『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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ガッデムホット!!

水分補給はしっかりとね!


その29

 

 

「────そうですか。はい、はい。分かりました」

 

「士郎、学校からは何て?」

 

「あぁ、取り敢えず学校の皆は全員無事みたいだ。ただ症状の重い生徒も何人かいるみたいだから、明日と明後日の二日間学校は休校するってさ」

 

学校での騒ぎの後、ライダーの張っていた結界は消え、魂喰いから解放された教師や生徒達は教会側が派遣した救急車によって新都の総合病院へ搬送された。幸い死亡者はおらず、症状の重い生徒達も時間経過と共に快復するだろうと言う事から、学校は数日の休校という扱いとなった。

 

一人も死亡者を出さずに乗り切った事に安堵する修司達は、現在学校と同じ地区にある深山町の衛宮邸に来ていた。

 

「………さて、学校の方は一応何とかなったけど、問題は此処からよ。其処にいる慎二といい、ライダー陣営に対する今後の対応はどうするの?」

 

そう言って遠坂は居間の隅で膝を抱えて沈黙を続けている慎二へ視線を投げ掛ける。その目には未だ敵対心の色が濃い、神秘の秘匿という魔術師にとっての暗黙のルールを破り、無関係の人間を大勢巻き込んだ事に対する怒りの感情が渦巻いている。

 

敵愾心たっぷりの遠坂に慎二の肩は恐怖で跳ね上がり、怯えた表情で遠坂を見る。その心境は裁決を言い渡される罪人のそれ………いや、絞首台に立たされる死刑囚である。

 

サーヴァントを失い、魔術師としての才の無い慎二に今更間桐家に帰れる筈がない。帰ったとして待っているのはあの蟲に支配された妖怪屋敷とその主だ。あの妖怪がオメオメと自分を家の敷居を跨がせるとは思えない。

 

マスターとしての権利も失くし、今の慎二は魔術師の魔の字もないただの小市民の一人、残ったのは自分が行った罪過だけ、何も出来ない慎二は遠坂の視線に震えていると………。

 

「その事なんだけどな遠坂、慎二の事は俺に任せては貰えないか?」

 

「し、修司?」

 

「………本気なの白河君、コイツ、未遂だったとはいえ学校の皆をサーヴァントの餌にするつもりだったのよ? 理不尽を許せないアナタとしては、その案は無いと思ってたけど……」

 

「勿論、今でも慎二のした事は許せないさ。学校には蒔寺や氷室、三枝や陸上部の後輩達もいる。大会に向けて頑張っていた皆の努力が水泡に消えようとしている。そう言う意味でも慎二の仕出かした事は許せるものじゃない」

 

巻き込まれた生徒達の中には当然蒔寺達や陸上部の先輩後輩の姿もあった。見知った彼等が下手をすれば死んでいたかもしれない、その事実に修司はどうしようもなく怒りを覚えるが、それと同じくらい自分にも非がある事を修司は理解していた。

 

「でも、そこまで慎二が追い詰められたのは多分俺達にも非があったと思う。コイツ、高校に入ってからちょっと変わったし、時々スゲェ追い詰めた顔をしてたからさ。きっと、その頃から家で色々あったんだと思う」

 

今にして思えば、慎二の変わり様は異常だった。元から選民思想は強く、他者を見下しているような部分がある男だがそれでも面倒見は良く、中学の頃は良く後輩達に相談を受けてたりした。

 

また、士郎が悪い奴等に利用されようとした時だって陰で制裁してたりするのを知ってたし、口や態度は悪いけど間桐慎二という男は総じて良い奴と思える人間だった。

 

「コイツをあんなになるまで放っておいた俺にもある意味で今回の件には非がある。学校も暫く休みだし、聖杯戦争が終わるまで、コイツの事は俺の所で預かりたい」

 

「遠坂、俺からも頼む。慎二はもうマスターじゃないんだ。修司なら信頼できるし……」

 

冬木の管理者である遠坂にとって慎二のやらかした事はとてもじゃないが許される事ではない。神秘の漏洩を促し、更には多くの無関係な人間を巻き込んだ。魔術師的にも倫理的にも慎二の行った事は許せない。

 

「衛宮君まで………はぁ、いいわ。それなら慎二の事は白河君に任せる事にする。でも、次にまた変な事をしようものなら、分かってるわね?」

 

