混血のカレコレとLost evolution 作:Ks5118
カゲチヨside
おやっさんのおかげで店と資金を幾らか貰って[早速やるぞ! ]と意気込んだものの、ポッと出のペーペーにすぐ依頼が来る事は無く、あれから一週間が過ぎた。ネットや掲示板でも依頼を探して見るも地味なものが多く、パッとしないものが殆どだ。
「ぬわぁーっ! どうしたらいいんだよっ!」
俺がそんな事を言いながら悩んでいると
「五月蝿いぞ、カゲチヨ。何をそんなに悩んでいるのだ?」
「我らに手伝える事があれば、手伝おう」
「僕達は、友達だからね」
「キシャシャシャッシャシャ」[一人で悩まずに頼れよ]
そう話しかけて来たのは、この学校で仲良くなったアサヲ・チダイ・ルイ・マチャソの四人だ。俺は依頼が来ない事について相談した。
「確かに、せっかく始めたのに何も無いのは歯痒いな」
「だが、その間に自ら出来る事を再認識する時間だと思うのも良いと思うぞ」
「それに無理にやろうとして、余計に依頼が来なくなるかもしれないしね」
「キシャ、キシャシャシャシャ、キシャ」[とりあえず、パッとしなくとも依頼をやってみたら]
そう皆が教えてくれて、言う通りにしてみようと思い掲示板を調べてみると
「それで、見つけたのが異世界から来た勇者の討伐?」
そんな事を言ってくるヒサメや皆に、勇者の事を話すと
「あぁ、何でもそいつが来るまでその村にはサイクロプスが居てさ、そいつを討伐したのがコイツなんだとよ」
「話を聞く限りは良い奴だと思うのだが?」
「ここまでの話を聞いたらな。だがそいつが【聞け愚民共! あの巨獣サイクロプスを討ち倒したのは、この俺──槍の勇者モトヤスだ! 世界に選ばれし勇者である俺に従うのは当然だろう! だから俺の好きな様にさせろ!】とか言って来たんだと」
「勇者とは村の皆さんが仰ったんですか?」
「いや、自分から名乗ったらしい。それにそいつは村を守る為に派遣された騎士達を見て【この村は勇者である俺が守った聖域だ! よそ者の騎士など必要無い! 勇者の領域からさっさと出て行け!】とか言ったんだと。それにそいつ村の綺麗な女性を囲ってハーレムにしたんだと」
「うわー」
「きもっ」
「穢らわしい」
「まぁ、その反応になるよな。さらにそいつ派遣先の貴族を【この薄汚い貴族め! 世界に選ばれし勇者である俺が、その腐った支配を終わらせてやる!】とか言って邸宅に侵入したんだと。幸いその貴族は怪我一つ無く済んだんだと」
「よかったぁ。それでその貴族は、村での評判は?」
「かなり良いみたいだぜ。不作の時は税金を下げてくれるみたいだし、村のインフラを整えてくれてるみたいだし」
「そんな優しい貴族を倒そうとしたのですね」
「あぁ、しかもそいつ近々こっちに来るみたいだぞ。お前達に会いに」
「「「えっ!」」」
「そいつ、勇者になる前は都会で暮らしてたみたいでな、三美人の喫茶店の店員が居るって聞いてこっちに来るそうだ。それにその三美人の店員は無理矢理店主によって働かされてるとも聞いたそうだ」
(会話部分は原文と同じ流れ)
数日後
〈カランカラン〉
扉の開く音。
「いらっしゃいませ!」
店に入って来たのは、数日前に話した自称勇者だった。
「ここが三美人が居るという喫茶店か!」
「フッ……どうやらイベント発生の様だな」
「店長を出せっ!」
ヒサが応対する。
