混血のカレコレとLost evolution   作:Ks5118

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最終話 旅立ちと別れ〈修正版〉

 朝の光が窓の外から差し込み、カーテンの隙間を通して薄い線が床に落ちていた。寝室の中はまだ静かで、空気はひんやりとしている。布団の中で目を閉じたまま、俺は深く息を吸い込み、吐き出した。だが、心は落ち着かず、まるで荒れた海に浮かぶ小舟のように揺れていた。

 

 [この世界に居続ければ、またブラッド族やライダーシステムを持つ奴らが、ここに来てしまうかもしれない……]

 

 思い浮かべただけで胸が重くなる。俺がいることで、平和であってほしい彼女たちの生活を脅かす可能性がある。それなら、俺は──いや、俺たちはどうするべきなのか。答えは簡単だ。俺がここに居なければ、彼女たちは危険に晒されることもない。だが、そんな決断を下すことは、決して容易ではなかった。

 

 そのとき、寝室のドアの向こうから明るい声が響いた。

 

「お父さぁーん、朝だよぉ〜!」

 

「早く起きろぉ〜!」

 

 まるで嵐のような勢いで呼ぶヒサメたちに、俺は仕方なく布団を跳ね退け、体を起こした。体がまだ寝ぼけて重く、思うように動かないが、やがて足を床に下ろし、伸びをすると少しずつ目が覚めていく。

 

「はいはい……わかった、起きるって」

 

 そう返事をすると、彼女たちは嬉しそうに笑った。声には無邪気さがあり、朝の眠気も少しずつ吹き飛んでいく。俺は深呼吸を一つして、気持ちを落ち着ける。今日もまた、いつもと同じ日常が始まる──それでいて、心の奥底ではその日常が永遠ではないことを知っていた。

 

 リビングに向かうと、ヒサメたちは朝食の準備に忙しく動き回っていた。小さな手でパンを切り、ジュースを注ぎ、テーブルにきちんと並べる。漂ってくる香ばしい匂いと、朝の柔らかな光の中で動く彼女たちの姿を見て、俺の胸は不思議な感覚でいっぱいになった。温かく、そして切なくもある。

 

 [あぁ……行きたくないなぁ……]

 

 心の中でため息をつく。しかし、決意は揺るがない。もし俺がここに居続ければ、ヒサメたちや仲間たちに再び危険が訪れるだろう。それならば、俺は──この世界から去るしかない。

 

 ヒサメが俺の顔を覗き込んで、にこりと笑った。

 

「ねぇ、早く食べよぉ!」

 

「あ、あぁ……そうだな、食べよう」

 

 その声に促されるように、俺はテーブルについた。ヒサメたちはいつも通りの笑顔で、朝の小さな会話を交わしながら食事を楽しんでいる。その光景を見ていると、胸の奥がじんわり熱くなる。しかし、心の奥底では、決断を下さなければならないこともわかっていた。

 

 食事を終え、ヒサメたちは学校へと出かけていった。玄関先で手を振る彼女たちの姿を見送りながら、俺は深く息をついた。日常の中にある小さな幸福──その一つ一つを、今この瞬間に噛み締める。しかし、残された時間は少ない。

 

 俺は下にある喫茶店に向かい、閉店の準備を始める。長年ここで働き、店を育ててきた思い入れは深い。しかし、この世界から去る以上、店を残すことは重荷になる。カウンターを拭き、椅子を整え、窓から差し込む光を眺めながら、俺は胸の中で何度も言い聞かせた。

 

 [ここに留まれば、仲間たちはまた危険に晒される……なら、俺は離れるしかない]

 

 準備を終えた後、オーナーに連絡を入れる。今週中に店を閉めることを伝えると、電話越しに少し寂しそうな声が返ってきた。

 

『そうか……やはり親しい者と離れるのは、悲しいな』

 

「えぇ……そうですね」

 

 その声に、胸の奥がきゅっと締め付けられる。だが、決意は変わらない。俺はこの世界を去らなければならない──自分の力で守れないなら、離れることで守るしかないのだ。

 

 その後、ボティスのもとへ向かう。契約破棄の方法を聞こうと考えたが、いつも通りの冷静な声が迎えてくれる。

 

「何を馬鹿な事を聞いておるのだお主? ワシは、お主との契約を破棄などする気はないぞ」

 

「は? いや、お前話聞いていたのか? 俺はこの世界から居なくなるんだぞ⁈」

 

「それは分かっておる。じゃが、いつか戻って来るのであろう?」

 

