『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

153 / 417
いよいよクリスマスイベント間近!

楽しみですね~。


その22

 

 

女神イシュタルは美しい。それはここ迷宮都市オラリオでも多くの人、神々が認めていてイシュタル本人もそれを信じて疑わない。

 

あらゆる人間、神、全ての種族が己の美貌に酔いしれ、ひれ伏すのだと女神イシュタルは絶対の自身を持っていた。そう、自身と同じ美の女神として称されるあの忌ま忌ましいフレイヤが己の目の前に現れるまでは。

 

美の女神と言えば、と聞けばフレイヤと答えるものが多くなった。何故自分ではなくフレイヤなのか、イシュタルは妬んだ。妬み、僻み、そしてそれは軈て憎しみと呼べる程の激情となってイシュタルの内側で暴れまわっている。

 

そのフレイヤが本拠地(ホーム)で引き籠もっていると知った時は少しばかり溜飲が下がったが、それでも自分がこれまで受けてきた屈辱の事を考えると腹の虫は収まらず、寧ろ今こそがフレイヤを眷族諸ともオラリオから追放するチャンスなのだとイシュタルは考えた。

 

自分こそが美の女神なのだと、誰よりも美しい自分こそが世界に讃えられるべき存在、準備は既に整っている。春姫という得難い駒を手に入れた事で打倒フレイヤ=ファミリアがより現実味を帯びてきた。

 

協力者であるカーリー・ファミリアが消えた事は大きな痛手だが、今は代わりに闇派閥(レヴィス)の連中もいる。寧ろ裏世界に精通している奴等と手を組んだことで計画はより完璧に近くなったと言える。

 

後は邪魔なフレイヤを人間界から物理的に追放するだけ、自分の計画に穴はない。そう確信していたイシュタルは………。

 

「まずは、お目通りを許してくれた事に感謝の言葉を送らせて戴きますわ。名高き美の化身女神イシュタルよ」

 

「あぁ、うん。どうも」

 

目の前の矢鱈筋肉質な女………女? にイシュタルは現在思考を停止していた。

 

いや、混乱しているのは主神である彼女だけではない、彼女を守るために集められた選りすぐりの幹部達、戦闘民族の種族として知られるアマゾネス達の彼女等も目の前の珍獣に困惑していた。

 

自らをイシュタル・ファミリアの入団希望とやって来た三姉妹ベール、ヴェルチア、そしてリンという自称ベルリン三姉妹、末っ子のベールが可愛らしい外見をしているのはまぁ分かるが、それでもあとの二人は色々無理があるだろう。

 

特に長女を自称するリンに至ってはお前本当に女のつもりかと疑うレベルだ。鍛え抜かれた四肢を惜し気もなく晒し、見たくもないバキバキに割れた腹筋とヘソを露にしていている。明らかなアマゾネスを真似たその格好にイシュタルとその眷族達は色んな意味で度肝を抜かれていた。

 

「えっと、それで? お前達がその……私のファミリアに入りたいって言う入団希望者?」

 

「えぇ、門番の方からお話があった通り我々ベルリン三姉妹が己の美と女を磨くべく遥々遠くからやって来た次第です」

 

目の前の自称女が何か言っているがイシュタルの耳には余り入ってこない。衝撃的過ぎる長女の格好に未だ見慣れていない彼女では彼女(?)の言葉の真偽を確認する事だけしか出来ないでいる。

 

「うん、まぁお前達が私の眷族になりたいのは分かった。しかし何故お前だけがその……格好がアレなんだ?」

 

アマゾネスを意識した格好の長女に対し、次女と三女は大人しい服装となっている。膝下よりも長いスカート、上着の服も地味めで色合い的にも目立つ所は見当たらない。普段ならば地味な女と笑い飛ばしていた所だが、長女のお陰なのか然程気にはならなかった。

 

「本来ならこの子達にも相応の格好をさせてやりたい所だったのですが、次女は環境の所為もあって男勝りな性格となり女としての自覚は薄く、末っ子に至ってはまだ年若い為に未だに女らしい格好になれておりませんの。故に強く美しい種族の代表格であるアマゾネスの皆さんあやかり、私が格好だけでも真似る事で二人の模範となるように努めてきましたの」

 

お前がそんな格好しても模範になんねーよ。という言葉をイシュタルは精一杯呑み込んでみせた。何でよりによってお前なんだよ、と。お前が後ろの二人みたいに着込んでいろよ、とか様々な感情が駆け巡ったがそれらの疑問やツッコミをイシュタルとその眷族達は全力で飲み干して見せた。

