を続けた。ヒサメ達は少し拗ねた表情を見せながらも、朝の騒ぎは次第に落ち着いていった。だが、心の片隅にはまだ不安があった。
[あの怪しい男……動き出すタイミングをうかがっているかもしれない]
それを考えると、油断はできないと俺は思った。
??? side
雨の降りしきる倉庫。怪しい男の手元で、青白く光る武器が微かに震えていた。獣は低く唸りながら、男の指示を待つ。
「フハハハハッ! 奴らが油断している今がチャンスだ……」
男の声は、雨音にかき消されることなく倉庫中に響き渡った。獣が低く唸りながら身を潜める。その瞳には、狙う者への冷徹な光が宿っていた。
「まずは……奴を仕留める。それから、あの方への証明を……」
男の手が武器に触れ、青白い光が強くなる。獣が前足を踏み込み、体を低くした。雨粒が床に跳ね返る音と共に、緊張が倉庫内に張り詰めた。
「くっ……奴らはまだ、何も気づいとらん。ふふふ……」
男の笑い声が、倉庫内に低く反響する。獣の目もまた、戦いの瞬間を待ちわびて光った。
キリトside
朝食を終え、ヒサメ達やヨーメイがそれぞれの支度を始める頃、俺は窓の外の雨音に耳を傾けていた。
[何か……感じる、妙な気配]
クリスは再びマンティコアの姿に戻り、床に座って毛づくろいをしている。ヒサメ達はそれを羨望の眼差しで見つめている。ヨーメイは自分の制服に袖を通し、鏡の前で髪を整えている。
「……ヨーメイ、今日は面接だろう? 準備はできているか」
「はいっ! 大丈夫です!」
彼女の声には、まだ不安が隠れていたが、それでも決意は固そうだった。俺は彼女の背中に軽く手を置き、安心させるように言った。
「よし、それなら出発だ」
ヒサメ達も続き、家の玄関を出る。クリスはその後ろで、警戒しつつも嬉しそうに尾を揺らしていた。
??? side
倉庫内で男は武器を肩に担ぎ、獣と共に影に潜む。雨粒が滴る音と、遠くの雷鳴が緊迫感をさらに高める。
「奴らが動く前に……先手必勝じゃ……!」
獣が唸り、青白い光を纏った武器が微かに震える。男は低く笑い、手元を調整しながら計画を思い描く。
「ふふ……奴らがまだ気づかぬうちに……これで……」
その時、倉庫の奥で小さな振動が走った。男は獣の方を見やり、低くうなずく。
「来るぞ……準備はいいか?」
獣が低く唸ると、男は武器を握り直し、倉庫内の闇に溶け込むように体を低くした。
キリトside
ヨーメイの面接先に向かう途中、俺は彼女の様子を観察していた。制服姿の彼女は、朝の緊張感からか少し肩に力が入っているように見えた。
「ヨーメイ、大丈夫だ。落ち着け」
「はい……でも、少し緊張しています」
俺は彼女の手を軽く握り、安心させるように微笑む。彼女も少し肩の力を抜き、深呼吸をひとつ。
「よし、それじゃあ行こう」
リサイクルショップの前に到着すると、オーナーは俺たちの姿を確認して微笑んだ。
「お、ヨーメイか。話は聞いている。こっちに来い」
店の奥に案内されると、ヨーメイは少し後ろに下がりつつも、俺の視線を頼りに一歩一歩進む。俺は彼女の緊張を察し、静かに肩を叩く。
「落ち着け、俺も一緒だ」
ヨーメイは深呼吸し、しっかりとした声で挨拶した。
「よろしくお願いしますっ!」
オーナーは頷き、軽く面接を始めた。ヨーメイの受け答えは思ったよりも的確で、緊張している割にはしっかりとした返答ができていた。俺も彼女の背中をそっと支えながら、面接を見守る。
「……やはり、少し支えがあると安心するな」
クリスやヒサメ達が家で待っていることを思うと、ヨーメイだけでなく、俺も少し肩の荷が下りた気がした。
??? side