しかし、遠坂は慎二にペナルティを与える事はなく、殺気の混じった怒気をぶつける事で大人しく引き下がる事にした。修司という男の強さとそれに対する信頼故の引際である。

 

「さて、慎二の方はそれで良いとして、問題は………」

 

「桜、だな」

 

「……………」

 

話は次に……そして、修司が最も触れたくなった話題へシフトする。間桐桜、彼女もまた聖杯戦争の参加者だった。

 

ライダーの正式なマスター、それを知ってしまった修司は最初は何かの間違いだと思った。彼女は優しい人で、人を傷付ける様な人間ではなく、魔術師という冷酷な輩には最も遠い存在だと思っていた。

 

………いや、そう思いたかった。しかし、ライダーの最後に放った蹴りの重さがそれは違うと否定してくる。正規である桜にマスターとしての権限が戻った事でライダーの強さは本来のモノへ変わったのだ。慎二がマスターの時に彼処まで弱体化していたのは偏に慎二が正規のマスターではない事が原因だったのだろう。

 

慎二の話だと桜は元々聖杯戦争に参加する気は無いと頑なに拒否していたと言う。だから間桐の当主である臓硯は桜の持つ令呪を拝借して偽臣の書という代物でライダーを操り、慎二に代理として聖杯戦争に参加させたのだという。

 

当初は魔術師として活躍できるという聖杯戦争に参加できると知って、慎二のテンションは爆上がりだった。それからは選民思想に拍車が掛かり、性格まで増長し、終いには嗜めてくる美綴綾子を昏睡状態に陥るまで魂喰いをさせ、そこで修司と遭遇する。

 

其処でライダーは修司にアッサリと返り討ちに逢い、納得できなかった慎二は再び桜にマスターの権限の譲渡を強請る。渡したくない桜は最初は断るも、士郎に全てを話すと言われて渋々これを承諾。

 

これで漸く修司にリベンジ出来ると思ったのも束の間、結界を張り学校中の生徒や教師から魔力を得ようとしても、修司には届かず、それどころかライダーの攻撃をモノともしていなかった。

 

そして、遂に追い詰められた慎二はライダーに宝具の発動を命じようとしたが、桜がこれを拒否。慎二の持っていた最後の偽臣の書が燃え尽き、慎二の聖杯戦争はこれで終了となった。

 

「凛、戻ったぞ」

 

「お疲れアーチャー、それでどうだった?」

 

「君の予想通りだよ。ライダーとそのマスターは間桐邸へ逃げ延び、籠城を決め込んだ様だ。あの様子からして出てくるのは当分無いだろうな」

 

偵察に繰り出していたアーチャーから告げられるのはあれからのライダー達の様子だった。やれやれと肩を竦めている辺り、どうやら相当厳重に守りを固めているのだろう。

 

「あぁなると迂闊に攻め込むのは危険だな」

 

「………一応、此処には貴方を含めて三騎の英霊がいるのだけれど、それでも難しいと思うかしら?」

 

今、衛宮邸にはアーチャーを含めてセイバー、ルーラーの三騎が集まっている。一騎当千のサーヴァントが三体もいるとなれば如何に守りを固めた魔術師の家だとしてもゴリ押しで崩せるのではないか、と敢えて遠坂は楽観的に訊ねるが……。

 

「周囲への被害を考えなければゴリ押しでもいけるだろう。だが、相手は機動に優れたライダーだ。状況次第では我々でも手を焼くかもしれん」

 

相手の陣地に攻め込み、罠があるなかで機動力のあるライダーと正面切って戦う。その時の戦いはきっと自分達が想像しているより遥かに苦戦を強いられる事だろう。

 

「それと、私に戦いの参加を期待している様で申し訳無いのですが………恐らく、私はその時の戦いに参加する事は出来そうにありません」

 

「やっぱそうなるかぁ」

 

ジャンヌの申し訳なさそうに語る姿に遠坂はどうしたものかと頭を抱える。ジャンヌは聖杯により遣わされた聖杯戦争の審判役だ。無関係な人間を巻き込むような事態には厳しく対処するが、そうでないのなら極力手を出さないのがルールとされている。

 

