『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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本編で言うところの幕間な話。


その13

 一学期の期末テストも終え、季節は夏真っ盛り。一年生は高校初めての夏休みを前に少しばかり浮かれている時期、今日も今日とて織斑先生の厳しい指導が飛び交うなか、私黛薫子はある人物についての調査を行っていた。

 

白河修司。新入生が入ってくるのとほぼ同じ時期にこのIS学園で用務員として働きだした数少ない男性職員。

 

年配の十蔵さんの紹介で入ってきたとされる彼、織斑先生よりも若い男の人、当時の学園は自分達と年の近い男性職員に戸惑いもしたが、意外にも修司さんは紳士的な態度で常に接してくれた為、女子生徒や女性職員からは割と高評価を得ていた。

 

仕事の手際も良いらしく、先のゴーレム襲来事件の際にもいち早く生徒達の所に駆けつけ、閉ざされた扉をこじ開けて生徒達を救出したという逸話も出てきている。箝口令が敷かれ、私達上級生にも情報規制が施されているので真意は定かではないが、インタビューに応じてくれた女子生徒の反応を見れば、あながち間違ってはいないみたいだ。

 

 というか、前にアリーナの扉を直している彼の姿を見かけた事があるのだが、もしかしてアレがそうなの? ……他にも、白河修司にまつわる逸話は幾つも存在しているのでここで軽く紹介していこうと思う。

 

曰く、アリーナの扉を素手で破った。

曰く、日本代表候補生の専用機の完成に大きく貢献した。

曰く、臨海学校で溺れた生徒を助ける為に海上を走って見せた。

曰く、その体には幾つもの戦いの爪痕が刻まれているため、どこぞの特殊部隊の生き残り説。

 

この様に、挙げてしまえばこれだけの逸話の数々がこの学園で打ち立てられている。他にも、彼と直接話をした事のある人物に話を聞いてみた所、面白い内容を聞くことが出来た。

 

 

 

 

 

ケース1 剣道娘さんの場合。

 

 あの人は……そうだな。見た目に反して厳しい所はあるけれど、私にとって標となるモノを示してくれた恩人でもある。未だ私は未熟で戸惑う事も多いが、いつか、彼に恩返しが出来ればいいと思う。

 

ケース2 チョロコットさんの場合。

 

 何だか、もの凄く悪意を感じるのですけれど……まぁいいですわ。彼の人柄についてですが、まぁ普通に紳士的な方ですわよ? 女性には慎ましく接し、時には窘める。用務員というよりも執事に近い気質の持ち主でしたわね。

 

もし今後行く場所がないのなら、私の屋敷に執事としてスカウトするのもアリかもしれませんわね。

 

……ただ、何でしょう? あの方を見ていると何だかこう、嗜虐心がムズムズします。

 

ケース3 酢豚大好きっ娘さんの場合。

 

 あれは……そうね、一言で言えば世紀末に出てきそうな覇者の風格を持った存在ね。……意味が分からない? そりゃそうよ。これは直接味わった人間にしか分からない感覚よ。ラ○ウと敵対したヒャッハー達って、こんな心境だったのかしら。

 

……は? ファーストキスを奪われた感想って、誰から聞いたのよそんな話! あれはそんなんじゃないっていってるでしょうが!! つーかその類の話、あの人の前ではマジで止めた方がいいわよ。あの人、こういう事には凄く真面目に考えているから、下手に挑発すると痛い目見るわよ。

 

ケース4 ロリッ子軍人。

 

 まさか、この極東の地で教官と同じ覇気を持った人間がいたとは驚いた。……しかもあの身のこなし、恐らくは相当な修羅場を潜り抜けて来たのだろう。私だって軍人の端くれだ。そのくらい分かる。

 

クラリッサはああ言った歴戦の戦士の風格を持った人間を“むせる”と呼んでいたな。むせる傭兵白河修司……うむ、案外いけるな。

 

あぁそうそう。パパラッチをするなら覚悟した方がいい。あの人は半径二百メートル程の範囲なら簡単に此方の気配を探知してくるぞ。私も腕試しのつもりで彼の後ろに回り込もうとしてみたが、悉く失敗したからな。

 

というか、追っていた筈が気が付いたら背後に回り込まれていたとか、どういうことなんだ? 教官ですらそんな事はしなかったぞ。……ハッ!? もしや彼はジャパニーズ忍者!?

