前作主人公の幽霊に憑かれました 〜前作主要キャラ達の脳を知らずに焼いてしまいます〜   作:どきどきわくわくすけ

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第13話 魔導学院生徒会長

 

 

 

 窓からの自然光のみで照らされた、少しだけ薄暗い生徒会室。

 

 何で部屋の明かりを付けてくれないんだろう………と思いながら、私は向かいのソファに座る褐色の男───生徒会長シャムルークに引き攣った顔で笑みを浮かべた。

 

「あの、すみません。杖以外の武器を学院で使う時は事前に申請しないといけないことを知らなくて………」

「いーよいーよ。そういうのって魔法騎士になる課程(カリキュラム)を取ってる子しか知らないからね。わざわざ申請書まで書かせちゃって、ごめんね」

 

 ジャハード王国出身特有の褐色の肌に、緩く気崩した制服。

 魔術的な要素の入ったアクセサリーを複数身に付けた彼は一見生徒会長には見えない。

 

 そんな彼、シャムルークのゲームでの扱いをゆっくりと思い出した。

 

 【混血】のシャムルーク。

 私達の住むウェストリア王国とジャハード王国のハーフの青年。

 

 彼の故郷であるジャハード王国は魔術発祥の地で、大体の闇魔術もそこで生まれたことから「裏で闇魔術が普通に使われているのでは?」とも噂されていた。

 

 そのためシャムルークも入学当時は偏見の目に晒されていたが………そのカリスマ性を遺憾なく発揮し、複数の信者を獲得。

 生徒会会長に抜擢される程の派閥を手に入れたのだ。

 

 しかし【伝説の代】によって学院政治への影響力が中途半端であったシャムルークは、彼らの権力を削ぐため闇魔術によるセシル暗殺を企てる。

 

 けれどたまたま居合わせた主人公リュカが彼を撃破。

 シャムルークは学院を追放され、そのことで伝説の代であるメンバーからリュカは一目置かれるようになる───というのが、大体の顛末だ。

 

 そしてそんなシャムルークの信者の一人であり、生徒会役員のヘクター・フリントは、彼の座るソファの後ろに控えている。

 

 シャムルークが主人公組によって学院を追放されたこともあり、ゲームでのヘクターはリュカ達に執拗に絡んでいた。

 

 そのシャムルークが、いる。

 リュカ達が最初に撃破するはずの序盤ボスが、いてしまっている。

 

(…………これって、どうなるんだろう。シャムルークを倒すことによって、リュカ達は伝説の代から色んなサポートを受けるようになるんだけど………え、このままだとサポートなしで色んなイベントをこなしていかなきゃならないの?)

 

 時にお助けキャラとして。時にパーティーメンバーの一員として伝説の代はリュカ達主人公組を支えてくれる。

 

 そのきっかけを私は奪ってしまったのだ。

 嫌な汗がだらだらと流れて仕方がない。

 

(おまけに伝説の代のメンバーとシャムルークってめちゃくちゃ仲が悪いんだよなあ)

 

 というのも一説によれば、2年前の邪竜を復活させた一人がシャムルークなのでは?と言われているからだ。

 

 学院に貼られている結界は内部からしか破れないこと、また魔術のエキスパートである先生達が為す術もなく無力化されてしまったこと。

 

 ───先生達の隙を搔い潜り、内部から結界を破くことができるのは、伝説の代以外で誰が可能か。

 

 ゲーム本編では明かされなかったものの(もしかしたら私がきちんとアルクロをやり込んでいないだけで、明かされているかもしれないが)一部のメンバーが「シャムルークなら可能なのでは?」と思っているのも確かだった。

 

 目の前のシャムルークが人の良さそうな笑みを浮かべて口を開く。

 

「セシルとの決闘裁判見たよ。いやあ、すごかったね!君のことは至って真面目な生徒だと思っていたが、まさかあんな戦い方もできるとは」

 

 それに苦笑いで返せば、彼は続けて言う。

 

「でもここだけの話、君には感謝をしているんだ。2年前に学院を襲った邪竜を討伐したとされる3年生達の発言力は今はもう教員を凌ぐほど。

 そのせいで彼らの振舞いは暴走し、学院生活が正常に運営されなかったと言って良いだろう」

 

 思い当たる節はあるだろう?