「………或いは、今回の無関係な人々を巻き込んだペナルティとして───という名目ならもしかしたら有りかもしれませんが」

 

「下手人の慎二が此方にいる以上、理由としては弱いか」

 

ルールを、秩序を重んじる聖女としてジャンヌは今回のルール違反に対して何処まで手を出せば良いのか、彼女自身が迷っていた。無関係な人間を巻き込ませたくない気持ちは今も変わらない、しかしルーラーというクラスの制約がジャンヌの迷いをより際立たせていたのだ。

 

「………仕方ない。一先ずライダーの方は放っておきましょ」

 

「ほ、放っておくって、そんなので良いのかよ遠坂!」

 

「勿論良くは無いわよ。でも、相手は間桐の家、其処に施された罠がどんな代物があるのか分かったモノじゃないわ。ライダーの正体が本当にあのメドゥーサなら、事は慎重に運ぶべきよ」

 

メドゥーサ。ギリシャ神話に於ける有名なゴルゴーン三姉妹の一人、反英雄と目される彼女が相手となればあの間桐の家はより危険な場所へ変質している可能性もある。

 

サーヴァント1体で戦うには心許ない。対魔力の強いセイバーと一緒ならばある程度安心できるが、その為には魔術師として未だ未熟な士郎も連れていく事となる。熟練な魔術師の家に攻め込むことを考えると、それは剰りにも博打が過ぎる。

 

「何より、桜………あの子と相対する覚悟が出来てるの? 衛宮君、白河君」

 

「「……………」」

 

遠坂の指摘に二人は即座に言い返すことが出来なかった。間桐桜、士郎にとっては家族同然の存在で修司にとっては言わずもがな、保護や救出対象であっても敵対する事は絶対に有り得ない両者にとって“日常”の象徴だ。

 

そんな彼女が魔術師として、マスターとして聖杯戦争に参加していた。その事実が二人の肩に重くのし掛かる。

 

「………でも、いつまでも放っておくわけにもいかないだろう」

 

「士郎?」

 

「それは、マスターとして桜を倒すって事かしら?」

 

「違う。確かに桜は魔術師でマスターだったけど、だからと言って誰かを傷付ける様な人間でないことは俺にだって分かる。慎二を代理人として参加させていたのなら、少なくとも最初の頃の桜は聖杯戦争に乗り気でない筈だ」

 

「なら、どうするの?」

 

「先ずは会って話をする。そして桜の真意を聞き出す。聖杯戦争に参加するのか、その是非を問う」

 

「参加するって言ったら?」

 

「止める。喩え恨まれようと俺は桜を止める。アイツにこんな血腥い戦いをいつまでもさせておくわけにはいかない」

 

ハッキリと自分の思いを口にする士郎に修司は納得した。間桐桜に必要なのは自分ではなく、この衛宮士郎なのだと、自分では間桐桜を助けることは出来ても救うことは出来ない。それを改めて実感できた修司はその口元を僅かに吊り上げる。

 

「何を言うかと思えば………下らん。敵を倒すのではなく救うだと? 相手がそれを許すと思うのか、たかが貴様一人の力でどうにか出来るほど、魔術の家は甘くはないぞ」

 

「そんなの、やってみなくちゃ───」

 

「一人でないなら、問題ないんだろ? なら生憎だったな、桜ちゃ………間桐さんを何とかしてやりたいって宣う馬鹿はここにもいるぜ」

 

「し、修司?」

 

実力の無い士郎の言葉を戯れ事だと断じるアーチャー、その言葉に苛ついた士郎が言い返そうとするよりも早く、修司がその口論に割り込んでくる。

 

「………やれやれ、どうやら君も魔道の家のなんたるかを理解できていないようだな。魔術師の家とはそれ自体が一種の要塞だ。侵入者を殺すだけではなく、嬲り、犯し、時には魔術の実験材料とする魑魅魍魎の巣窟だ。サーヴァントを一騎斃した程度で思い上がっているのなら、今すぐその考えは改めた方がいい」

 

「かもな。だけど俺は諦めたくない。間桐さんが聖杯戦争に参加するのを拒み、あの爺がそれを強制させようとするなら、俺はそれを見過ごしたくない」

 

アーチャーの言葉を親身に受け止め、それでも諦めたくないと口にする修司。そんな彼をアーチャーは呆れの混じった視線で睨み付けるが、修司はそれを撤回する事なく、不敵な笑みを浮かべている。

