『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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スミマセン、オリジナル編はもう少し続きます。


その7

 

 

 

花の都パリ、フランスの首都であり人の繁栄を今日まで築き上げてき文明の街。その地下深くに悍しい程の邪悪が、蠱毒の壺の如く蠢いていた。

 

その邪悪に相対するはまだ年若い少年、顔には幼さが残り、社会にすら出ていない未熟者が決意に満ちた眼差しで敵を見据える。それを滑稽と嘲笑う者はおらず、仮にいたとしてもその嘲笑は彼が振り抜いた拳により粉微塵に消し飛ぶだろう。

 

アルは少年の背中を見ていつか魅せられた情景を思い出す。嗚呼、こう言う人間がいたのだと。どれだけの苦境苦難に覆われても、それに挑み覆してきた人間がいた事を。───その背中を見て月の姫君は決めた。彼の戦いに一切の干渉をしない事を。

 

だって、見てみたいと思ったから、これから目の前の少年が、魔術師でもない腕っ節だけの子供が、どれだけの事をしでかすのか今から楽しみで仕方がない。

 

「──ぶちのめすとは、中々大きく出たものだ。先程の言動といい、確かに腕は立つようだが……神秘には程遠い。魔術のなんたるかをも知らぬ小僧が、あまりつけあがるなよ」

 

「ご託は良い、お前は此処で終らす。ぶちのめして、お前の食い物にされた人達に死ぬまで詫びを入れさせてやる」

 

「ククク、つくづくおめでたい小僧だ。これ程身の程知らずな愚か者は久しく見ていない。───良いだろう、その愚昧さに免じて私の研究の粋を見せてやる」

 

不気味な含み笑いを浮かべながらネルロクが懐から取り出したのは一本の注射器、中の容器の液体は琥珀色に燦々と輝き、それはまるで自然界に於ける猛毒の類いの色合いだった。

 

瞬間、男はその注射器を何の躊躇もなく自らの首筋に突き立てる。その様にギョッと息を呑む修司だが、何をするつもりだと問い詰める前に男の肉体に変異が起きる。

 

「ぬ、ぐ、ガァァァ……ッ!!」

 

苦悶の雄叫びを上げぶ男からボコボコと凡そ人体から出てくるとは思えない音を発し、それに比例して男の肉体が盛り上がっていく。

 

肥大化した体躯、右腕は歪に変形し右目は眼球がギョロリと剥き出しとなる。死徒と言うより別物の怪物へ成り果てるネルロク、初めて目にする異形の存在、死徒とは違う人外の怪物を前に修司の頬が引き攣った。

 

「………王様が嵌まってたバイオゲームの方がまだ凝ってたな」

 

「フフ、強がりも其処まで言えば立派だな」

 

歪な相貌の中に潜む確かな理性───否、狂気に静かに見据えていたアルは内心で僅かだが感心する。吸血衝動の塊である死徒としての本能を抑制し、自我を保っている。歪で醜悪な外見になるのと引き換えに知性を得たと言うのなら、確かにネルロク=マルケルの研究は進歩していると言えるだろう。

 

姿が変わった事で気分が高揚しているのか、不気味に笑うネルロクに対し、修司は静かに相手を見据えている。胆が据わっている、初めて目にする人外の存在に動揺しても畏れを表に出さない修司にもアルは感心した。

 

「さて、初めての死徒化に成った訳だが、このまま君を殺すのは少々味気ない。幾つかの性能を試してみよう」

 

「ッ!!」

 

瞬間、ネルロクのいた場所が爆発する。視界から奴の姿が掻き消えたと同時に修司の危機察知能力がフル稼働する。咄嗟に横へ跳ぶと修司の横腹にあった服の布が千切れ、鈍い痛みが全身を駆け巡り見れば其処には赤黒い痣が出来上がっていた。

 

「ほう、今のを初見で躱すか。やはり君の身体能力は他よりも大分優れているようだ。その優れた肉体、是非私の研究に欲しい」

 

「……嫌だね。誰がお前の研究なんかに協力するか」

 

「君の意思は関係ない、これは既に決定事項だ。君の肉体を使って私の研究はより高みへ至るだろう」

 

