『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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鬼滅の刃とシンフォギアが終わり、意気消沈していたけど FGOのアニメが始まったのでテンションがまた上がった作者です。


その42

 

 

 

 

────修司が怒りの感情を爆発させ、間桐の家を冬木の地図から消した同時刻。セイバーとジャンヌはアインツベルンの跡地にて向き合っていた。

 

二人の間に流れる雰囲気の空気は最悪、ジャンヌが一言でも言葉を間違えれば即座にセイバーの剣が奮われる程の険悪な空気、一体どうすれば誤解を解けるのかジャンヌは思考を必死に巡らせていると。

 

「なっ! 今の光は!?」

 

冬木から離れた郊外の森、其所からでも視認できる程の光の柱が天を貫き、二人の視界に刻み込まれる。

 

「今のは、まさか彼が!?」

 

ジャンヌが協力者として選んだ白河修司、彼と組んで暫く時間が流れ、いい加減彼の起こす出来事に馴れてきたと思っていたが、どうやらまだ認識が甘かったようだ。

 

あれが別のサーヴァントの仕業という可能性もあるが、現在の時刻はまだ太陽が昇っている時間帯、人目も多く晒されているこの時間帯にてあんな派手に光の柱をブッパする魔術師はいない。となれば必然的に可能とする人間は限られており、ジャンヌの頭の中ではほぼ確定的に修司の仕業で間違いないとされていた。

 

修司の放つ力に驚愕するジャンヌとセイバー、首を横に振り、我に返ったセイバーは再び見えない剣を取ってジャンヌに突きつける。

 

「答えて貰おう。ルーラー、貴方はあの黄金のアーチャーと組んで一体何を企んでいるのです。彼を、シュウジを彼処まで鍛えたのは聖杯戦争に備え彼と共に私達を後から討つつもりだと?」

 

「それは違います! 彼は本当に聖杯戦争、ましてや魔術の事などまるっきり理解していなかった! 彼は正真正銘唯の一般人、魔術や神秘には最も遠い人間です!」

 

「では、あの力は何です。天を衝き穿つ程の力を発しておきながら唯の人間? 裁定者ともあろう者が語るに落ちましたね」

 

修司は正しく一般人である。桁違いの力を有し、並外れた精神力を兼ね備え、遂にこの瞬間に世界の理すら超え始め───故に、タイミングが悪すぎた。並外れた修司の力がセイバーの抱く疑惑により拍車が掛かってしまった。

 

常識はずれた力、執行者すら一蹴する脅威的な身体能力、彼と手を取って聖杯戦争に挑むのが予想以上に頼もしく思えた。だが、今回の彼の力の発露はジャンヌから見ても度が過ぎている。これではセイバーが怪しく思うのも無理はない。

 

英雄王というサーヴァントの中でも頂点に位置する者が10年前から修司を拾い育てている。それが全て聖杯戦争に勝つための布石だとするならば───確かに、辻褄は合う。

 

そこでジャンヌは気付く。何故セイバーがその事を知っている? 彼女とギルガメッシュは顔馴染みだった? 何故? そこまで思考を巡らせたジャンヌは一つの可能性をこの時見いだした。

 

「───まさか、セイバー。貴女もなのですか? 前回に引き続き、今回も聖杯戦争に召喚を?」

 

「…………」

 

ルーラーからの問い掛けは沈黙によって返されたが、その沈黙が何よりも肯定している答えでもあった。

 

セイバーが前回に続いて今回の聖杯戦争にも召喚されている。それも記憶まで引き継ぐというおまけ付きで。

 

英雄王と修司の関係を知って此処まで憤っているのは彼女があの黄金の王を知っていたから、過去の因縁が今現在の状況を生み出しているのだと。

 

「───セイバー、貴方が何故前回に続いて今回まで召喚されたのかは問いません。ですがこれだけは言っておきます。彼の英雄王は聖杯に興味などありません。今の彼は一つの命としてこの世界に根付いています。修司君が彼といるのはその可能性を彼の王に見出だされたから、貴方が危惧する事は何もないのです」

 

「だが、その事を彼は知っているのか。あのアーチャーが前回の聖杯戦争に生き残ったサーヴァントなのだと、シュウジからすればそれは許されない裏切り行為なのではないのですか」

 

「残念ながら、その事を追求する資格は貴女にはありません」

 

