混血のカレコレとLost evolution   作:Ks5118

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No.3 少女達の救出と初の子育て〈修正版〉

 キリトは、例の施設から保護した三人の少女を連れてリサイクルショップへ向かっていた。両腕に一人ずつ、背中に一人を背負いながら、森の中の細い道をゆっくりと進んでいく。夜明け前の森はまだ薄暗く、木々の隙間から差し込む月明かりが道を淡く照らしていた。すると背中から、かすかな動きを感じる。

 

「……ん……」

 

 どうやら背負っている少女が目を覚ましたらしい。キリトは歩調を崩さないまま少しだけ後ろに意識を向ける。

 

 [確か戦麟とか言う子だったよな……? ]

 

 施設で聞いた名前を思い出しながら歩いていると、少女──戦麟が小さな声で話しかけてきた。

 

「……貴方は、誰ですか?」

 

 警戒と困惑が混じった声だった。無理もない。彼女達からすれば、突然現れた男に連れ出され、気が付けば森の中を運ばれているのだから。

 

 キリトは少し考え、そして答えた。

 

「俺か? 俺はお前達を化け物に変えた奴でもあり、あの施設から逃した奴でもある」

 

 その言葉を聞き、戦麟は少し黙り込んだ。しばらくしてから、再び口を開く。

 

「……何故、私達を化け物にしたのですか?」

 

 キリトは前を向いたまま、淡々と答える。

 

「あのままだったら、お前達を助ける事が出来なかった。それに、あの姿ならちょっとやそっとじゃ傷付かない。それと、あの連中に“死んだ”と思わせる必要もあった」

 

 施設の研究者達は、彼女達を“兵器”として扱っていた。もし普通の姿のまま連れ出していれば、すぐに追跡されていただろう。だからこそ、キリトは彼女達の姿を変え、完全に死亡したと思わせる演出までしたのだ。

 

 戦麟はその説明を聞き、静かに考え込む。そして小さく頷いた。

 

「成程……分かりました」

 

 その後、彼女はさらに尋ねる。

 

「では、貴方の名前を教えて下さい」

 

 キリトは小さく笑った。

 

「それは他の二人が起きてからだ。ほら、着くまでまだ時間が掛かる。もう少し寝てろ」

 

 その言葉を聞くと、戦麟の体から力が抜けた。どうやら限界まで疲れていたらしい。再びキリトの背中で静かな寝息を立て始めた。

 

 キリトは歩調を崩さないよう注意しながら、彼女を起こさないよう静かに歩き続けた。

 

 やがて森を抜け、小さな町の外れへと出る。そしてその一角にある古びた建物の前で立ち止まった。

 

 目的地──リサイクルショップだ。

 

 キリトが扉を開けると、店の奥から足音が聞こえた。すぐに一人の男が顔を出す。

 

「お帰り。ようやく戻って来たか」

 

 この店のオーナーだった。

 

「どうやら上手く行ったみたいだな。それより……」

 

 彼はキリトの腕と背中を見て目を丸くする。

 

「お前が抱えているその少女達は一体誰なんだ?」

 

 キリトは店のソファへ三人を丁寧に寝かせながら答えた。

 

「あの施設を襲撃した時に見つけた子供達だ。生体兵器にされていたらしい。でも心は普通の少女だから安心してくれ。それにコイツらは悪い奴らじゃない」

 

 そして少しだけ視線を落とす。

 

「……だが、コイツら以外は救えなかった。だから、せめてこの三人だけでも普通の生活を送れる様にしたい」

 

 オーナーは腕を組んで唸った。

 

「襲撃とは穏やかじゃないな……」

 

 そしてキリトをじっと見る。

 

「それにお前、子育てした事あるのか?」

 

「無いけど、少しは手伝ってくれよ」

 

 キリトは軽く言った。

 

 オーナーは肩をすくめる。

 

「まぁ、金は有るからな、お前は」

 

 そんな会話をしていると、ソファで眠っていた戦麟が目を覚ました。ゆっくりと体を起こし、周囲を見渡す。

 

 そして静かに言った。

 

「……私は、普通の生活より戦う力が欲しいです」

 

 その言葉に、オーナーが眉を上げた。

 

「戦う力とは穏やかじゃないな」

 

 キリトも不思議そうに聞き返す。

 

「それにお前達はもう自由なんだぞ。なのに何で戦う力が欲しいんだ?」

 

 戦麟は視線を落としながら答えた。

 

「確かに私達は自由になりました。ですが、またあの施設に連れて行かれるかもしれません。なので、その為の自衛の手段が欲しいのです」

 

 彼女は静かに続ける。

 

「それに私達は異宙の力がありますから、もう普通には戻れません。そして私は……私達みたいな存在をもう増やしたくないのです」

 

 キリトとオーナーは顔を見合わせた。

 

「増やしたくない、ね」

 

 オーナーが言う。

 

「そういうのは大人に任せておけば良いだろ」

 

 キリトも続ける。

 

「それに自衛の手段なら異宙の力があるだろ?」

 

 しかし戦麟は首を横に振った。

 

「確かに有りますが、この異宙の力はあの組織には筒抜けです。ですから組織の知らない力が欲しいのです」

 

 そして小さく言う。

 

「それに、いざという時にはその力で彼女達を守りたいのです」

 

 キリトは少し考えた後、真剣な声で言った。

 

「俺の持つ力は一歩間違えればまたあの化け物になるし、最悪の場合消滅するんだぞ」

 

 オーナーが驚く。

 

「消滅って、そんな力を使っているのか?」

 

「この力は俺の中にある物だから、俺が使う分には大丈夫なんだよ。だが、お前達の場合はどうなるか分からない」

 

