混血のカレコレとLost evolution   作:Ks5118

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No.X2 休暇と大食い大会〈修正版〉

 キリトside

 

 休日の朝、店は珍しく静まり返っていた。普段なら厨房からカチャカチャと音が響くのに、今日はただの静寂。そんな時、ヒサメがニコニコと一枚のポスターを手にやってきた。

 

「お父さん! 最近このお店で大食い大会をやっているみたいで! 私も出て良い?」

 

 ポスターには、特大ステーキを前にした人々の写真が躍っている。ヒサメの目はキラキラしていた。俺は少し驚きながらも聞いた。

 

「良いぞ、カンナやフィーアも誘ったのか?」

 

 ヒサメは首を振る。「大会には出ないけど、見に行くって言っていたよ」と答える。ふむ、これは……面白そうだ。思わず俺も口を出した。

 

「俺も出るかな」

 

 ヒサメの表情が一瞬固まる。目を見開いて、

 

「えっ? お父さんってそんなに食べるっけ?」

 

 そう、普段の俺はそれほど大食漢ではない。しかし、時折心の奥底で「今日は一日中食べ続けたい」と思う日もあるのだ。

 

「いつもは食べないけど、たまにたくさん食べたくなるんだよな」

 

 ヒサメは少し驚きながらも納得したように頷く。「そうなんだ、結構意外だなぁ」

 

 俺は間髪入れずに続ける。

 

「因みにボティスも、俺と同じでたまにたくさん食べるぞ」

 

 ヒサメは目をさらに大きく見開き、ボティスを呼んだ。

 

「えぇぇっ────ーっ! そうだったの? じゃあこの大会に出てくれたら優勝できるかな?」

 

 俺は肩をすくめて笑う。「分からないけど、かなり食べるぞ、俺もボティスも」

 

 少し間を置いてから、ボティスを呼ぶ。

 

「おーいボティス! 大食い大会に出るけどお前も行くか?」

 

 ボティスはゆったりと振り返り、眼鏡の奥から光を放つ。

 

「ほぉ! 大食い大会となる、して何を食べるのじゃ?」

 

 ヒサメは少し恥ずかしそうに小声で言った。「えっと、特大ステーキです」

 

 その瞬間、ボティスの瞳がキラリと光った。

 

「ほぉっ! ステーキとな、ワシはステーキが大好物なのでのう」

 

 俺は時計を見て、ふと時刻に気づいた。「そろそろ行かないと受付の時間が無くなるぞ」

 

 慌ててヒサメとボティスは出かける支度をする。衣装もそれぞれ特徴的で、ヒサメは白いチャイナシューズにサイハイニーソックス、黒の短パンに白いチャイナトレーナー。内側の黒Tシャツがチラリと見え、動きやすそうだ。ボティスは黒いチャイナブーツにジーンズ、ノースリーブタートルネックに白いジャケット。頭にはレディースの黒スポーツキャップという大人な格好で現れた。

 

 俺も負けじと黒スニーカーにジーンズ、黒Tシャツに赤ジャケットで決め、全員で出発。途中、俺とボティスは何度もナンパに遭遇するも、冷静に返り討ち。ヒサメは苦笑しながらついてきた。

 

 会場に着くと、すでに筋骨隆々の男性や、ぽっちゃり系の参加者で賑わっていた。ヒサメに向かって、ぽっちゃりの一人が嘲るように言った。

 

「貴方みたいな小娘が、この大会に出るなんて信じられないわ」

 

 他のぽっちゃり達も加勢する。

 

「あぁら! 本当だわ」

 

「こんな大会に出ないで野菜でも食べてたら」

 

 ヒサメは一歩も引かずに答える。

 

「そのような事をあなた方に言われる筋合いはないと思いますが?」

 

 するとぽっちゃり達はヒサメだけでなく、俺にも目を向けてきた。すると俺は一言。

 

「俺はあんたらに興味ないので、それに俺の娘を悪く言わないでください」

 

 ぽっちゃり達は口を開けたまま固まる。ヒサメは心の中で小さくガッツポーズ。

 

 やがて大会が始まる。ステーキ一皿一キロ、しかも六皿以上。普通なら充分すごいのだが、俺たちは二十皿以上ペースで食べ続ける。部位も毎回違い、味に飽きることがない。ヒサメにガヤを入れていたぽっちゃり達は、次第に目を見開き、完全に引き気味だ。

 

