混血のカレコレとLost evolution   作:Ks5118

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No.28 裏京都と妖怪の頭領〈後編〉《修正版》

 キリトside

 

 修行を終えた翌朝。

 

 裏京都の空気は、昨日までとは明らかに違っていた。

 

 重い。

 

 だがそれは、恐怖ではない。

 

 ──覚悟だ。

 

 キリトは静かに仲間たちを見渡す。

 

 その時。

 

「……お願いがあります」

 

 九重が一歩前に出た。

 

 小さな体。

 

 だが、その瞳には強い意志が宿っている。

 

「私も──お母様の捜索に、連れて行ってください」

 

 その言葉が落ちた瞬間。

 

 空気が張り詰めた。

 

「待て、九重。それは無茶だ」

 

 カゲチヨがすぐに口を開く。

 

「そうですよ! 危険すぎます!」

 

 フィーアも続く。

 

「まだ戦闘にも慣れていないのに……」

 

 カンナが不安そうに言う。

 

 ヒサメも眉を寄せた。

 

「足手まといになる可能性だってあるよ……」

 

 言葉は強くない。

 

 だが、その全てが“心配”から来ている。

 

 九重は一瞬だけ視線を落とした。

 

 それでも──顔を上げる。

 

「それでも、行きたいのです」

 

 震えている。

 

 だが、引いていない。

 

「私は……お母様を、自分の目で確かめたいのです」

 

 その言葉に、誰もすぐには返せなかった。

 

 重い沈黙。

 

 その中で──

 

「そんなに言う必要はないだろ」

 

 キリトが口を開いた。

 

 全員の視線が集まる。

 

「不安なら、俺が見る」

 

 短く、だがはっきりとした声。

 

 九重の目が揺れる。

 

「……よろしいのですか?」

 

「ああ」

 

 迷いはない。

 

 キリトは続ける。

 

「止めても、こいつは来るだろ」

 

 図星だった。

 

 九重は小さく息を呑む。

 

「だったら、目の届くところにいた方がいい」

 

 合理的な判断。

 

 だがそれ以上に──

 

 信じている言い方だった。

 

 少しの沈黙の後。

 

 カゲチヨがため息をつく。

 

「……はぁ。おやっさんがそう言うなら、止めねぇよ」

 

 ヒサメも肩をすくめた。

 

「ちゃんと守ってよね」

 

 フィーアは小さく頷く。

 

「……無理はしないでくださいね」

 

 九重は深く頭を下げた。

 

「ありがとうございます」

 

 その声は、少しだけ震えていた。

 

 九重が頭を下げたあと。

 

 場の空気は、わずかに変わっていた。

 

 完全に不安が消えたわけではない。

 

 だが──全員が同じ方向を向いた。

 

「じゃあ、行くぞ」

 

 キリトの一言で、動き出す。

 

 一行は四つの班に分かれた。

 

 北・南・東・西。

 

 それぞれの区域を効率よく捜索するための配置だ。

 

 キリトは北側を選んだ。

 

 九重、ボティス、シディ、ヨーメイ。

 

 静かな街並みの中へと足を踏み入れる。

 

 北側は人通りが少ない。

 

 古びた建物と、入り組んだ路地。

 

 どこか閉塞感のある空間だった。

 

「……で、どうするかな」

 

 キリトは軽く周囲を見回しながら呟く。

 

 ボティスがすぐに反応する。

 

「お主が北側をやると言い出したのじゃろう? 今さら困るなど、何を言っておるのじゃ」

 

 呆れたような声。

 

「悪いって」

 

 キリトは苦笑した。

 

 そして、ふと思い出したように言う。

 

「そういえば、なんでこっち来たんだ?」

 

 ボティスは一瞬だけ視線を逸らした。

 

「……それはじゃな。他の者より、お主の方が信用できるからじゃ」

 

 少しだけ間を置く。

 

「それに……お主とは、気楽に話せるでのう」

 

 キリトは小さく笑った。

 