 

先に視線を外したのはアーチャーの方だった。付き合いきれんと吐き捨てて霊体化するアーチャー、その所為か場の空気は途端に重くなりその原因となった修司はアハハと苦笑いを浮かべて頭を掻く。

 

「な、何か悪いな。空気悪くさせちゃって」

 

「……ま、あんた達にそれなりの覚悟って奴があったのは分かったわ。私も間桐家には留意するし、手伝うことがあったら手を貸すわ。でも、忘れないで、あんた達がこれからも聖杯戦争に関わるのなら、相手はライダーだけじゃないってことをね」

 

「あぁ、遠坂もありがとな」

 

そう言って遠坂は立ち上がって衛宮邸を後にする。それを見送った士郎はセイバーを無視して話を勝手に纏めてしまった事に漸く気付く。

 

「わ、悪いなセイバー。勝手に話を進めちゃって」

 

「いいえ、私は今回の件に関して口を挟む事はありません。間桐桜とは言葉を交わす事は数える程しかありませんが、彼女が優しい人間だというのは私なりに分かっているつもりです。戦うつもりのない人間を無理矢理戦場に立たせるのは私としても容認し難い。シロウが彼女を助けたいと言うのなら、私も存分にその為の力を奮いましょう」

 

「そう、か。ありがとなセイバー、それに修司も」

 

「気にすんなよ。可愛い後輩を助けるのも先輩の役目だ。それにお前がそうしなくても俺はこの件に首を突っ込むつもりだからな」

 

申し訳なさそうに礼を口にする士郎に修司は努めて強がり、気にするなと口にする。するとセイバーとジャンヌのそれぞれから空腹を報せる音が鳴り響く。その大きさに慎二は何事かと驚くが、当の二人は顔を赤くさせて俯いている。

 

二人の腹の音で場の空気は払拭され、衛宮邸は笑い声に包まれる。

 

「よし、なら飯を作るか。士郎、台所借りるぞ」

 

「あぁ、シドゥリさんには連絡入れたのか?」

 

「とっくに済ませてるさ。おい慎二、お前も食え、腹が減ってたら元気は出ないぞ。難しいことは後回しにして、先ずは腹を膨らませる事から始めようぜ」

 

それから料理人二人により今宵の衛宮邸の夕食は豪勢なモノとなった。食欲を刺激され、瞬く間に消費していく二体のサーヴァント。その喰いっぷりに慎二はドン引きするが、衛宮邸の夕食は終始明るい雰囲気に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、それから夕食を終えて片付けも済ませた修司達は慎二を連れて帰路に着く。眼前に聳え立つマンション、それを前にして修司は腕を組んで頭を捻る。

 

「さて、ここまで来たのは良いけど───シドゥリさんに何て言おうか?」

 

「ぼ、僕に聞くなよ」

 

ジャンヌに引き続き、今度は同じ学友である慎二を泊めることになった。その事自体に後悔する事はないが、その理由まで考えてはいなかった。

 

急いで話の流れを考え、脳をフル回転させる修司は一つの話を思いつく。幸い学校が休校になったことは街全体が知ってるし、ニュースでも取り立てられている。

 

ガス漏れ事故の影響で学校は休みになり、その間部活も休み、病院にいる妹の見舞いに行くのに深山町にいるのは不便なので、暫くの間新都に居を構える修司のマンションへ泊めて欲しい。───と言う如何にもな話を思い付いた修司は慎二にその旨を伝えた。

 

「………まぁ、いいんじゃないか。学校が休みなのは疑い様の無い事実だし」

 

了承した慎二に満足し、修司は自室へ向かう。この時修司はジャンヌと慎二の二人を先に向かわせ、本人は地上にある駐車場からジャンプし、一息で自宅のある階まで跳躍する。

 

やはり昨日よりも力が強くなっている。その事に戸惑いながらも平静を装い、エレベーターでやって来た二人と合流し、修司は自宅の扉を開く。

 

「ただいまー、シドゥリさん。話したいことがあるんだけど───」

 

「ほう? 少し見ない間に随分変わったなぁ修司、それになんだその見窄らしい田舎娘と愉快な道化は? 一体何時からここは物見小屋となったのだ?」

 

