『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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オーバーロード、面白いですね。
ボッチが介入したらどうなるか、妄想はしたことありますが、大抵が敵対ルートなので却下しました。




その9

 

 

 

@月@日

 

ここ最近自己嫌悪で凹んでいた為書いて来なかったが、今回ベル君にお祝いの席に招待されている為、これではいけないと自分を奮起させ、ここ暫くの出来事を書いていこうと思う。

 

 

まずベル君のレベルが上がった。これがあの某冒険ゲームだったら心地よい音楽が流れていそうだが、現実はそんなに甘くはなく実際に彼は死ぬ思いをしてきた。

 

詳しくは分からないが、本来中層に生息している筈のミノタウロスが上層に出てくるのはほぼ有り得ないとされており、ベル君が何故ミノタウロスと遭遇したのは未だにハッキリしていない。

 

恐らくは、あのフレイヤとかいう女神の差し金だろう。あの女の眷族であるオッタルが中層で何かしていたという目撃情報があったのは知ってたし、多分奴はオッタルに鍛え上げられたミノタウロスを当て馬としてベル君にぶつけたのだろう。

 

その目的はレベルアップ、数多くの冒険者達が挑んでいる己の限界突破、魂をより上位に昇華させ、更なる強さを得るための儀式。

 

困難を乗り越えて偉業となる。恐らくはあの女神はトラウマだったミノタウロスをベル君に超えさせ、それを偉業としてレベルアップを図ったのだろう。結果は見事奴の目論見通り、ベル君はミノタウロスを打ち倒し、見事レベルアップを果たして見せた。

 

なんというマッチポンプ。人が知ればヤラセとかインチキと揶揄しそうな話だが、正直な話それを聞いて自分は然程それが悪いことだとは思えなかった。

 

ベル君は自分が強くなる事を望んでいた。追い付きたい高みがあるからと、その為にはどんな困難にも挑む決意と覚悟があった。

 

だから俺も思った。今のベル君ならミノタウロスをぶつけてみても構わないだろう、と。ミノタウロスと出会った事で彼の心にトラウマが刻まれた。ならばそのトラウマを乗り越えれば彼は彼の目指す高みへ一歩近付いていけるのではないかと。

 

余計な算段は無かった。ベル君は頑張り屋さんだし、それ位のお節介はしてもいいかなーなんて考えていた。

 

でも、違う。困難は用意されるモノではない。用意された困難は単なる試練に過ぎない。困難とは降り注がれる自然の災厄であり、偉業とはそれを乗り越えた者に送られる最大の賛辞だ。

 

そもそも、人を死地に送り出そうという発想自体が間違っている。その事を思い知らされた事と自分があの女神と同じ事を考えていた事実に酷くショックを受けた自分は、その日1日は新居の布団の中で丸まりひたすら自己嫌悪していた。

 

それからウダウダと自己嫌悪に浸り続けて数日後、仲間と共にパーティーを組んでダンジョンに挑んでいたベル君達が音信不通という事で女神ヘスティアからクエストが発注された。

 

当然、自分もそのクエストに参加しようとしたのだが、恩恵を受けていない自分では行ける訳もなく、受付の人の却下という一言により沈む事になる。仕方がないので蒼のカリスマとして動く事にして、自分はヘスティア達とは別に個人でベル君達を探索する事にした。

 

結果的に言えばベル君達は無事に保護された。18階層という安全階層に辿り着き、ロキ・ファミリアの保護の下で何とか元気に過ごしていた。その後も後からやって来たヘスティア達もベル君達と合流し、和気藹々としている所を遠巻きに見守る事にした自分は、取り敢えずリヴィラの宿で落ち着く事にした。

 

それで翌日、下手にベル君達とは干渉せずにいた自分だが、ここで不味い事態が発生した。ベル君の比較的早いレベルアップに面白くなく思っていた一部の粗暴な冒険者達がヘスティアを人質にしてベル君を窮地に追いやったのだ。

 

一瞬ヘスティアは見捨てようとも考えたけど、ベル君の事を考えると流石に見過ごす事も出来ないのでヘスティアの方には自分が向かい、縄で身動きを封じられていた彼女を解放させた。その際自分の事について訊ねようとしたが、眷族は放っておいて良いのかと告げてその場を後にした。

 

そしてベル君はベル君で魔法のアイテムで姿を消していた荒くれ者の位置を自力で見切り、逆転勝ちを納めていた。自分が教えていた姿の見えない相手の対処法をちゃんと覚えていた様で安心したのも束の間、仲間の一人が返り討ちに遭った事により不満を爆発させた冒険者達が一斉にベル君達に襲い掛かってきたのだ。

 

ベル君の仲間達と荒くれ者達の大乱戦、戦況はリューちゃんがいるベル君側に傾きつつあるが、相手は数で押し潰そうとしてくる。このままではどちらも唯では済まない事態に成り得る───という所で、彼女が現れた。

 

女神ヘスティア。普段とは違う神々しい雰囲気を纏っているのは彼女が神の力(アルカナム)を解放させたからだろう。神の力を発現させた彼女の前に荒くれ者達は蜘蛛の子を散らすが如く逃げていった。

 

………何というか、初めて神を神として感心した気がする。自分の眷族の為に本来なら固く禁じられている神の力を使ってまでベル君を助けようとする彼女に自分は初めて彼女の事を認めた気がした。

 

神と言っても、やはり一人一人違うんだって改めて知った気がした。邪神の様な神もいればヘスティアの様な神もいるのだと。………今まで神と名乗る連中に録な奴がいなかったけど、うん。凄く、すごーく納得がいかないし、ひじょーに業腹だがその認識は改めた方が良いのかもしれない。

 

でも、そんな自分の反省も束の間、ヘスティアの神威に反応したのか上層にいた階層主の巨人がいきなり天井を突き破って降ってきたのだ。やっぱ神って余計な事しかしねぇな!

