『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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ドラゴンボール、映画見てきました。

ブロリストである自分も大満足な出来映え!

もう一回観に行く所存です。

いやー、ブロリーとチライの絡みに尊みを感じる。

具体的には某女神と雷光みたいな感じ(笑)




その23

 

 

 

膝から崩れ落ち、縋るように懇願するフリュネ=ジャミール。イシュタル・ファミリアの団長にしてLv5の女傑であり【男殺し(アンドロクトノス)】として迷宮都市の多くの男性を震え上がらせてきた傑物、カエルに似た顔を更に歪ませてフリュネはリン改めシュウジに弟子入りを求めた。

 

当然の事ながらベルとヴェルフは困惑した。戸惑い、混乱し、思わず叫び声を上げてしまう位には動揺していた。何故こんな事になってしまったのか、未だに理解できない二人はただその様子を眺める事しか出来ないでいる。

 

というか、関り合いたくないというのがヴェルフの本音である。

 

「弟子入り、それは私の美しさの秘訣を知りたい。という意味かしら?」

 

「あ、あぁそうさ! 悔しいけどあんたの美しさは本物だ! 鍛え抜かれた四肢、長い睫毛、まるで男が女装しているような頑強さ! 一級の冒険者にだってアンタのような奴はいないだろうさ!」

 

((正解!))

 

フリュネの的確すぎる指摘にベルとヴェルフは口を両手で塞いで噴き出すのを堪える。そこまで言い当てるならいっそ女装していると見破っても良さそうだというのに………しかしバレていないなら好都合、ここは余計な事は口にせずもう暫く様子を見ていても良いだろう。

 

「アタイ以上の美貌を目にするなんて夢にも思わなかった。でも事実アタイは認めちまったんだ。アンタの美しさに、アタイは負けたんだってな!」

 

「勝手な事を言っているのは重々承知している!

でもどうしても知りたいんだ! どうやったらそこまでの美貌を手に入れられる!? どうすればアタイはもっと美しくなれる!? 頼む、一欠片でもいいから、その秘訣をアタイに教えてくれ!」

 

両手足を地に張り付け、頭を下げる。それは所謂土下座というものだった。嘗て女神ヘスティアがヘファイストスに眷族への武器を作って欲しいと嘆願した際に繰り出した一部の神々と人々にしか伝わっていない頼みごとに於いての秘奥義。

 

自らの美しさに絶対の自身を持つフリュネ、故に美しさに誰よりも貪欲なアマゾネスの戦闘娼婦、そんな彼女の訴えに何か思う所があるのか、シュウジは遂にその口を開いた。

 

「美しくなりたい。貴女は今、そう言ったのね。なら一つ聞かせて頂戴、貴女にとって美しさとはなに?」

 

「肉体の強さ。頑強で力強く、何者にも折れず屈せず、己を己としていられる絶対的象徴!」

 

必死に、けれど言葉は選ばずに自分の思う通りに美しさに対する気持ちを露にするフリュネにベル達は意外なモノを見たような気持ちで眺めていた。

 

フリュネにとって美しさと強さはイコール()で結ばれている。強ければ強いほど人は美しくなるものだと信じ、故に頑丈な外見である自身を誰よりも美しくあると信じて疑わない。

 

そんな必死なフリュネをシュウジ───否、リンは慈愛に満ちた笑みを浮かべていた。

 

「成る程、美しさとは強さ。それもまた真理なのかもしれない。突き詰められた強さは時に芸術の様な輝かしさを放つもの、貴女の言う美しさもそういう意味では正しいのかもしれない」

 

「じゃ、じゃあ!」

 

「でもね、それだけではないと私は思うの。だって強さだけが美しさの証明になるなんて、そんなの寂しいじゃない」

 

寂しい。フリュネの語る美しさの原点をそう論じるリンにフリュネは頭をガツンとハンマーで叩かれた様な衝撃を覚えた。美しさとは強さ、逆を言えばそれしかないと無意識に断じてきた彼女にとってリンの言葉は剰りにも衝撃的だった。

 