「あの、お客様? 店長に何か御用ですか?」
男は槍を掲げて名乗った。
「聞け!」
「俺の名は──槍の勇者モトヤス!」
「この店では三美人の乙女が無理矢理働かされていると聞いた!」
「だからこの勇者が救いに来てやったのだ!」
「さぁ乙女達よ! 恐れる事は無い!」
「勇者であるこの俺が来た以上、この“奴隷労働イベント”は終わりだ!」
「今すぐ逃げるんだ!」
「いえっ! そんな、困ります」
「遠慮するな!」
「勇者とは弱き者を救う存在だからな!」
俺は思った。
[おやっさんが帰って来る前に急いで片付けないと]
「お客様、お店のご迷惑になりますし店内に武器を持ち込まないで貰えませんか?」
すると勇者は俺を睨んだ。
「何だ貴様!」
「さてはこの店の店員だな!」
槍を構える。
「か弱き乙女達を無理矢理働かせるとは許せん!」
「その首──」
「勇者クエスト“悪徳店主討伐”として討ち取る!!」
次の瞬間。
槍が鋭く突き出された。
空気を裂く突き。
だが──
その槍が俺に届く事は無かった。
カゲチヨside out
桐斗side
店の食材が無くなってきたので、店の事をカゲチヨやヒサメ達に任せて買い出しから帰って来た所、店の方が騒がしくなっていた。気になった俺は店の中を見てみると、そこには槍を持った男がカゲチヨに襲い掛かろうとしていた。
俺は慌ててそれを止めながら、槍を持った男に聞いてみると
「お客様、これはどう言う事ですか?」
すると男は俺を睨みつけながら言った。
「誰だお前は! お前もこの俺を知らないのか?」
そう言いながら槍を掲げ、堂々と名乗った。
「俺は槍の勇者モトヤス!」
「この店で三美人の乙女が無理矢理働かされていると聞き、この勇者が救いに参ったのだ!」
そんな事をドヤ顔で言って来たのを聞いて、俺は頭が痛くなって来た。
「それで、お客様? 何故、店長を討つと少女達が救われるのですか?」
俺がそう聞いてみると
「決まっている!」
勇者は自信満々に言った。
「悪徳店主を討てば乙女達は自由になる!」
「そして勇者であるこの俺に感謝し仲間になる!」
「これは勇者イベントの定番展開だからな!」
帰って来たのは、予想通りの答えだった。
「そうですか」
俺はそう言ってから
「じゃあお前は客じゃなくて敵だ」
そう言いながら、軽く殺意を出した。
「へっ?」
勇者は間の抜けた声を出したが、俺は気にせずそいつを店の外へ蹴り飛ばした。
ドゴォッ!!
「ゲバフッ!?」
勇者の身体は勢いよく吹き飛び、店の外の地面へと転がった。
「いきなり何をするっ!?」
「この様な事をして許されるとでも思っているのか!」
そんな事を言って来たので俺は言った。
「何言ってんだお前? 先に手を出したのはお前だろ」
「俺は俺の店のバイト員と従業員を守っただけだが、何か問題があるのか?」
そう言うと勇者は怒りながら叫んだ。
「お前がこの店の店長かっ!」
「おのれぇ!」
槍を構える。
「今すぐ三美人の乙女を解放しろ!」
「さもなくば──」
「この槍の勇者モトヤスが、その首を討ち取る!!」
そして勇者は叫びながら突っ込んで来た。
「勇者スキル! 必殺の──」
だがその瞬間。
ガキィン!!
俺は槍の一撃を片手で受け止めた。
そのまま槍を軽く捻る。
梃子の原理で勇者の身体が宙に浮いた。
「なっ!?」
そして──
ドゴォォォン!!
