ヤンデレ短編小説集   作:とうふの色

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廃れた世界でのお話…

今日もまた、俺は荒廃した街を歩く。生き残るため。そして、あの日離れ離れになった家族を――たった一人の妹を探すためだ。

 

一つの場所に留まることはない。ここにいても、妹はいないのだから。瓦礫の山を越え、乗り捨てられた車の列を抜け、ただひたすらに歩き続ける。

「今日も…誰もいないか…」

もう何か月、人の姿を見ていないだろう。この世界に、俺と妹以外の人間はもう存在しないんじゃないか。そんな弱音が頭をよぎるが、足を止めるわけにはいかない。

 

辿り着いたのは、地方都市の寂れたショッピングモールだった。ガラスは割れ、入り口は瓦礫で半分塞がっている。

「食料くらいは残ってるだろ…」

俺は警戒しながら中へと足を踏み入れた。目当てはスーパーマーケットだ。散乱した商品をかき分け、まだ食べられそうな缶詰や乾パンをリュックに詰めていく。その時だった。

 

「あ、あなた!生きている人ですか!」

 

「!?」

突如背後から聞こえた声に、心臓が跳ね上がった。咄嗟に振り向き、持っていた鉄パイプを構える。そこに立っていたのは、服こそボロボロだが、まだ若い一人の女性だった。

「人間…?生きているのか…?」

 

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「へえ~、各地を旅してたんですね~」

 

俺はこの荒廃した世界で初めて出会った生存者と話をしていた。場所は、彼女が寝泊まりしているというモールの居住区画だった。どうやら彼女はこの街の住民で、生存者を見たのは俺が初めてらしい。

 

「はい、私も久しぶりに人と会えて、すっごく嬉しいですよ!」

「そうか…。あんたも大変だったな」

「どんなに待っても探しても誰とも会えなくて…。もう、あと少しでくるってしまうところでしたよ~」

「…無理もない。こんな世界で一人きりなんて、気が滅入って当然だ」

俺がそう言うと、彼女はぱあっと顔を輝かせた。

 

「慰めてくれるんですか?優しいんですね、あなたは」

「ありがとうございます!もう大丈夫です!」

彼女は屈託なく笑う。

「それにしても、各地を旅するって大変じゃないんですか?私にはとても…」

「目的があるからな。それだけを考えてれば、どうにか狂わずにいられる」

俺の言葉に、彼女はこてんと首を傾げた。

 

「目的があるから狂わなかった…ですか?」

「その目的って、どんなのですか?私、気になります!!」

ぐい、と身を乗り出してくる彼女の気迫に、俺は少し気圧される。見ず知らずの相手に話すべきか一瞬ためらったが、その真っ直ぐな瞳に押された。

「…ああ。離れ離れになった妹を探してる」

 

仕方なくそう告げると、彼女の表情がすっと変わった。

 

「…へえ。妹さんを探してるんですか」

「すみません、こんなこと言うのもあれなんですが、」

 

彼女は少し言い淀んだ後、とんでもないことを口にした。

 

「私と一緒に、ここで暮らしません?」

「は…?何を言ってるんだ?」

「だって、正直に言って、そんなに旅を続けても私しか見つけられないなら、妹さんも見つけられるとは限らないじゃないですか。それに、行った先が安全であるとも限らないわけですし。ここで暮らした方が絶対いいですよ!」

「いや、でも俺は…」

「どうせなら、私があなたの妹の代わりに、妹になりますよ!」

 

「――ふざけるな!」

 

思わず、声が荒くなった。

「妹の代わりなんて、誰にも務まるもんじゃない!軽々しくそんなことを言うな!」

 

俺の剣幕に、彼女はびくりと肩を震わせた。

「っ!…ごめんなさい。私、誰かに会えて本当に嬉しくて、舞い上がっちゃって…」

俯く彼女に、少し言い過ぎたかと罪悪感が湧く。

 

「ああ、そうだ。せっかくだから、ご飯食べていきませんか?私、こう見えてお料理得意なんですよ」

「え、いや、俺はまだ…」

彼女はそう言うと、俺の返事を待たずにキッチンへと向かってしまった。

 

しばらくして戻ってきた彼女の手には、湯気の立つスープ皿が二つあった。

「旅をしていると、こういう温かい野菜スープなんてお目にかかれないでしょう?せっかくですから、食べていってください」

確かに、まともな食事なんて久しぶりだった。警戒心はあったが、食欲をそそる匂いに抗えず、俺は皿を受け取った。一口すすると、優しい味が口の中に広がる。

「うまい…」

 

「あ!お口に合いましたか?よかったあ。あなたの好みがわからなかったので、私好みに味付けしたんですけど、良かったです」

俺の好みも知らないのに、という些細な疑問が頭をよぎったが、空腹が思考を鈍らせる。

 

「私、ずっと一人で過ごしていたから、こうしてもう一度誰かと話しながら食事をするのが夢だったんですよ」

「誰かと一緒に食べるってだけで、こんなにもおいしくなるんですね」

彼女は幸せそうに微笑む。

 

「これからもこの食事が毎日食べられると思うと、楽しみになりますよ!」

「これからも…?どういう意味だ?俺はここに残るなんて…」

その時だった。妙な感覚が俺を襲う。手足の先が、じんじんと痺れている。満腹感とは明らかに違う、嫌な感覚。旅の疲れかと思ったが、これはおかしい。力が、抜けていく…。

 

「あは」

 

目の前の彼女が、楽しそうに笑った。

 

「きっと、いろんなところを巡っていて疲れたんですね」

 

スプーンが、カラン、と音を立てて床に落ちる。体が言うことを聞かない。

「お前…!このスープに、何をした…!」

 

「いいんですよ。もう、休んで」

「大丈夫。あなたが起きた時には、ここをもう離れたくなくなるくらいに」

 

霞んでいく視界の中で、彼女が俺の頬にそっと手を添える。

 

「私が、あなたの“妹”として、新しい“家族”になってあげますからね」

 

「辛い旅は、もうおしまいです」




自分で書いててこれはいったいどういう世界観なんだ…?
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