「それじゃ始めるか…」
同じマンションに住む会社の先輩夫婦と俺達夫婦で夏定番の心霊話を始めることにした。
「電気消すぞ」
先輩の合図で俺は卓上のLEDランタンを点灯させた。
「おい、もう少し明かりを絞ってくれ、雰囲気が出ない」
俺は先輩に言われたように少し明るさを絞り暗くした。
「これ位ですか?」
「そうだな…これでいいだろ」
先輩は辺りを見回すとオーケーを出した。
先ずは俺からだな、先輩が先陣をきった。
ーーー『エレベーターの怪』ーーー
「聞いた話なんだかな…都内某所にあるオフィスビルのエレベーターに纏わる話」
先輩は其処で一旦区切ると俺達を見回した。
「このビルには左に3基、右にも3基の計6基のエレベーターがある…左から1号機、2号機、3号機…右は4号機、5号機、6号機っていう感じの並びだそうだ…そして問題なのは最後の6号機だそうなんだけど…これが深夜2時を過ぎると勝手に動き出すそうだ…6階と7階を呼ばれてもいないのに勝手に行ったり来たりしているそうだ」
「で…警備が確認の為にその階に行っても何もないらしい…」
先輩は其処まで話すと、一旦黙った。
「特定の階だけを…ってめっちゃ怖いんだけど」
先輩の奥さんがビビっていた。
「この2つの階はな…20時以降無人でエレベーターも止まらない様にされていて…なのにそんな動きをしていたんだ、当然エレベーター会社に連絡して点検をしてもらったんだけど、異常なしだったそうだ…ただ警備としても放置は出来ないらしく、その現象が起きる度に確認しに行っていたそうだ」
先輩の話に俺達はビビりだしていた。
「である日警備員が何か起きているのか見極める為に、該当階に深夜一人で待機したそうなんだ…深夜2時、エレベーターが勝手に動き出してその警備員のいる階で停止して扉が開いたそうだ…」
先輩はビールに口をつけると、また話し始めた。
「『俺の身体…』エレベーターの扉が開くと上半身だけの透けた作業員らしき男が這いずりだしてきたそうだ」
それは見事に先輩以外の悲鳴がシンクロした。
「結論から言うと、昔このビルでエレベーター点検作業員の死亡事故が起きたそうだ…多分その作業員の霊だろうな」
先輩が一発目からとんでもない話を出した。
「次は私ね」
先輩の奥さんが話し始めた。
ーーー『自動扉』ーーー
「これは私の妹の勤める会社のビルの話なんだけど、正面に2台の自動扉が並んで設置されていて…そのうちの左側だけに起きている事だったの」
少し間を置くと、
「これは昼間なんだけど、自動扉が勝手に開閉するのまるで見えない何かが通過したみたいに」
どうやら妹さんの勤める会社のビルの自動扉は何かを検知して開閉するようだった。
「勿論業者の点検や部品交換もしたそうなんだけど、直らなくて…そのものを交換しようって話になって…結果から言うと、新品に変えてもその現象は収まらなかったの、原因は今でも分からないままだそうよ…ただね、防犯カメラには何か黒い影が通過しているのが映っていたみたいなの…」
先輩の奥さんの話も中々怖かった…昼間から心霊現象見させられる妹さんが可哀想になった。
「じゃあ次は私ね、短いけど」
俺の妻が口を開いた。
ーーー『休憩室の怪』ーーー
「私達の会社のビルの地下に警備さんと運転手さんの休憩室あるよね、其処を映している監視カメラなんだけど…昼間は綺麗に映っているんだけど、夜間になると無数の光の玉が飛び交うのが映し出されているの、私も見たけど、あれは…でね、メンテナンス会社に清掃を依頼したんだけど、変わらなくて、カメラのレンズカバーを交換しましょうって話になったんだけど…結局それでも光の玉は映し出されていたの…特に何か起きるって事は無いのだけど、ちょっと怖くなって…」
