混血のカレコレとLost evolution 作:Ks5118
カゲチヨside
冬の冷たい風がカレコレ屋の扉を抜け、雪の匂いが混ざった空気が店内に流れ込む。カゲチヨは手袋をはめ直し、今日の段取りを頭に描きながら、ソリの準備とロードボトルのチェックを済ませていた。外は雪がちらつき、街の屋根や路地が淡く白く染まっている。冬の光は澄んでいて、雪の結晶が煌めいていた。
「プレゼント配りを手伝ってほしい……ですか?」
ヒサの声が少し震えた。カゲチヨは軽く肩をすくめ、落ち着いた声で答える。
「そうじゃ。異宙と融合してからは、人間の子供だけでなく異宙の子供たちにも渡さねばならん。ワシ一人では回れんのじゃ」
ヒサの目が大きく見開かれる。異宙の子供たち……。だがカゲチヨは淡々と準備を進める。
彼は携帯電話を取り出す。おやっさんに連絡するためだ。
『どうしたカゲチヨ? まだカレコレ屋の時間だろ?』
「そうっすね。実は今、家にサンタが居まして……」
電話口の向こうでおやっさんは息を飲む音が聞こえる。次の瞬間、電話越しにごろごろと転げ落ちる音がした。椅子から床に転がったらしい。
『え、え、ええぇ──っ!? サンタが、家に!?』
カゲチヨは淡々と状況を説明する。
「異宙の子供たちにも渡さねばならんので、手伝ってもらえませんか、と……」
『は、ははは、なるほど……わ、わかった。すぐ行く。落ち着くまで少し待て』
電話を切った後、カゲチヨはヒサに向き直る。
「今、お知り合いの方に連絡したので、少し待っていてくれ」
ヒサは小さくうなずき、少しほっとしたような表情を見せた。
数分後、店の扉が大きく開き、おやっさんが到着する。転げ落ちた直後の赤い顔のまま、息を整えつつ淡々と手伝いの準備をしていた。カゲチヨは心の中で「このあと装甲するのだろう」と理解していた。
ソリの準備を整え、カゲチヨは空を見上げる。雪はまだちらつき、街灯に照らされキラキラと輝く。手にはロストスチームガンとガルーダロードボトル。振りかざし、ロードボトルを起動する。
『Ga.Ga.Garuda〜! Garuda〜! Ignition!』
空気を切る風の中で、プレゼントの袋を抱え、カゲチヨとクリスは世界中の子供たちに向かって飛び立った。クリスは翼を羽ばたかせ、ガウガウと鳴きながら進行を確認している。喋れなくても、意思は十分に伝わる。
雪の街を見下ろすと、屋根や通りが白く覆われ、小さな子供たちの影がちらちら見える。異宙の空間に入ると、そこは別世界だ。浮遊する小島、光る植物、様々な姿の子供たち。カゲチヨは慎重に距離を取りながらプレゼントを配っていく。
「よし、この区域から回ろう」
クリスは小さくガウと鳴き、空中でサポートする。子供たちに笑顔を向けるたび、カゲチヨの胸が温かくなる。
途中、雪で滑って転びそうになる小さな異宙の子供がいた。カゲチヨは即座に手を伸ばして支える。子供は小さく頷き、クリスは後ろから守るように身を低くし、ガウガウと鳴く。言葉はなくても、安心感は伝わった。
シディとヨーメイ、カンナとフィーアもそれぞれの区域を回り、無線で進行状況を確認する。
「カゲチヨ、順調か?」
無線越しにおやっさんの声。
『順調だ。だが異宙の子供は予想以上に活発だ。油断はできん』
カゲチヨは軽く頷き、次の家へ向かう。雪と光のコントラストが目に眩しく、遠くで子供たちの笑い声が聞こえるたび胸が温かくなる。
ある浮遊島の小屋の前、クリスが前脚を高く上げて止まる。屋根の一部が崩れかけ、子供が中で遊んでいる。カゲチヨはソリを慎重に停め、クリスと支えながらプレゼントを手渡す。
子供は目を輝かせ、笑顔を見せる。クリスもガウッと短く鳴き、まるで拍手のようだ。カゲチヨも微笑む。言葉はなくても、喜びは伝わる。
全ての配布を終え、カレコレ屋へ戻ると、部屋の奥に誰も触れていないプレゼント箱が置かれていた。
「これって、サンタが置いてくれたのか?」
ヒサは小さく笑う。
「気になるなら開けちゃおうよっ!」
