混血のカレコレとLost evolution   作:Ks5118

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No.25 文化祭とメイド喫茶〈修正版〉

 キリトside

 

 ヒサメたちが人に戻ってから二週間──その日、俺は朝食を終えた直後、ヒサメたちから一枚のプリントを手渡された。手のひらに伝わる紙の感触が、妙に現実味を帯びていて、少し緊張が走る。

 

「学園祭ねぇ……」

 

 思わず小声で呟くと、ボティスが首を傾げて俺を見上げた。

 

「学園祭とは何じゃ?」

 

 その無垢な質問に、俺は肩をすくめながら説明する。

 

「学園祭ってのは、その学校でやるお祭りのことだよ。生徒たちが何をやりたいか決めて、その店を作るんだ。店の運営も自分たちでやるから、多少甘いところもあるけど、そこがまた面白いんだ」

 

 ボティスの瞳がキラリと光った。

 

「ほほう、それは楽しそうじゃ」

 

 ヒサメたちも顔を輝かせ、思わず頬が緩む。俺は、ふとあることを思いついて提案した。

 

「その日は店を休むから、ボティス、一緒にヒサメたちの店に行かないか?」

 

 ボティスは少し考え込み、やがて口を開く。

 

「よかろう。其方がワシの案内人になるなら、行ってやらんことも無いぞ」

 

 ヒサメはその答えに飛び上がり、驚きの声をあげる。

 

「えっ! ボティスさんも来てくれるんですか⁉︎」

 

 ボティスは頬を赤らめ、慌てて言い訳する。

 

「キ、キリトが行くと言っておるのじゃからっ! 楽しい場所なのだと思っただけじゃっ!」

 

 ヒサメは苦笑しつつ、言葉を付け加える。

 

「そんなに照れなくても良いじゃないですか。その日はお父さんとボティスさんとクリスちゃんたち二人と四匹で来てください」

 

 俺は興味津々で尋ねた。

 

「なぁヒサメ、お前たちはどんな店をやるんだ?」

 

 ヒサメたちは息を合わせて叫んだ。

 

「メイド喫茶だよ!」

 

 ボティスは眉をひそめ、思わず心の中で呟く。

 

 [メイド喫茶とは、何じゃ……? ]

 

 俺は続けて尋ねる。

 

「お前のクラスって、そんなに女子いたっけ?」

 

 カンナは胸を張りながら笑顔で答える。

 

「大丈夫! 一部の男子生徒もメイドにするから」

 

 俺は窓の外を見やり、心の中でため息をつく。

 

 [女装させられる男子生徒たちよ……哀れだな]

 

 しかしカンナはさらに追い打ちをかけた。

 

「ちなみにカゲチヨもメイドになるから」

 

 その瞬間、俺は椅子から転げ落ちた。

 

「大丈夫だよ、ちょっとびっくりしただけだから……てか、カゲチヨもメイドになるのかよ!」

 

 ヒサメは慌てて駆け寄り、心配そうに声をかける。

 

「だ、大丈夫⁉︎ 派手に落ちたけど!」

 

 ヒサメはその猫耳をピンと立て、顔を赤くしていた。

 

 俺は椅子を拾いながらため息をつく。

 

「いや、笑いをこらえるのに必死だ……」

 

 ヒサメは肩をすくめながら説明する。

 

「私やカゲは否定したんだけど、カンナちゃんとフィーアちゃんが推して、他のみんなも便乗しちゃったの」

 

 俺は心の中でカゲチヨに語りかける。

 

 [ドンマイ、今度ゲームでも買ってやるからな]

 

 朝食を終え、ヒサメたちを見送った後、俺とボティスは店の準備のために下に降りた。店の方は、まだ小さな段ボールと調理器具でごった返している。

 

 数日後──学園祭当日。俺たちはヒサメたちのクラスを目指して校内を歩いていた。

 

 [クリスを見て周りの人たちは驚いていたみたいだが、俺は知らんっ! ]

 

 校内への立ち入りは禁止されていたため、俺はボティスと一緒に屋台を回ることにした。歩きながらボティスがぽつりとつぶやく。

 

「この高校に来るのも体育祭以来だな……さてと、ヒサメたちのクラスは……」

 

 その時、ヒサメの友達であるミキに遭遇する。

 

