混血のカレコレとLost evolution 作:Ks5118
キリトside
俺が猫になったヒサメとカンナを連れて家に帰ると、玄関にはクリスが待ち構えていた。
いや、待ち構えていたというか、完全に「俺たちを迎え撃つぞ」という雰囲気だ。尻尾を揺らし、背筋をピンと伸ばして、まるで戦場の騎士のように見える。いや、騎士じゃなくてライオンだな。
「ただいまぁ」
「「ただいま帰りました」」
俺たちが声を揃えると、クリスは飛びかかる勢いで俺たちを迎えてくれた。
「グガォッオ!」
その声はまるで地鳴りのように響き、ヒサネコとカンナネコは一斉に背を丸めた。威嚇の声も一緒に出す。
「「シャッァ────ーッ!」」
[やばい、ここで喧嘩とか勘弁してくれ……]
俺は心の中で祈るように呟いた。だがクリスは少し喉を鳴らして二人に近づいていく。
二人は「敵じゃない」と理解したのか、威嚇をやめた。
[よかったぁ、喧嘩しなくて]
その時、ヨーメイが顔を出して小さな声で尋ねた。
「あのぉ〜、今日の晩御飯ってなんですか?」
「今日は、チーズインハンバーグ〈特製デミグラスソースと目玉焼き添え〉とコンソメスープと夏野菜のゴマドレッシングサラダだぞ」
ヨーメイとヒサネコは目を輝かせ、涎を垂らしそうになっている。
心の声が聞こえてくるようだ。
[[食べたいっ! 食べたいっ! 食べたいっ! ]]
俺はヒサネコとネコカンナをフィーアに預け、晩御飯の準備に取り掛かる。
猫になっている二人に普通のご飯を出すわけにはいかないので、特別仕様にする必要がある。
[ヒサメとカンナは、今猫になっているから普通のご飯は上げられないな。ならアイツらが食べるハンバーグは玉ねぎ抜き、チーズは減塩、サラダはゴマドレではなく出汁にして、ソースにもネギ類は入れないようにしよう]
そう思いながら包丁を握り、材料を刻む。台所には香ばしい香りが漂い、クリスが鼻をクンクンさせてうろうろする。
猫二匹がゴロゴロ喉を鳴らす中、俺は慎重にハンバーグをこねる。玉ねぎの匂いは猫には刺激が強すぎるので、完全に抜く。チーズも少し控えめにする。
料理が完成し、リビングに並べると、フィーアが手伝いに来た。
「手伝います」
と笑顔で皿を並べる。ヒサメとカンナを抱えてボティスも現れ、その後ヨーメイもやってきた。
全員で晩御飯。猫仕様にしたご飯を二人はむしゃむしゃ食べ、目を輝かせている。
俺はその姿を見て、思わず笑みがこぼれた。
「ヒサメ、カンナ、食べっぷりいいな」
二人は満足そうに小さくゴロゴロと鳴いた。
その後、俺はフィーアに二人のお風呂を頼む。
「父様、ヒサメとカンナをお風呂に連れてって下さい」
フィーアは快く引き受けてくれた。
キリトside out
フィーアside
父様に、猫になったヒサメとカンナをお風呂に連れていくようにと言われ、私は心の中で小さくため息をつきました。
普段なら湯温は43.5度に設定しますが、今日は二人が猫になっているため、38.5度にぬるめにしました。ぬるすぎず、熱すぎず、二人が快適に感じる温度です。
お湯に手を入れてみると、ほんのり温かく、湯気がふわりと立ち上がります。深呼吸をすると、湯気と共に少し気持ちが落ち着くのを感じました。
[やはり、猫になってもヒサメとカンナはお風呂がお好きなのですね]
最初、二人は少し警戒していました。背中の毛を膨らませ、耳を少し寝かせて、私を見つめます。
ですが、湯舟に足を入れると、二人は少しずつ体をくねらせ、リラックスし始めました。
小さな前足を湯に浸し、プカプカと浮かぶ様子は、人間の姿のときとはまた違った愛らしさがあります。
「ヒサメ、カンナ、今日は少しぬるめにしてあります。気持ちよく入ってくださいね」
ヒサメは小さく「ニャッ」と鳴き、カンナは前足で水をかきながら、まるで「ありがとうございます」と言っているかのようです。
私は丁寧にシャンプーを取り、二人の毛に泡を乗せていきます。
普段人間の髪を洗うよりも柔らかく、泡が毛に絡む感触は不思議で、つい微笑んでしまいます。
「ヒサメ、泡が残らないように優しく洗いますね。カンナも、前足は大丈夫ですか?」
二人は小さな声で応え、安心した様子で私に体を預けます。
泡を流し、湯船の中で体をくねらせる二人の姿は、まるで温泉に浸かる小さな王子様たちのようです。
「ふわふわですね……やはり毛繕いも丁寧にしないといけませんね」
バスタオルで水気を軽く取り、ドライヤーで毛を乾かします。ヒサメはうっとりした表情で私の腕に前足を巻きつけ、カンナも背中で丸まっています。