 そして結果は──なんと俺とヒサメとボティスの三人、独壇場となったのである。

 

 キリトside out

 

 ヒサメside

 

 私はワクワクしながら、ステーキ大会の会場に足を踏み入れた。休日とはいえ、朝からこんなに人が集まるとは思わなかった。目の前に広がる光景は、まるで筋肉祭りとぽっちゃり祭りが同時開催されているかのようだ。

 

「わぁ……すごい……」

 

 と、思わず声に出してしまう。まわりの大きな体格の人たちがステーキ皿を前に戦闘態勢を整えている。私の小さな体は、その中でまるで観覧車の中にいる小さな子どものように見えたに違いない。

 

 その時、ぽっちゃり系の女性が私を見つめ、鼻で笑うように言った。

 

「貴方みたいな小娘が、この大会に出るなんて信じられないわ」

 

 ……やっぱり来たか。私が小さいからってバカにするのは簡単だと思ったのか? 心の中で舌打ちしつつも、私は顔には出さずににっこり笑った。

 

「そのような事をあなた方に言われる筋合いはないと思いますが?」

 

 ぽっちゃり達は驚いた顔をして、少し後ずさりする。ふふ、見た目で判断するのは甘いのよ。私だって、この大会に出るなら負けないつもりなのだ。

 

 それにしても、お父さんとボティスの二人も来ている。お父さんはなんだかいつもよりキリッとして見えるし、ボティスはあいかわらず落ち着きすぎていて、ステーキを前にした興奮が顔に出ないのが怖いくらいだ。

 

「ヒサメ、準備はいいか?」

 

 お父さんがこちらを見て手を振る。私は心の中で小さくガッツポーズ。

 

「もちろん! 今日は負けないわよ!」

 

 しかし、私の内心には少しだけ不安もあった。私の体は小さいし、普通の人より食べられる量は少ないはず。けれど、心配無用だった。お父さんもボティスも、そして私も、目の前のステーキを見るだけで「戦闘態勢」に切り替わってしまうのだから。

 

 開始の合図が鳴る。皿に盛られた特大ステーキが次々と運ばれてくる。私の心臓はドキドキと高鳴る。

 

「いただきます!」

 

 一口食べると……うん、やっぱり美味しい! 香ばしい焼き色、ジューシーな肉汁、柔らかくて食べ応え十分。思わず目を閉じて味わう。

 

 その瞬間、ぽっちゃり系の女性たちがまた口を開く。

 

「あんな小さい体で、これ全部食べられるわけないわ!」

 

 ……ふふふ、心の中で笑った。見てなさい、私はまだまだ序盤。

 

「ヒサメさん、もっと食べなさい。お父さんも負けてませんよ」

 

 ボティスが冷静にアドバイスをくれる。いやいや、私は一人で戦うつもりだったのに、二人も同じテーブルで食べ始めたらどうなるの……? 

 

 最初の六皿を終えた頃、会場の空気が少しざわつく。私たち三人、無言で次々とステーキを平らげていく。筋骨隆々の人も、ぽっちゃりの人も、私たちのペースについてこれない様子だ。

 

「あれ……? この小娘、しかもお父さんとボティスまで……」

 

 ぽっちゃり達が互いに顔を見合わせ、明らかに戦意喪失している。心の中でガッツポーズ。やったわ、私たちの独壇場になる予感……! 

 

 そして、皿の数が二桁に差し掛かる。私はもうお腹がいっぱいのはずなのに、次の一口を口に運ぶ手は止まらない。隣のボティスも、涼しい顔で肉を切り分けている。お父さんはというと、目を吊り上げて笑顔で肉を平らげる。

 

 ふと、ぽっちゃり女性たちがつぶやいた。

 

「……あの三人、やばいわ……」

 

 私の心の中で、また小さく笑う。やっぱり、こうでなくちゃ。見た目で判断する者には、結果で示すのが一番なのよね。

 

 そして大会終了後……私はもう動けない。椅子に座ったまま、額に汗がにじむ。ボティスは冷静そのまま、残ったステーキを指でつまんで最後まで味わう。お父さんは満足そうに深く息をつき、皿の山を見てにやりと笑った。

 

「ははは……やっぱり美味かったな」

 

 私は思わずつぶやく。

 

「もう……しばらく肉は見たくない……」

 

 ギャグオチとしては、この瞬間に審判が小声で近づき、

 

「君たち……今日のステーキ代、店に請求するからね……」

 