随分な上からの物言いに腹が立つが、それに気を配る余裕はない。何せ直接当たらず掠っただけで此処までダメージを負ってしまったのだ。直撃は絶対に避けねばならない。

 

「さて、最初に肉体の機能向上は確認できた。次は私の魔術を見せてあげよう」

 

「あぁ?」

 

固有時制御・二重加速( Time alter―double accel)

 

ネルロクが何かを呟いた瞬間、背後から殺気を感じ、同時に視界の左から影が飛び込んでくる。咄嗟に反応できたのは日頃の鍛練の賜物か、 防御するように左腕を上げて右腕を支えにするが、影から伝わってくる衝撃は修司の想像の遥か上をいっていた。

 

衝撃に耐えきれず、修司は身体ごと吹き飛び壁へと叩き付けられる。全身から伝わる衝撃は確実に修司にダメージとなって刻まれ、押し出された肺からの空気が血と混じり吐瀉物となって吐き出される。

 

視界に火花がチカチカと瞬き白に染まる。呼吸が出来ず何が起きたか分からない修司に更なる追い討ちが襲い掛かる。

 

眼前に迫る歪となり肥大化した腕、振り下ろされるそれは間違いなく必死の威力を秘めた一撃だった。混乱する思考をそれでも回避へと全フリし、形振り構わず横へ飛ぶ。

 

瞬間、爆発の様な衝撃が修司を襲う。勢いに流され、受け身もとれずに地を転がるもそれでも体勢を瞬時に整える辺り、師からの薫陶は確かなものだと伺わせた。

 

「ハァーハァーハァー……」

 

混乱する思考、あの瞬間何が起きたか理解出来なかったが、今はそれよりも大事な事がある。──左腕が動かない。ネルロクの奇襲に咄嗟に反応し防御に徹した左腕はピクリも動かず、その肌色を黒みの強い紫色へと変質させてしまっている。

 

伝わってくる痛みに汗が噴き出してくる。呼吸は乱れ、意識も揺れ動いているが、それでも目の前の敵から視線を逸らすことはなかった。一度でも逸らしてしまったら今度こそ殺されるという確信があったから……。

 

「フフフ、どうやら魔術の方も問題なく運用出来た様だな。これでノリカタの研究は正しかったと証明された訳だ」

 

「───」

 

「フフ、何が起きたか理解出来ていないようだな。宜しい、冥土の土産に種明かしをしてやろう。私の魔術は少々特殊でね、他者の魔術を模倣する事が出来るのだよ。我が家系は中々の怠け者でね、自分で根源に至るより他人の力で根源に至る事を模索したのだ」

 

「次代を重ねる毎に我が魔術は力と経験を重ね、複雑な条件付きではあるが他者の魔術をそのまま自分のモノに寸分違わず扱える事ができる。今の魔術はノリカタの息子であるキリツグが己の家系の魔術を戦闘用に特化させたものだ。彼は魔術師殺しで有名な男だったから、情報を得るのに随分苦労したよ」

 

「…………」

 

「けれど、その苦労あって彼の魔術を完全に自分のモノに出来た。更に死徒化へ至った事でこの魔術による負担も実質ゼロとなった。流石に吸血衝動を完全に消す事は叶わなかったが、それでも充分だ。───さぁ、長くなったからこれで終わりにしよう、苦しませるのは私としても不本意だからね」

 

固有時制御・三重加速(Time alter―tripleaccel)

 

慢心しているつもりはなかった。修司は油断なく相手を見据え、傷付いた身体でも全力で迎え撃つつもりでいた。決して負けない、しかしそんな修司の決意とは裏腹に彼は眼前に迫る拳に反応仕切れず、顔面から伝わる衝撃により意識を閉ざした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───死んだか、出来れば生きたまま生け捕っておきたかったが、まぁ仕方あるまい。ホルマリン漬けにする事を念頭に保存方法を考えておくとしよう」

 

ネルロクの放った一撃は確かに修司の顔を貫き、彼の身体は再び壁へと突き刺さり崩れた瓦礫の下敷きとなっている。死した少年の最期に材料としての価値が下がったとネルロクは嘆くが、死徒となった事で前向きな思考となっているのか、それよりもと気持ちを切り替えて相変わらず佇むアルに向き直った。

