────某所。都心の喧騒から離れ、人気も少ない大きな武家屋敷。冬特有の夜の寒空の下で一人の男が月を見上げている。
「───お館様、体が冷えてしまいます。どうか屋敷にお戻りを」
「子供達は今も外で戦っているのに、私だけ寝ているわけにはいかないよ」
女性の屋敷に戻るように促される言葉に男はやんわりと断った。穏やかな口調だが、それ以上に男の口にする言葉の節々に強い意思が滲み出ている。女性はそんな彼に一度だけ目を伏せると、男へと近づき一枚の羽織を男に被せた。
「なら、せめてこれだけでも。子供達が帰って来たときに元気な姿で迎え入れて上げるのも、お館様のお仕事でございますので」
「あぁ、ありがとうあまね。いつもすまないね。私の我が儘に付き合わせて……」
「その我が儘を支えるのが、私の役目ですから」
柔らかい笑顔でそう告げる妻の言葉に男もまたにっこりと笑みを浮かべる。………既に男には妻の顔を見るだけの視力はない、男の一族はある理由から病による短命を背負わされてきた呪われし者達の末裔。成人を越え、今年で23歳を迎える男の未来は既に前を見据えるほどの時間は残されていなかった。
「義勇は、既に目的地へと向かったか」
「他の柱の皆様や鬼殺隊の子供達も現地へ向かっています。きっと、鬼達を討伐してくれます」
「───あぁ、そうだね」
今、とある街にはかなりの数の鬼達が姿を現しているという。中には下弦の鬼だけでなく
何故これ程の鬼が一つの場所に姿を見せるのか、長きに渡り鬼と戦ってきた歴史ある一族、その長である自分ですら今回の事例は初めて体感する。報告にあった山で一体何が起きているのか、未知の出来事ばかりで予測は出来ないが、それでも男は一つの可能性を導きだしていた。
鬼舞辻無惨。一族の宿敵にしてこの国の鬼による被害の全ての元凶。鬼殺隊結成から永きに渡って探し求めていた仇があの山にいるかもしれない。
奴を討つのは自分を含めた鬼殺隊の隊員全ての願いである。だが、今奴を討つのは果たして得策なのか、山へ向かっている全ての隊士には鬼舞辻無惨もいる可能性を示唆しているが、それが事実である確信は未だない。
根拠はない。だが、妙な確信的心境が男にはあった。
「実はね。少し前に夢を見たんだ。この先の鬼殺隊の行く末を案じる様な夢を」
「夢……ですか?」
「うん。何処までも青空と地平線が続く世界、晴れ晴れとした世界でその中心で僕は一人佇んでいた。風が心地よく、たったままでも眠ってしまいそうな。そんな世界で、一つだけ不思議なモノが有ったんだ」
「不思議なモノ………ですか?」
「大きな、とても大きな黒い星。一瞬太陽かと思ったそれは、何処までも真っ黒な天体。そこで気付いたんだけど、その空に太陽が無くてさ、変わりにその黒い天体だけが青空に浮いていたんだ」
青空と聞いて最初は吉兆かと思ったが、黒い星と聞いてあまねと呼ばれる女性は途端にとんでもない凶兆なのではないかと息を呑む。何処までも続く青空が吉兆と言うのなら、黒い星というのは凶兆なのではないか。男の語る夢の内容にどう解釈したらいいか分からないでいるあまねだが、対する男はどこまでも穏やかだった。
「でもね。そんな大きな黒い星を前に不思議と不安はなかったんだ。寧ろ、逆に夢の中の僕はその黒い星に奇妙な安堵を抱いていた」
「そ、そうなのですか?」
「あぁ、それで今ふと思い出したのだけど、確か七福神に黒い星に似た大黒天様という神様がいたよね? もしかしたら、今回見た夢は神仏からのお告げだったりして……」
「そうですね。そうだと、いいですね」
どこか茶目っ気に語る男にあまねはフフフと笑みを溢す。そんな時、ブルリと体に悪寒が走る。どうやら、外でこうしていられるのも限界の様だ。
「お館様、そろそろ………」
「………あぁ、ありがとう。世話になるね」
悔しい。どんなに決意や覚悟を固めても体は言うことを聞いてくれない。以前よりも弱くなった自分の体に男は己の脆弱さに内心で涙を流す。
今、遠い山の地で凄惨な出来事が起きようとしている。それを止めようする子供達に自分は何もしてやれない。後悔と無念に苛む男は、ふと先に見た夢の事を思い出す。
(大黒天。七福神の一柱に数えられ、仏教では財や戦の神として奉られている神)
男は病弱な己の肉体に少しでも蓄えを入れようと過去に書物を読み耽っていた事がある。膨大な知識の海、底から掬い上げられるのは神話に出てくる一つの神の存在。
(確か、大黒天の由来となったモノはマハーカーラ。そして、その名の意味するところは────)
大いなる暗黒。
何故だろう。所詮は夢の中の話だろうに、何故か男────産屋敷輝哉は夢と切り捨てる事ができなかった。
◇
「どうした。答えられないのか?