 それでも戦麟は諦めなかった。

 

「例え、その様になったとしても彼女達を守れるなら──」

 

 その瞬間だった。

 

 キリトは戦麟の両頬をむにっと摘まんだ。

 

「なぁに、ふざけた事を言っているんだ」

 

 戦麟は目を丸くする。

 

「いひなり、なんへすか? 〈いきなり、何ですか? 〉」

 

「そんな事言って、お前がいなくなったらこの子達はどうするんだ?」

 

「ひょれは、はなたたちがめんほうをみていははければ〈それは、貴方達が面倒を見て頂ければ〉」

 

「面倒は見てやるが、残されたこの子達は絶対に悲しむぞ」

 

 戦麟は何も言えなくなった。

 

 その後、彼女は奥の部屋へ行き、眠っている二人を起こしに向かった。

 

 しばらくして三人で戻って来る。

 

 しかし部屋に入った瞬間、氷電と炎海の目に映ったのは──

 

 知らない大人が戦麟の頬を摘まんでいる光景だった。

 

 青髪の少女──氷電が叫ぶ。

 

「フィーアちゃんをいじめるなぁっ!」

 

 バリバリバリッ!! 

 

 電撃がキリトに直撃した。

 

「あばばばばばばばっ!」

 

 さらに炎海が追撃する。

 

「くらえー!」

 

 ボォォッ!! 

 

「あちちちちちちっ!」

 

 オーナーと戦麟が慌てて止めに入る。

 

「ちょっ、やめたまえ!」

 

「ヒサメさん、やめて下さい!」

 

 ようやく攻撃が止まった。

 

 氷電と炎海は不思議そうに戦麟を見る。

 

「どうしてフィーアちゃん? 虐められてたんじゃないの?」

 

「そうだよ、どうしてあんな大人を庇うの?」

 

 戦麟は落ち着いた声で説明した。

 

「彼は私達を救ってくれた人です。それに先程の行為は、私を労っての事です」

 

 それを聞き、二人はようやく納得した。

 

 その後、キリト達は簡単に自己紹介をする事になった。

 

「俺の名前はキリトだ。またの名を仮面ライダーロスト。お前達を救った奴だよ」

 

「私はこのリサイクルショップをやっているオーナーだ。宜しく」

 

 三人の少女も名乗る。

 

「私はヒサメと言います。雪女とカンナカムイのハーフです」

 

「アーシはカンナ! 火車とリヴァイアサンのハーフだよ!」

 

「私はフィーアと言います。戦乙女と麒麟のハーフです」

 

 キリトは頷いた。

 

「ヒサメにカンナにフィーアか。良し覚えた」

 

 そして言う。

 

「とりあえずお前達は暫く俺と一緒に、この店の上にあるアパートで暮らしてもらう」

 

 こうして三人の新しい生活が始まった。

 

 その日はそのまま休み、翌朝。

 

 キリトは三人が起きない様に早く起きて朝食の準備を始めた。

 

 目玉焼き七個、ソーセージ三十本、サラダ、白米、味噌汁。

 

 普通の朝食だ。

 

 最初に起きて来たのはフィーアだった。

 

「……ご飯ですか?」

 

「そうだ。ヒサメとカンナ起こして顔洗って来い」

 

 フィーアは頷き、二人を起こしに行った。

 

 そのタイミングでチャイムが鳴り、オーナーが入って来る。

 

「お邪魔する。今日の朝食は何かな?」

 

「今日はシンプルに目玉焼きとソーセージ、サラダ、白米、味噌汁だ」

 

「コーヒーを貰おう」

 

 やがて三人も戻って来て席に着いた。

 

「いただきます」

 

 食事を始めた所でフィーアが言った。

 

「昨日の話ですが……私に貴方の力を下さい」

 

 ヒサメとカンナが驚く。

 

「どう言う事? フィーアちゃん」

 

「キリトさんの力を下さいって?」

 

 フィーアは説明する。

 

「あの施設に対抗する為です。彼の力が有れば戦えると思いました」

 

 しかしキリトは首を振った。

 

「だから言っただろ。俺の力は危険なんだ」

 

 それを聞いたヒサメとカンナは顔を青くし、次第に目に涙を浮かべた。

 

「そんな危ない力欲しがったの? フィーアちゃん……」

 

「そんなの使わなくていいよ……」

 

 二人は泣きながら言った。

 

「私達が居るじゃん……!」

 

「三人で頑張ればいいじゃん……!」

 

 フィーアは突然泣き出した二人を見て戸惑う。

 

「え……? どうして泣いているのですか……?」

 

 ヒサメは涙を拭きながら言う。

 

「だって……私達が寝ている間にそんな事を一人で決めてたなんて……」

 

 カンナも続ける。

 

「アーシ達にも相談してよ……三人仲間なんだから……」

 

 フィーアはアワアワと慌てた。

 

「そ、その……分かりました……。次からは相談しますから……泣かないで下さい……」

 

 二人はようやく落ち着いた。

 

 その様子を見ていたキリトが、目玉焼きを取ろうと皿を見る。

 

 しかし──

 

 既に無くなっていた。

 

「……目玉焼き誰食べた?」

 

「私は二個だ」

 

「私は一個です」

 

「アーシも一個」

 

 そしてヒサメが満面の笑みで言った。

 

「私は三個食べたよ。でもまだ食べたい!」

 

 それを聞いたキリトは心の中で思った。

 

(……食費、かなり高くなりそうだな)

 

 三人の少女と一人の男。

 

 そして少し世話焼きな店のオーナー。

 

 こうして、少し騒がしくも温かい新しい日常が始まろうとしていた。

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