腹へ全力の拳を叩き込んだ。
衝撃が空気を震わせる。
勇者の身体はそのまま地面へ叩きつけられた。
「ウゲボオォ!!」
勇者は苦しそうに呻いた。
「何で唯のモブがこんなに強いんだ!?」
そんな事を言って来たので俺は言った。
「さっきからモブって言ってるが、まだゲームの世界だと思っているのか?」
「ここは現実だ」
「そしてお前は唯の犯罪者だ」
「だからさっさと現実を受け止めて牢屋の中に入ってろ」
そう言うと勇者は呆然として固まった。
俺はその間に警察を呼び、回収してもらった。
その後、店に戻りお客様達に向かって言った。
「大変お騒がせしました。引き続きごゆるりとしていって下さい」
そう言って一礼すると
「よくやった店長!」
「スカッとしたわ!」
「ありがとなぁ!」
店の中から歓声が上がった。 その日の夜。
昼頃に俺の店を襲った槍の変人がいる監獄に着いた。
俺が何故こんな所に来た理由は──
「まずは正体を隠さないとな」
俺はそう言うと、ロストスチームガンを取り出した。
そこへヒュドラロードボトルを装填する。
カチリ、と音が鳴った。
そしてトリガーを引く。
『Hydra』
『Hy.Hy.Hydra〜! Hydra〜! Ignition!』
電子音声が響いた瞬間、俺の周囲に濃い煙が広がった。
煙が渦を巻く。
身体を覆い尽くす。
その中で装甲が形成されていく。
全身が赤紫色の装甲に包まれ、胸のクリアパーツにはヒュドラの紋章が浮かび上がる。
煙が晴れた時──
そこに立っていたのは、ブラッドスタークの姿だった。
俺は最後に声を変える。
唐橋充の低い声へと。
『さて……少しお話ししようか』
そう言って、刑務所の中へと入って行った。
それから監獄の中に入り、槍の変人を探していると──
『おっ、見つけた』
独房の中に、昼間の勇者モトヤスが居た。
俺はゆっくり近付く。
『よぉ、やっと見つけたぜ』
声を掛けると、モトヤスの身体がビクッと震えた。
そしてこちらを見る。
「だ、誰だ?」
「どうやってここに入って来た?」
怯えた様子で聞いて来た。
俺は肩を竦める。
『俺が誰かなんて関係無い』
『まぁ名前だけは教えてやる』
指を一本立てる。
『俺の名は──ロストスタークだ』
そして静かに言った。
『今日はお前を始末しに来た』
その言葉を聞いた瞬間、モトヤスの顔が青くなった。
「な、何で俺を始末しに来たんだ!?」
「俺は勇者だぞ!?」
「世界に選ばれた主人公なんだぞ!?」
俺は淡々と答えた。
『お前はこの世界で好き勝手やり過ぎた』
『だからその報いを受けてもらう』
モトヤスは慌てて叫ぶ。
「い、嫌だ!」
「死にたくない!」
「ちゃんと罪も償う!」
「だから命だけは助けてくれ!」
昼間の威勢は何処にも無かった。
ただ震えているだけの男だ。
俺は銃を向けた。
『自業自得だ』
そして軽く言った。
『Ciao』
パンッ──
乾いた銃声が独房に響いた。
桐斗side out
カゲチヨside
槍の勇者が来た次の日の朝。
俺がテレビを見ているとニュースが流れていた。
【今朝、刑務所に居た容疑者の一人が死亡している事が分かりました。
容疑者の独房を確認してみるも、独房には容疑者しか居なかった為、喧嘩による事故とは違うとの事です。
そしてこの刑務所は、この国ではかなり厳重な刑務所と言われており、どの様にして侵入したのか現在も調査が続いています】
ニュースには、昨日店を襲って来た奴が刑務所で死んだと映されていた。
[何で殺されたんだ? それに、どうやって潜入したんだ? ]
俺がそんな事を考えていると──
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
「カゲー!」
ヒサの声が聞こえる。
「急がないとシディの朝食、全部私が食べちゃうよー!」
「分かったから全部食うんじゃねぇぞ!」
俺はそう言いながら朝食を食べに向かった。
カゲチヨside out