多分妻が見たのはオーブだと思うが…実際にスマホで撮った画像を見せされた…うん監視モニターにも大量の光の玉が映っていた。
最後は俺だった。
「じゃあ、俺の話です」
ーーー『深夜の工場』ーーー
「あれは大学2回生の夏だった…先輩に誘われて工場夜勤のバイトを2週間やった時の話だ」
「じゃあ明日からのお仕事について…」
俺は先輩と一緒にバイトの説明を受けていた。
「それじゃあ明日からお願いします」
俺達は事務所を出ると翌日に備えた。
「今日からよろしくお願いします」
俺と先輩は班長に連れられて担当する場所へと案内された。
「多分総務から説明があったとは思うけど…休憩時間は0時から4時だから、最初の説明とはズレてるから間違えないでな」
俺達は一通り説明を受けると仕事に就いた、そして0時、
「お~い休憩にするぞ」
俺達は班長から声を掛けられて休憩室に入った。
「どうだい?慣れたかい?」
他の社員に声を掛けられた。
「まぁ取り敢えず食べな」
仕出し弁当を渡された。
「食べながら聞くけどさ…工場入口の石碑アレ何かわかるかい?」
初老の社員が俺達に聞いてきた、
「何かの記念碑…ですか?」
先輩の答えに周りの社員達が爆笑した。
「アレはな…記念碑なんかじゃねえよ…慰霊碑だよ」
「慰霊碑?何でまたそんな物が…」
俺は疑問を素直に口にした。
「この工場を造る時にな…骨や甲冑…刀なんかが大量に出てきたんだよ…それでって云うわけさ…だけどここら一帯で昔に戦があったなんて聞いたこともないから…不思議なんだよな」
初老の社員が説明してくれた。
「それからな…お前さん達がいる場所にX線検査機室があるだろ…彼処な2時になると勝手に自動扉が開くんだよ…しかも自動搬送ロボット迄停まってな…」
俺は社員の言葉に驚いたが…、
「またまた、怖がらせようとして」
その日はそんな形で終わった、そして翌日俺は見てしまったんだ、それを。
「悪い、スマホ置いてきちまった」
俺は現場にスマホを忘れていた事に気がついて取りに戻る事にした。
「やべぇ…もうすぐ2時かよ」
俺は時計を見ながら小走りで戻るとスマホを探した。
「あった…やべっ!」
時計をみると2時を過ぎていた。
「まさかな…あれは俺達を怖がらせようとした話だよな」
俺の眼前を自動搬送ロボットが走行していた…キンコーンキンコーンと警報を鳴らしてロボットは停止した、X線検査機室の前で。
「おいおいやめてくれよ…」
俺は走り出すとX線検査機室の前を通り過ぎようとした…その瞬間、タッチ式の自動扉が勝手に開いたのだった。
「誰が使ってるんだよな…」
俺は室内を覗いた…。
「嘘だろ…電気も消えてるし…X線検査機の電源も入ってないし…」
俺は後退りすると休憩室へと走り出した。
「アレアレ…」
俺は話をしてくれた初老の社員に事の次第を話した。
「見ちまったのか…そうか、でも気にするな取り憑かれたりなんてのは無いから、俺たちも散々見せられて慣れちまったからな」
結局数年後その工場は操業を止めて今は更地に成ってる…あの慰霊碑も何もかも無くなってる。
俺の話を聞いた先輩が少し補足してくれた。
「俺が聞いた話だとな…前にもゴムの再生工場があっただろ、彼処も出ていたらしくて、同じくらいの時期に工場を閉鎖したそうだよ」
俺はタブレットを取り出すと該当の住所を空中写真で表示させた…、
「本当だ…ってか辺りの民家も無い!」
どうやらかなり広範囲で出ていたようだ。
ーーーー。
「なんというか…最後の話は俺も知っていたけど…其処までとは…」
こうして夏の夜の怪談は始まった。。
会社の先輩夫婦とは大学以来の付き合いです、因みに主人公の嫁は小学校からずっと一緒です。