『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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“ぼくがかんがえたさいきょうのあいえす”

鋭意制作中(笑)


その24

 

I月γ日

 

 自分がIS学園から出立して早一週間、現在自分は火星に設置した仮設施設にてISを自作する環境を整えていた。月の方にも一応何度か顔を出したが、今回作るISは火星の環境で行った方が効率が良いのでこちらの方で制作する事にする。

 

……本音を言えば火星で作業していると落ち着くって言うのが一番の理由なんだけどね。何故だかは自分でも分かってはいないんだけど。

 

火星と言えば思い出すのはインサラウムの連中とアサキム、そしてガイオウとの最終決戦の場所なんだけど……どうしてそんな所が落ち着くのだろうか?

 

まぁそれはどうでも良い事だから置いておく事にして、まずはこの一週間自分がなにをしてきたか具体的に説明しようと思う。

 

まず最初に手を付けたのは例のガンダニュウム合金、簪ちゃんの時に精製した特殊金属をもう一度作り上げる事にした。今回は時間もあり、施設も予め用意していたからグランゾンの使用も最小限に抑える事が出来た。

 

お陰でガンダニュウム合金は前と同じ……いや、それ以上の出来映えとして完成した。量も申し分ないし、これならIS制作作業に支障をきたす事は無いだろう。

 

ガンダニュウム合金という下地が出来上がった事で、次に自分はこの特殊合金を作った全身装甲の制作作業に入った。

 

全身装甲(フルスキン)と言うのは先の第三世代の銀の福音の様な頭の先から爪先までスッポリと覆われた機体の事を指しており、宇宙環境に適応する為の形態だと言われている。

 

自分はガンダニュウム合金をふんだんに使用し、全身装甲のISを基本骨格に設定する事にした。ガンダニュウム合金程の特殊合金を全身装甲に転用すれば操縦者の人も安心且つ安全に運用できるだろうし、どの環境にも自信を持って挑める筈だ。

 

いずれは簪ちゃんのISも全身装甲にするよう施さなければならないし、練習という意味合いも込めて作業は続いている。

 

一応制作過程で自分が装着し、実際に宇宙環境でどれほどなのかテストするつもりだが……ここで一つ問題が出てきた。

 

いやほら、女の子───特にIS学園にいる子達って皆年頃で思春期真っ盛りの時期じゃん? 男が一度着たモノをそのまま着る事になるなんて……もし知られたらどうしよう。最近はそれが悩みの種となっている。

 

一応合金の方は伸縮性も確認されていて、サイズの方は問題無いのだが……やはり、一度消臭剤を買いに地球に戻った方がいいだろうか。

 

 まぁ、その問題は頭の隅に置いておく事にして次は武装についてだ。以前は時間がなくて作ることは叶わなかった武装だが、今回は時間も多く残されているから今後はじっくりと考察しながら作り上げていきたいと思う。

 

特にロジャーさんの乗っているビッグオーのサドンインパクト、あれは自分が求めるISに必要不可欠な存在なので必ず作り上げたいと思う。

 

サテライトキャノンは……まぁ、のんびりと考えようと思う。あれってマイクロウェーブの射出施設が必要だし、流石に地上で使用するに訳にはいかないと最近気付いたから。

 

もしすべてのISが宇宙に進出して人類が外宇宙へ目を向けるようになったら、その時は改めて作ってもいいのかも知れない。

 

 しかし、こうして書いてみると意外と作れるモノは少ない。現段階で一応一つの武装は完成したけど、それでも現在のISにはイマイチバリエーションが少ない気がする。

 

ツインバスターライフル。自分が火星に来て初めて作った代物、前の時は作れなくて悔しい思いをした憧れの一品。どうにかISサイズで再現できたし、威力調整も可能になったけど……いやー、やっぱいいなぁツインバスター。

 

構えて撃つ度に聞こえてくる“ブッピガン”どうしてもアレが再現したくてついガンダニュウム合金で作ってしまったけど……ま、いいか。まだまだ合金の数は余裕があるし、さっきも言ったが威力も調整可能だ。

 

最大出力でブッパすれば小隕石位打ち抜けるけど……大丈夫だよな、うん。試し撃ちの時も別に問題箇所は無かったし、心配する様な事はなにも無いな。

 

でも、一応確認しながら作業を続けていこうと思う。こういう制作段階って気を抜いたら大事故に繋がる危険性が大いに含まれているからな。作業要員も自分一人だけだし、ロマン武装が作れたからといって気を抜かず、しっかり引き締めていこうと思う。

 

明日も作業で忙しくなるし、今日はこれで終わりにしよう。一夏君へのプレゼントも考えなければならないしね。

 

 

 

I月β日

 

 更に一週間が経過し、自分の作るISは大体形が整ってきた。ガンダニュウム合金による全身装甲も問題なく制作できたし、入念な試験運用と各武装のテストも無事終わったし、ここまでは順調に来ている。

 

流石グランゾンに蓄積されたデータが優秀なだけあって作業は難なく進むし、前に作成したオートマトンも良い感じに手助けしてくれる様になっている。

 

火星と月、それぞれに建設した施設には自律型のロボ、オートマトンを複数設置させている。念の為に侵入者撃退用のシステムとある程度の武器が搭載されてあるから安全面もしっかりさせてあるけれど……このオートマトン、実は何気に凄いシステムが搭載されている。

