『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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済まない。話が進まなくて済まない。

未だ原作開始の話が続きますが、どうかもう暫くお付き合い下さい。

尚、今回はギリシャ要素がちょっぴり入ります(嘘)


その3

 

α月Δ日

 

 キリシュタリアの突然の訪問から一夜明け、本日の予定を聞かされるまでもう少し時間があるらしいとの事で取り敢えず昨日の就寝する所までに起きた出来事を書いておこうと思う。

 

先に述べた通り、キリシュタリア=ヴォーダイム君が自分の部屋の所にやってきた。それもなんというか………凄まじく面白い格好でやけに目をキラキラさせて手にはガンプラを持ってやって来たのだ。

 

もうね、カルデアに来て一番衝撃的だったよ。確か彼って時計塔の中でも群を抜いて才能ある有望ある魔術師なんだよね? しかも彼の家って由緒正しき血統のある所の人なんでしょ?

 

そんなやんごとなき人間が話を聞かせて欲しいと目ェキラッキラさせてやがんの。いやね、その時程隙を晒した瞬間はなかったよ。

 

 兎に角通路に立たせたままではアレなので取り敢えず彼を中へ通して余っている椅子に座らせて紅茶を淹れる。ここって魔術師達が集まっている施設だけあって日用品や雑貨類は勿論来客用の紅茶といった嗜好品も結構豊富に揃っているみたいなんだよね。

 

紅茶の淹れ方も一応シドゥリさんから一通り習っているから心得ているけど、本物の貴族様には合うのかなぁ。なんて不安に思っていたけど、割りとこのキリシュタリア君はそう言ったモノに拘りはしないらしい。紅茶を一通り飲み終えて社交辞令の礼を口にすると、待ちわびたと言わんばかりに話を始めた。

 

 なんというか……まぁ、彼が自分の思う魔術師という類いから凄まじく外れた人種というのは理解できた。て言うかスゲェ親しみのある人間だった。俺の好きなマンガ、アニメも彼は読破したって言ってるし、特にラウンジでの話を聞いてから是非実物を見せて欲しいと言って聞かないし、キリシュタリア君が少年の心を持った青年だというのがこの時嫌と言うほど理解できた。

 

剰りにも見たい見たいと騒ぐ彼に仕方ないと折れた自分は少しだけ気を解放し、その姿を見せる事にした。そしたらキリシュタリア君は余程興奮したのか、ひっきりなしに例の技の真似をするようになり、今度はあの技もやって欲しいとせがむようになってきた。

 

いや押しが強い。滅茶苦茶嬉しいのは分かったから、取り敢えず落ち着く様に促して紅茶を飲ませると、済まないと侘びの言葉を口にして頭を下げてきた。

 

 まぁ、初めてあの技を出したときの自分だって危機的状況なのにも関わらずテンション爆上げしたし、彼が興奮するのも分かる。本当なら見せても良いのだが、生憎とここは屋内だし、外に出るのだってイチイチ許可をとらなければならないと聞く。此処であの技を出せばカルデアが崩壊するのは目に見えているのでその時が来るまで待っていて欲しいと言って一先ずその場はそれで終わることになった。

 

その後は彼が持ってきてくれたガンプラを組み立てたりするのだが、キリちゃん(本人には許可を取った)ってば随分とこう言うのには拘りを持っているらしく、専用のニッパーとか持ってたのだ。やべぇ、想像以上に面白いぞこの男。なんて思いながら談笑を続けながらガンプラを組み立て終えると、今回のガンプラはお近づきの印だと彼からプレゼントされ、その日はそれで解散となった。

 

 明日も来ると言っていたので、自分も何か趣向品を用意してもいいのかもしれない。

 

因みに、彼の好きなガン⚪ムシリーズはGのマスターガン⚪ムとドラゴンガン⚪ムだとか。

 

 

 

 

 ────さて、あの後時間が来たので本日の予定をこなしたのだが、今日はマスター適性とレイシフト適性なる二つの素質を測るらしく、医療設備の整った医務室に通される事になった。

 

其処で待っていたのは医療担当のトップのDr.ロマンなる人物で、何とも魔術師らしからぬ気弱だけど温厚そうな人だった。思えばカルデアに来てからそう言う如何にもな魔術師と出会ったことはないな、なんて思いながら訊ねてみると、Dr.ロマンはそれはそうだと笑われた。

 