しっぽをくるくる巻きながら、安心した様子で私に体を預ける二人を見て、心の中でほっと息をつきます。
「二人とも、お風呂頑張ってくれましたね。立派です」
ヒサメは小さく「ニャッ」と返事をし、カンナは「ニャァ──」と甘えるように鳴きます。
その瞬間、私の胸は温かい気持ちで満たされました。
普段は人間として厳格な二人も、猫になるとこんなにも無邪気で素直になるのです。
ふと風呂場の外で、クリスの鼻鳴きが聞こえました。どうやら私たちの様子を心配しているようです。
「大丈夫です、クリス。ヒサメとカンナは気持ちよさそうにしています」と優しく声をかけると、クリスは小さく「グルルルルッ」と応えました。
まるで私の言葉を理解してくれたかのようで、安心しました。
その後、二人をバスタオルで包み、リビングに連れて行きます。
ヒサメとカンナは体をタオルにくるまれたまま満足そうに目を細め、私に体を擦り寄せます。
[やはり、猫になっても二人は私を信頼してくれるのですね]と心の中で呟き、微笑みます。
突然、ヒサメがぴょんと肩に飛び乗り、カンナも背中に飛び乗ってきました。
「わっ、ヒサメ、カンナ、少し待ってください!」と声を上げつつも、その小さな体の重みに癒されます。
二人が私の腕や肩に体を寄せ、安心してくれていることが伝わってきます。
「ヒサメ、カンナ、今日のお風呂は楽しかったですか? 丁寧に洗いましたよ」
ヒサメは小さく「ニャッ」と返事をし、カンナも「ニャァ──」と鳴いて応えます。
湯気の中で小さな二人の体が温かく、柔らかく揺れる様子を見て、私はつくづく思いました。
[やはり、猫になってもお二人は愛らしいですね。無邪気で、素直で、そして何より信頼してくれる]
今日は小さなハプニングやドタバタがありましたが、二人の無邪気な鳴き声と満足そうな表情に、すべての疲れが癒されました。
これが私の、そして二人にとっての特別な時間なのだと感じます。
「さて、次はご飯の時間ですね。お二人が落ち着くまで、少し待ちましょう」
リビングを片付けつつ、二人が安心してくつろぐ姿を見守る私の心は、穏やかで満たされています。
猫になった二人と過ごす時間は、普段とは違う柔らかい日常を運んでくれるのです。
フィーアside out
キリトside
皿洗いをしながら、俺は風呂場の様子を想像していた。
ヒサメとカンナが小さな体をお湯に沈め、フィーアが優しく毛を洗う……いや、想像しただけで微笑ましい。
30分後、フィーアが二人を連れて戻ってくる。
「お風呂、上がりました」
俺はボティスとクリスに風呂の番を指示する。ボティスは渋るが、クリスは尻尾で器用にボティスを引っ張り風呂場へ。
20分後、二人が戻るとボティスは半泣き状態。
「クリスの奴、嫌じゃと言うておるのに無理矢理、浴室に入れよって、その後も辞めてくれと言うておるのに無理矢理に色々なところをあの前足と尻尾を器用に使って洗って来たのだ」
[あの前足と尻尾でどうやって洗ったんだ? ]
思わず首を傾げる。
そこにリンネ、ミゲル、カリンがやってきて、
「「「ニャアァ──ッ!」」」[私〈僕〉達も入れてぇーっ! ]
と鳴くので、俺は「皿洗いも終わったし、一緒に入るか!」と声をかけ、三匹と風呂場へ。
風呂上がり、フィーアがクリスの毛繕いをしていたので俺は頭を撫でる。
「ありがとな、いつもなら俺が毛繕いをするのに」
「構いません。好きでやっていますので」
フィーアは顔を赤くし、くすぐったそうに小さく頷いた。
「ちょっ! やめて下さいっ! 恥ずかしいです」
「それじゃあ、次は二人だけの時になる」
俺は微笑みながら頷いた。
その後、ヨーメイに風呂に入るよう促す。
「おいっ! ヨーメイ。お前も早く風呂に入れるっ!」
ヨーメイはびっくりして
「ギィヤァ────────ッ! びっくりしました。貴方、幾ら家主であっても女性の部屋にいきなり入ってくるなんて、デリカシーってものが無いんですか?」
と抗議する。
しかし、時給二千五百円の話をされた途端、目を輝かせて
「やりますっ! 次の休みには絶対に働きますのでっ!」
と即答。俺は若干引きながらも了承する。
翌朝、オーナーがやってきて、薬の解毒薬を届ける。
俺は四人を起こさないよう、アメーバのようにベッドからそっと出る。
ヨーメイはオーナーの姿に驚き、
「どっ! どどっ! どうしてオーナーがここに居るんですかっ⁉︎」
