『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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す、少しはFate/っぽくなってきたかな?

今回は一気に時間を早めます。

色々すみません。


その11

 

 

 

A月γ日

 

季節は巡って春、麗らかな日取りとなった今日は新たに穂群原学園に新入生が入学する時期、俺や士郎、慎二は無事に二年へと進級し、間桐さんも無事にこの学園に入学する事となった。

 

高校生になった事で少し大人な雰囲気を纏うようになった間桐さん、俺は遠巻きから眺めていただけだったが、士郎や藤村先生とも仲良くやっているみたいだし、何より随分と明るくなった。

 

相変わらず俺には気難しい態度を取ってはいるが以前ほどトゲは感じなくなったし、俺も先輩後輩としての間柄ではあるがそれなりに話せるようなったから、これはこれで健全な関係と言えるだろう。

 

………やっぱ、好きな人と一緒にいられるだけで人間というのは変われるモノなんだなぁ。ただ、一方で慎二との関係は悪化しているみたいで妹が入学してきたってのに慎二の奴は間桐さんとはあまり関わろうとはせず、専ら新入生のナンパに勤しんでいた。訊ねて見たところ、イチイチそんな事で話すかよ。と、此方も一蹴されてしまった。

 

まぁ、兄弟のいない俺には分からないが、出来の良い妹を持つとそれをネタに弄られたりするらしいから、それが嫌で慎二もあの場に近付こうとしなかったのだろう。

 

───そう言えば、遠坂も遠くから間桐さんを何度か眺めていたな。俺と目が合うとそそくさとその場から去っていったから確かとは言えないが、間桐さんに何か用件でもあったんだろうか? 俺が言えた事ではないが。

 

そんなこんなで始まった新学期、今年も部活動や勉学で忙しいだろうし、鍛練も欠かせない。クラスには氷室や三枝といった気心知れた連中もいるし、今年も目一杯学生生活を楽しんでいこうと思う。

 

序でに、高校陸上の全国大会では取り敢えず出場した全種目の高校記録を塗り替えておいたと書いておく。あの頃は初めての失恋で立ち直れず半ば自棄糞になってたし、その所為であまり加減できなかったからね。是非もないよネッ!

 

取り敢えず次の全国ではその上を行けるよう頑張ろう。目指すは三年連続高校新記録。

 

 

 

γ月※日

 

そう言えば、うちのクラスの葛木先生って古武術でも習ってんのかね? 体幹は良く鍛えられてるし、佇まいにも隙がない。以前俺がついうっかり圏境使って後ろから声を掛けたら、凄い反応で距離取られたし、その時の構えみたいなのも独特なモノだった。

 

ありゃアレだな。あの時の構えから察するに掴んだモノを抉ったり潜ったりする初見殺しの類いの武術だな、自然とそう言う事が出来るって事はきっと葛木先生も幼い頃から実直に鍛練を重ねて来た実直な人なのだろう。

 

もしかして葛木先生ってマイナーだけど立派な道場の跡取り息子とか何かだったり? もしくはその初見殺しな流派から何処かの暗殺集団の秘密兵器だったりとか? ───なわけないか、どこぞのゴ◯ゴ13じゃあるまいし。

 

───あぁそうそう、そう言えば全国模試の発表も先日あったんだった。結果は一位、前回はケアレスミスがあって二位だったから努力が実ったと実感できて良かった。

 

その事を偶々俺の様子を見に家に来たシドゥリさんに報告したら結構喜ばれた。王様も喜ぶから報告なされたらと言われたが、生憎そのつもりはない。何せ王様は大企業の頂点に君臨する人だ。そんな人の時間をイチイチ割くような真似は出来るだけ避けたい。報告するとしてもそれは高校卒業の間際で一度に報告した方が簡潔でいいだろう。

 

王様も忙しいそうだし、極力あの人を煩わせるような真似はしたくない。そう言葉にするとシドゥリさんはなんとも言えない表情で苦笑うと、それは違うと諭されるように言われた。

 