しんしんと降り積もる雪の中で、シュウジの低い声だけが辺りに響いていく。鼻元を押さえて座りこんだまま、何も言い返すことが出来ていない鬼舞辻無惨は過去の出来事の記憶を想起させていた。
それは、文字通り刻み込まれた記憶。あれから既に数百年の時が過ぎたと言うのに、無惨の頭からは全く色褪せる事のないトラウマ。目の前の男と記憶の男とは姿形が全く異なっているのに、どうして今になって再び思い出すのか。
(怯えているだと!? この私が、鬼舞辻無惨が、こんな奴に!?)
それは無惨にとって決して認めるわけにはいかない負の記憶。一方的に切り刻まれ、この体になってから初めて抱く死の恐怖。花札のような耳飾りを着けた剣士、後にも先にも無惨をして“化け物”と評する者。今目の前で自身を見下ろすコイツから、あの剣士と似た何かがあるというのか。
あの日以来味わうことのなかった屈辱に満ちた感情。しかし、そんな激情とは裏腹に無惨の頭の中では如何にして目の前の男から逃げ出す算段が練られていた。
このままでは再び自分は追い詰められる。ならばもう一度あの時の様に1000を超える肉塊に変異して逃げ延びるまで、タイミングはどうする? 果たして自分は逃げられるのか、不安と恐怖で体が言うことを聞かなくなり始めた時。
「無惨様から、離れろォッ!」
男の────シュウジの死角から帯の様なモノが襲い掛かってきた。適当に手で振り払おうとするシュウジだが、帯から感じられる異様な力に瞬時に回避を選択し、胴体を反らしてこれを避ける。
「お兄ちゃん!」
だが、続けざまに別方向から放たれる血のような赤い斬擊にシュウジは今度こそ後ろへ飛んで無惨と距離を開けてしまう。
「無惨様、今です!」
「っ!」
己の配下である女の鬼───堕姫に礼の一つも言わず、無惨は足元に出現させた襖へ落ちるように姿を消す。その様子にシュウジは小さく舌を打った。
(逃がしたか、まぁいい。奴の転移した
無惨の追跡を既に済ませているシュウジは辺りに此方を見据えている鬼達を一瞥する。全員、目には上弦やら陸、参など数字の文字が刻まれているから、恐らくは無惨が保有する精鋭部隊の様なものだろう。部下を、配下を、手下である他の鬼を己の癇癪で握り潰す。あんな餓鬼の様な奴にまだこれだけの鬼が指示に従おうとしている。その事実にシュウジは内心で憐れんだ。
「お前ら、本当に俺とやるつもりか?」
それはシュウジに出せる最大限の譲歩のつもりだった。あんな癇癪持ちの男の下で働き、生きるのは自分が思っている以上にシンドイ筈、目の前の鬼達も少なからず人を殺して来たのだろう。けれど、今のシュウジがそれを知ることはない。先の条件と同じ、二度と人に危害を加えずひっそりと生きていく事を選ぶのであれば、無闇に命を奪おうとは思わない。
鬼舞辻無惨を除いて。
だが、そんなシュウジの言葉に誰も靡こうとしない。鬼という人間の敵対者は最大の敵意と殺意を以てシュウジという人間と相対する。
「図に乗るなよ人間。たかが他の鬼と下弦の鬼を相手取った程度で付け上がるなよ」
「お前には、俺たちを舐めた付けを支払わせなきゃなぁ~!」
仕掛けたのは目に伍と陸の数字を刻んだ壺と男女の鬼、シュウジは何故男女二人の鬼が揃って目に同じ数字が刻まれているのかと不思議に思い首を傾げた。
(もしかしてこっちの男女の方はそれぞれ同時に倒さないと倒せないとか、そう言う仕組み?)