「そっか。ありがとな」

 

 そのやり取りを見ていた九重が、首を傾げる。

 

「あの……お二人は、お付き合いなされているのですか?」

 

「ば、馬鹿者っ!!」

 

 ボティスが顔を赤くして否定する。

 

「そのような関係ではないのじゃ!」

 

 キリトは淡々と言った。

 

「付き合ってはないけど、一緒に寝てはいるな」

 

「な、何を言っておるのじゃああっ!!」

 

 慌てて口を押さえるボティス。

 

「な、何故それを今言うのじゃ! 馬鹿者かお主はっ!」

 

 九重は真剣な顔で続ける。

 

「お付き合いしていないのに、ご一緒に寝ているのですね。なぜですか?」

 

 キリトは少し考えた。

 

「契約みたいなもんだ」

 

「契約……?」

 

「俺が一人にならない代わりに、対価を渡す約束だ」

 

 九重は納得したように頷いた。

 

「なるほど……」

 

 だが、すぐに別の疑問が浮かぶ。

 

「ですが……お二人とも、人間ではないのですか?」

 

 キリトとボティスは同時に答えた。

 

「俺は人の形をしてるだけだ」

 

「ワシは悪魔じゃ」

 

 九重は目を見開く。

 

「悪魔……」

 

 恐れよりも、純粋な驚き。

 

 そっと二人に触れる。

 

「ですが……人と変わりません」

 

 キリトは肩をすくめる。

 

「見た目を合わせてるだけだ」

 

 ボティスも頷く。

 

「人に合わせておるだけじゃ」

 

 九重は手を合わせた。

 

「そういうことなのですね!」

 

 だが。

 

 探索は順調とは言えなかった。

 

 気配はない。

 

 痕跡もない。

 

 ただ時間だけが、静かに過ぎていく。

 

 その日の夕方。

 

 一度、全員が合流する。

 

 結果は──全滅。

 

 誰一人、手がかりを見つけられていなかった。

 

「……参ったな」

 

 カゲチヨが頭をかく。

 

 ヒサメもため息をついた。

 

「どこにもいないなんて……」

 

 カンナが不安そうに呟く。

 

 キリトは腕を組んだ。

 

「……いや」

 

 短く言う。

 

「隠されてるだけだ」

 

 その一言で、全員の意識が切り替わる。

 

 その日は別のホテルに移動し、休息を取ることになった。

 

 そして──翌朝。

 

 再び捜索が始まる。

 

 今度は二班に分かれる。

 

 戦力を分散させすぎないためだ。

 

 キリトたちは北側を担当する。

 

 しばらく歩いた、その時だった。

 

「……来たか」

 

 キリトが足を止める。

 

 空気が変わる。

 

 視界の端から、白いものが広がる。

 

 霧。

 

 だが──明らかに異常だ。

 

 濃い。

 

 そして、広がるのが速すぎる。

 

 キリトは即座に通信を取った。

 

「カゲチヨ、聞こえるか」

 

『ああ、おやっさん?』

 

「霧が出てきた。そっちにも行く」

 

『霧……?』

 

「絶対に離れるな。敵の術の可能性が高い」

 

『了解』

 

 通信を切る。

 

 キリトは振り返る。

 

「点呼取るぞ」

 

「ボティス」

 

「ここにおるのじゃ」

 

「九重」

 

「はい!」

 

「シディ」

 

「いるぞ」

 

「ヨーメイ」

 

「ここにおります!」

 

 全員確認。

 

 キリトは一瞬考え──

 

 九重を軽く持ち上げる。

 

「えっ……!?」

 

 そのまま肩に乗せた。

 

「視界確保だ」

 

 霧の中では視界が命だ。

 

 少しでも高い位置を確保する。

 

「離れるな」

 

 低く言う。

 

 全員が頷いた。

 

 キリトは霧の中へと踏み込む。

 

 数分後。

 

 視界は完全に白に覆われた。

 

 音が遠い。

 

 距離感が狂う。

 