 そう聞いてくるシャムルークに思わず頷きかける。

 私とセシルさんの決闘裁判もそれに当てはまるからだ。

 

「それを君が止めたんだ。あの決闘裁判を重く見た学院側は今後一切特例を作らないことを決めたそうでね。

 まだどんな形になるかは分からないが、今後伝説の代だからって融通されていた授業免除や試験のパスは無くなるんじゃないかな」

 

 それは一見良いことのように聞こえる。

 けれど彼が単に学院の正常運営を望んでいるだけの生徒会長には見えず、素直に同意することはできなかった。

 

 代わりに曖昧に微笑むくらいしかできない。

 

(もう武器の申請書も書いたしお暇しても良いかな)

 

 そんなことを思い始めていると、シャムルークがある提案をしてきた。

 

「───ところで、どうかな?君も生徒会に入ってみない?」

「え?」

「別に大した話じゃないよ。あのセシルを討ち取ったんだ。君がいれば学院の生徒会による自治も少しはしやすくなるんじゃないかなって。

 それに同じ1年で貴族のヘクターもいるし、何らかのコミュニティに所属していた方が不都合はないんじゃないか?」

 

 確かに彼の言う通り、この学院では何らかのコミュニティに所属していた方が良いだろう。

 

 けれどそれが伝説の代と因縁がありそうなシャムルーク率いる生徒会なのは遠慮したい。

 

「学院の課程(カリキュラム)をこなしながら生徒会の仕事をするのは、私にはちょと………」

「うーん、そっか。まあ、ここはいつでも開けてるし、もし何かあったら気軽に頼ってくれよ。いつでも相談に乗るからさ」

 

 そう言ってにっこりと笑うシャムルークに頷く。

 そういえば前世の兄が言っていたことを思い出した。

 

 

 悪魔は笑ってやって来る、と。

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 

『───あいつ、あんな性格だったかなあ』

 

 生徒会室からの帰り道。

 誰もいない学院の廊下にて、隣を漂うシロウさんがぼんやりとつぶやく。

 

「あんな性格?」

『1年の頃のアイツって、もっとむすっとしてて愛想がなかったんだよ』

「シロウさんと仲が良かったんですか?」

『仲が良いというか………俺が一方的に絡んでたって感じだな。シャムルークの故郷はあのジャハード王国だろ?他国の魔術が知りたくて、よく話しかけに言っていたんだ。今思えば鬱陶しかっただろうけど』

 

 苦笑するシロウさんに「へえ」と声を漏らす。

 

 アルクロでは最初のボスとして現れるけど、前作【アルカナ・ブレイヴ】ではもしかしたら味方キャラだったのかな。

 

 それじゃあ、もしかしてシャムルークも実はそんなに悪い人じゃない?

 

 そう思ったものの、本来ならばセシル暗殺を企てるのだ。

 良い人でもないだろう。

 

『ま、でも良かったよ。あいつの元気そうな顔が見れて。きっと2年で良い出会いがあったんだろうな』

「………あれ?シロウさんって私に取り憑くまで、どうしていたんですか?」

『ああ、ちょっと色々あって学院にはいなかったんだ。だから分かってないことも多くてな』

 

 え、そうだったんだ。

 というか色々(・・)って何だろう。

 

「…………あの、色々、とは?」

『秘密』

 

 にっこりと笑うシロウさんにそれ以上聞くことができない。

 もう少し仲良くなったら聞けたりするのかな………。

 

 そしてそこでふと思う。

 邪竜との戦いで亡くなって、2年ぶりの魔導学院。

 もっと2年後の学院とか見てみたかったりするんじゃなだろうか。

 

「…………シロウさん、もっと学院の気になるところがあったら教えてくださいね。一緒に観に行きましょう」

『おう、ありがとうな』

 

 シロウさんが快活に礼を言う。

 

 それに私は頷いて、いつか来るだろう彼との別れを寂しく思った。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「……───全く似てないじゃないか」

 

 エマ・ホートンのいなくなった生徒会室にて。

 窓の外をぼんやりと眺めながらシャムルークはつぶやく。

 

 エマ・ホートン子爵令嬢。

 付与魔術師の課程(カリキュラム)を受ける女子生徒で、先日あのセシル・マクレーガンを討ち取った少女。

 

 噂によるとシロウの昔からの知り合いだそうで、生前の彼から魔術を教わっていたらしい。

 

 くすんだ榛色の髪に深いダークブラウンの瞳。

 楚々とした雰囲気の、大人しそうな令嬢。

 

 そんな彼女がシロウと同じ魔術を使い、彼と同じ宝剣を召喚することができる。

 

 シロウはあんな風におどおどしない。

 他者に合わせて愛想笑いなど絶対にしないし顔色なんて窺わない。

 

 シロウと全く似ていないくせに、彼の根源たる魔術と剣を使う。

 彼の遺品を我が物顔で使うのだ。

 

 シャムルークは部屋に控える生徒会役員のヘクターに声をかけた。

 

「ヘクター、同じ1年生同士なるべく彼女を気にかけてやってくれないか?庶民の俺が貴族のお前にものを頼むのは悪いと思うが」

「…………そんな風に気を使わないでください。俺はただ貴方に憧れているだけなんです。遠慮なく頼ってください」

 

 彼の言葉にシャムルークは「随分と懐かれたものだなあ」と思う。

 そしてシャムルークはぼんやりと思案した。

 

 

 どうやったら、シロウの宝剣を自分のものにできるのだろうと。

 

 

 

 

 

 

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