 

「さて、待たせてしまって申し訳ないね。麗しいお嬢さん」

 

「───」

 

「お友達が死んだことに動揺したかな? なに、心配することはない。直ぐにそんな事はどうでもよくなる。安心して私に身も心も任せると───」

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「アンタ、私の事、本当に分かってないの?」

 

「──あ?」

 

アルから告げられる一言にネルロクは呆けた顔を晒す。何を言っているのか最初は理解できなかったが、彼女の全身から滲み出る覇気と何より死徒となった事により初めて伝わってくる感覚にネルロクの本能による警告が騒ぎたった。

 

「ば、バカな、何故真祖の姫が……」

 

「うわー、本当に気付いてなかったんだ。いや、気付かなかったと言うより、此処にいる筈がないっていう確信からくる思い込み……て奴なのかな」

 

金色の髪がサラサラと揺れて、緋色の瞳が喜悦に歪む。ネルロクにとって………否、地球に住む全ての生命の天敵の存在がまるで童女の様に笑みを浮かべている。

 

「何故だ。何故、お前がここに、私の隠蔽は完璧だった筈、お前が此処にこない為に私は今まで秘密裏に動いていたのに」

 

「えぇ、アンタの目論見通りつい最近まで貴方の目的は知ることもなかったわ。けれど、二年前位かしら、一人の男の子が死徒を殺して回っているていう埋葬機関の知り合いから話を聞いて、興味本位で調べたの」

 

「ま、まさか……」

 

「そう、シュージがあの頃からせっせと死徒を斃して回っていたから私にも耳が入ってきたわけ、まぁ、尤も私はシュージの方に興味があっただけで、アンタの方はオマケだったんだけどねぇ」

 

カラカラと笑うアルに対し、ネルロクの顔色は何処までも青かった。思いも知らない所で露になった自身の計画、悔しさと憤りで雄叫びを上げそうになるが、それを遮るようにアルが言葉を続けた。

 

「あぁでも安心して、今回の件で私はこれ以上深入りしないから、アンタが逃げるのなら私は追ったりしないわよ」

 

「な、なに?」

 

「だって、アンタの相手……まだ終わっていないんだもん」

 

自分を見逃すというアルにネルロク目を丸くさせるが、次いで出てきた言葉にまさかと全身から失った機能である筈の鳥肌が立つ。

 

恐る恐る背後を見れば、瓦礫から立ち上がる一人の影、その顔を鮮血に染め上げ、それでも意思の強さをその瞳に宿した修司がネルロク=マルケルを睨み付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───それは、欠けた夢の中だった。

 

襲い来る巨大な影、空を覆い、地を埋めつくし、大海を汚す破壊の化身達、立ち塞がるは一体の巨神、人の手によって生み出された魔なる神。

 

【■の■】

 

【■■交■り】

 

【■の行き■】

 

【火の■■】

 

その言葉はあらゆる箇所が欠けていて、あまり聞き取れなかった。分かっているのは、それが人の、命にとって大切な言霊で───。

 

人類の、先に往く為の■■■の軌跡だという事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカな、何故生きている。何故立っている。いや、そもそもな話、何故貴様の首が未だに付いている!?」

 

加減はしなかった。振り抜き、振り抜いた一撃は確かに修司の顔面を捉えた筈だ。人間に耐えられる威力ではない、首から上は吹き飛び、絶命した筈の命が未だ存命している事にネルロクは衝撃を禁じ得なかった。

 

(あ、危なかった。咄嗟に呼吸法を変えて防御に専念してなかったら、今ので死んでいた)

 

今は呼吸もままならず、死に体となってはいるが、それでも呼吸一つで肉体を硬化させる術を教えてくれた師父に修司は内心で感謝した。

 

力の方ももうとっくに失っていたと思っていたのに、今では不思議と身体の内側から力が涌き出てくる。ネルロクに顔面を打たれた事で頭のネジが何処か吹っ飛んでしまったようだ。

 

だが、今はそれも有難い。まだ戦える力が残っているのなら、最後までそれを貫くだけだ。拳を握り締め、一歩前に出す修司に──。

 