「あれっ? ヒサメのお父さんと同居人の美人なお姉さん? どうしてここにいるんですか?」

 

 事情を説明すると、彼女は笑顔でクラスまで案内してくれる。

 

「ありがとう。今度うちの店に来たら、一品奢るよ」

 

「ほんっとぉーっ! やったぁーっ! あっ! ノリ子も一緒に良いですか?」

 

 俺は笑って答える。

 

「友達と一緒でも良いよ」

 

 そしてついにヒサメたちのクラスに到着──

 

「おーいっ! ヒサメェーッ! 来たぞぉーっ!」

 

 ヒサメは顔を真っ赤にして駆け寄る。

 

「ちょっとっ! お父さん! そんな大声で呼ばないでっ!」

 

 耳がピンと立った猫耳を押さえながら、慌てて接客を開始する。

 

 ボティスは笑い転げ、ヒサメはさらに顔を赤くするが、接客自体はきちんとこなしていた。

 

「いらっしゃいませ、ご主人様っ!」

 

 カンナも横で「へっへーん、男子生徒もメイドにさせたぞーっ!」と得意げに叫ぶ。

 

 ヒサメは心の中で小さくため息。

 

 [やっぱり、男子生徒たちは哀れ……]

 

 その横で、カゲチヨが犬耳メイドとして接客しているのをちらりと見て、ヒサメは苦笑。

 

「頑張って……カゲ」

 

 俺はそっと肩を叩き、励ますように笑う。

 

 この後、俺たちは屋台を回りつつヒサメたちのクラスでドタバタしたやり取りに巻き込まれるのだった。ボティスの大笑い、ヒサメの赤面、カンナの得意げな顔、そして俺の慌てっぷり……学園祭は開始早々、笑劇と混乱の渦に包まれていた。

 

 キリトside out

 

 カゲチヨside

 

 朝日が校庭に差し込む中、カゲチヨは小さくため息をついた。

 

 今日は──まさかの学園祭。しかも、犬耳メイドとして接客を担当する羽目になっている。

 

「ぐぅ……マジかよ……」

 

 膝を抱えてうずくまるカゲチヨ。黒髪に赤のメッシュ、そして耳だけがひょこっと飛び出た犬耳が、妙に違和感を醸し出している。

 

「……見られたくない人には、絶対に見られたくない……」

 

 目の前の鏡に映る自分の姿に思わず悲鳴を上げる。制服の上に着た白いエプロン、黒いミニスカート、そして腰に結んだリボン──完全に“メイド”だ。しかも耳付き。

 

「ヒサメたちは、なんで平然としてるんだ……」

 

 心の中で文句をぶつけつつ、カゲチヨはそっと教室の隅に身を潜める。しかし、背後の物音に気づく。

 

「おーいっ! カゲチヨーっ!」

 

 あの、いつもの元気すぎる声。

 

「グゥワァ────ッ! 見られたく無い人に見られたぁーっ!」

 

 膝から崩れ落ちるカゲチヨ。顔を手で覆い、耳まで真っ赤になっている。周囲の生徒が目を丸くしてこちらを見ているのが、さらに羞恥を増幅させる。

 

「あ、あぁ……もう……なんで俺がこんな格好を……」

 

 もはや、悶絶寸前だ。

 

 そこへ、肩を掴む温かい感触──俺、キリトの手だった。

 

「何逃げようとしてんだっ! カゲチヨっ!」

 

「や、やめろっ! こんな公衆の面前で……見られたくないんだっ!」

 

 カゲチヨは膝から崩れ落ちたまま必死に言う。しかし、キリトは軽く笑いながら肩を叩く。

 

「やめろよ、そんなに震えるなよ。そこまで変な格好じゃないって」

 

 ボティスは後ろで手を叩いて大笑い。

 

「キャハハハハハハッ! 何じゃその姿は、側から見たら面白いなっ!」

 

「ふ、ふざけんな……!」

 

 カゲチヨは顔を覆ったまま、思わず地面に突っ伏す。

 

 シディは少し離れた場所から腕を組み、クールに観察している。

 

「そんなに照れなくても良いじゃないか……ボティス、あまり笑うな」

 