「私にとって美しさとは万華鏡の様なもの、視点を、見方を、在り方を変えればそれだけ人は美しくなる。貴女の言う美しさに対するぶれない気持ちも素敵だと思うわ。でも、それは岩石や彫刻の様な完成された美しさ、確かにその美しさも人々は惹かれると思うけど、私からすれば少し寂しいと思うの」

 

「…………」

 

「ねぇ、貴女は恋をしたことってある?」

 

「恋?」

 

「誰かを好きになる事。思いやって、焦がれて、それでいて胸が締め付けられる位辛くなる。そんな甘くも苦い感情の事」

 

恋という言葉を耳にしたとき、フリュネはゆっくりと首を横に振った。自分はこれまで多くの男を喰らってきた。無遠慮に、無差別に、無理矢理に、泣いて許しをこう男達をフリュネは愉悦を抱きながら喰らい尽くしてきた。自分の美貌をより美しくする為、【男殺し】なんて二つ名を手にしたときなんかは男が自分には勝てないという絶対の自信の裏付けされたのだと歓喜に震えた程だった。

 

「恋を以て愛を知る。人はそれを【恋愛】と呼ぶのよ」

 

「れん……あい?」

 

「そう、そして恋愛は女をより強くさせる。それこそ誰にも負けない程に、ね」

 

その言葉は何故かとても実感の籠った言葉だった。まるでその事を目の当たりにしたかの様な口振り、優しく笑みを浮かべているリンを、シュウジをこの場にいる誰もが綺麗だと思った。

 

(あぁ、そうか。アタイは……間違っていたのか)

 

シュウジの微笑みに全てを察したフリュネは自分がこれまでしてきた事が間違いであったと思い知った。他者を貪り、強さを求めるだけの美学。けれどそれだけでは限界があるのだと、この日フリュネは知ることになった。

 

フラフラと覚束無い足取りで立ち上がり部屋を後にするフリュネ、その際に一度だけ立ち止まり。

 

「ありがとうよ。アンタのお陰で少しわかった気がするよ。アンタ達が何の目的でウチに来たのかは知らないけど、精々気を付けな」

 

「えぇ、そちらこそお元気で」

 

それだけの言葉を交わしてフリュネは今度こそ部屋を後にする。恐らくはフレイヤ=ファミリアとの戦争に備えに向かったのだろう、人気は無くなり遠くから騒音が聞こえてきた頃合いを見計らって………。

 

「さて、それじゃあ我々も動こうか」

 

「うす!」

 

「はい!」

 

三人は春姫を奪還する為に行動を開始した。

 

───無論、女装のままで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨が降っている。歓楽街は闇派閥(イヴィルス)とイシュタル・ファミリアとフレイヤ・ファミリアの抗争によって半壊し、あちこちから悲鳴と怒号が溢れている。

 

フリュネは己の武器を手に立ち上がっていた。息は荒く、身体中に傷を付け、体力も限界に差し掛かり、それでもなお彼女の瞳には強く光を灯している。

 

「ほぅ、中々しぶといな。それも例のレベル・ブーストの恩恵か?」

 

その彼女が今前にしているのは────《龍》だった。身に纏う鎧は燦々と燃え上がり、手にしている剣はそれ以上の焔を纏わせている。

 

ただ身に纏うだけで死に至る呪われた龍の甲冑、内に眠れる龍を下し、新たに主と認められし者。

 

【猛者】。最近になってより高み(Lv8)へと至った迷宮都市最強の冒険者が、己の属する派閥を愚弄する輩に鉄槌を下すためにこの歓楽街へと足を踏み入れた。

 

「あの小娘のスキルなんて関係ないさね。アタイはアタイの力でアンタを倒すと決めたのさ」

 

鎧は砕かれ満身創痍のフリュネ、情報にあったスキルに頼らず、ただ己の力で窮地を覆そうとする女に【猛者】オッタルは冒険者としての在り方を見た。

 

「……そうか、ならば最早言葉は無用。貴様が抗い俺が潰す。この上ない単純な構図、俺も全霊を尽くすとしよう」

 

「ハッ! 悪いがアタイはまだ死ぬつもりはないよ! より美しくなるために、恋を、誰かを愛する事を知るために、アタイはこれからも生き続けるのさぁ!」

 