「血鬼術・千本針 魚殺!!」
「血鬼術・飛び血鎌!」
「血鬼術・八重帯斬り!!」
何処から取り出したか不明な壺から出てきた魚が吐き出す無数の針と、飛んでくる血の鎌、そして女から繰り出される無数の帯の刃がシュウジに向けて雪崩れ込む。いずれも殺意に満ちた凶擊、常人であれば死は免れないその攻撃にシュウジはまず迫る帯の刃を受け流した。
周囲の木々を切り倒す鋭利な帯、その腹の部分を拳圧で反らし、帯の軌道を他の血鬼術で相殺される。女の鬼が扱う血鬼術は良くも悪くも幅が広い。その部分だけを上手く利用された事に気付けなかった堕姫と呼ばれる鬼は、何が起きたのか理解できずに混乱する。
「な、なんで!? どうして私の血鬼術があんな風に……」
「堕姫殿! 何をされておりますか! 遊んでいる場合ではありませんぞ!?」
「ち、ちが、私は遊んでなんか………お兄ちゃん、違うからね! 私は遊んでなんか───」
(嘘だろ。あの人間、小さく手を振るっただけで妹の技をねじ曲げやがった。しかもそれだけじゃねぇ、妹の帯の特徴を初見で見抜き、直接触れないように拳圧だけで! さっきの無惨様を殴り付けた時も奴の動きが見えなかった。今俺の前にいるのは本当にただの人間かぁ!?)
自分の技が邪魔されたと思う壺の鬼が堕姫に憤りを露にしているが、当然堕姫はそんな事はする筈がないと反論する。唯一堕姫から兄と呼ばれる片割れの上弦は今の流れの一部始終を理解できていたが、到底人間業とは思えない事をしれっとやり遂げるシュウジに人知れず戦慄していた。
今、自分達が相手にしているのは並の人間ではない。少なくとも鬼殺隊よりも余程不気味な輩だとシュウジの脅威を再認識した鬼、妓夫太郎は残り全ての上弦にも手を貸すよう指示を出す。
「玉壺、本気になれ。半天狗、テメェもだ! 今の動きで分かった。コイツは舐めて相手していい奴じゃねぇ! 無惨様のご命令通り、コイツはここで確実に殺さなきゃならねぇ!」
「なっ!?」
「ヒィィィィィ!!」
「黒死牟! 猗窩座! テメェ等もだ! もう上弦の鬼の面子とか言ってる場合じゃねぇ! 全員で───」
「悪いが、ワザワザ待ってやるつもりはない」
「「「!?!?」」」
妓夫太郎に一切の驕りはなかった。先に見たシュウジの身体能力、妹の血鬼術を反らした技、人間の枠組みから外れたその力に妓夫太郎はシュウジをただの餌とは見ていない。だからこそ滅多に顔を合わせない上弦にも協力することを要請した。いがみ合い、気に入らない相手だろうと今は手を組んで奴を殺すしかない。
妓夫太郎の判断は間違ってなかった。玉壺も半天狗もそれに従おうとしたし、上弦の壱と弍も応えようとした。
───ただ、シュウジという人間の方が遥かに動きが速かった。
目を離してはいなかった。瞬きも、奴の動きの全てを見逃さないと終始睨んでいた。
それなのに、見えなかった。
気が付いたら、奴が自身の懐に潜り込まれていた。振り払わなければ、瞬時に判断した妓夫太郎が手にした血鎌で振り払おうとして───。
無防備となった脇腹をシュウジの回し蹴りによって蹴り抜かれた。重い一撃、人間の膂力では到底出せない威力。妓夫太郎は口から赤黒い吐瀉物を吐きながら吹き飛び、背後にいた妹を巻き込んでその先にある岩壁に叩き付けられる。
意識が断絶し、視界が混濁する。鬼狩りの日輪刀によるモノではなく純粋な物理攻撃による一撃が上弦の鬼を動けなくする程のダメージを負わせた。
(嘘、ダロォッ!? 今の一撃で、一撃だけで全身が内側から砕かれたァァッ!?)
