前作主人公の幽霊に憑かれました 〜前作主要キャラ達の脳を知らずに焼いてしまいます〜   作:どきどきわくわくすけ

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第7話 医務室での謝罪と

 

 

 

 

 前世の夢を見た。

 

 両親は私が小学校に入る前に事故で亡くし、歳の離れた兄が大学も辞めて私の面倒をみてくれた。

 

『おにいちゃん、【アルカナ・クロニクル】ってゲーム知ってる?おにいちゃんが昔やってた【アルカナ・ブレイヴ】?の続編みたいなんだけど………』

『おう、知ってるぞ。アルブレは俺の青春だったからなー。ま、続編が出ても多分やらないけど』

『え、そ、そうなの!?やらないの!?わたし、おにいちゃんやるかなって思って、お小遣い貯めてて、予約の仕方とかもクラスの子から教えてもらって………!』

 

 小学生の頃。

 両親がいない生活にも少しずつ慣れてきた時、兄が大好きだったゲームの続編が出ると聞いてプレゼントしようと考えていたのだ。

 

 生前の両親からもらっていたお年玉と、兄からもらっていたお小遣い(今思えば兄からもらったお金で兄のプレゼントを買うのはどうかと思うが)を使おうと子供ながらに考えていた。

 

 いつも忙しそうな兄にゲームする時間なんて無かっただろうし、きっと私抜きで一人で、のんびりする時間の方が欲しかったかもしれない。

 

 そんな幼い私に兄が仕方なさそうに笑った。

 

『何、ゲームしたかったのか?』

『そうじゃなくて、喜んでくれるかなって………』

『…………ありがとうな。それじゃあ、買ったら一緒に遊ぶか!』

『! うん!一緒にあそぼう!』

 

 今思えばそんなことにお金を使わなくて、兄に迷惑かけないようにしていた方が良かっただろう。

 

 けれど一緒にゲームをするのは楽しくて、自分だけが嬉しい気持ちになっただけだったと思う。

 

 そしてそんな兄にろくに恩返しもすることもできず、私は高校1年生の時に死んでしまった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「………───おにいちゃん」

 

 

「おにいちゃん?」

 

 

 

 微睡んでいた意識の中、誰かの声にハッと覚醒する。

 

 目を覚ませば、そこは真っ白な天井で。

 傍らにはセシル・マクレーガンと医務室の先生が不思議そうな顔で私を覗き込んでいた。

 

 どうやら医務室のベッドに横になっているらしい。

 

 慌てて起き上がろうとすれば、医務室の保健医──キャロル先生が「こらこら」と私の体を再びベッドに戻した。

 

「気が付いたみたいね。回復魔法をかけたけど、精神的な疲労からか丸一日眠っていたのよ。どこか調子の悪いところはない?」

「は、はい。大丈夫です」

「良かったわ。とりあえず念のため今日一日安静にしなさいね。…………それじゃあ、私はブラン先生を呼んでくるから、二人とも喧嘩しないで待っててちょうだい」

 

 そう言ってキャロル先生は医務室から出て行ってしまった。

 

 部屋に残ったのはベッドに横たわる私とその脇にいるセシルのみ。

 何だか気まずくなってしまって上体を上げれば、セシルと目が合ってしまった。

 

「あの、私は一体………気絶しちゃって、記憶が曖昧で………」

 

 彼のゴーレムに吹っ飛ばされてからの記憶が全くない。

 きっとそこで決闘は終わり、私は負けてしまったのだろう。

 

 するとそんな私の前にどこからかふよふよとシロウさんが現れた。

 セシルに見えないのを良いことに私に向かって「よっ」と気安く手を振ってくる。

 

 その時、セシルが黙り込む私に口を開いた。

 

「決闘裁判では、お前が勝ったぞ」

「………………え?」

「ゴーレムを倒し、俺を殴って場外へ飛ばした」

 

 淡々と語られるセシルの言葉に混乱する。

 

(え、どういうこと?私が?でも気絶していたよね?)

 

 しかしそこでふと思い付き、ふよふよと宙を浮いているシロウさんを見た。

 彼は何故か申し訳なさそうに、私に対して謝罪のゼスチャーをしている。

 ということは、だ。

 つまり───…

 

「それからお前は聖女………いや、元聖女アリア・ローゼマリーの企みを闘技場で明かし、ブラン教師の立会いの下、彼女の部屋から証拠となる呪物を発見させた。

 現在アリア・ローゼマリーは憲兵に連行され、呪物の売買ルートを洗いざらい話しているらしい」

「へえ………」

 

 シロウさんを見る。

 シロウさんは分かりやすく目を反らした。

 

(多分だけど、シロウさんが私に憑依して決闘裁判に勝たせてくれたんだ)

 

 詳しくは後でシロウさんから詳しく聞くとして。

 とりあえず決闘裁判にも勝てたし、私の冤罪も晴れたというのなら丸く収まったと言えるのではないだろうか。

 

 しかしほっと安堵するのも束の間、セシルが再び口を開く。

 

「…………エマ・ホートン子爵令嬢。この度は闇魔術の使用というあらぬ疑いをかけ、婚約破棄及び学院の退学という条件を下に決闘裁判を行わせてしまったこと、誠に申し訳ありませんでした」

「あ、いえ………」

「ホートン子爵家から婚約破棄の申し出が来た。今回の俺の暴走が原因であるため、婚約破断金はこちらで支払うつもりだ。

 …………それから君の学院の退学は正式に棄却された。本当に申し訳なかった」

 

 そう言って謝罪するセシルに私はとっさに首を振る。

 

 婚約の破断は、まあ、そうだろう。

 うちの生家はセシルにカンカンに怒っている。

 

 セシルも、この婚約を画策した評議会側も受け入れるしかないし、こちらも破断金が支払われるのなら(多少の文句は出るだろうが)言うことはないはずだから。

 

 それよりも退学にならなくて本当に良かった。

 胸を撫でおろしていると、そんな私にセシルが続ける。

 

「その上で君に聞きたい」

「? はい。何でしょう」

「───君は決闘裁判の途中から、まるで人が変わったようだった。それに杖ではなく、シロウの………2年前に亡くなったある男子生徒の宝剣を召喚した。

 君はまさか、シロウの霊を現世に呼び出し憑依させたのか?―――それこそ闇魔術の使用に当たるが」

 

 

 セシルの言葉にぴしりと固まってしまった。

 

 

 

 

 

 

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