「……それは」

 

「なぁーに、別れたとてお主との契約は続けておく。それに、同じことも気に入っておるしな」

 

「悪魔のお前が?」

 

「なんじゃ? 不思議か?」

 

 ボティスは笑いながら、俺を見つめる。その瞳には、いつもの冗談めいた色ではなく、どこか温かみがあった。俺はふと、ここでも自分は勝てないと思った。人の中で変化を起こすことができる者、それが俺の隣にいるのだと。

 

 [やっぱ、勝てないな]

 

 悩むのをやめ、これからの行動を考えることにした。

 

「よしっ! 取りあえず、カゲチヨたちが帰って来た時に話すか」

 

「何をじゃ?」

 

「それは……カゲチヨたちが帰って来てからのお・た・の・し・みってやつだ!」

 

 窓の外の光が差し込む中、俺は心の中で覚悟を固める。出発の日まで、まだ時間はある。その間に、できることはできるだけやろう──そう自分に言い聞かせ、日常の一つ一つを大切にすることにした。

 

 店の外に降り注ぐ日差しは、柔らかくも容赦なく照りつける。俺は深く息を吸い、喫茶店のドアノブに手をかけた。ここに残すものすべてが、今の俺にとっては、愛おしいものでもあり、重荷でもあった。

 

 店の奥にある階段を上がると、そこにはいつものボティスが、椅子に腰かけて足を組み、こちらを見ていた。

 

「お主、また来たのか」

 

「……あぁ」

 

 俺の声は少し震えていた。目の前の悪魔は、今日も変わらぬ余裕を持って笑っている。しかし、その笑みの奥には、何か深い感情が潜んでいるのがわかる。俺は覚悟を決め、口を開いた。

 

「俺、この世界から離れることに決めた」

 

 ボティスは一瞬だけ目を細めた。まるで俺の言葉を確認するかのように。

 

「ふむ……分かっておる。それで、契約を破棄しようと考えておるのか?」

 

「いや、違う。契約は続けたい。でも、俺が居ると、ヒサメやカンナたちに危険が及ぶ。だから俺は──」

 

 言葉が途切れた。正確には、自分の口から最後まで言う勇気が出なかった。胸の奥で、何かが押し潰されそうになるのを感じた。

 

 ボティスは立ち上がり、俺の前に歩み寄る。その存在感は圧倒的で、だがその目には、いつもの冷徹さはなく、どこか温かみがある。

 

「お主は、彼女たちを守りたいのじゃな」

 

「……あぁ」

 

「ふむ、ならば契約は破棄などせぬ方が良い。お主の意志と力は、互いに支え合うものじゃ。ワシは、変わったのだ。お主との時間を経て、人の心にも届く力があることを知った。いや、お主は人ではないが、同等の力を持つ存在と認めておる」

 

 その言葉を聞いたとき、俺は少しだけ笑みを浮かべた。いや、正確には笑おうとした。だが、その胸の奥は、まだ重かった。俺がここを去ることによって、失うものの大きさを思えば、笑顔は自然と消えていく。

 

「ボティス……俺は……」

 

 言葉が途切れ、沈黙が二人の間に流れる。外から聞こえる風の音と、遠くで鳴く鳥の声だけが、静かに響いていた。そのとき、店のドアが開き、オーナーが入ってきた。表情には不安が浮かび、そして怒りにも似た感情が混ざっていた。

 

「キリト、どういうことだ! お前、この世界から去るのか?」

 

 俺は深く息をつき、静かに頷いた。

 

「……そうだ、暫く離れる」

 

「暫く? 暫くじゃないだろう、出て行くんだろう?」

 

「いや、永遠じゃない。必ず帰ってくる」

 

 その言葉に、オーナーは一瞬戸惑った表情を見せる。そして、カゲチヨやヒサメたち、シディ、カンナ、フィーアも店に集まり、俺の方を見ていた。彼女たちの表情は驚きと不安で満ちていたが、同時に信頼の色も浮かんでいる。

 

「俺がここにいると、危険が訪れることもある。だから、俺は行く」

 

 説明を続けながら、俺は彼女たちに自分の決意を理解してもらおうと努めた。ヒサメたちは顔を伏せ、涙をこらえている様子だった。カンナは小さく頷き、シディは腕を組んで黙ったまま。しかし、オーナーは怒りを抑えながらも、言葉を選んでいた。

 

「キリト……必ず帰ってくるんだな?」

 

「……あぁ、必ず」

 