鬼特有の治癒力を以てしても瞬時に完治できないダメージ。されど自身は上弦の鬼、これまで屠ってきた人間の血が、柱を殺してきた実績が妓夫太郎の闘志を奮い立たせる。
(いや、まだだ。まだ戦える! 俺は上弦の鬼! 無惨様に認められた十二鬼月の一人! ビビってんじゃねぇ。幾ら奴が強くても所詮は人間! 日輪刀も持っていない奴が俺達を殺せることなんて、できや───)
───しかし、妓夫太郎の奮起はそれ以降続かなかった。体を回復させていた途中に降ってきた木の槍、後ろにいた妹ごと貫かれ、岩壁に貼り付けられた妓夫太郎は自身の動きが封じられた事に気づく。
「そこで少し大人しくしていろ」
それは、無惨が最初に振るった腕の一振りで薙ぎ倒した木々の内の一本。何故たかが木が自分を妹ごと貫いているのか、岩を貫いているのか、鬼である自分の動きを封じているのか。
分からない事だらけ、目の前にいる人間の能力なのか、それとも別の何かによる作用なのか、どれだけ思考を巡らせても妓夫太郎には理解することは出来なかった。
「さて、それじゃあ次は───」
「隙だらけだわこの間抜けがぁぁぁっ!!」
頭上から異形の怪物が押し寄せる。半魚人と蛇の怪物であるラミアが融合したかのような姿、上弦の伍とされる玉壺が己の血鬼術である壺を介しての転移能力を駆使して、両手を広げてシュウジに抱き付こうと迫ってくる。
当然ながら、シュウジは気付いていた。流石に姿形が変わっていた事に驚きはしたが、この手の不意打ちを受けるのは一度や二度ではない。今更ながらの奇襲に機械的に対処しようとするが、それよりも前に黒い孔が両者の間に広がっていく。
「え」
「あ」
お互い間抜けの顔を晒すも、既に事は終わった後だった。玉壺は黒い孔に吸い込まれ、姿を消してしまった。
恐らく、今のは竈門家を守っている相棒の介入なのだろう。生身同士の戦いには滅多に横槍を入れてこなかった相棒、それは今の鬼の力が余程危険なのか、それとも時間を掛けすぎだと急かしてきたのか。恐らくは後者である。
「さて、いい加減夜明けも近い。ここから先は一気に終わらせて貰うぞ」
これ以上時間を掛ければ夜明けが来て人の活動する時間帯となってしまう。そうなってしまえば家に帰ってくる炭治郎と鉢合わせてしまい最悪巻き込んでしまう可能性があるし、何よりここにいる連中が無差別に人を襲いに行くかもしれない。
そうなる前に片付けなければ、速攻で動き出したシュウジが次に狙ったのは、やたらとビクビクしている老人の鬼。
「ヒィィィィッ!!」
矢鱈と怯えていて調子が狂いかけたが、それでもこの鬼からの血の臭いは凄まじい。炭治郎程ではないが、シュウジもまた五感の鋭い男、この鬼が殺してきた人間が一人や二人では済まない事など、既に見破っている。
「このォッ、極悪人がァァッ! 弱いものをいたぶるのがそんなに楽し───ガァッ!?」
老人の体から生えるように現れた鬼を最後まで言わせることなく拳を捩じ込む。逃げようとする老人の鬼、上弦の肆の首根っこを捕まえ………。
「そんなに逃げたいのならつれていってやるよ。今の時代では誰も到達出来ていない場所へな」
シュウジはそのまま上弦の肆を遥か彼方へ遠投。地球の重力圏を超え、宇宙へ進出した半天狗はワームホールで先に来ていた玉壺と共に太陽に焼かれて二人仲良く消滅した。
だが、鬼が太陽に弱いことなど知らないシュウジは今ので鬼二人を倒したなど露知らず、後で対処するように念頭に置いて上弦の弍である猗窩座へと向き直る。