 

「あぁうん、取り敢えずお前達が私の眷族になりたいと言うのは分かった。けれど今此方は色々立て込んでいてな、今すぐお前達を私の眷族に加える事は出来んのだ」

 

「むむ、そうですか。それはタイミングが悪かったですね。しかしこれは困りました。今私達には宿を探す余裕もなく、路銀もありません。近くに格安の宿舎施設があれば良いのですが……」

 

「それに関しては心配するな。この娼館にはまだ空きの部屋がある。事が済むまでそこで休んでおけ」

 

「おや、それは有難い。ですが良いのですか、我々のような外部の人間を簡単に置いてしまって」

 

「────侮るなよ。我が派閥は単なる娼婦に非ず、戦いにも秀でた戦闘娼婦で成り立っている。お前達がおかしな言動すれば即座に処理する事も可能だ」

 

長女リンの挑発めいた言葉に敢えて強気で対応したイシュタルは自身が築き上げてきた眷族達を以て威嚇する。数多くいる冒険者達の中でも上位に位置する戦闘娼婦のアマゾネス達、彼女達が放つ威圧に呑み込まれそうになる次女と三女、そんな中唯一長女のリンだけは二人を庇うように前に立ち、平然と彼女達の威嚇を受け流していた。

 

やはり只者ではない。ふざけた格好をしているが目の前の長女は己の眷族達の殺気を受けても平然としている。その姿勢に少なからず興味を抱いたイシュタルはフレイヤ・ファミリア打倒後は彼女達を引き入れる事を決心した。

 

「ふふふ、成る程大した胆力だ。その度胸に免じ、此度の件を終えればお前達を我が派閥の一員になることを許そう。それまでは用意した部屋で休んでおれ」

 

「ご配慮、感謝致します」

 

「うむ、アイシャよ案内してやれ」

 

「はいよ。そら、此方だよ」

 

頭を下げ、感謝の言葉を口にする姉に倣って二人の妹も頭を下げる。あの三人がファミリアに入る事を色んな意味で楽しくなってきたイシュタルはこれから自身が待つ栄光の日々に夢想する。

 

あの姉妹、特に長女は底知れない何かを感じる。まるでかの【魔なる者】の様な、刺激的で、未知に溢れ、それでいて恐ろしいあの魔人を何処か彷彿とさせている。

 

もし奴を自分の配下に加えたら、きっと己の派閥はもっと大きくなる。きっとフレイヤ・ファミリアに成り代わって新たなるオラリオ最強の派閥が生まれるに違いない。

 

その未来を夢見て、イシュタルは不敵に笑いその時が来るのを心待ちにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェルフ=クロッゾは目の前ソファーで寛いでいる長女リンことシュウジを見てつくづく底知れない人だと戦慄した。

 

女装をしてイシュタル・ファミリアに堂々と乗り込むという離れ業を平然とやってのけたと思えば、言葉を巧みに操ってイシュタルの神としての嘘を見抜く眼を欺いてしまった。

 

いや、詳しく言えばシュウジは嘘を言っていない。その日の内に抜け出すという前提があったとしてもイシュタル・ファミリアに入りたいと希望したのは本当だし、遠い所から来たという出自に関する話も嘘ではない。ただ本当の事を話していないだけでこうもあっさり上手く行くものなのか。

 

トドメにはイシュタル・ファミリアの眷族達、団長を除いた彼女達からの殺気に怯む様子は全く無く堂々とした佇まいもそうだ。一体どんな体験をすれば彼処までの度胸が身に付くのか。

 

(おまけにこんなスゲェマジックアイテムも作っちまうと来た。一体何なんだこの人は)

 

事前に手渡された通信端末、耳に備え付けられたこの品も結局はイシュタル・ファミリアにバレずに済んでいる。耳の穴に填まる様に作られたこの装置を軽く触れただけで歓楽街の外にいるリリルカ達と言葉が交わせるというのだから驚きだ。

 

一体この人………シュウジ=シラカワは何者なのか、疑問に思うヴェルフだが今はそれよりもこの館に囚われている春姫なる狐人を助けるのが先だと、ヴェルフは頭を横に振って気持ちを切り替える。

 

「さて、我々がこの館に潜入した時点で目的の三分の一は完遂した。後は春姫なる狐人の少女を誘拐……もとい、この館から連れ出してほとぼりが冷めるまで俺の家で匿う手筈だけど、二人とも逃走経路の方は頭にいれてるかな?」

 

「はい、シュウジさんが用意してくれたこの館の見取り図が分かりやすくて覚えるのも簡単でした」

 