 その中で──

 

 九重がぽつりと呟いた。

 

「……あの」

 

「どうした」

 

「お母様が居なくなられた時も……このような霧が出ておりました」

 

 沈黙。

 

 全員の動きが止まる。

 

 ボティスがため息をついた。

 

「それは先に言うべきじゃろう……」

 

 キリトも小さく息を吐く。

 

「重要な情報だな」

 

 九重は肩を震わせた。

 

「す、すみません……」

 

 シディがすぐに言う。

 

「今わかっただけでも十分だ」

 

 優しい声。

 

 九重は小さく頷いた。

 

 その時だった。

 

 霧の奥で──何かが動いた。

 

 キリトの目が鋭くなる。

 

「……来るぞ」

 

 全員が構える。

 

 静寂。

 

 そして。

 

 ゆっくりと。

 

 霧の向こうから、人影が浮かび上がる。

 

 一歩。

 

 また一歩。

 

 確実に、こちらへ近づいてくる。

 

 キリトは静かに呼吸を整える。

 

(敵か……それとも──)

 

 九重の手が、わずかに震えているのが伝わる。

 

 だがキリトは何も言わない。

 

 ただ前を見据える。

 

 人影が、徐々に輪郭を持ち始める。

 

 そして──

 

 キリトside out

 

 カゲチヨside

 

 キリトたち──いや、“おやっさんたち”と別れてから。

 

 カゲチヨたちは西側の捜索を続けていた。

 

 人通りの少ない通り。

 

 古びた建物。

 

 どこか空気が重い。

 

「……にしてもよ」

 

 カゲチヨは頭をかきながら呟く。

 

「おやっさん、なんであんなに子供に甘いんだろうな」

 

 その言葉に、隣を歩くヒサメがくすっと笑った。

 

「それ、私も思うけど」

 

 少しだけ間を置いて──

 

「それがお父さんなんじゃない?」

 

 その笑顔を見た瞬間。

 

 カゲチヨの思考が止まる。

 

(……なんだ今の)

 

 胸の奥が妙にざわつく。

 

 慌てて視線を逸らす。

 

「どうしたの?」

 

 ヒサメが首を傾げる。

 

「いや……その……」

 

 言葉に詰まりながらも、口が先に動いた。

 

「こうやって二人で歩いてると……デートみたいだなって」

 

 沈黙。

 

 一瞬の間。

 

 次の瞬間──

 

 パシンッ! 

 

「な、なに言ってるのよっ!!」

 

 ヒサメの顔は真っ赤だった。

 

「い、今は任務中でしょ!? 変なこと言わないでよ!」

 

「わ、悪いって!」

 

 カゲチヨは慌てて手を振る。

 

「そういう意味じゃなくてだな! 傍から見たらそう見えるかもってだけで──」

 

「そ、それでも変でしょ!」

 

 言いながらも、ヒサメの声は徐々に落ち着いていく。

 

 やがて小さく息を吐いた。

 

「……ごめん。叩いちゃって」

 

「気にすんな」

 

 軽く笑って返す。

 

 だが、どこかぎこちない空気が残る。

 

 その空気を振り払うように、カゲチヨは言った。

 

「とりあえず連絡だな」

 

 ヒサメも頷く。

 

「うん、カンナちゃんたちにも聞いてみるね」

 

 それぞれ通信を取る。

 

 カゲチヨはおやっさんへ。

 

『プルルルルッ──ガチャッ』

 

『どうしたカゲチヨ?』

 

 おやっさんの声。

 

「ああ、おやっさん。こっちはダメだ、何も見つかってねぇ」

 

『そうか……こっちもだ。カンナたちにも聞いてみてくれ』

 

「了解。そっちも気をつけろよ」

 

 通信を切る。

 

 ヒサメの方も同じ結果だった。

 

「ダメみたい。シディたちも見つかってないって」

 

「……そうか」

 

 完全に手詰まりだった。

 

 その日は一度撤収し、拠点を移した。

 