王様は確かに忙しい人だけど、それ以上に慈悲深い御方でもある。臣下であるモノの言葉ならどんな些細な報告でも中身があれば耳を傾けてくれると。何より俺と言う人間の活躍を誰よりも楽しみにしているのだと、シドゥリさんはその言葉を最後に笑顔で締め括った。

 

───まぁ、確かに俺は王様に日々弛まず励めと言われてきてるし、俺の話を笑い半分だが聞いてくれる。何より結果を出しているのなら些細な事でも報告するのは臣下の役割、それを不要か断ずるのは王様の役割だ。

 

取り敢えず今日は王様に全国模試で一位を取った事を言っておいた。王様はそうかとただ一言口にしただけだったが、不要とか報告は無用とか言われなかったので次回も学校で何らかの結果を出せたらその都度報告しておこうと思う。

 

───その夜、王様はシドゥリさんと話をしていた。何を話していたかは分からないけど、二人の様子はとても楽しそうだった。

 

 

 

Ω月*日

 

───最近、夢を見る。

 

中学の頃は不鮮明で曖昧で、ハッキリとした内容では無かったのに、此処の所結構ハッキリとした感じで夢を見る。

 

何か……と言うより、何処か機械的な空間、コックピットとかそう言う類いの場所に座り、目の前には多くの怪物達が波となって押し寄せてくる夢。

 

怪物の多くは悍しい姿をして、中には機械的な───そう、巨大ロボットが眩い光線やらミサイルやらで襲ってくる。しかし、俺が乗っているロボットは余程頑丈なのか、それらを受けても全くびくともせず、反撃の一撃で敵勢力を殲滅してしまう。

 

全く現実味のないモノ、まぁ夢なのだから当たり前なのだけどそれにしてはリアリティがあった。現実味が無いのにリアリティとはこれ如何に?

 

何であんな夢を見たのだろう? この間見た日朝のヒーローモノを見ていた所為かなぁ?

 

そしてこれも最近如実に露になってきたのだが、日記帳とは別の手帳に書かれた落書きのような図面や専門用語の意味が段々分かるようになってきた。

 

特殊な環境で生成される粒子とそれによって生み出される装甲や武器の数々、他にも量子型演算処理システムやら、コロニー型外宇宙航行母艦やら、他にも様々な知識がその手帳に記されていた。

 

しかもその設計図がビッシリと書かれているのだから更に驚き、色々突っ込みたい所は多々あるが、確かに言える事は一つだけ。

 

これ、クラスの連中には絶対に見せられん。特に蒔寺には、これをもしアイツに見られたら絶対に学校中へ広めるに違いない。そうなった時、俺はアイツを殺すかもしれん。

 

王様はこの手帳を読んでいるみたいだけど、そろそろ止めて貰おうかな。明らかに黒歴史だしこれ。

 

そう思い王様に進言したら、笑顔で却下された。クソォ、人の恥部を曝してそんなに愉しいか!?

 

 

 

Ω月γ日

 

高校に入ってそろそろ二度目の冬が訪れようとしている今日、部活動の陸上も無事に目的を果たし勉学の方も順調に進んでいるし、初心に還る意味も込めて俺は今日久し振りにあの人の下へ訪れた。

 

久し振りに教会に立ち寄り言峰師父に稽古を附けて貰ったのだ。師父とは時折泰山で麻婆を食べながら近況を報告しているが、八極拳の稽古は随分久し振りになる。最後に稽古を附けて貰ったのは──中学の頃、高校受験の前の時以来か。

 

師父は既に中学の頃に師父を超え、教えることはないと言うが、一度でも師と仰いだ以上最低限の礼儀を持つのが筋と言うもの、これからも俺は師父を師父として慕っていくつもりだ。

 

とは言え、言峰師父も普段は神父としての仕事がある身、この頃随分教会に籠ってたり忙しそうにしてるみたいだし、あまり時間を取るわけにも行かないから、この日の組手稽古は一時間も満たずに終わった。

 