と絶叫。俺とオーナーは内心で笑いながら、散らかった部屋を確認する。
ヒサメとカンナは俺の両脇に頭を乗せて寝息を立て、俺は思う。
[まぁ、可愛いから良いか]
猫になったり人間に戻ったり、風呂で大騒ぎしたりしたけど、結局大笑いのうちに平和な日常に戻ったのだった。
キリトside out
朝、まだ夢うつつのままベッドでまどろんでいると、いきなりドアがガチャリと開いた。
心臓が飛び出るかと思い、思わず布団をぎゅっと握りしめる。
「どっ! どどっ! どうしてオーナーがここに居るんですかっ⁉︎」
思わず叫ぶ私。朝からこんな形で驚かされるとは、夢でも悪夢でも見ているのかと疑った。
ドアの向こうに立っていたのはオーナーと、父様ことキリトだ。しかも二人とも表情が真剣すぎて、私の心臓はさらに高鳴る。
「薬の解毒薬を持ってきてくれたんだよ」
キリトはのんびりと言うが、私の中の警戒心は全開。
[なっ……そんな理由で、なぜ朝っぱらから直々に来るの……⁉︎]
頭の中が混乱し、思わず目をぱちぱちさせる。
「そんなの郵便で送ってくれれば良いじゃないですかっ⁉︎」
思わず声を荒げる。だが、二人の視線は鋭く、まるで私を鋼鉄で縛り付けるかのようだ。
オーナーは眉をひそめ「まあ構わん」とだけ言った。
……うぅ、これは完全に無理ゲーだ。
しかもその直後、キリトが小さく呟く。
「昨日の夜、二人がベッドに入ってきたな」
頭の中で、ヒサメとカンナが私の両脇に頭をもたれかけていたことを思い出し、赤面する。
[あの時の状況を、父様とオーナーに見られるなんて……]
「おはようございます、お父さん……」
ヒサメとカンナも、赤くなった顔で挨拶してくる。
「あ、お、おはよう……ございます」
私の声も小さく震える。
そして、目の前に広がる部屋の惨状。
床には空き缶やお菓子の袋が散乱し、まるで小さな嵐が通った後のようだ。
オーナーの目が鋭く光り、まるで私の存在を完全に査定している。
「なっ、何ですか! そんな目で見ないでくださいよ!」
思わず声を荒げるが、キリトの冷静すぎる視線にさらに焦る。
[これは……今日一日、地獄確定か……]
覚悟を決め、散乱した空き缶を拾い始める。
その間、ヒサメとカンナは膝や肩に飛び乗ってきて、ドタバタと動き回る。
「あっ、ヒサメ! カンナ! ちょっと待ってください!」
叫ぶ私だが、その柔らかい体に触れた瞬間、思わず笑ってしまう。
掃除を進める中、カゲチヨが居間から突然現れ、何か言いたげに私を見つめる。
「ちょっとヨーメイ、これどういうことだ?」
うわっ、カゲチヨにそんな目で見られると、もう一気に気が抜ける。
「うるさい、カゲチヨ! 何で朝からいきなり出てくるのよ!」
雑にツッコミを入れる私。さすがにカゲチヨ相手には、丁寧口調など無理だ。
カゲチヨは小さく笑い、私の返事を待っている。
[ああ……この人には全く遠慮しなくていいんだな……]
一方で、オーナーは静かに腕を組み、無言の圧力をかけてくる。
「はい、分かりました……」
私は小さく頷き、散乱したゴミを片付ける。
ヒサメとカンナは膝や肩でくつろぎ、ゴロゴロと小さく喉を鳴らしている。
私はその音に癒されつつも、オーナーとキリトの視線を気にしながら、ゴミ袋にお菓子や空き缶を詰める。
やっと片付けが終わると、オーナーは静かに「もう入って良いぞ」と言った。
私は深く息をつき、ヒサメとカンナを抱き上げる。
二人は体を丸め、安心したように私に甘えてくる。
「おはよう、ヒサメ、カンナ」
二人は小さく「ニャアァ──」と鳴き、私に全幅の信頼を寄せる。
[ふぅ……やっと少し落ち着ける……]
しかし、安心は束の間。
オーナーがそっと私の肩に手を置き、「解毒薬を忘れるな」と言う。
私は小さく頷き、薬を受け取る。
「はい、分かりました……」
心臓はまだバクバクしている。
その間、ヒサメとカンナは膝や腕にすっかり体を預け、小さくゴロゴロ鳴く。
私はその音に少し和まされつつ、今日一日のドタバタに備える。
[……ああ、カゲチヨには雑でいいけど、他の皆さんにはきちんとしないと。……でも、この二人(ヒサメとカンナ)が元気でいてくれるなら、少しは頑張れる]
猫化騒動、部屋の散らかり、オーナーとキリトの監視……朝から全力で混乱しているが、ヒサメとカンナの安心した姿が、私を少しだけ救ってくれた。
深呼吸を一つして、私は今日の波乱に備える。
小さなゴロゴロを聞きながら、私は静かに決意したのだった。
ヨーメイside out