「いい加減、死んでおけ小僧!」

 

魔術を使って加速したネルロクの暴威が押し寄せる。振り抜かれた巨大な腕、今度こそ受ければ死は免れない。生と死の狭間の中で修司が選んだ選択は───“脱力”、極度の緊張感の中で力を緩めた修司は風に流される木の葉の如く、ヒラヒラとネルロクの懐に潜り込み。

 

「──フッ」

 

「っ!?」

 

置くように振り抜いた肘の一撃、攉打頂肘によってネルロクの胴体を撃ち抜いていく。

 

突然の衝撃にネルロクの巨大な体躯が数歩退く。その顔には驚愕の文字がアリアリと浮かび上がり、困惑が汗となって噴き出していく。

 

「ば、バカな、私の時間加速にたかが人間が反応できる筈が……」

 

「……どういうカラクリか、今一つ分からないが。どうやらアンタは今は加速した体感の速度をそのまま動けるらしい。それ自体は凄いことだと思うぜ。ただな」

 

「お前が倍速で動くのなら、それを弁えた上でその動きに対処すればいい。少しばかり時間が掛かったが、もうお前の攻撃は───当たらない」

 

「!?」

 

未だ成熟しておらず、未熟な少年が満身創痍の癖に断言した。お前の技は見切ったと、これ迄長い期間の自分の研究を踏みにじられたネルロクは驚愕に満ちた表情を憤怒に変える。

 

「宣うなよ、小僧!」

 

固有時制御・三重加速。更に速さを重ねてネルロクは修司に肉薄する。しかし、その判断は悪手だった。武術を得意とする修司にとって死地と思われる肉弾戦こそ活路、如何に速さはあってもそれに見合う技が無いネルロクの暴威は修司にとって最早脅威ではなかった。

 

振り抜かれる数多の暴力を修司は回避し続ける。死徒という人間とは異なる力をもった化生の力を修司は人間の技によって捌いていく。その様子をアルが目を輝かせて見つめていた事に修司は気付かない。

 

()ッ!!」

 

「ッ!!!?」

 

大振りになったネルロクの腕を掻い潜り、踏み抜いた震脚の力をそのまま乗せた鉄山靠が彼奴の巨体を跳ね除ける。

 

ダメージはない。そもそも死徒となった事で痛覚は無いに等しいネルロクに人の技は意味を為さない。やはり奴では自分に勝ち得ない、そう確信するネルロクだが次に見せた修司の構えに違和感を覚えた。

 

修司は脱力していた。距離を開け、相手の強みを最大限活かせる間合いにも関わらず、その姿勢は何処までも自然体だった。余計な力は必要とせず、ダランと脱力する修司にネルロクだけでなくアルも目を丸くした。

 

疑問に思うアルとは対照的にとうとう力尽きたと思い込んだネルロクは、ここぞとばかりに勝負を決めに来た。

 

固有時制御・四重加速(Time alter―square accel)!!」

 

それは音を置き去りにした一撃だった。全身に力を込め、死徒としての力を最大限に発揮した吶喊、一種の砲弾と化したネルロクはその巨体と質量で以て修司を押し潰そうとするが───。

 

その突進は何て事なく、あっさりと横にとんで回避される。最初の様に掠る事もなく、ネルロクの攻撃は虚しく空を切る。

 

「ば、バカな───」

 

それは、一瞬の交差だった。

 

「当たり前だろ、そう何度も見せられたら嫌でも見切れるに決まってるだろうがたわけ」

 

呆れに満ちた瞳、自身の行動をたわけと貶し、見切れると断じる少年にネルロクの自尊心は砕け散る。だが、それだけでは終わらない。

 

「これで、終いだ」

 

刹那のやり取りの中で、修司は構えを見せた。それはこれ迄の旅路の中で修司が研鑽し、積み上げてきた一振りの槍だった。思い描く理想に少しでも近付ける為に、愚直なまでに繰り返してきた窮極の一撃。

 

「七孔噴血──撒き死ねぇ!!