何でもこのカルデアは前所長であるマリスビリーが世界各国を渡り歩いて現地でスカウトした人材ばかりらしく、中には技術能力が高いというだけで魔術師ではない自分と同じ一般枠の人間も参加しているとのこと。尤も、その裏では他の魔術派閥の連中に要らぬ介入をされるのを警戒していた為というらしい理由もあったりするみたいだが、それでも人を現地で採用する豪胆さに自分は思わず感心してしまった。

 

 そんな雑談交えているといつの間にか検査は終えていて、結果の方もすぐに解析出来たようなのだが、何やらDr.ロマンは難しい顔をしている。どうしたのかと訊ねると、自分にはマスター適性値とやらが恐ろしく低いらしく、これではマトモなサーヴァントと契約できるか分からないとの事、その代わりレイシフトの適性値はAチームの中でも群を抜いて高いみたいだが、これでは令呪が刻印できないとの事らしい。

 

まぁ、自分には魔術回路ないみたいだしそこは別にいいんだけどね。必要になったら別の人からサーヴァント借りればいいし、別にレイシフト先には一人で行く訳じゃないんだし、そこまで悲観はしていない。少し残念な気持ちではあるけれど。

 

それに一番重要そうなレイシフト適性が高いのは幸いした。Dr.ロマン曰く、仮にレイシフト先で皆と別れ、何らかの理由で此方から観測出来なくなっても、意味消滅する事なく自己を保ち、尚且つ任務を続行出来るという破格の適性値らしい。

 

ならいいやとあっさりと受け入れる自分にDr.は引いていたけど、最終的には彼も納得してくれた。その後も色々と世間話をしながら自室へ戻る準備をしていると、ふと一人の少女を見かけた。

 

マシュ=キリエライト。彼女もどうやらAチームに配属される予定の様で先の顔合わせの場では見掛けなかったから、改めて彼女に自己紹介をする事にしたのだが、何て言うか………人間味の薄い娘だった。

 

 礼儀が無いわけではない。寧ろその逆、彼女の挨拶は終始徹頭徹尾丁寧なモノで丁寧過ぎていっそ機械的ですらあった。戸惑う自分にそれではこれでと挨拶もそこそこに部屋の奥へ消えていく彼女に自分は自然と目線でDr.に問うた。

 

『あの子はちょっと特殊だから……』そう言葉を濁すDr.になにやら引っ掛かりを覚える。姿の見えない前所長もそうだが、このカルデアには何かキナ臭いモノが渦巻いているように感じる時がある。まぁ、魔術師が創設した施設なのだからキナ臭いのは当たり前なのかもしれないが。

 

 ただ、部屋に戻る途中奇妙な視線を感じた。突き刺すような、ネットリと舐め回す様な嫌な視線。そこに混じった確かな悪意を感じ取った俺はすぐに振り返るけど………そこには誰もいなかった。

 

その後、遊びにやって来たキリちゃんと今日はペペさんを連れて有名アニメの劇場版を何本か観る事になった。

 

 因みにペペさんって、ピッコ⚪さんと天⚪飯、あとバー⚪ックが好きらしい。何だろう、あまり違和感がない。

 

 

 

α月√日

 

 そう言えば、ここって魔術師が深く関わる施設だったな。と、改めて実感する出来事が起きた。このカルデアなる施設には多くの人間が在住し、来る日に備えてそれぞれ準備を進めているあの国連もが認める一大組織。

 

人が多ければソレだけで不安要素が大きくなり、考える事がそれぞれ存在する。特にこの施設には魔術師という人の枠から外れた輩が数多く配属している。キリシュタリア君達だけじゃない、多くの魔術師が様々な思惑を抱いて此処にいる。

 

 まぁつまり、今日はそんな魔術師の皆から自分は必要ないのでは?という魔女裁判みたいな事が起きたんだよね。ハッハッハ。いや、笑えないけどね。

 

どうやら昨日の適性検査の情報が何処からか漏れてしかも自分がマスター適性が絶望的に低いという部分だけがカルデア中に広まっているらしく、一部の魔術師がAチームから外すべきだとオルガマリーちゃんに訴えたらしいのだ。

 

オルガマリーちゃんは前所長の後を継いで今は施設運営の為に頑張っているというのに、面倒な事をしてくれる奴もいたものだ。まぁ、そうなる原因となった自分が言うべき事ではないが。