 

ケース5 男の娘

 

 ひ、酷いなぁその呼び方は……まぁいいけどさ。で、あの人について何か知っていないかって? う~ん、僕ってあの人と直接話をした事なんて殆どないからなぁ。

 

ただ、悪い人ではないと思うよ。以前僕が階段を踏み外した時、後ろから倒れないよう支えてくれたりしたから。

 

……あれ? そういえばあの時の修司さん、外の花壇に水やりをしていたんだけど、どうやって来たんだろ? 本人は扉が開いてたからって言ってたけど、僕のいた階って───三階なんだけど。

 

ケース6 眼鏡っ子

 

 恩人。あの人を一言で表すならこれ以上の言葉はない。私に向き合う事の辛さと大切さを教えてくれて、前に進める切っ掛けをくれた人だから。

 

私の専用機、打鉄弐式もあの人のお陰で完成したようなものだから……ただ、性能が凄すぎてどこまで情報開示すればいいのかが今の悩み所なんだけどね。

 

倉持研からの誘い? 勿論断った。あの人達は織斑君のデータを集めるのに忙しそうだから、あまり煩わせるのも忍びないと思ったから。

 

打鉄弐式の事も修司さんから教えて貰って整備の方も出来るようになったし、これからはもっと頑張ろうと思う。目標は……卒業までに日本の代表になる事かな。そこまで来て漸く、私もお姉ちゃんの妹だって胸を張って言えると思うから。

 

……それにしても、修司さんって凄いなぁ、ISのコアネットワークのアクセス方法も教えてくれるなんて。触り程度って本人は言ってたけど、これって篠ノ之束博士以外出来ない事だと思ってたから、本当にビックリした。

 

まぁ、修司さんって事で納得しているって部分もあるんだけどね。……あ、今の部分オフレコで、この事世間に知られると多分先輩も危なくなりますよ?

 

ケース7 最強生徒会長

 

 修司マジ許すまじ。

 

ケース8 唯一の男性IS操縦者

 

 これって偽名の意味あるんですか? ……まぁいいや。修司さんについてですよね? そうだなぁ、ISについて色々詳しく教えてくれたり、俺に戦い方の指導も時々してくれるし、もう基本的に何でも超人って感じですね。千冬姉も凄い人だけど、修司さんは家事もこなせるからなぁ。

 

俺も家事には結構自信あったけど、修司さんと意見交換していく内に色々出来る事も増えたし、料理のレパートリーも増えた。昼休みになると皆で昼食の際会話も弾む様になったし、ホント、助けて貰ってばっかです。

 

この学園に来た当初は愚痴も聞いて貰ったり、諭して貰ったりしたこともあったし……もし兄貴がいたならああいう人が良いかなぁって思ったり。

 

これ、前に千冬姉の前で言ったら殴られたんですよね。アレ、一体どんな意味だったんだろう?

 

 

 

 

 

 ………色々おかしな点はあったものの、情報を提供してくれた彼女達のお陰で白河修司なる存在の人物像が少しだけ明らかになった様な気がする。引き続き調査をし、いつか必ず彼の正体を暴こうと思う。

 

ふふふ、記者としての血が騒ぐぜぇぇっ!!

 

 

 

 

 

 

(二年の黛薫子さん、最近俺の事を調べ回っているよな。別にいいんだけど、彼女のインタビューは少し強引だって聞くし、今度注意した方がいいかな)

 

後に、黛薫子は白河修司の調査を断念する事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 怒濤の一学期が過ぎて季節は夏。高校生活初の長期休みを前に生徒達は心から楽しみにしていた。様々な出会いを経て成長していく少年と少女達、これからの日々の中で、彼等は果たしてどこへ向かうのか。

 

そして……。

 

「さて、それじゃあ私達もそろそろ動くとしましょうか。オータム、M、準備はいいわね?」

 

「おうよ。こちとら暴れたくてウズウズしてるんだ! 今から出番が待ち遠しいぜ!」

 

「……どうでもいい。私は私の目的を果たす為だ」

 

世界の裏側で暗躍する闇が表に混沌を運ぼうとしていた。そしてその一方で。

 

「白河修司、お前の存在は……私が認めない!」

 

天災(アリス)を模した兎は目の前のモニターに映る深淵の継承者に呪詛に似た言葉を吐くのだった。

 

 

 

 

そして、天災の憎しみの対象となってしまった者は……。

 

「あ、ここにもシミが」

 

「修司君、そこ終わったら次はアリーナの点検宜しくね~。私は花壇の方に行ってるから~」

 

「了解です十蔵さん」

 

一人、暢気に平和な日々を送っていた。

 

 

 

 




Q主人公の尊敬する人って誰?

シュウ=シラカワ博士 何だかんだで一番世話になっているから。
シオニー=レジス 一人で大国相手に頑張ったりと努力の人だから。
トレーズ=クシュリナーダ 手段は間違えたかもだけど、誰よりも人類の事を想ってたから。
イオリア=シュヘンベルグ 二百年も前からあれこれ頑張ってる苦労人だから。

尚、これらの答えは主人公の主観を元にしております。(笑)



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