 

と、まぁそんな訳で自分はゴライアスの所為で塞がれてしまった出口を直したり、冒険者に襲い掛かるモンスターを処理したり、その最中に自分を窮地に追いやった荒くれ者達を助けるベル君に感心したり、マスクしててもバレバレなリューちゃんと一緒にモンスターを処理していたり、目があったアーデちゃんに手を振ったりしていた。

 

ゴライアスの方は荒くれ者達とベル君達が協力してこれを撃破、相変わらず余計な仕事を増やす女神ヘスティアだが、彼女の眷族に対する想いの深さに免じて、余計な口出しをしないでおくことにした。

 

但しヘルメス、テメーはダメだ。そもそも荒くれ者達に余計な口出しと魔法のアイテムを授けたのはコイツで、荒くれ者達はその口車に乗った程度、荒くれ者達にも当然非はあるが、ゴライアスを討伐したあとはベル君に素っ気なくはあるが礼と謝罪を口にしていたから自分も気にしない事にしているが、コイツはどう考えてもギルティである。

 

ベル君がゴライアスに止めを差している事にやたら興奮しているようだが、そんな奴を正面から鼻フックで吊し上げ、振りかぶって適当な所にぶん投げておいた。神をダンジョン内で放り投げるのはどうかと思うかもしれないが、奴にはアスフィーちゃんという健気な眷族がいるのでまぁ大丈夫だろう。

 

そんな訳でこれ迄の自分の悪いところとここ数日の出来事を書き記した訳だが、取り敢えずはこんな所だろう。自分の悪い所、良ければという押し付けをせず、まずは相手の気持ちを知ることから始めよう。俺は神ではなくベル君達と同じ人間なのだから。

 

あ、でも明日の宴には参加出来ないことだけはベル君に伝えないとな、確か神の宴だっけ? 今回は太陽神アポロンが主催するみたいだけど………。

 

ジャガ丸屋台で臨時に出る様になったんだよね。店長には今住んでいる家の紹介とかしてもらったし、世話になっているから余り断りたくないんだよね。

 

まぁ、ベル君なら分かってくれるだろ。女神ヘスティアも彼と二人でデートに行けるんだから、そんなに口うるさく言ってこないだろ。問題は自分にまで誘ってきたアポロンだが………うん、大丈夫だろ。

 

太陽神なんだから太陽の如く明るい神格者かもしれないし、俺のところの神話ではアレだったけどこの世界でもそうだとは限らない。宴の誘いを断った事を謝罪するのは次の日辺りでもいいだろう。

 

うん、そうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────燃えていた。

 

ジャガ丸屋台の店長の紹介で住むようになったこの世界でのマイハウス。埃まみれで、掃除するのが結構大変だったけど、意外と住み心地がよくてこれからの生活が楽しみになってきた家。

 

どんな風に彩ろうか、どんな風に飾り立てて、改装してみようか。ワクワクと年甲斐もなく楽しみにしていたのに、何故かその家は今ゴウゴウと音を立てて燃え上がっている。

 

「貴様が悪いのだ」

 

横から、聞きなれない男の声が聞こえる。

 

「貴様がアポロン様の寵愛を断り、無下にしたから神罰が下ったのだ」

 

「ヒュアキントス、此方の方も終わったぞ」

 

「分かった。………精々、自分の愚行を呪うがいい」

 

そんな台詞を吐き捨てて、アポロン・ファミリアの面々は去っていく。

 

彼は、ヒュアキントスは気付かない。自分が一体誰に喧嘩を売ったのかを。

 

ヒュアキントスは気付かない。今まで燃え上がる家を眺めていた男の目が、感情を失ったその目で彼等の背中をジッ見ていた事に。

 

───後に、ヘスティア・ファミリアとアポロン・ファミリアによる戦争遊戯(ウォーゲーム)が起こり、そこへある仮面の男が参加し。

 

オラリオは今までにない危機感に襲われるのだった。

 

 

 

 

 

 

尚、戦争遊戯までの数日間、ある予知夢の少女が嘗てない悪夢に正気を失い掛けたりしたという。

 

 




ボッチ、“プチ”怒る。な話でした。

Q.カサンドラはどんな夢を見たの?

A.怒り狂った怪獣王に直面したり、某第六天にタイマンするとか、きっとそんな素敵な夢です。





次回、ぼくらの戦争遊戯(ウォーゲーム)

シュウジ君の重力講座もあるよ♪

それでは次回もまた見てボッチノシ


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