箱を開けると、名前が書かれたプレゼントがぎっしり詰まっていた。カゲチヨの目に留まったのは、幻獣のロードボトルが11本入った箱。思わず膝をつく。
「いやっ! 何でサンタがロードボトルなんか持ってるんだ! しかも俺が持っていないやつばっかり!」
ヒサはクスッと笑う。
「カゲ、これ……」
小さな手作りの箱を差し出す。中には小さなストラップが入っていた。カゲチヨは息を飲む。温かい気持ちが胸を満たす。
「ありがとう、ヒサ……」
「フフッ、気に入ってくれるかなって思っただけです」
ヒサだけが呼ぶ「カゲ」という名前が、静かに胸に響く。クリスは横でガウッと鳴き、目を細めて喜びを表現する。言葉はなくても、互いの心は通じていた。
カゲチヨは夜の雪景色を見渡す。おやっさんは既に店の外で見えなくなったあと、静かに装甲し、自身の戦闘装備を整えている。遠くから街の灯りを眺めるその姿を想像しながら、カゲチヨは今日の仕事を胸に刻んだ。
今日の夜は、子供たち、クリス、ヒサ、そしておやっさんの努力が一つになった、忘れられないクリスマスになったのだ。
カゲチヨside out
キリトside
雪が静かに降る夜、街は薄く白く覆われ、灯りが淡く揺れる。カラコレ屋の扉を押し開けた瞬間、キリトは冷たい空気を吸い込み、手にしたプレゼント袋を確認した。
「さて……今日のルートはこれで大丈夫だな」
カゲチヨ、ヒサメ、シディ、ヨーメイ、カンナ、フィーアと班分けしたあと、それぞれの区域に散らばる。キリトは自分の担当区域に集中するため、周囲の動きを頭に入れつつ、ソリとガルーダロードボトルを準備した。
「カゲチヨ、ヒサメ、よし……あとは頼む」
キリトは軽く頷き、ロードボトルを振る。ロストスチームガンに装填し、引き金を引く。
『Ga.Ga.Garuda〜! Garuda〜! Ignition!』
轟音とともに空気を切り、キリトは夜空へと舞い上がる。雪の結晶が灯りに反射し、キラキラと輝く。地上には子供たちの小さな影がちらちら見え、遠くで笑い声が響く。
「まずはこの家から……」
屋根の上に慎重に降り立つ。手に持った袋を置き、窓越しに見える子供たちに目配せする。小さな異形の子供たちもちらほらおり、活発に動き回っている。キリトは袋を落とさぬよう慎重に操作し、子供の手にそっと届ける。
クリスは翼を広げ、隣でガウガウと鳴きながら進行を見守る。喋れないが意思は十分に伝わる。子供たちの笑顔を見た瞬間、キリトの胸は温かくなる。
浮遊する異宙の小島に着地すると、地形はより複雑になる。小さな岩や光る植物、奇妙な建物が点在し、子供たちは活発に動き回る。キリトはソリを低く飛ばし、ロストスチームガンで安全距離を確保しつつ、袋を慎重に投下する。
一人の子供が崖の端で遊んでいる。キリトは瞬時に判断し、優しく手を伸ばして安全な場所へ誘導する。子供は小さく頷き、笑顔を返す。クリスは隣でガウッと鳴き、喜びを表現する。
無線越しに各班の声が聞こえる。
「カゲチヨ、順調か?」
「順調だ。異宙の子供は活発だが、今のところ問題なし」
「シディ、ヨーメイ、カンナ、フィーアは?」
「問題なし、順調」
キリトは軽く頷き、再び空を見上げる。雪の夜空は幻想的で、街灯や雪の反射で光と影が混ざる。地上では灯りが揺れ、遠くで子供たちの笑い声が響く。
配布を終えた後、カラコレ屋に戻ると、誰も触れていないプレゼント箱が置かれていた。名前を確認すると、それぞれの班のメンバーの名前が書かれている。
「……これ、全部か?」
キリトは膝をつき、中を開ける。幻獣のロードボトルが11本、名前付きでぎっしり詰められていた。思わず言葉を失う。
「……すごいな、カゲチヨ、ヒサメ、シディ、ヨーメイ、カンナ、フィーア……全員頑張ったな」
ヒサメは笑顔で小さな手作りの箱を差し出す。キリトは受け取り、目を細める。
クリスは隣でガウッと鳴き、喜びを表現する。言葉はなくとも、互いの気持ちは十分に伝わる。
「……やっぱり、やってよかった」
夜の雪景色の中、キリトは胸を温かくしながら、今日のクリスマスが忘れられない一日になることを確信した。
キリトside out