男は善意で火災報知器を押した   作:がしやま

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第21話

 

「ヒーローと共同戦線を張る……? つまり呪霊だけでなくヴィランも相手にしていくということですか?」

 

 

「そゆこと。

 羂索がヴィランと手を組んでいる現状を踏まえると、こちらもヒーローと手を組んで戦力を上げておくべきだと思うんだよね。それに情報共有もできるしさ」

 

 

 「動かせる駒は多い方がいい」と不敵に笑う五条。すっかり司令塔役がはまってしまっている。

 いつもこんな風にしっかりしてくれていればいいのになと、阿部は心の内で思った。切実に。

 

 

「……とりあえず方針の方はわかりました。

 しかし呪霊の祓除とヒーローの支援を並行して行うのには無理があるような……」

 

 

「ああ、普段は祓除の方が優先ですよ。

 僕らがヒーローたちのために動く時は、裏でヴィラン連合が関与していると疑われた時のみだ」

 

 

 ――ヴィラン連合。

 阿部たちを幾度となく追い詰めた脳無を操り、世界を混沌の渦に陥れたヴィラン組織。羂索が手を組んで身を置いているのもそのヴィラン連合であることは間違いないと言われている。

 

 このことからヴィラン連合は、ヒーローと呪術師にとっての共通の敵であることは明白である。利害は既に一致している。

 ヒーローたちと共同戦線を張ることで、羂索に関する有益な情報を得ることもでき、今後の見通しもよりハッキリしていく。そう考えると五条の案は羂索打倒作戦を実行するにおいて非常に合理的な判断と言える。

 

 「流石ですね」と珍しく五条に対して感嘆の言葉を漏らす阿部。

 しかし、これで終わる五条悟ではない。

 

 

「――ってことで、阿部さんと真人には雄英の林間合宿に付き添ってもらいまーす!」

 

 

 その突拍子もない発言に阿部はしばらくフリーズした後、「は……?」と面食らった様子で五条をマジマジと見つめる。一言で表すなら「コイツ何言ってんだ」の顔である。

 ヒーローと協力関係を築く、そこまでは理解できる。だが何故雄英高校の林間合宿に付き添わなければならないのかが全くわからなかった。どこをどうすれば結びつくのかさえわからない。

 

 

「ま、待ってください……話が飛躍しすぎです」

 

 

「細かいことは気にせずに聞いてくださいよ」

 

 

「いや、ちょ、うそ……」

 

 

 

 困惑する阿部を他所に五条は「いやー、ヒーロー仮免試験取っといてよかったっすね。大学中退した挙句教員免許すら無いから無理あるかなって思ったけどギリ許可貰えました」とやけに鼻につく言い方をしてはケラケラ笑う。

 

 確かに6月頃、阿部と真人は公安本部に勧められてヒーロー仮免試験を受けた。

 阿部自身の力についてもそうだが、真人の戦闘においての有用性を公安側がしっかりと把握しておきたいという意見もあり、阿部と真人の仮免試験が実施された。

 

 しかし非術師である審査員には真人の姿は見えぬため、阿部と真人は二人一組での受験となり、審査員側では物議を醸したそうだ。

 だが阿部の許可なしでは行動できないという点を踏まえると、真人は阿部の所有物……もしくは個性の一部としても捉えらなくもないという点からかなりスレスレで認められたという。

 

 

 そんなこんなでヒーロー仮免試験を受験し、無事合格した阿部たちであるが、まさかこんな展開になってくるだなんて誰が予想しただろうか。

 雄英生の引率だなんて話が急すぎる。

 

 

「ど、どうして俺が雄英高校の林間合宿で引率をやるとかいう話になるんですか」

 

 

「ヴィラン連合って何かと雄英高校に突っかかってるイメージありますよね?

 ワンチャン何か起こるかもなーっていう勘です」

 

 

「楽しそうじゃん林間合宿! 引率やってみたい」

 

 

「真人君、そうホイホイ口車に乗っちゃダメです!」

 

 

 阿部は頭を抱えながら五条の身勝手さ、連相報の低さに悶えていた。

 夏油は哀れんだ目で振り回される阿部を見守るのであった。

 

 

「俺なんかじゃなくて貴方が行けばいいでしょう。

 仮に羂索たちが現れたとしても、俺が相手にするより貴方が対処した方が確実だ」

 

 

「僕は一年の担当じゃないし、普通に教職の方もあるから忙しいんですよ。

 それに、教職の方とは別でやっておきたいこともあって」

 

 

 のらりくらりと阿部の訴えを受け流し、「ほんじゃ、よろしくお願いしますよ」と他人事のようにヘラリと笑う五条。本気で殴りたくなったのは言うまでもない。

 

 

「……いいですか、今回だけですからね、今回だけ。

 なので今後は本人の意見を交えず独断で判断するのは控えてくださいね」

 

 

「あははー、気を付けます多分」

 

 

 阿部はこの瞬間全てを諦めた。

 五条の度が過ぎた破天荒さを矯正できる人間など、この世にいるはずもないのだと溜息を吐くのだった。

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