一方、雨に濡れた倉庫の中では、怪しい男と獣が緊張の中で準備を整えていた。男は青白く光る武器を握り、獣は低く唸る。
「奴らはまだ油断しておる……よし、動き出すのは今だ」
獣の瞳が獲物を捕らえた瞬間、男は低く笑い、武器を振り上げた。倉庫の破れた壁の隙間から、外の雨が細かく飛び込み、光と影が不規則に揺れる。その中で男の笑みは一層不気味さを増す。
「ふふ……奴らが無防備なら……容易くあの方に証明できる……」
獣が男の合図に応じて前足を踏み込み、体を低くした。雨音と雷鳴が混ざり、倉庫全体に緊迫した空気が張り詰める。
「……行くぞ!」
男の声で、獣は一気に走り出した。倉庫内の闇の中で、影が動く。
キリトside
面接を終え、ヨーメイは無事にバイトの許可を得た。彼女の表情は安堵と喜びで輝いていた。
「ありがとうございますっ!」
「これで安心だな」
俺はヨーメイに微笑み、周囲のヒサメ達とクリスのことを思い浮かべる。家に戻れば、日常の中でまたいつもの賑やかな光景が待っているはずだった。
しかし、胸の奥で微かな違和感が残る。何かが迫っている──そんな予感を俺は無視できなかった。
「……油断はできないな」
クリスやヒサメ達、ヨーメイを守るためにも、俺は気を引き締める必要があった。
??? side
倉庫の中、怪しい男は獣と共に影から影へと移動しながら、獲物を確認する。雨が打ちつける音、遠くで雷が轟く。男の目は鋭く光り、獣は唸り声を上げた。
「奴らはまだ気づいておらん……ふはははっ!」
男は武器を握り直し、計画通りに動く準備を整える。獣も低く身を沈め、攻撃のタイミングを伺う。
「……奴らが一歩でも動いたら、一気に仕留める」
その瞬間、倉庫の奥で小さな光が揺れた。男は獣と目を合わせ、微笑む。
「来るぞ……待っておれ、あの方に証明してみせるのだ」
影が動き、雨に濡れた倉庫は戦場のように変わりつつあった。
キリトside
家に帰る道中、俺はふと空を見上げた。雨は止んでいたが、空気は重く、どこか不穏な気配が漂っている。
「……何か、感じる」
ヨーメイが不安そうに俺を見上げる。
「どうかしましたか、ご主人?」
「いや、気のせいかもしれない。でも、何か近いうちに起こりそうだ」
ヨーメイは小さく頷き、手を握り直す。俺は彼女を守る決意を胸に、家路を急ぐ。
家に着くと、クリスやヒサメ達が玄関で出迎えてくれた。
「ご主人、お帰りなさい」
「クリスちゃん、おかえりっ!」
「ヨーメイちゃんも一緒か」
俺はみんなに微笑みかけながら、警戒心を緩めない。庭にはいつも通り、柔らかい日差しが差し込んでいるが、その裏で何かが動いている予感がする。
「……油断はできないな」
俺は玄関で荷物を置き、全員に声をかけた。
「今日は家の中でゆっくりしてろ。何かあれば俺が守る」
クリスは安心したように俺に寄り添い、ヒサメ達はまだ半信半疑だが微笑んで頷いた。
??? side
崩れかけた倉庫では、男と獣が暗闇の中で動いていた。男は青白く光る武器を握り、獣は低く唸る。
「奴らが気づかぬうちに、先手を打つ……」
雨に濡れた床を滑るように獣が走る。男の目は鋭く光り、影の中で戦う準備を整えていた。
「ふふふ……これであの方に認められるのだ……!」
男は高らかに笑い、獣は低く唸る。その声は倉庫の奥まで響き、外にまで不吉な気配を放つ。
「……来い、奴らよ」
男の手が武器を握り直し、獣が構えを取る。まさに決戦の前の静けさだった。
キリトside
家の中では、クリスとヒサメ達、そしてヨーメイが穏やかな時間を過ごしていた。しかし、俺の胸の奥には不安が消えず、注意を怠ることはできなかった。
「クリス、ヒサメ達、何か変わったことはなかったか?」
