『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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FGO。

第二部第三章無事にクリア!
今回の物語も面白かったです。

え? ガチャは?

……………ハハッ(死んだ目)


その21

 

 

 

√月※日

 

ロキ・ファミリアでお世話になって数日、ダンジョンにも潜らず平和的日々を送っていた自分の耳にある気になる情報が入り込んできた。

 

なんでも、ヘスティアの所の命ちゃんが悩みを抱えている様でここ最近連日に歓楽街を彷徨っているらしいのだ。神々の中でも比較的マトモな神格として知られるタケミカヅチの元眷族、彼の教育もあって生真面目な性格として知られる彼女が歓楽街という場所を彷徨うのは余程の理由があるのだろうか?

 

情報の発信源は偶々ヘスティア・ファミリアへ顔を出した際にベル君だが、彼も実際は目にしておらず彼等が日頃から厄介になっている“豊穣の女主人”で又聞きした情報らしい。

 

命ちゃんの様な娘がファミリアの皆に黙って歓楽街に赴くなんて尋常じゃない。間違ってもそういう(・・・・)話ではないと信じたいが、ベル君達が言うには此処の所の彼女の様子はおかしく、普段はその素振りは見せないが時折思い詰めた表情をしていた様で、聞かされた情報の件と合わせて彼女本人に聞くのは戸惑われる。という事らしいのだ。

 

こう言う時こそベル君達の主神であるヘスティアの出番で、実際何か悩みはないかとそれとなく話を聞こうとしたのだが、やんわりと断られてしまったらしい。

 

で、このままでは埒が明かないから今夜命ちゃんの後を付いていく事にして、事の真相を確かめに行くんだとか。未成年であるベル君が歓楽街に赴くのは個人的に……というか、自分の心情的にアウトなので見学という体裁を装い、保護者という事で自分も同伴する事にした。

 

最初は無関係な自分を巻き込みたくはないと遠慮していたベル君達だが、ああいった場所に耐性の無いベル君を一人で行かせるのも無理な話で、年齢だけ積み重ねている自分ならある程度のフォローが出来るという事で納得してもらった。

 

歓楽街への突入組は自分とベル君、歓楽街近辺にはヴェルフ君とリリルカちゃんが外から街の様子を監視するという事で待機して貰う手筈になりその際に自分は二人にあるものを手渡した。

 

何て事はない、ただの双眼鏡と通信イヤホンである。この数日暇を持て余した自分が異端児達の様子を遠巻きから眺められる様にと思い作った代物で、倍率機能も搭載されておりイヤホンと合わせれば外で待つヴェルフ君たちもリアルタイムで此方の様子を確認出来るだろう。

 

イヤホンの方も可能な限り小型化に成功しているので装着しても周囲の人目には気付かれないだろう。尤も、外れてしまっては元も子もないので可能な限り大事に扱って欲しいのだが……まぁ、その辺りは状況次第だろう。

 

本来なら互いの居場所を知れる為にGPS機能も付けておきたかったけど、流石に材料と時間が足りなかった。こんな事になるならもっと頻繁にダンジョンに潜れば良かったかなぁ?

 

と、反省は此処までにして人数分のイヤホンとヴェルフ君とリリルカちゃん、二人分の双眼鏡を手渡し、自分達は今夜命ちゃんの後を追って歓楽街に向かう事になった。

 

………ただ、一つ気になった事は双眼鏡と通信イヤホンを渡した時のベル君達の反応だ。確かにこう言う機械的な品はこの世界では中々見掛けないが、この迷宮都市には【万能者】なる発明家がいるし、彼女に至っては空を飛べる靴を作るのだから彼女と比べたら大した品では無いと思う。

 

まぁ、今回はいずれ至る彼女の発想を自分が先駆けしたという所だろうか、彼女ほど聡明な人物ならダンジョンで仲間と離れ離れになっても冷静に対処できる様に~なんて経緯から作ってしまえそうなものだしね。

 

ていうか、既に作っていそうでもある。彼女がその品を世に出さないのはダンジョンという特殊環境に合わせた代物を作っているから、という理由ならば未だに通信端末の一つも出ていない事も理解できる。

 

話は逸れたが、これで最低限の連携は取れる筈だ。自分達の目的は命ちゃんの尾行、並びに彼女の回収、見付けてもすぐには声を掛けずばれない程度に距離を保ち、最悪の状況に備えて即離脱の準備を心掛ける事。

 

この事を踏まえて自分達は今夜、歓楽街に乗り込む。童貞の自分には刺激が強いと思い敢えて近付かなかった未知の街、果たして何が待ち構えているのか。

 

………ヘスティア? 彼女はお留守番です。マトモな逃げ足も無い奴が来ても邪魔になるだけだし。そもそもアイツは眷族の帰ってくる家を守るという大事な使命がある。神としての力を封じ、只人と変わりない神が出来る事なんて、精々そのくらいだろう。