 その言葉に、オーナーは微かに笑みを浮かべ、安心したかのように肩の力を抜いた。ボティスも同様に、軽く笑みを見せる。彼の冷静な目の奥に見えたのは、信頼と少しの寂しさだった。

 

「ならば、私たちは何も言わん」

 

「ワシもじゃ。お主が帰って来るまで、ヒサメたちのことも、クリスたちのことも任せておけ」

 

 俺は深く頭を下げる。そして、カゲチヨたちにも一言ずつ声をかけた。

 

「お父さん、必ず帰って来てね」

 

「アーシたちはずっと待っているから」

 

「身体には気をつけてください」

 

 その声を聞きながら、胸が締め付けられる。俺は彼女たちを安心させるために、力強く頷いた。

 

「心配するな。必ず戻る」

 

 そして、俺は目を閉じ、深く息をついた。旅立ちの準備は整った──心の中での葛藤は消えずとも、覚悟は固まったのだ。

 

 店内の空気はしばし静まり返る。外の風は優しく吹き込み、カーテンを揺らす。その光景を見ながら、俺は改めて、この場所、この仲間、この日常の尊さを感じた。

 

 [やっぱり、離れたくない──だが、俺が行かなければならない]

 

 そう思いながらも、俺の心は少しずつ落ち着きを取り戻す。これからの旅は長く険しいだろう。しかし、この仲間たちの思いを胸に、俺は必ず戻ると心に誓った。

 

 外では、ヒサメたちが静かに手を振り、カゲチヨたちは少し恥ずかしそうに笑みを浮かべていた。オーナーは肩を叩き、ボティスはいつもの冷静さを取り戻しながらも、俺の旅立ちを見守っていた。

 

 この日、俺の心は大きく揺れた。しかし、それは恐怖や不安だけではなく、仲間への愛情と、守るべきものの大きさを知ることでもあった。俺は深く息をつき、もう一度仲間たちの顔を見渡す。これが最後の、旅立ち前の朝だ。

 

 そして、俺は静かに決意を胸に、第一歩を踏み出す準備を整えた。

 

 朝の陽光が、広大な草原を金色に染めていた。草はまだ夜露に濡れ、踏むたびに冷たく柔らかく、足裏にひんやりとした感触を伝える。遠くの山並みと青空が視界を満たし、穏やかな風が髪や服をそっと揺らす。鳥たちのさえずりが小さく響き、草原に静かな目覚めを告げていた。しかし、その静寂とは裏腹に、俺の胸はざわついていた。今日、ここから仲間たちの元を離れ、未知なる危険へ立ち向かうための旅立ちを決めなければならないのだ。

 

 腰に巻かれたロストエボルドライバーの冷たさが手に伝わる。手元のロストパンドラパネル〈黒〉は微かに振動し、まるで今まさに俺の覚悟を待っているかのように光を放っていた。深呼吸をひとつ。胸の奥で決意が渦巻く。

 

 [行くしかない──俺が動かなければ、みんなが危険に晒される]

 

 手に握ったのは、変身に不可欠なロストロードボトル四本──ヒュドラ、ドレイク、フェンリル、デビル。これらはただのアイテムではない。俺の変身を支え、力を引き出す、核心そのものだ。振動するボトルの光を見つめ、胸に熱い思いを巡らせる。

 

 俺はパネル〈黒〉を握りしめ、ゆっくりと胸に押し付けた。その瞬間、体中に微細な振動が広がり、胸の奥底から力が呼び起こされる感覚。腕や脚、背中、全身の筋肉が熱を帯び、血管を通じて全身に電流が流れる。

 

 そして、手に握ったラグナロクトリガーをドライバーに装着する。重厚な感触とともに、機械と体の同期が始まる。ドライバーのスイッチを押すと、全身に電流が流れ、筋肉と神経が研ぎ澄まされる。

 

『Hydra!』

 

 左手のライダーロードボトルを高く掲げ、力を込める。全身の神経が覚醒し、体の隅々まで意識が届く感覚。

 

『Ryder System!』

 

 光が体を包み込み、視界の端から端まで光の奔流が走る。風景は一瞬水のように揺らぎ、体の中の感覚が研ぎ澄まされる。呼吸と心拍が変化し、胸の奥に決意の熱が渦巻く。

 

 そして、胸に押し付けたロストパンドラパネル〈黒〉を強く押し込み、ラグナロクトリガーのレバーを回す。ドライバーから重厚な音が響き渡る。

 

『Lost Evolution!』

 