 

多元世界のオートマトンは人を殺めるキルモードなんて物騒なシステムが積まれてあったが、自分の作ったオートマトンはあくまで撃退用。銃弾はゴム弾を使用されているし、侵入者を捕縛する為のネットやスタンガンも搭載されているし、何より自律神経──つまりは、ちょっとしたAIを積んでいるため、オートマトンの一体一体が皆それぞれの判断で独自に動いたりしているのだ。

 

これはブラックオックスの思考データを参考にしているが、流石にあそこまで性質の良いデータは再現するのが難しく、オートマトンに仕込んだモノはアレより少しばかり精度が落ちる代物となってしまった。

 

けれど、学習機能はちゃんと作動していたので最初の時のように壁にぶつかったりなどせずにちゃんと自分の言う事を理解して行動してくれている。

 

 チョコチョコと自分の考えで動き回るオートマトン、それが何だか愛らしくてついつい整備をしてしまう自分がいるが……何事も息抜きも必要なので良しという事にする。

 

月にも同じようなシステムを搭載したオートマトンがいて日夜施設の整備をしているのだが……数はここと同じ三機、たったの三機しか配置されていないのだ。

 

ここのと合わせてざっと六機、月と火星という広大な敷地でたったの六機しか兄弟がいないのは流石に寂しく思える。だから、IS学園に戻ったらまずはこのオートマトンを配備させようと考えている。

 

IS学園の程良く広い敷地内ならオートマトンも充分に稼働できるし、警備システムとしても役立てる。兄弟も増えるし、オートマトン達も喜ぶだろう。心はないかもしれないが彼らには考える意志がある。言葉は発せられずとも、何かを感じる事ができると自分は考えている。

 

 最近は自分が独自に組み上げた建設データも上手く活用出来ているし、少しずつ成長しているみたいだ。

 

火星の施設も大分広くなってきたし、最近じゃグランゾンを出せる程広い格納庫らしい場所も建設してるし、ホント、良く働いてくれているよ。

 

この分だと月の方のオートマトン達も頑張っているだろうし、近い内にメンテナンスしてもいいのかもしれない。

 

 因みに、現在ISの制作過程は既に八割を越えている。武装も一通り試したし、全身装甲も完成し、“別の動力”による試験運用も概ね完了した。

 

後はコアをはめ込んで最後のテスト運用をしようと思っているのだが、その前にやることがある。

 

コアの解析。以前臨海学校で陥ったとされる簪ちゃんのISの機能停止やナターシャさんの福音の暴走についても究明していかないといけないし、頂いたコアのコアネットワークにウィルスを流し込まれた時の対処法も考えなければならない。

 

コアに関してはまだ手を出せないと思っていたけれどIS制作が思ってた以上に捗った為、この件も力を入れて調べる事が出来そうである。これも後から考えていた追加武装を制作しながら進めていこうと思う。

 

それに…もしかしたらコアネットワークの先にあの人に会えるかもしれない。篠ノ之束博士、世界に変革を促そうとした天才。

 

織斑先生が言うには篠ノ之博士は女性らしいのだが、果たして彼女はどんな想いでISを生み出したのか。

 

気になる所ではあるが、今日の所はこれで終わりにしようと思う。何事も、詰め込み過ぎるのは拙いからな。

 

……もう二週間も経過しているが、IS学園の皆は元気にしているだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 ───薄暗い闇の中、黒髪の少女は思案する。先のとある場所に襲撃を仕掛けた際の、思い浮かぶある光景。

 

深く抉られた学園の壁、吹き飛ばされ、地面を、海面を何度もバウンドしながら飛んでいく同僚の姿を見たときは……悪い夢を見ている気分だった。

 

ISを生身の人間が圧倒する。室内はISの機動が制限されるからといってその事実は彼女にとっても信じがたい出来事だった。

 

海に浮かぶ同僚、彼女を救出する時、少女は見た。大きく開いた穴から這い出る様に姿を現す男の姿を……。

 

それは、まさに混沌。紫炎の髪を揺らしながら現れる様は旧き魔を連想させられた。

 

差し詰め───魔人。大凡人とは思えぬ覇気を纏った男を少女は人ならざるモノと見定めた。女尊男卑となった今の世界では信じられる者など皆無に等しいだろうが、だが少女は確信する。近い将来、あの男がこの世界を大きく揺るがす事になる事を……。

 

「M、入るわよ」

 

「……………」

 

「次のミッションが決まったわ。すぐに支度しなさい」

 

「……オータムの方は平気なのか?」

 

「顎を撃ち抜かれているから流石に無事ではないけれど、あれから時間も経った。普通に動く分には問題ないわ。……ただ」

 

「なんだ?」

 

「彼女、どうやら記憶が混濁しているようなの。何故自分が顎を砕かれているのか、何故自分のISがボロボロになっているのか、それすら分かっていない様子なの」

 

「…………」

 

 自分の定めた目的は未だ遠い。果たして自分の果たすべき目的は達成されるのだろうか。

 

(……どうか、今度学園に行くときはあの男がいませんように)

 

Mと呼ばれた少女は首にぶら下がったロケットを握り締めてそうあることを願った。

 

───ワリとマジで。

 

 

 




次回、“ぼくがかんがえたさいきょうのあいえす”
第二弾、見てねノシ


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