 と言ったとたん、三人同時に目を丸くして固まる──そんな光景が脳裏に浮かんだ。

 

 ヒサメside out

 

 ボティスside

 

 

 

 今日という日は、予想以上に賑やかじゃ。ワシ、ボティスは落ち着いた足取りで会場に入ったものの、周囲の熱気には少々圧倒されそうになるのじゃ。しかし戦いはすでに始まっておる。ステーキの匂い、鉄板の音、観客の声……すべてがワシの食欲センサーを刺激するのじゃ。

 

「ほぉ……ステーキとな……この香ばしき匂いは、ワシの魂を揺さぶるのう」

 

 ワシは静かに皿を前に運ぶ。隣にはヒサメ、そしてキリト。小娘と好戦的な男が入り混じった奇妙な連合が形成されておる。ふふふ……これは面白い展開になるのじゃ。

 

 開始の合図と同時に、ワシは冷静にナイフを握る。

 

「ほぉ……まずは一皿、次に二皿、そして三皿……」

 

 口元で小さく数えながら、一口ずつステーキを切り分けていくのじゃ。ヒサメの小さな手も、皿を次々と平らげる。キリトはというと、相変わらず笑顔で肉を口に運びつつも、目は真剣そのものじゃ。

 

「ふむ……あの二人、只者ではないな」

 

 内心そう思いながらも、ワシは表情を変えず、ゆっくりと味わうのじゃ。肉の柔らかさ、香り、ジューシーさ……これを楽しむのがワシの戦い方じゃ。

 

 だが、周囲のぽっちゃり達の目がこちらに向けられる。最初は小馬鹿にした視線じゃったが、次第に恐怖とも取れる光に変わっていくのが見えるのう。特にヒサメに対する「小娘のくせに……!」という表情は滑稽でさえある。

 

「ヒサメよ、よくやっておるのう」

 

 静かに声をかけると、ヒサメは少し照れくさそうに顔を赤らめたのじゃ。ワシは微笑む。感情を表に出さぬのがワシの流儀じゃが、この一瞬だけは純粋に嬉しかったのじゃ。

 

 皿の数が二桁に差し掛かる頃、ワシはそっと考える。

 

「ふむ……まだ序盤。ここからが真の勝負じゃな」

 

 隣を見ると、キリトは笑いながら肉を口に運び、ヒサメも必死に平らげておる。ふふふ……この二人となら、ワシはどこまでも食べ続けられる気がするのじゃ。

 

 その時、ぽっちゃり女性がワシに小声で呟いた。

 

「……あの人、落ち着きすぎて怖いわ」

 

 ワシの内心で小さく笑う。周囲の視線を気にせず、自分のペースで楽しむ……それがボティス流の戦い方なのじゃ。

 

 そして最後の皿を前にした時、ワシは皿を見つめ、深く息を吸った。

 

「よし……これで最後、ワシの満足を確かめるのじゃ」

 

 一口食べた瞬間、会場から歓声が上がる。キリトもヒサメも満足そうに顔を上げる。結果は──三人同率一位じゃった。

 

 その瞬間、審判が小声で近づき、言ったのじゃ。

 

「君たち……今日のステーキ代、店に請求するからね……」

 

 ワシは眉を上げ、冷静に答えるのじゃ。

 

「ほぉ……そうか。しかし美味であったゆえ、やむを得ぬな」

 

 キリトは両手で頭を抱え、ヒサメは椅子に倒れ込みながら「もう動けない……」とつぶやく。ワシは静かに笑みを浮かべ、周囲の注目を浴びつつ優雅に立ち上がるのじゃ。

 

「ふふ……我が勝利は美味であり、かつ笑いあり……理想的な結果じゃな」

 

 こうして、ワシ、キリト、ヒサメの奇妙な三人連合は、ステーキ大会の歴史に新たな伝説を刻んだのじゃ。小さな娘、好戦的な男、そして冷静なワシ……三者三様の戦いぶりは、会場中に強烈な印象を残したのじゃ。

 

 最後に、ぽっちゃり達が遠巻きに呟くのじゃ。

 

「……もう二度と挑まないわ……」

 

 ヒサメがこっそり耳打ちする。

 

「ふふ、次はもっと大きな大会に挑戦してみたいな」

 

 ワシは内心で苦笑しつつ、静かに頷くのじゃ。次の戦いも、また楽しみになる予感がしたのじゃ。

 

 ボティスside out

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