「っ!」

 

冷静に、しかしピシャリと断じるジャンヌにセイバーは目を見開いて黙り込む。確かにセイバーの言う通り修司にとって前回の───あの大災害を生み出した前回の聖杯戦争に於ける参加者はその全てが敵と呼べる者達だろう。

 

彼等の戦いに巻き込まれ、多くの命が失われた。その原因とも言えるサーヴァントが自身を拾ってくれた英雄王なのだと、その事実を修司は未だ知る由がない。

 

だが、それは彼等の問題であって第三者が口を挟む事ではない。修司にとって彼の王は大事な恩人であり、仕えるべき偉大なる王だ。その関係性が変わるのだとしてもそれはジャンヌや他の外野が口を挟むべきではない。

 

特に、同じく前回の聖杯戦争の参加者であるセイバーがそれを口にするのは絶対に間違っている。確かに前回の戦いで敵対していた存在が存命していて修司という切り札を育ててたのなら警戒の一つも言えるだろう。

 

しかし忘れてはならない。修司が自身を拾ってくれた男がサーヴァントで、その事を話さなかった事が咎だと言うのなら、前回の聖杯戦争に引き続き召喚されたセイバーもまた同様の咎を背負っているのだと。

 

サーヴァントと言えど元は人間、英霊である以前に感情のある人なのだ。憤りもするだろうし、苛立ちや不安に思うこともあるだろう。

 

でも、だからこそジャンヌはセイバーの言葉に強く反論するのだ。セイバーが疑いを持つのも分かる。だが、だからと言って悪戯に二人の仲を裂くような真似は許されない。

 

いずれ、修司は真実に辿り着くだろう。10年前に何が起きて、自分を拾い育んでくれた者が何者であるかを彼自身向き合う事になるだろう。

 

「私にも不十分だった所が合ったのは認めましょう。ごめんなさい。でもどうか修司君を、彼を信じてあげて欲しい。彼が聖杯戦争に挑んでいるのは彼の王の傀儡だからではない。彼が戦うのは彼自身が選んだ事なのです」

 

「────」

 

自身の責を認め、その上で謝罪し、頭を下げるジャンヌにセイバーは何も言えなくなる。

 

修司はセイバーからみても誠実で、人の良い好感の持てる人間であることは理解できる。あの黄金のアーチャーと接触してどうやら疑心暗鬼に陥っていた様だ。

 

ジャンヌに理路整然にハッキリと返された事でセイバーは頭に昇った憤りを鎮め、冷静さを取り戻す。

 

「───いえ、此方こそ平静さを失っていたようです。申し訳ない、確かに彼等二人の事は私から糾弾するべき事ではなかった。貴女の言うことが正しいのなら、あのアーチャーは今回の聖杯戦争には関わらないのでしょう」

 

「セイバー」

 

「ですが、あの黄金のアーチャーには気を付けてください。あの類いの男は親しい相手にも平然と絶望を与える。もし奴が何かしらの心変わりがあるものなら」

 

「その時は私が全力を以て彼を………修司君を守ります」

 

手にした旗を強く握り締め、誓うように口にするジャンヌにセイバーも満足したように頷いた。これでセイバーも自身の気持ちの蟠りに決着が着き、今頃心配しているだろうマスターたる士郎にどう謝ろうか頭を悩ませた時───。

 

それは、前振りもなく現れた。

 

「っ!」

 

突如、セイバーの形相が凄まじい剣幕になったと同時、ジャンヌは彼女の風の力によって吹き飛ばされた。

 

 

「セイバー、いきなり何を……っ!?」

 

和解も成り、再び同盟相手として組んでいけるのだと安堵した矢先に襲われる衝撃。戸惑うも何とか体勢を整えたジャンヌがセイバーに抗議しようとするが……その言葉は喉から先へ出てくる事はなかった。

 

黒い泥、形状し難いナニか、形を持った影、昨夜アインツベルンの城にて異形のランサーと共に現れた影がセイバーに覆い被さっていた。

 

「あ、が、あぁぁぁっ!」

 

「セイバー! くっ、令呪を以て命じます。影の縛りを解き放ち今すぐ主の下へ戻りなさい!」

 