 

決して人には打ってはならないと、時計塔に絡まれ、バゼットに襲われ、メイド達に襲われても、それでも尚絶対に奮わなかった修司の禁技。

 

无二打 (にのうちいらず)。踏み抜いた地面は割れ、振り抜いた拳はメルロクの胴体を確かに捉え────。

 

フランスのパリはこの日、数少ない地震に襲われる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゅー、スッゴいわね」

 

その光景を見てアルは心の底から賛辞を述べた。工房だったらしきネルロクの本拠地は跡形もなく破壊し尽くされ、そこにはただドデカイ空洞が広がっているだけだった。

 

其処にいるのは全ての力を出しきり、息も絶え絶えな修司とネルロクの残骸らしき肉片だけ、その肉片も主を失った事により灰となって消えていく。

 

───アルは、最初は今回の騒動に興味が無かった。どこぞの輩が死徒を闇雲に増やしている事に余計な仕事が増えたと多少の苛立ちはあったが、それ以上の関心はなかった。

 

それが情報が出てきた理由が年若い一人の少年だという噂から興味を抱き、犬猿の仲であるシエルから詳しい話を聞いて、情報を頼りにフランスへ訪れて、このパリで出会えた。

 

一目で分かった。この少年が普通なのに全く普通ではないと言うことに。魂の総量が普通とは次元が違い、今も成長の最中でいる彼にアルは興味を抱かずにはいられなかった。一体、彼がこの先どんな人生を歩むのか、彼女の興味は尽きることはない。

 

「ふふ、嗚呼、楽しみだな」

 

未知なる未来に期待で胸を膨らませ、アルは修司へ歩み寄る。

 

「───やっぱ、なーんか、違うんだよなぁ」

 

すると、自分の打った一撃に満足いかないのか、修司は不満げな様子で倒れ伏す。その途中でアルは抱き抱えるも、向上心が凄まじい少年に彼女は呆れた笑みを溢す。

 

「さぁって、後は教会の連中に任せて、トンズラしますかね」

 

抉れて出来た巨大な孔、それを尻目にアルは修司を抱えてその場を後にする。───と、その前に。

 

「ま、これくらいはしておくか」

 

修司が最初にネルロクを吹き飛ばして出来た穴に向けてアルは一条の紅い閃光を放つ、其処には奴のこれ迄の研究の全てが隠されており、アルの放った光によりその全てが消滅していく。

 

仕事をやり遂げたアルは、軽い足取りで鼻唄混じりで今度こそその場を後にするのだった。

 

 

 






◇ネルロク=マルケル

今回の世界漫遊編に於けるオリジナルキャラ、その魔術系統は他者の魔術を読み解き己のモノにする模倣(コピー)で、今回は切嗣の得意魔術である固有時制御を取得した。
条件さえ揃えば他魔術師の魔術も複数模倣可能であり、本人はいずれかの宝石翁の魔術も模倣してみせると、怠け者と自称する割には野心の強い人物である。

ただ、他者の魔術を模倣すると言うことはその家の歴史そのものを横取りするようなモノなので、そうなれば全ての魔術師から敵とみなされて袋叩きにあってしまう。
故にネルロクはバレるギリギリまで己の魔術を隠し通してきた。
多分封印指定級の魔術である。

本人は死徒の肉体で固有時制御を操り、時間を操って根源に至るつもりでいた。


と、以上のネルロク=マルケルの補填設定でした。




IF

いつかの天文台にて。

「スミマセン、李書文先生。少し宜しいですか」

「ぬ? 儂に何用か?」

「実は自分、拳士として修行している内に先生の技に憧れる様になりまして、ご迷惑かもしれませんが一つ見ていただけませんか?」

「ふむ、儂態度に何かを教えられるのかは疑問だが、お主の熱意を無碍にするのも憚れる。善かろう、儂でよければ見てやる」

「ありがとうございます!」


その後、とある特異点にて。

「どうでしたか先生! 俺の无二打は」

「チガウ」

「え?」

「ワシノシッテルニノウチイラズトチガウ」


嘗てあった断崖絶壁の谷は、いつの間にか地平線が出来ていた。

「フハハハ、受ける」

「最近絶好調ね、この金ピカ」


それでは次回もまた見てボッチノシ

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