 

その後、オルガマリーちゃんの采配で自分の実力を見聞する事になり、自分は戦闘専用のシミュレーター室へと向かった。この時用意された戦闘用の礼装なる装備を着たのだけど……何かピチピチで落ち着かないんだよね。

 

 そんなわけでやって来たシミュレーター室。サーヴァントが使っても問題ないような頑丈で広々とした空間で戦う事になるのだが、周囲から聞こえてくる騒音が煩いこと。

 

やれ実力のない一般人がでしゃばるなと、やれ英雄王を呼び出したのは何かの間違いだったんだと、言いたい放題でこれでもかと投げ飛ばされる罵詈雑言の嵐に自分は怒りや呆れよりも、あぁやっぱりコイツ等は魔術師なんだなと変に安心すらしていた。

 

 観戦室……というか、向こうのモニタールームではキリシュタリアが承諾するように頷き、隣のペペさんもサムズアップをしてGoサインを出してきた。どうやらあとの事は彼等が上手くやってくれるらしい。有難いチームメイトに内心で感謝しつつ、現れる敵性体に向き直る。

 

出てきたのは十数体の人形、腕を鋭利な刃にした機械人形が無機質な目で此方を睨んでいる。モニター室から聞こえてくる開始の合図、迫ってくる機械人形達を前に自分は気を解放させた。

 

キリちゃんに見せた時よりも少しだけ大きい闘気を纏い、機械人形達を三秒掛からず粉砕した。瞬間場の空気は静まり返り、キリちゃんとペペさんだけが此方を労う拍手の音が聞こえてくる。自分が見せた力はまだほんの一部でしかないが、今回の件に何か作為的なモノを感じ取った自分は取り敢えずこの程度にとどめておくことにした。

 

 その後、無事に自分の力を示せた事で黙り込んだ魔術師達はそれ以降自分に何かを言ったりはしなかったし、時間を掛けなかったことでオルガマリーちゃんの負担も少しは減らせた事だと思う。

 

その後、簡単な検査を行った自分はキリちゃんと共に昼食を摂り、その後自室待機となった。

 

 ────結局、今日はあの嫌な視線を感じる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤーンもう! 修司ってば格好いいんだから! 何なのあの速さ! あの強さ! もうサーヴァント顔負けじゃない!」

 

「もう、分かったわよペペ、彼の強さは充分分かったから」

 

「一体何回目だよこの話をするのは」

 

 通路を歩く三人、何れも選りすぐりのAチームである彼等彼女等は先に起きた模擬戦という名の魔女裁判を見事乗り越えて見せた修司に未だ冷めやらぬ様子で語らっていた。

 

と言うよりも、ペペロンチーノという偽名感丸出しの彼女(此処では敢えて彼女と呼ぶ)が一方的に話しているだけなのだが。

 

「だって凄かったじゃない。あのシュインシュインっての、昔私が見たのとまんま同じだったのよ! テンション上がってリピートするのは当たり前じゃない! 二人だってそうでしょ?」

 

「いや、僕は別に……」

 

「わ、私は……テレビとか見たことないし……」

 

 そう言って興味なさげに言う二人にペペロンチーノはお構いなしに続ける。

 

「なら今度一緒に観ましょ! 私も久し振りに観て嵌まっちゃったわ~! 今度工房借りて白マントとか作っちゃおうかしら! きっとデイビットに似合うと思うのよ~!」

 

「遠慮する」

 

「わ、私も……」

 

「因みに、拒否権は無いわ~!」

 

 先を歩くペペロンチーノの言葉を戯れ言だと切り捨てながらもカドックは思い出す。先に見せた白河修司が見せた実力の一端を。

 

見えなかった。動きも挙動も何もかもが、まるで一瞬の出来事で、カドックが状況を認識する頃には全てが終わっていた。

 

修司が秒殺で破壊した機械人形は何れも魔術の力で強化された自律型の殺戮兵器だ。サーヴァントが霊基を調整する為の人形といっても普通の人間は勿論魔術師でも無策では決して相対してはならない相手だ。

 

なのにあの男は事も無げに、障害とすら認識せずにただの数秒で片付けてしまった。マスター適性値が低いと見下した連中も、そしてカドック自身も、恐らくは隣のオフェリアも等しく思い知った筈だ。

 

白河修司は強い。それも無茶苦茶とか、出鱈目といった言葉が付くほどの規格外の怪物だと。彼もまたAチームに相応しい人材なのだと。

 