「それは良かった。でも来る前にも言ったけどこれはあくまで俺が音で計測して図ったモノだから、あまり過信しないように気を付けてくれ、万が一は大きな声を出して居場所を報せる様に、最悪そこからは俺が何とかするからさ」

 

「でも旦那、本当にフレイヤ・ファミリアの連中はここへ来るのか? 確かに女神イシュタルは同じ美の女神のフレイヤを面白く思っていないのは分かったけど、向こうには【猛者】がいるんだろ?」

 

「その【猛者】を抑えるための用意がイシュタル・ファミリアにはあるのだと思うよ。そしてそれこそが春姫なる狐人を厳重に囲っている理由なんだろうさ。それに神なんて者は総じて身勝手極まりない輩が多い。自分の目的が達成されると知れば何を犠牲にしても取りに来る。そして矛先を向けられた時は遠慮無く報復する。故に断言するよ、フレイヤ・ファミリアは必ず来る。というか、【猛者】がそれを許さないだろうしね」

 

確信した様子で断じるシュウジにヴェルフは二の句も言えずに押し黙る。神に対して不遜とも言える物言いだが、そう言わせるだけの経験があるような言い方にヴェルフはなにも言えなくなった。

 

益々深まるシュウジへの疑問。自分達に協力してくれるのは有難いが、それでもヴェルフのシュウジへの疑念は消えることはない。悪意がないのは分かる、しかし自分達の為に無益と知りながらもここまで献身的になってくれる目の前の男にヴェルフはどうしてもそれが拭えなかった。

 

するとその時、扉の方から足音が聞こえてくる。重く、響くような足取りだ。相当な巨体を思わせるその足音の主は部屋の扉をノックせずに開け、その姿を露にする。

 

それは、まるでヒキガエルの様なモンスターだった。イシュタル・ファミリアはモンスターも飼い慣らしているのか、驚愕に打ち震えるヴェルフとベル、よく見れば人にも見えなくもないがその風貌はダンジョンの奥で潜むと言われる階層主の様………。

 

「ゲゲゲッ、イシュタルが珍しく良い拾いものをしたなんて言うから来てみれば、なんだい相変わらずブサイクばっかりかよ。美の女神とか言われている割には大した事はないねぇ」

 

ヒキガエルの様な風貌のアマゾネス、イシュタル・ファミリアの団長であるフリュネ=ジャミールはその巨大な口を大きく広げて嗤う。己を絶世の美女と信じて疑わない彼女達は己の前に立つ全ての女がブサイクに見えてしまう。

 

男殺し(アンドロクトノス)】、男性であるならば一級の冒険者からも恐れられる彼女を前にヴェルフとベルは震える自身の体を抑えるだけで精一杯だった。

 

「無粋ですよ。貴女もイシュタル・ファミリアの人間ならば少し弁える事も覚えた方が良いですよ」

 

「あぁ?」

 

そのフリュネの視線が一人の女(女装)へ向けられる。またブスが私に負け惜しみを言いに来たな、と。新人の癖に生意気だと思いながらドスの利いた声を漏らしながら振り向くと。

 

フリュネは絶句した。

 

引き締まった肉体、一切の無駄を省き躍動感溢れる筋肉、睫毛は長く見るもの全てが平伏してしまいそうな威圧感、フリュネが目指す美の究極がそこにあった。

 

膝から崩れ落ちるフリュネ、自身を絶世の美女と信じてきた女が初めて痛感する挫折の瞬間。味わった事のない彼女が次に口にしたのは。

 

「………頼む」

 

「ん?」

 

「アタイを、アタイをアンタの………弟子にしてくれ!」

 

「「………………はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」」

 

 

当然ながら、ベルとヴェルフは絶叫した。

 

 




Q.今のボッチの格好ってどんなかんじ?

A.カーズ様に少し布面積を増やした感じです。



閃の軌跡4をプレイして妄想したワンシーン。

鉄血 の オズボーン と ルーファス と セドリック が勝負 を 仕掛けて 来た!

オズボーン「顕れろ! イシュメルガ!」

ルーファス「来るがいい、エル=プラドー!」

セドリック「来い! テスタ=ロッサ」

三人 は イシュメルガ、エル=プラドー、テスタ=ロッサ を 繰り出してきた!


ボッチ「噂の騎神が三体も、これは私も本気で挑む必要がありますね。行きますよ。ネオ・グランゾン!」

せかい は まっくら に なった!


……あかん、バッドエンドやん。


それでは次回もまた見てボッチノシ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。