 

眷族達の帰りを信じて待つ、力を失った神がやることはそれくらいで充分だ。

 

 

 

 

────因みにこれは余談だが、ヘスティア・ファミリアへの入団希望者はある理由で今のところゼロらしく、その理由が“蒼のカリスマと関わりがありそうだから”である。

 

解せぬ。

 

あとリリルカちゃん、人の顔を見てまさかとガクブルするの良くないと思うよ? 何気に傷付き易いからね僕。

 

 

 

√月∂日

 

少し面倒な事になった。昨夜の歓楽街での命ちゃんの追跡ミッションで知り得た情報だが、何やらベル君がまたもや厄介ごとに首を突っ込んで行きそうな雰囲気なのだ。

 

先ず昨日の出来事を順に説明すると、潜入自体は滞りなく進んだ。事前に渡した通信イヤホンと二人に渡した双眼鏡も上手く作動したし、二つの品が上手く連動した事により命ちゃんの発見と尾行も驚くほどすんなりいけた。

 

途中トラブルに見舞われたが監視に徹していたサポート二人によって自分も然程派手に動かずに済み、命ちゃんと一定の距離で保つことが出来た。

 

命ちゃんの後を追うこと数分、何やら大きな建物の前に辿り着いた彼女は意を決してそのたてものへと乗り込もうとした所へ自分達が間に入り彼女を回収。慌てふためく彼女を他所に取り敢えず自分達は人気の無い所へ落ち着く事になった。

 

最初は自分の都合に申し訳なく思っていた命ちゃんだが、ベル君の必死の説得に応じて事情を話してくれた。そしてその理由の件なのだが、思った通り中々面倒な事になっていた。

 

命ちゃんが入ろうとしていた店、そこでは命ちゃん達タケミカヅチ・ファミリアの眷族達が昔から仲良くしていた狐人(ルナール)がいるようで、彼女を助け出そうとしていたらしいのだ。

 

その狐人の名前はサンジョウノ=春姫ちゃん。何でも由緒正しい家柄の娘だったらしいのだが、とある理由で家から勘当され、身売りによってこの迷宮都市の歓楽街まで飛ばされてきたらしいのだ。

 

そう言う理由なら仕方ない。色々と思い切りよすぎる所はあるが、要するに昔の親友を助ける為に命ちゃんは単身でその春姫ちゃんを助けようとしていたのだ。やはり命ちゃんは間違っていなかったと安堵するベル君達、自分も知り合いの子が酷い目に合っていなかった事に安心し、ちょっと小言を言うだけにしておいた。

 

で、その春姫ちゃんだが。今は娼婦としてイシュタル・ファミリアの経営している店で働いているらしいが、詳しい居場所はまだ分かっていない。自分一人が潜入してイシュタルと交渉するのもいいが、それでは親友の為に動いていた命ちゃんの想いを踏み躙る事になる。

 

そこで自分は一つの計略を試すことにし、取り敢えず今日のところは一先ず退散し、明日改めて潜入する事にした。

 

久しぶりの潜入、腕がなるゾー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕、ベル=クラネルにはこれ迄沢山の人達に支えてもらって今日まで何とか生きてきた。

 

神様、ヴェルフ、リリ、命さん、ファミリアの皆だけでなくリューさんやシルさん、“豊穣の女主人”の皆さん、ミアハ様や他にも色んな人達が僕達を助けてくれた。

 

シュウジさんもその一人で、その類いまれなる知識と力で僕だけじゃなくファミリアの皆の手助けをしてくれた。掛け替えのない恩人の一人、今回も僕達の問題を助けてくれる為に色々と尽くしてくれて、どんなにお礼を言っても足りないくらいの恩があった。

 

圧倒的知識量と経験から紡がれるその言葉はいつでも僕達の力になってくれた。だから、今回もきっと道を示してくれると、そんな風に思っていた。

 

今思えば、それは甘ったれた考えだったのだ。どんなに間違っていたとしても、僕達は自分の力で何とかするべきだったのかもしれない。

 

───だって。

 

「き、貴様ら、本当に我がファミリアの入団希望者なのか?」

 

「えぇ、そうよ。三女ベール、次女ヴェルチア、そしてこの私長女リン。名高き女神イシュタルとその眷族達の噂を耳にして遥々迷宮都市の外からやって来たの」

 

「人呼んでベルリン三姉妹。さ、女神イシュタルにお目通りを願おうかしら?」

 

今、僕達は女装をしてイシュタル=ファミリアに正面から乗り込もうとしているのだから。

 

 

…………なんでぇぇぇぇ!?!?

 

 

 

 




ボッチ「羞恥心とは投げ捨てるモノ」

尚、周囲からは誰一人声が掛けられなかった模様。

それでは次回もまた見てボッチノシ

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