誰もが認めざるを得なかった。他の魔術師も、映像越しで見ていたDr.ロマンも、現所長のオルガマリーも、ある工房にて待機している万能者(キャスター)も………そして、他ならぬAチームの面々も。

 

 何せ、ベリルも頬を引き吊らせ、あの鉄仮面のデイビットですら目を開けて驚きを露にしていた。彼の反応から察するに恐らく奴は実力を隠しているのだろう、力を隠してその上で示したのだ。グゥの音も出ない程に勝利した修司、あの結果を当然のものと受け取り、何て事ないように退出するその背中にカドックは自然と手を握り締めていた。

 

散々心の中で罵倒していた相手が見上げるほどの強者だった事実にカドックは自分が情けないと思いながらも憤慨せずにはいられなかった。

 

(結局、アイツもそう言う奴って事かよ! 凡人じゃ、どうやったって天才には敵わない。そんな事、分かっていた筈だろ!)

 

魔術社会は完全なる実力世界。弱いものは淘汰され、強い者だけが勝利を得る。そんな理不尽な世界の中でカドックは自身をなんの長所もない凡人と位置付けていた。

 

(でも、それでも俺はやると決めたんだ! このAチームで結果を出し、そして証明するんだ! こんな僕でも────)

 

“────世界は、救えるのだと”

 

 

「………カドック?」

 

「っ、済まない。何でもないんだ」

 

 思わず心がざわついてしまった事に後悔しながらカドックはオフェリアに謝罪する。暗に勘繰るなと拒絶する彼に彼女もまた追求せずに沈黙で返す。

 

………というか、自分達は一体何処へ向かっているのだろうか? ペペロンチーノに半ば無理矢理連れてこられ、やって来たのはこのカルデアの施設では見慣れたマイルームが目の前にある。

 

まて、確かここは………扉に手を伸ばすペペロンチーノに待ったを掛けようとするが時既に遅く、プシュンと音を立てて扉は開かれる。

 

(確か、此処は奴の、白河修司の部屋だった筈! クソ、こうなったらその強さの秘密を少しでも多く暴いてやる!)

 

此処まできたらもう自棄だと、カドックは開き直って部屋へと入る。あれだけの強さを持つ奴の事だ。きっとなにか特別な術式を施しているに違いない。それがどんなに困難で難解な術式だとしても、絶対に解明してみせると息巻いたカドック次に目にしたのは……。

 

「だーかーらー! ペガサス流⚪拳はこうだって!」

 

「ちげーって! それは天馬座を描いているんだって!」

 

 明らかに魔術とは関係の無さそうな奇妙な動きをしている。しかも良く見ると二人ともそれぞれ天舞⚪輪と鳳翼⚪翔というロゴの入ったTシャツを着ていたりと、明らかに想像とは異なる姿、特にキリシュタリアの格好に絶句したカドックとオフェリアはそのまま思考停止に至る。

 

「あ、良いところに来てくれたペペ! この分からず屋に言ってくれ! ペガサスの動きはこうだって!」

 

「ペペさん! コイツにガツンと言ってくれ! コイツ分かってねぇよ!」

 

「全く、二人とも子供なんだから。折角人が勝利の宴に参加しようってのに───ペガサスの動きはこう! 私この間全部観たんだから! 間違いないんだから!」

 

「なにおう!? ならば上映会じゃあ!」

 

「いい度胸じゃない! 今夜は寝かせないわよ!」

 

「今夜も徹夜だね! 分かるとも!」

 

「な、な、な、………」

 

「何を聖闘⚪星矢談義してるんだお前等ァァァァッ!!??」

 

 この日、Aチームに於けるカドック=ゼムルプスの役割が決定した。

 

 

 




これは聞いた話なのですが、ベリルがキリシュタリアを昔助けた子供だって説があるみたいですけど……流石に無いですよね?(汗


Q.もしもAチームがハンターになったらどの武器使いそう?

A.キリシュタリアは片手剣と見せ掛けてハンマー。
 ボッチは太刀
 ベリルは双剣もしくは弓
 カドックが片手剣
 デイビットはランス、或いはガンランス。
 オフィリアはライトボウガン。
 芥ヒナコは操蟲棍の時々大剣。

以上が個人的なイメージです。

それでは次回もまた見てボッチノシ

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