影の侵食に苦悶を晒すセイバー、ジャンヌはセイバーを助けようと令呪を用いて脱出を試みるが、セイバーが影の触手から逃げられる素振りはない。魔力の結晶体とも言える令呪の力すら抗えない影の力、それは奇しくもジャンヌに影の正体を確信させる事になった。

 

「セイバー、脱出を! 貴女の魔力放出ならば!」

 

「それは………難しいですね。既に我が身は、この影に半分以上……汚染されている。悔しいですが、私は、ここまでの様です」

 

影の力はサーヴァントに対して絶大、セイバーは自身の魔力でできた肉体を汚染される激痛に苛まされながらも、それでも強がって笑みを浮かべる。自分本意な考えに先走り、最悪の展開を招いた自身への浅はかな行動を嘲笑するように。

 

「ルーラー、この影が完全に私を取り込むまでの合間、早く戻り、急いでこの事を伝えてください。今、聖杯戦争の状況は混迷を極めつつある。影の正体に検討が付いている貴女ならば……きっと、この状況を打破出来る筈です」

 

「セイバー!」

 

「最後に………伝言を。シュウジと、我がマスターに謝罪を、私は、貴方達と共にいるべき者では………なかった。私は、卑怯な臆病者、だったと」

 

その言葉はセイバーの自身の悔恨の台詞だった。修司と士郎に、真実を話すのが怖かった自分への浅ましき捨て台詞を口にして、最優のサーヴァントは影に呑み込まれていった。

 

抵抗するセイバーを完全に呑み込もうと、肥大化しながら蠢く影、その様を見せ付けられながらも、ジャンヌはこの事を伝えるべく、沸き上がる感情を圧し殺しながらアインツベルンの城の跡地を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────さ、流石に少し………疲れたな」

 

沸き上がる感情を爆発させ、命を玩具の如く消費していた魔術師の魔窟を跡形もなく消失させた修司は額に小さくない玉粒の汗を流し、肩で息をしながら辺りを見渡した。

 

薄暗く、死の臭いで満たされていた蟲蔵は跡形もなく消し飛び、お化け屋敷と揶揄されてきた間桐の館も同様に消し飛んだ。後に残されたのは間桐の土地を丸々覆う程の巨大なクレーター、地下深く抉られた地表は否応なしに明日の朝刊の一面を飾ることになるだろう。

 

「やり過ぎた………とは思わないな。これで慎二や桜ちゃんの気持ちが少しでも晴れればいいんだけど」

 

間桐桜が10年受けてきた虐待、その表現すらも生温い過酷な体験を鑑みれば、間桐のこの結末は当然とも言えた。己の欲望に他者を巻き込み、数多の悲劇を生み出してきた怪物の家、それを跡形もなく消滅できたのは良いが、これで全てが終わった訳ではない。

 

まだ、修司には倒すべき相手、戦うべき相手がいる。あの異形のランサーの姿も見えない。修司の一撃で消滅したのか、確認できる術は今はない。

 

「兎も角、一度ここから離れよう。流石に騒ぎになるだろうし、早いところ慎二に合流しないと」

 

そう言って修司は先に行っているだろう慎二の後を追おうとするが………足元がふらつき膝を着いてしまう。度重なる激闘と死闘、人間としての限界を超えた力の発現。本来なら何年も積み重ねて発現される力を僅か数日の内に到達した事により修司の肉体は疲労困憊の状態に陥っていた。

 

「くそ、今更体が限界に気付きやがった。もうちっと待ってくれよ」

 

限界を迎えた肉体に鞭を打ち、それでも立ち上がろうとする修司。そんなときふと頭上から聞き慣れた女の声が聞こえてきた。

 

「───本当に、ただの人間なのですか? 貴方は」

 

見上げると、其処には驚愕と呆れ、他にも様々な感情を秘めたバゼットがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふははははっ! 修司め、日はまだ沈んでないと言うのにあんなド派手な花火をあげおって! 全く、我が臣下ながらせっかちな奴よ!」

 

冬木の街を一望出来る教会、深山町から離れた位置からでも確認できた光は英雄王の笑いのツボをこれでもかと刺激した。天を穿つ光、次いでドーム状に広がる光、何れも修司が命の輝きを爆発させた事による現象なのだと、黄金の王は一目で見抜いた。

 