「うーん、特には……」
「大丈夫だと思います」
「ヨーメイも問題なしです」
俺は一度頷き、窓の外を確認する。雨は止んでいたが、風が強く、遠くの空には黒い雲がわずかに残っていた。
「……あれか」
直感で感じた。何かが、間もなく動き出す。俺は静かに家族の安全を確認し、戦闘準備を整えた。
??? side
倉庫の男は獣と共に、ついに外の動きに気づく。遠くに小さな光──まさにキリト達の家だ。
「奴らだ……あの光は奴らのものだ!」
獣が低く唸り、男は笑みを浮かべる。
「よし……行くぞ。奴らを叩き潰すのだ!」
雨に濡れた廃材の隙間から、男と獣は静かに姿を現す。狙いは、守るべき家族たちを巻き込む一撃だった。
キリトside
その時、俺は背後から異変を感じた。耳を澄ませると、雨に混じった微かな足音。
「……来るな」
俺は即座に警戒態勢に入り、クリスとヨーメイを守る位置に動かす。ヒサメ達も俺の隣に集め、集中力を高める。
「敵だ……来るぞ!」
外の気配が強まり、窓ガラスがかすかに震える。俺は全力で防衛準備を整え、クリスを守りながら外を睨む。
「さあ、かかってこい!」
その瞬間、倉庫の男と獣の影が家の方向に走り出す。雨に濡れた夜の闇の中で、戦いの幕が上がろうとしていた。
キリトside
雨に濡れた夜の庭先に、微かな影が忍び寄る。俺は即座にそれを察知し、クリスとヒサメ達、そしてヨーメイを守る位置に移動した。
「外の足音、聞こえるか?」
クリスが低く唸り、体を小さく震わせる。ヒサメ達も俺の周囲で警戒を強める。ヨーメイは少し怯えながらも俺の後ろに隠れている。
「大丈夫だ、俺が守る」
俺は心の中で自分に言い聞かせる。家族を守るのは当然だ。誰も傷つけさせはしない。
そして、闇の中から二つの異様な影が現れた。倉庫の男と、彼に従う獣。雨に濡れた黒の装甲が夜の闇に溶け込み、動きはまるで影そのものだった。
「……来やがったか」
俺は即座に構えを取り、全身に緊張を走らせる。クリスが俺の横に寄り添い、爪を立てて低く唸る。ヒサメ達もそれを見て、自然と背筋を伸ばした。ヨーメイは目を大きく開け、震えながらも俺の手を握る。
「……お前ら、絶対に守る」
俺は心の中で強く誓った。
??? side
倉庫の男は低く息を吐き、獣に目配せをする。獣は爪を地面に立て、低く唸りながら進路を定める。
「奴らは油断しておる……だが、我らも油断は許されぬ」
男は手にした武器を握り直し、雨に濡れた影の中で静かに足を運ぶ。獣は低く唸り、夜の闇に溶け込むように進む。その目的は一つ──キリトの家族を叩き潰すこと。
「……認められる日は近い……!」
男は笑みを浮かべ、獣と共に闇に消えた。足音は次第に庭の土を踏む音に変わり、今にも家の扉を叩かんとしていた。
キリトside
庭先に影が見えた瞬間、俺は全身に力を入れた。クリスが低く唸り、ヒサメ達は構えを取る。ヨーメイはまだ怖がっているが、俺の横で踏ん張っている。
「よし、まずは守りを固める」
俺は家族を囲むように位置取り、目線を庭の影に固定する。雨に濡れた黒い影がゆっくりと近づいてくる。
「……お前ら、何しに来た?」
叫ぶ間もなく、影は動きを加速させ、庭の端から飛び出してくる。獣の爪が地面を叩き、男は冷たい笑みを浮かべながら武器を振りかざす。
「来たな……!」
俺は叫び、体全体に血が通うのを感じた。防衛戦の始まりだ。クリスは獣の本能を全開にして俺の横で構え、ヒサメ達はその後ろで守備の位置に付く。ヨーメイも必死に俺の背中を守ろうと身をかがめた。
「絶対に守る……!」
俺の心に決意が燃え上がる。雨が降りしきる庭先で、家族を守る戦いが今、幕を開けた。