 そして翌日。

 

 再び探索が始まる。

 

 今度は二班。

 

 カゲチヨたちは四人で西側を担当。

 

 昨日とは違う区域へと入っていく。

 

「……なんか嫌な感じするな」

 

 カゲチヨがぼそりと呟く。

 

 ヒサメも頷いた。

 

「うん……なんか、空気が重い」

 

 見えない圧のようなものが、じわじわと広がっている。

 

 その時。

 

 通信が鳴った。

 

『おやっさん?』

 

 キリトからだった。

 

 霧の話。

 

 離れるなという指示。

 

 通話を終えたカゲチヨはすぐに言う。

 

「ヒサ」

 

「ん?」

 

「おやっさんからだ。霧が出るらしい」

 

 ヒサメの表情が引き締まる。

 

「……わかった。カンナちゃんたちにも伝える」

 

 カンナとフィーアの元へ向かう。

 

「カンナちゃん、フィーアちゃん!」

 

「はーい!」

 

「どうしました?」

 

 事情を伝えると、二人も真剣な顔になる。

 

 そして──

 

 来た。

 

 白い霧が、足元から広がっていく。

 

「……マジかよ」

 

 一気に濃くなる。

 

 視界が奪われていく。

 

 カゲチヨはすぐに叫んだ。

 

「ヒサ! いるか!」

 

「いるよ!」

 

「カンナちゃん!」

 

「ここだよぉ!」

 

「フィーア!」

 

「こちらにいます!」

 

 全員無事。

 

 カゲチヨは安堵の息を吐いた。

 

「いいか、絶対に離れるな」

 

 全員が頷く。

 

 四人は距離を詰める。

 

 霧の中を進む。

 

 視界はほぼゼロ。

 

 音も吸われる。

 

 異様な静けさ。

 

 その中で。

 

 カゲチヨは違和感を覚えた。

 

(……何かいる)

 

 確実に“気配”がある。

 

 だが見えない。

 

 その時。

 

 霧の奥に、影が揺れた。

 

「……っ!」

 

 カゲチヨは一歩前に出る。

 

 目を凝らす。

 

 人影。

 

 ゆっくりと近づいてくる。

 

「おいっ!!」

 

 声を張り上げる。

 

「お前は誰だ! この霧、お前の仕業か!?」

 

 影が止まる。

 

 静寂。

 

 そして──

 

「……カゲチヨか?」

 

 聞き覚えのある声。

 

 カゲチヨの目が見開かれる。

 

「……その声……」

 

 一歩、踏み出す。

 

「お前……まさか……」

 

 霧の向こうの影が、はっきりと輪郭を持ち始める。

 

 カゲチヨside out

 

 キリトside

 

 霧は、確実に異質だった。

 

 ただ視界を遮るだけのものではない。

 

 音も、気配も、距離感すら曖昧にする。

 

「……厄介じゃのう」

 

 ボティスが低く呟く。

 

「ただの霧じゃない。結界に近いな」

 

 シディも周囲を警戒している。

 

 キリトは九重を肩車したまま、ゆっくりと歩を進めていた。

 

「なあ、九重」

 

「はい」

 

「さっき言ってた霧……これと同じか?」

 

 九重はしばらく考えてから、静かに答える。

 

「……はい。とても、似ています」

 

 その言葉で確信に変わる。

 

(やっぱりか)

 

 キリトは目を細めた。

 

「全員、警戒上げろ。これは当たりだ」

 

 空気が一気に張り詰める。

 

 その時だった。

 

 霧の奥から──

 

「おいっ!!」

 

 声が響いた。

 

「お前は誰だ! この霧、お前の仕業か!?」

 

 キリトは一瞬、足を止める。

 

 そしてすぐに口を開いた。

 

「……カゲチヨか?」

 

 沈黙。

 

 数秒の間。

 

 やがて霧の向こうから返ってくる。

 

「……その声……おやっさんか?」

 

 わずかに緊張が緩む。

 