「さて、
「………どういう意味だ?」
「お前さ、他の鬼と比べて圧倒的に血の臭いが薄いんだよ。代わりに伝わってくるのは何処までも強くなろうと言う意志だけ、体を見りゃわかる。お前、凄く鍛えてるだろ」
「…………」
「俺もさ、体を鍛えて拳で戦っているから何となく分かるんだ。猗窩座、お前にはもしかして守りたいものがあったんじゃないのか?」
「っ!?」
シュウジから見て猗窩座という鬼は 実直な奴だった。言葉を交わした訳ではない、拳を交えた訳ではない。先に強くなる理由を訊ねた際に見せた表情、この時の猗窩座の顔は他の鬼よりも遥かに人間らしく見えた。
「別にさ、説得しようだなんて思っちゃいないさ。お前も、少ないとはいえ人を殺してきた鬼。人の事は言えないが、お互い引き返せる場所はもうない身だ」
「おれ………は………」
「でもさ、立ち止まるなら、終われるなら、自分で選べるうちにそうした方がいいんじゃないか?」
シュウジは、何となく猗窩座を放っておけなかった。倒すにしても見逃すにしても、一つ言葉を交わしておかないといけない気がした。
鍛え上げられた肉体。鬼であることに驕らず、ひたすら自己を鍛え続けてきた猗窩座、ひたむきさと実直さを併せ持つこの男がどうして人を脅かす鬼になってしまったのか。
『狛治さん!』
ふと、猗窩座の耳に懐かしい声が聞こえた。泣き叫ぶ声、今まで何度も振り払い無視してきた声が………何故だろう。猗窩座には泣きたくなるほど尊いモノに聞こえてきた。
「………全く、イチイチ癪に障る事ばかり言いやがって、初対面だろ。お前は人で、俺は鬼だ。何故そこまで俺を気にかける」
「別に、ただ何となくだ」
適当な奴だ。目の前の人間を忌々しく思いながら、どこか感謝の気持ちを抱き始めた猗窩座は、笑みを浮かべて構えを取る。その笑顔は何処までも人らしかった。
「往くぞ。シュウジ、俺の奥義を以てお前を殺す。血鬼術、術式展開!!」
猗窩座の足元に陣が広がる。その形は雪の結晶の様に鮮やかで、目の当たりにしたシュウジは綺麗だと目を開いた。
猗窩座から強い意志と決意を感じる。初手から奥義を繰り出すつもりだ。鬼になり、永い時の中で積み上げてきたモノ、その全てを自分にぶつけようとしている。
「そうか。それがお前の選んだ道だというのなら、───此方も見せねば、無作法というものだな」
瞬間、シュウジの内側から光が溢れる。それはシュウジが示す人の可能性、その極致。猗窩座が追い求める至高の領域と似て非なる極みの世界。
(嗚呼、凄いな。人は、命とは、此処まで練り上げられるものなのか。そんなところにまで至れるものなのか)
感嘆を抱く。しかし、それでも猗窩座は止まらない。鬼になろうとも自分は男、ましてや
「破壊殺終式────青銀乱残光」
「人越拳────千手観音貫手」
光が、猗窩座を包み込む。眩しくて暖かい光。
(恋雪さん、待たせて………ごめんね)
『お帰りなさい。狛治さん』
最後の最後に、その男は自分が望むべきものを………思い出した。
コソコソ話。
実は今回、ボッチを倒せる方法は一つありました。
下弦の壱である魘夢と上弦の伍の玉壺、それぞれの血鬼術を使うことで低確率ですが倒せていました。
ただ、魘夢がボッチの大切な人との思い出を汚すような悪夢を見せた場合、その瞬間ボッチはブチキレて覚醒。ネオを超えてゼロになったグランゾンが殺意マシマシで襲ってきます。
これが今回のRTAで最も速いルートです(笑)
それでは次回もまた見てボッチノシ