あっ、やっべ。リビングにふんぞり返る黄金の王に修司は最大のピンチを予感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クカカ、慎二はあの男の下へと降ったか。これは好都合」

 

「…………」

 

「桜よ、機を見て隙があればあの男───白河修司を誘い、堕とせ。お前ならば容易く出来よう」

 

「……………」

 

「あの男のあの力を上手く扱えば、この聖杯戦争など勝ったも同然。桜よ、ワシの可愛い孫よ。期待しておるぞ」

 

「───はい、お爺様」

 

暗い暗い闇の底で少女はクルクル嗤い出す。誰も私を助けてはくれない。誰も私を救うことは出来ない。

 

故に、だから………。

 

 

 

 

 

 

 

くぅくぅおなかがなりました。

 

 

 

 

 

 

 

少女の中で黒い何かが溢れ出す。

 

 

 

 




Q.なんかセイバーが空気じゃない?
A.もう少ししたら大活躍間違いなしなので……。




if修司のいるカルデアWithマイルーム。

アシュヴァッターマンの場合。

「あぁっ!? 何でテメーからシヴァ神の気配がすんだぁっ!? テメェこら、訳を言いやがれ!」

「あぁっ!? 自分でも良く分からないだぁ? ザケンジャネェーぞ! 何でテメェの事が分からねぇんだよ!?」

「ったく、いいか! そんな力を持って無様に負けるなんて許さねぇからな! テメェは破壊神の力を持ってる。それだけは確かだ。故に、半端は許されねぇぞ!」

「………まぁ、パールヴァティ様に勘違いされて泣きそうになるのは分かったからよ。あんま思い詰めんな、愚痴ぐらい聞いてやるからよ」


ガネーシャ(ジナコ)の場合。

「パパ!? パパなんですか!? 何でここに………まさか、自力で脱出を!?」

「あ? 違う? パパじゃない? なーんだマジ焦った。私の中のガネーシャが荒ぶって大変だったんスよー」

「てなわけで、無駄に脅かしてくれた君にはスペシャルロールケーキを所望するッス。カルナさんは別の用件を頼んじゃったし、丁度手が足りなかったんスヨね」

「ホラホラー、神様はロールケーキを所望してるッスよ。早く持ってくるがよろ………え? 何で私の腕を掴んでルッスか? ちょ、放し──て、力強!?」

「これから君にはスパルタクスとレオニダス王によるスペシャルブートキャンプを堪能してもらう!? そうすればその駄肉も少しは引き締まるだろう!? な、ななな何て事をしようとしてるんすかぁぁぁっ!?」

「ち、力が強くて抜け出せない上に何故か逆らえない!?た、助けてカルナさん! ヘルプ、へループ!」


パールヴァティ(春日局)の場合。

「貴方はとても努力家なんですね。その若さでその強さ、一体どれだけ修練を重ねたら其処までの境地へ至れるのか、武芸に乏しい私では想像も出来ません」

「自分は自分に出来ることをやっているだけ? そんな大層なモノじゃない? もう、ダメですよ。余り自分を小さくさせては、男児たるもの自分の行いには常に自信と責任を背負わなくては」

「………でも、貴方は少し頑張りすぎのようですね。私には貴方がどれだけの重荷を背負っているのか、皆目見当が尽きませんが、時には荷を下ろし、体を休めるのも必要ですよ」

「男の子ですもんね。弱音を吐きたく無いですもんね。だけど、このお局の前だけは少し位休んでも宜しいと思うのです」

「大丈夫。貴方はとても強い方、自分の弱さを認められるのはそうそう出来る事じゃありません。貴方はきっとまた立ち上がれます、もし挫けそうになっても、私が貴方を支え、守ります」

「ですから、どうか泣かないで、貴方の未来はきっと輝かしいモノだから────」




「ちょ、どうしたの修司さん、ガチのボロ泣きじゃない!?」

「あ、あぁいけません。そんなに涙を流しては、脱水症状で死んでしまいます」


この後、春日局の優しさに触れたボッチが極意(極み)を発動、氾濫する人類悪をその宇宙ごと破壊し、無事に大奥を取り戻すのでした。

めでたしめでたし。

「全然めでたくなーい!」



次回、槍兵疾走。

それでは次回もまた見てボッチノシ

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