「確かに我はお前を鍛えた。理不尽を許さぬと断じる貴様を、抗う為に可能な限り鍛え上げた。だが、よもや此処までとはな。未来を見通せなくなったとは言え、俺の見識の眼も衰えたものよ」

 

その表情には呆れと驚愕、そして感嘆と喜びの色が混じり合っている。理不尽を許さないと語る少年を理不尽に抗う為に鍛え上げたのはいいが、この成長具合はちょっと予想出来なかった。

 

「───認めよう。貴様の成長速度は我の予想を上回った。誇るが良い、お前はこの英雄王の上をいったのだ。………いや、“大元の貴様”を考えれば、あの程度の進化は当然と言えるか」

 

その口元を歪ませ、グラスに注がれていた朱色のワインを一気に飲み干す。英雄王からすれば雑多な味だが、あの光を前にしてはどんな安酒も至高の品の様に感じる。

 

あの光は命の───可能性の光そのものだ。魔術師でもないただの人間が根源に最も近い領域に足を踏入れたのだ。

 

「───いや、違うな。アレは根源とは異なる似て非なるモノ、現存する理を己の理を以て凌駕する。根源が原初への回帰ならばアレは頂天への突破という事か」

 

修司が行った現象を英雄王がその眼で分析し、独自の回答を得ると、その笑みはより深くなっていく。そう、あれこそが人間の本懐、どこまでも貪欲で先へとその歩みを進める者。

 

前進する愚者。それは人類の裁定者である英雄王が最も注目し、そして讃えるモノである。

 

「見ているか神々よ。アレが、あの男が何れ貴様等をも超える人間よ。今の内に目に焼き付けておくといい」

 

愉悦。何処までも成長し、足掻き、何処までも進化を続ける己の臣下に黄金の王は満足そうに眺めていた。

 

────そして。

 

「フハハ、フハハハ、何だアレは。あんなものどうやって誤魔化せと言うのだ。ガス漏れ? ガス爆発? いや無理だ。最早ガス会社程度の理由で収まる案件ではない。どうしよう。いやホントどうしよう。いっその事隕石が降ってきたとかそう言う言い訳の方がまだ通るんじゃないだろうか」

 

隣でアタフタと事後処理について頭を悩ませている言峰、その様子もまた愉悦の一環となるのだった。

 

「そうだ。ガスの対消滅という事で押し進めてみてはどうか?」

 

「意味が分からぬわたわけ」

 

 

 

 




セイバー「あんな物騒な力を持った彼を使って聖杯を狙ってるんでしょ!」

ルーラー「ステイ」

二人の話は大体こんな感じ。

なお、AUOの心境はドンドン力を高めていくブロリーにワクワクが止まらないでいるフリーザ様。
みたいな感じです。(笑)



if修司のいるカルデアWithマイルーム。

ジェームズ=モリアーティの場合。

「最初はさ、ホームズが見たことのない顔で呆けてたからさ、おじさんも結構ノリノリだったのよ?」

「でね。あの名探偵をあんな風にした彼にも当然興味が沸くじゃない? だからね、ちょっと誂うつもりでね、冗談のつもりでやっちゃったのよ。悪属性付与」

「そしたらね。効かないの。レジストされたとか、無効化とか、そう言うんじゃないの。私の悪属性付与の効果、スキルそのものを呑み込んじゃったのよ」

「しかも無意識で。おじさんビックリして腰抜かしちゃった。………その後も甲斐甲斐しく世話焼かれたんだけどさ」

「マスターリツカ、愛しのマイガール。気を付け給えよ。君達が慕う彼は彼自身が思っているより恐ろしいからね」

「………あっ、そこそこ、その辺。その辺を重点的に頼むよミスターシュウジ」

獅子王の場合。

「第六特異点での私と彼が………そうですか。そんなにもですか」

「いや、私には直接関り合いのない事は分かっていますよ。ええ、それは重々承知しています」

「ですから、そんな可哀想なモノを見る眼で見ないで下さい! こ、この私は正論で論破されてギャン泣きなんてしませんとも!」

「今度こそ、私の王としての論理であの正論男を打ち負かしてみせます!」

───この後、目尻に涙を貯めながら通路を走る獅子王を見たとか見ないとか。


ニトクリスの場合。

「不敬、不敬デアルゾ」(プルプル震えながらも必死の抵抗)


それでは次回もまた見てボッチノシ


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