 キリトは小さく息を吐いた。

 

「無事か」

 

「こっちは全員いる!」

 

 霧の中、影が近づいてくる。

 

 やがて互いの姿がはっきりと見える距離まで来た。

 

 再会。

 

 だが──

 

 キリトの目は細められていた。

 

「……全員、いるな」

 

「そっちもな」

 

 短いやり取り。

 

 だがどこか硬い。

 

 カゲチヨが一歩前に出る。

 

「おやっさん、これどう思う?」

 

 キリトは答えず──

 

 カゲチヨの足元を見る。

 

 次に影。

 

 そして“気配”。

 

(……違和感)

 

 ほんの僅か。

 

 だが確実にある。

 

 キリトは静かに口を開いた。

 

「なあ、カゲチヨ」

 

「ん?」

 

「昨日、別れる前に俺が言ったこと……覚えてるか?」

 

 カゲチヨは即答する。

 

「そりゃ覚えてるに決まってるだろ」

 

 その答えに──

 

 ボティスの目が細くなる。

 

「……キリト」

 

 小さな声。

 

 警告だった。

 

 キリトは続ける。

 

「じゃあ言ってみろ」

 

 一拍。

 

 霧が、わずかに揺れる。

 

 カゲチヨは笑った。

 

「簡単だろ」

 

 そして──

 

「“気をつけろ”って言ってたよな」

 

 その瞬間。

 

 キリトの目が鋭く光る。

 

「……違うな」

 

 空気が凍る。

 

 カゲチヨの笑みが、わずかに歪む。

 

「は?」

 

 キリトは一歩前に出た。

 

「俺はそんな曖昧な言い方はしない」

 

 低い声。

 

 確信を持った声音。

 

「“離れるな”って言ったはずだ」

 

 沈黙。

 

 次の瞬間──

 

 霧が、大きくうねった。

 

 ◆カゲチヨside

 

(……は?)

 

 一瞬、思考が止まる。

 

 次の瞬間。

 

 ゾワッ、と背筋が粟立った。

 

「……っ!!」

 

 後ろを振り向く。

 

 ヒサメがいる。

 

 カンナも、フィーアもいる。

 

 ──いるはずだった。

 

「……なんだよ、これ」

 

 違和感。

 

 いや、ズレ。

 

 さっきまで“普通にいた”はずの三人。

 

 なのに今は──

 

 妙に静かすぎる。

 

「ヒサ……?」

 

 呼びかける。

 

 返事がない。

 

 ゆっくりと振り返るヒサメ。

 

 その顔は──

 

 笑っていた。

 

「ねえ、カゲチヨ」

 

 いつもの声。

 

 なのに、何かが違う。

 

「どうして疑うの?」

 

 ゾクリとした。

 

 本能が叫ぶ。

 

 ──違う。

 

 カゲチヨは一歩下がる。

 

「……お前、誰だ」

 

 その瞬間。

 

 “ヒサメだったもの”の顔が崩れた。

 

 ぐにゃりと歪む。

 

 霧と同じように。

 

 カンナも、フィーアも。

 

 形を保てなくなっていく。

 

「……っ、幻覚かよ!!」

 

 叫ぶ。

 

 同時に地面を蹴る。

 

 距離を取る。

 

 だが遅い。

 

 霧が一気に濃くなる。

 

 視界が完全に潰れる。

 

(クソッ……!)

 

 その時。

 

 遠くから声が届いた。

 

「カゲチヨ!!」

 

 おやっさんの声。

 

 はっきりと。

 

 迷いなく。

 

「そっちにいるのは偽物だ!!」

 

 その一言で、全てが繋がる。

 

(やっぱりか……!)

 

 カゲチヨは歯を食いしばる。

 

「上等だよ……!」

 

 拳を握る。

 

 視界ゼロ。

 

 敵は不明。

 

 だが──

 

 恐怖はない。

 

「本物、ぶっ倒してやる」

 

 霧の中。

 

 戦いが、始まる。

 

 キリトside out

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