 体が宙に浮く感覚が襲い、視界が白と金の光に満たされる。心の奥から力が湧き上がり、胸の奥の決意と守りたい仲間たちへの思いが全身を駆け巡る。

 

 そして、変身の最高潮に達すると、ドライバーから次の音声が響いた。

 

『Over Over the Ragnarok Evolution!』

 

『♪ 〜〜〜♪ 〜〜〜♪』

 

『Ready GO!』

 

『Fever Flow!』

 

 全身を包む光の奔流。視界が揺れ、時間の感覚が歪む。変身が完了し、怪人態の姿が草原に立つ。胸の奥で、仲間たちと必ず再会する決意がさらに固まる。

 

 次に、もう一枚のロストパンドラパネル〈白〉を取り出す。カゲチヨたちがいない方に掲げると、胸から伸びる光がパネルに吸い込まれ、白と黒が混ざったワームホールが草原の上に現れた。空間がねじれ、風景が渦を巻く。

 

 その瞬間、変身に不可欠なロストロードボトル──ヒュドラ、ドレイク、フェンリル、デビル──が意思を持ったかのように空中を舞い、最も適合性の高い者──カゲチヨ、シディ、オーナー、ボティス──の元へ自ら飛んでいった。

 

「うおっ!」

 

「ぬっ!」

 

「なにっ!」

 

「どう言う事じゃ!」

 

 驚きと戸惑いが、それぞれの顔に浮かぶ。俺は慌ててボトルを追おうとワームホールへ踏み込む。しかし、怪人態のままではワームホールの外へ出ることはできず、ボトルを追うことは不可能だった。体は空間の歪みに引かれ、重力に抗えず鈍く宙を漂う。

 

 [くそっ……! 追えない……だが必ず帰る、お前たちもボトルに飲まれるなっ! ]

 

 後ろを振り返らず、胸に刻まれた仲間たちの声に思いを馳せる。

 

「お父さん! 必ず帰って来てね!」

 

「アーシたちはずっと待っているから!」

 

「出来るだけ早く帰って来て下さい!」

 

 胸に刻み、黒いワームホールへ踏み込む。空間は光の渦に満たされ、視界はねじれ、風景が流れるように変化する。全身に緊張と覚悟がみなぎる。胸の奥で、仲間たちとの再会を誓い、足を踏み出す。

 

 気づくと目の前には、見覚えのある部屋──転生時に初めて訪れた時の、時空の狭間の部屋──が広がっていた。胸にわずかな安堵が広がる。

 

「お久しぶりですね、キリトさん」

 

 背後から澄んだ声が響く。振り返るとヤハウェが立っていた。柔らかく、しかし力強い視線が俺を押す。

 

「何年振りですかね、久しぶりです」

 

「えぇ、先ほども言いましたが、お久しぶりです」

 

 互いに挨拶を交わし、俺は尋ねた。

 

「なぜ、俺がここに?」

 

 ヤハウェは微笑み、落ち着いた声で説明する。

 

「ここは、貴方様が初めて来た部屋と同じ、時空の狭間です。貴方様の力とロストパンドラパネルの力により、時空の穴が開きました。そのため、この場所に繋がったのです」

 

「それじゃあ、ボトルが飛んだのは……」

 

「貴方様の持っていた四本のロストロードボトルは、意思とは無関係に、最も適合性の高い者へ飛んでいきました。近くにいた対象者の中で適合性が最も高い者──カゲチヨ、シディ、オーナー、ボティス──に吸い寄せられたのです」

 

 俺は頷き、胸の奥の不安を少しだけ鎮める。

 

「ボトルに飲まれることはありません。そして、貴方様にはこれから別の世界で過ごしてもらいます」

 

「別の世界……?」

 

「はい、○○○○○○の世界です」

 

 世界の名前を聞いたキリトは、顔を手で覆いながら心の中でつぶやく。

 

 [なんでよりによってその世界なんだよ……]

 

 それからヤハウェは柔らかく微笑む。

 

「しばらくはこちらの世界で暮らすことになります。それにより、貴方様は元の世界に安全に戻れるのです」

 

 深く息をつき、覚悟を胸に新たな世界での生活に向かう。胸の奥で、仲間たちと必ず再会することを誓い、俺の新たな旅立ちは静かに幕を開けた。




 ハイッ! お疲れ様でしたぁ! いやぁ、約半年間投稿して来ましたが、何とか完結させる事が出来ました。それでは、また違う世界を生きる仮面ライダーロストをお待ちください。
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