『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回は短め。


その17

 

 

 

 

 

γ月*日

 

 最近、学園にマスメディアの連中が校門前に群がっている。何度も何度も追い払っても群がってくるそいつ等は十蔵さんが言うには総合資格をとった自分に対し、何らかの言葉が欲しくて各報道機関から来ているのだとか。

 

普通に勉強し、普通に資格を受け、普通に合格した自分としてはそれを聞いた時はなんだそりゃと呆れてしまった。まだ世に知れ渡って十年も経っていないのに、たかが一人資格を取った程度で騒ぎ立つ世間に、自分は何だかやるせなくなった。

 

自分は別に名声が欲しくて取得した訳じゃないんだけどなぁ、まだISをどのように製作するのかも決まってないのに……放っておいて欲しいものだ。

 

大体、何で資格一つでこうも大騒ぎしなくてはならないのか、自分以外にもこの資格を取った人は何人もいるのに……と、そこまで考えて自分はあることに気が付いた。

 

なんと、この総合IS管理資格なるモノは企業や国で取得するモノらしく、個人が取るべきモノではないとしているのだとか。

 

やられた。きっとコレまでこの資格を取得した人は企業や国の研究機関に入り込んだ事でその企業や機関の名前を借り、本名を出さない事にしているのだ。どうりで過去の取得者達を調べても人の名前が出てこない訳だよ。この会社が取りました~と答えればそれだけでその話は終わりだもの

 

うわ~ハズい。まるでフェイスブックやツイッターで自分の素性を大々的に公開しているモノじゃないか。

 

IS委員会に送った写真も連日テレビで流されているし……流石に自分のまとめた論文までは公開されなかったけど、そんな事をされてしまった日には恥ずかしさのあまりグランゾンで火星に移住する所だったよ。

 

世間が大いに騒いでくれたお陰で、これまで自分が必死コいて築き上げてきた“頼れるお兄さん”的イメージが台無し。自業自得とはいえ、流石にこれは精神的にキツいモノがある。

 

皆との関係を修復する為にも何とかしなくてはならない。こうも連日校門前に群がられては学園側も迷惑になるだろうし、早急に対策を練らねばなるまい。

 

一応案はある。織斑先生や他の先生達からも許可と協力を得られたから、後は明日を待つばかりである。

 

そろそろ学園祭の時期に入るし、生徒達の迷惑になる前……早い内に決着を付けたい所だ。

 

 

 

γ月※日

 

 今日、ISの記事を書く記者さん達を招いてちょっとした記者会見を開いた。記者会見なんて人生初の出来事だった為、内心緊張と焦りで一杯だったけれど、幸い目立ったミスもなく、会見は滞りなく終わる事が出来た。

 

時間は約一時間、学園の体育館を使わせて貰って粛々と行ったこの会見は予想通り記者達の質問責めから始まった。カメラは兎も角、映像端末は断らせて貰った以上、向こうの質問を無下にする事は出来ず、簡潔にだが粗方答える事にした。

 

……しっかし、どうもメディアというのは苦手だ。特に情報関係。多元世界では地球連邦が散々自分を悪者に仕立てた挙げ句、情報統制やねつ造、事実隠蔽など世界中の至る所にある都合の悪い事をひた隠しにしていた事もあった所為か、マスメディアに対して拒絶反応みたいなモノを感じる時がある。

 

別にメディアが嫌いという訳ではないが……どうもゴシップ関連には毛嫌いを見せてしまう。先の会見の時もマイクに仕込んだ小型映像端末を手にしていたゴシップ記者を問答無用で追い出してしまったのだから。

 

ともあれ、これで連中の気も少しは満足しただろう。好き勝手に書かれることも多少は覚悟して、取り敢えずこの件はこれで一応の決着という事にしておこう。

 

 それよりも、まずは来週から始まる文化祭の準備についてだ。今回自分がこの体育館を使用した事により、体育館を使う予定だった他のクラスが遅れてしまう事になる。今後はそんなクラスの下へ行き、手伝いをしていこうと思う。

 

一応政府にはコアが欲しいと打診してはいるが……どうせ政府からコアを提供されるのは当分先、ならばその間用務員としての責務を全うする事にしよう。無論、コアが届いたとしても用務員としての仕事をサボるつもりもないが。

 

そうそう、記事という言葉で思い出した。何でも一夏君、箒ちゃんと一緒にファッション雑誌のモデルをする事になったらしい。

 

何でも、専用機持ちの子にはこう言ったお仕事もあるらしく、結構羽振りが良いらしいのだ。裏では国家の思案が絡んでいそうだが、こういったモノは見ているだけで楽しいものだからね。

 

簪ちゃんもいずれこう言った雑誌に取り上げられるのだろうか? もしそうなら一冊買ってみてもいいのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “週間IS増刊号” ISにまつわる様々な記事や情報を乗せた一冊の雑誌。大手会社が発行するこの雑誌はある人物の事で埋め尽くされていた。

 

“白河修司”本来なら企業が持つべき資格の取得をたった一人で成し遂げてしまった希代の才児。その表紙にはその時会見で発せられたある一言が大きく取り上げられていた。

 

『ISをあるべき姿、あるべき場所へ帰す』

 

この一言により、世界は彼の動向を否応なしに注目する事になる。




次回から学園祭編に突入。それが終わったら……取り敢えず未定です。

今回は比較的ほのぼのな世界でしたので、次の世界はもう少し殺伐とした世界観でもいいかもしれない。
アルドノア・ゼロとか?(笑)

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