 カゲチヨは怒りと羞恥で震えながらも、肩越しにキリトを見て、やや小さな声で呟く。

 

「こんな格好、バレたくなかったんですよ……」

 

 キリトはそっと手を肩に置き、落ち着かせる。

 

「大丈夫。俺たちには、笑ってもいい権利しかないから」

 

 少し落ち着いたカゲチヨは、スタッフルームに向かうことにした。

 

「もう少ししたら休憩なんすわ……多分、ヒサメやカンナも同じだと思うんで、誘ってきます」

 

 歩きながらカゲチヨは、自分の姿を鏡の反射で確認する。犬耳、黒髪、赤メッシュ、白いエプロン……そのどれもが、普段の自分のイメージとかけ離れている。

 

「……俺、完全にネタキャラだよな……」

 

 心の中で自己嫌悪。

 

 しかし、そんな時、子どもたちが近づいてくる。

 

「わぁーっ! 犬耳のメイドさんだーっ!」

 

「かわいいーっ!」

 

「ち、違うっ……俺は普通に接客したいだけなんだ……」

 

 カゲチヨは思わず腰を引き、声を小さくする。

 

 そんな中、ヒサメが笑顔で声をかけてきた。

 

「頑張って、カゲ!」

 

 カゲチヨは顔をさらに赤くし、思わず小声で呟く。

 

「ぐぅ……頑張るしかないっすね……」

 

 時間が経つにつれ、少しずつ慣れてくるカゲチヨ。

 

「ふむ……接客は、案外、悪くない……かも」

 

 しかし、キリトが横から冗談を飛ばす。

 

「よし、今から“犬耳メイドカゲチヨ”特製カフェラテを作ってもらおうか!」

 

「やめろ……! そんなメニュー名にするな……!」

 

 カゲチヨは両手で顔を覆う。

 

 店内は笑い声と注文の声で賑わい、ヒサメたちは猫耳メイドとして全力で接客している。

 

「いらっしゃいませ、ご主人様っ!」

 

「ご注文は決まりましたか?」

 

「お待たせしましたーっ!」

 

 カゲチヨは黒髪をかき上げ、犬耳を少し下げながらも、注文をこなす。

 

「ふぅ……意外と、仕事としては、悪くないかも……」

 

 だが、次の瞬間、トレーを手にしたまま足を滑らせ、コーヒーをこぼしそうになった。

 

「ちょっ……あああっ!」

 

「危ないっ!」

 

 ヒサメがとっさに腕を伸ばし、カゲチヨを支える。

 

「は、はは……なんとか……」

 

 カゲチヨは肩で息をしつつ、少し笑みをこぼす。

 

 その後も、カゲチヨは笑われたり赤面したり、子どもたちに囲まれたりしながら、徐々に学園祭を楽しみ始める。

 

 [……俺、これでいいのか……? いや、楽しいかも……]

 

 屋台を回るキリトたちの姿を遠くから見ながら、カゲチヨは心の中でつぶやいた。

 

「……なんだかんだで、悪くない一日かもしれない……」

 

 そして、学園祭は続く──犬耳メイドのカゲチヨと、猫耳メイドのヒサメたち、そして笑い転げるボティスやシディを巻き込みながら、コメディ混じりの大騒ぎが校内に広がっていった。

 

 カゲチヨside out

 

 ヒサメside

 

 ヒサメにとって、学園祭当日は胸が高鳴る特別な日だった。人に戻ってから二週間──その間の慌ただしい日々も、この日のための準備だったのだ。

 

 朝、クラスに着くと、机の上にはメイド服や猫耳カチューシャが整然と並んでいた。

 

「ふぅ……今日こそ、完璧にやらなきゃ……」

 

 ヒサメは深呼吸をして、緊張を押さえ込む。

 

 カンナがにこやかに近づく。

 

「ヒサメ、そんなに緊張してどうするんだよ~」

 

「緊張なんてしてないもん……!」

 

 ヒサメは必死に笑顔を作るが、耳だけがピクピクと反応しているのが自分でもわかった。

 

 フィーアも楽しそうに準備を進める。

 

「ヒサメ、準備は大丈夫?」

 

「ええ、問題ないわ!」

 

 ヒサメは少し胸を張るが、内心では不安でいっぱいだった。

 

 [男子もメイドになるって、想像以上に大変そう……]