その後、付き合ってくれた師父に礼を言って教会を後にすると、言峰師父から奇妙な事を質問された。“叶えたい願いは無いか”と。

 

以前に王様から言われた夢を持つことに似た質問だが、意味合いは少し違うみたいだ。何故師父がそんな事を訊ねるのかは定かではないが、まぁ教会の神父として悩みがあれば聞いてやると言う師父なりの気遣いだろう。

 

俺は取り敢えずその事を保留し、教会を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし願い、かぁ。師父も難しい事を聞いてくるもんだ」

 

本日の日記を書き終え、背凭れに寄り掛かりながら師父に言われた事を思い返す。願い。それは人が持つ願望、心の底から成し遂げたいと想いを乗せ、抱く感情の様なもの。

 

王様が語る夢とは似て非なるモノ、果たして俺には叶えたい願いなど在るのだろうか?

 

「お金……は王様から渡された給料があるだろ? 物……欲しい圧縮鍋ならあるけど願いでは無いし……師父の言う願いとは違うだろうなぁ」

 

そう思い巡らせる思考は軈て深みへと誘われていく。俺の願い、白河修司が願う本来の願望、それは────。

 

 

 

 

 

───其所は、地獄だった。建物が燃え、人が燃え、命が無慈悲に奪われ、消えていく。

 

───天には、此方を見下す黒い星が不気味に瞬いていた。それを目の当たりにして幼き俺が抱いたのは何だったか。

 

『僕は、俺は、お前を絶対に──許さない!!』

 

そうだ。それこそがあの時白河修司が抱いた紛れもない本当の───。

 

 

 

 

 

「いっつ! な、何だぁ?」

 

思考を巡らせていたら不意に左手から鋭い痛みが走った。何だと思い視線を下に向ければ自身の手の甲に赤い痣の様なものが浮かび上がっている。

 

まるで蚯蚓脹れ………いや、入れ墨のようなそれ、独特な紋様にも見えるそれを何が起きたとマジマジと顔を近付けると。

 

「い、イダダダダァッ!?」

 

突然、左手の甲から先程以上の痛みが襲ってきた。皮膚をベリベリと剥がされる様な、神経を電気の力でまるごと引き抜かれるような、痺れるような痛みが左手に広がっていく。

 

突然の痛みに仰け反っていると、椅子から転げ落ちて頭を強打してしまう。ゴンッと鈍い痛みが耳朶を通して脳内に広がり、視界を白い火花で覆っていく。

 

一体何なんだろうか、困惑しながら頭を擦って今の流れの元凶である左手を見れば、其所に先程のような赤い痣は綺麗さっぱり無くなっていた。まるで最初からそんなもの無かった様に。

 

「いててて、何なんだよ一体、静電気?」

 

静電気にしてはやけに激しかったが、辺りを見ても焦げ目が付いたり何か変わった様子はない。気になる所だが夜も更けてきた以上、近所迷惑の事も考慮して騒ぐのは止めておこう。………まぁ、この階には基本的に俺と王様位しかいないんだけどね。

 

今起きた事は後日調べるとして、今日の所はもう寝よう。明日は朝練もあるしね。陸上部のエースとしてはサボることは許されないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ほぅ、聖杯からの令呪をよもや弾き飛ばそうとは、あの憑き物は余程修司の事が大事と見える」

 

「だが、その過保護もいつまで保つかな、此度の戦争は中々面白いことになりそうだぞ」

 

愉悦の笑みを浮かべる黄金の英雄王、その手に握られた一枚の紙にはたった一言、ある文面が書かれていた。

 

 

 

───フランスにて裁定者(ルーラー)のサーヴァントの顕現を確認。

 

 

 

 

 

同日、日本・羽田空港。

 

「日本、此処に彼がいるのですね」

 

その拳を握り締め、バゼット=フラガ=マクレミッツ───日本上陸。

 

 

 





今回で日記要素は終了、次回から展開が大分遅くなるかもですが、宜しくお願いします。


次回、日常を侵す影。

魔の影が平和な冬木を覆っていく。

それでは次回もまた見てボッチノシ

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