武器を構えてフリュネは跳躍する。その一撃に全てを掛けて吶喊してくるアマゾネスの戦士、その一撃に報いる為にオッタルもまた全力を奮う。

 

瞬間、歓楽街に一頭の龍が顕現した。全てを灰に還す劫火の一撃は軈て歓楽街を呑み込んだ。

 

この日、イシュタル・ファミリアは壊滅した。多くの眷族達は散り散りとなり、主神であるイシュタルは天界へと強制送還された。

 

その裏で暗躍していた闇派閥もロキ・ファミリアに所属するベート=ローガが単身で連中を撃破し、多くの市民の命を護っていた事が後に判明。また、この時の調査でベート=ローガはLv7に昇格していた事がわかり、現在ギルドに報告している模様。

 

異例な二重昇格(ダブルアップ)そんな彼の側には一人のアマゾネスの少女がいたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

√月Ω日

 

いやー、色々あったけど無事に春姫ちゃんを救出できて良かったよ。イシュタル・ファミリアもフレイヤ・ファミリアによって完全崩壊したし、春姫ちゃんも同郷の友人である命ちゃんがヘスティア・ファミリアに属している事もあってギルドも彼女がヘスティア・ファミリアに属する事も認めてくれた。

 

結果を見れば万々歳な出来事、歓楽街から脱出する際に見掛けたベート君も元気になっていたし、良かった良かった。

 

ただ一つ気になることがあると言えばフレイヤ・ファミリアの所の【猛者】オッタル、どうやら彼が自分が以前ヘファイストス・ファミリアに売りに出した鎧の購入者になってくれたらしいのだ。

 

結構使いこなしている見たいで製作者としては嬉しいかぎりだけど、個人的には少し複雑かな。この間は一方的に襲い掛かってきた相手だし、まぁ今はそんなに気にしてはいないんだけどさ。

 

それよりも今は鎧の方だよ。何でも彼が着用している鎧、つまりは俺が作った作品なんだけど、なんだかアレ、所有者を自身に見合った者じゃないと焼き殺す呪われた武具として扱われていたらしいのだ。噂で聞いた話だけど。

 

あれってそんな機能あったっけ? 確かに重力操作による加工の他に色々継ぎ足した代物だけど、そんな呪い要素は欠片もなかった筈だぞ?

 

鱗とか爪とか牙とか宝玉とか、某ハンティングゲームに沿った一品。炎を出せる機能はあっても所有者を選んだりとか、ましてや燃やして殺す物騒な仕様ではなかった筈だ。

 

だって自分で確かめたモノ、着心地とか色々試したんだもの、俺が着ている間はそんな様子は微塵もなかったんだよ!?

 

まぁ、でも噂とはいえそう言う話がある以上ヘファイストス・ファミリアには一度話した方がいいかもなー。知らなかったとはいえ、不良品を押し付けた様なものだし、もしかしなくても詐欺だよなぁこれって。

 

お金を返品しただけじゃあ納得……してくれるかなぁ。うーん、どうしよう。

 

取り敢えず明日早速謝りに行こう。喩え神が相手でも自分の非には素直に認めないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔々、あるところにカエルの戦士がいました。カエルの戦士は多くの人々から醜いと後ろ指を指され、孤独に一人寂しく生きていました。

 

しかしある日、カエルの戦士はある魔人と出会います。魔人は言いました。

 

“恋を知りなさい。恋を知り、愛を知ることで人は美しくなるのです”

 

それから、カエルの戦士は戦いました。恋を知るために、愛を知るために、カエルの戦士はいつも誰かの為に戦い続けました。

 

自分よりも弱い人を守り、どんな相手にもカエルの戦士は戦い続けました。あらゆる理不尽から、不条理から、力のない人々の為にカエルの戦士は戦い続けました。

 

軈てカエルの戦士は親のいない子供たちの親代わりとなり、彼等を守り続けました。

 

そしていつしか戦士は聖母と呼ばれる様になり、子供達をいつまでも見守りましたとさ。

 

────醜いカエルの戦士より抜粋。

 

 

 

 

 

 






………あれ? これフリュネが主役じゃね?


そ、それでは次回もまたみてボッチノシ

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