 

 やがて、校門にお父さんやボティス、クリスたちが現れた。ヒサメは思わず顔を赤くして、猫耳を押さえる。

 

「ちょっとっ! お父さん! そんな大声で呼ばないでっ!」

 

 しかし、笑い声がクラス中に響き渡る。

 

 ボティスは手を叩いて笑う。

 

「キャハハハハハッ! ヒサ子、何じゃその姿は!」

 

 ヒサメは必死に言い訳をする。

 

「そんなに笑わないでください。ボティスさん、私だってこんな格好になるなんて知らなかったんですからっ!」

 

 俺たち父娘は笑いながらも、ヒサメを見守る。

 

 ヒサメは心の中で小さくため息。

 

 [なんで私、こんな格好で接客しなきゃいけないの……]

 

 しかし、緊張も束の間、接客が始まるとヒサメは徐々にその場に集中し始めた。

 

「いらっしゃいませ、ご主人様っ!」

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

 猫耳をピンと立て、しっかりとお辞儀をしながら、注文を受ける。

 

 男子生徒もメイドとして立たされているので、カンナが横で得意げに叫ぶ。

 

「男子生徒もメイドにさせたぞーっ!」

 

 ヒサメは心の中でため息。

 

 [やっぱり男子は……哀れ……]

 

 そのとき、カゲチヨが犬耳メイドとして登場。ヒサメは思わず吹き出しそうになるが、ぐっと笑いをこらえる。

 

「頑張って、カゲ」

 

 小さく声をかけると、カゲチヨは肩で息をしながら「ぐぅ……」と答えた。

 

 学園祭は次第にヒートアップ。お客さんが増え、注文の声と笑い声でクラスは一気に賑やかになる。

 

「お待たせしましたーっ!」

 

「ありがとうございます、ご主人様!」

 

 ヒサメはメイドとしての役割をこなしながらも、心の中で小さくつぶやく。

 

 [でも……少し楽しいかも……]

 

 しかし、カンナがいたずらを仕掛けてくる。

 

「ヒサメ、こっちのお客さん、ちょっとドリンク多めに作ってあげて!」

 

「え、ちょっと待って……!」

 

 ヒサメは焦りながらも、笑顔を絶やさずにドリンクを提供。お客さんは喜ぶが、ヒサメは内心で汗をかく。

 

 次に、屋台のほうへ行くと、フィーアが女子運動部の試合に出ていることがわかる。ヒサメは慌てて仲間と一緒に屋台を回る。

 

「フィーアちゃん、頑張って!」

 

 試合中のフィーアに声をかけると、少し驚いた顔をするが、すぐに笑顔を返す。

 

 屋台では様々なハプニングが起こる。

 

 トレーを落としかけたり、注文が重なって焦ったり、男子生徒が慌てて料理を運ぶたびにヒサメは笑いをこらえつつ対応。

 

「うぅ……でも、これも学園祭ならでは……」

 

 時折、ボティスがからかいにやってくる。

 

「ヒサ子、そこのケーキを持った姿……キャハハッ! 面白いぞ!」

 

 ヒサメは頬を赤くしながら、必死に笑いを隠す。

 

 カゲチヨも疲れた顔でドリンクを運ぶが、ヒサメは思わず手を差し伸べる。

 

「大丈夫? 無理しないでね」

 

「ぐぅ……ありがとう……」

 

 ヒサメの中で、学園祭は単なる「恥ずかしい日」から、「みんなで楽しむ日」に変わっていく。

 

 [恥ずかしいけど……やっぱり楽しい……]

 

 試合が終わったフィーアも加わり、ヒサメたちは屋台を回りながら、笑いと注文の声に包まれる。

 

「いらっしゃいませ、ご主人様! こちらは今日のオススメですっ!」

 

 ヒサメは小さな声で、でも確実に笑顔で応対する。

 

 屋台の賑わい、友達との掛け合い、ボティスやシディの笑い……学園祭の楽しさが、ヒサメの胸にじんわりと広がっていった。

 

「……やっぱり、みんなと一緒にやる学園祭って、最高だな……」

 

 ヒサメはそう心の中でつぶやきながら、今日のドタバタを全力で楽しむことを決めた。

 

 ヒサメside out

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