『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回はほのぼのです。



その21

 

 

δ月Δ日

 

 七つのある特異点、その一つを修復して翌日。今日俺と立香ちゃんは先ずは自身の体について知ることになった。

 

朝に目を覚ますと何時もの日課をこなして食堂へ向かい、立香ちゃんとマシュちゃんの二人と朝食を共にするとDr.ロマンから体の異常を調べる為の検査を受けることにした。

 

レイシフト先での感染症やら風土病、その他諸々を持ち込んでいないかを調べる為の必要な処置なのだそう。特に反対はなく、カルデアのスタッフや立香ちゃん達の安全に配慮している事から素直に検査を受けることになった自分達はドクターの主導の下で検査をする事になった。

 

 しかし、彼も大変だよな。医療担当としての役割だけでなくカルデアの所長代理も兼任しているのだから、彼に掛かっている負担は相当なものだろう。そっちの方はダ・ヴィンチちゃんが手伝っていると言うから言うほどキツくはないのだろうけど、二足のわらじはそれだけで大変だ。自分も仕事をしていた時に二つ以上を同時進行で行っていた際はあちこちで小さなミスをしていたものだ。

 

一人で出来ることには限りがある。手が必要なら遠慮なく言ってくれと告げるとドクターは「ありがとう」とだけ返してきた。コイツ、気持ちだけ受け取って人には頼らないタイプだな。

 

検査の後、特に異物もウイルスの類いも検出されなかった事からドクターから問題なしの健康体と太鼓判を押された自分達はその後簡単なトレーニングをする事になった。

 

 自分は兎も角、立香ちゃんはただの一般人。魔術による支援も援護も出来ない彼女では今後の特異点先で万が一の事態に陥った時、生き残れる可能性は一気に低くなる。

 

だから皆もレイシフト先では彼女を重点的にサポートするようにしているし、マシュちゃんも立香ちゃんのサーヴァントとして常に傍にいるようにして貰っている。

 

しかし、それでも不測の事態にというものは起こるもので何かしらの不都合が原因でレイシフト先で立香ちゃんが自分達と離れる事があるかもしれない。そうなったら自分かマシュちゃんが駆け付けるまで彼女には自分の力で生き残って貰うしかない。

 

そう言う訳で彼女にはトレーニング室にあるマシンで走り込みをしてもらうことになった。人間、何はともあれ先ずは足腰が大事だからね。先ずは危険が迫ったときに逃げ切れるだけの体力作りをする事になった。

 

逃げ足は時に何者にも勝る手段になるからね。あとはサバイバル下での知識や火起こしの手段とか色々あるけれど、先ずは何より体力だ。それなりの走り込みとそれなりの筋トレ、何だかんだ人間最後にモノを言うのは日々の鍛練だからね。ソースは俺と俺の知り合いであるルヴィアさん、あの人も日課の鍛練を欠かしていない人だし、何なら魔術よりも優先している節があるからね。

 

そんな訳で始まった立香ちゃんの身体能力向上教室。今回は初日と言う事で軽く流す事にして明日から合間を見て始めていこうと思う。

 

 あ、因みにスタッフ全員の制服はカルデアの奴に戻りました。一時期皆あの胴着に拘っていたけど、半分はダ・ヴィンチちゃんの悪ふざけだった為、あの人を叱り付けた後ドクターが元の制服に戻すように言い含めたらしい。

 

いや、なにしてんのよ万能の天才。

 

 

 

δ月√日

 

 今日、色んな事が起きた。いや、実際に起きたのは英霊召喚と言う儀式だけだったんだけどね? もうね、俺疲れちまったよ。

 

先の特異点Fと第一特異点の修復した際に得られた魔力リソース、これ等を使ってサーヴァントを召喚しようって今日の朝食を食べてた時にダ・ヴィンチちゃんから話を持ち掛けられたんだけどね。もうね、これが酷いんだわ。

 

何せ自分には変な礼装しか来ないんだもの、黒鍵? ていう剣みたいなの? ダ・ヴィンチちゃんとドクターは教会の人がよく使う投擲武器って言ってたけど……いや知らんわ。

 

何で礼装しか出てこないの? サーヴァントの召喚でしょ? 俺、詠唱したんだよ? 前にキリシュタリアから聞いて一生懸命に覚えたんだよ?

 

何で礼装しか出ない? なによ黒鍵って、使ったことないんだけど? なに? ぶん投げればいいの? いいよ、なら次のレイシフト先でメタくそにぶん投げまくってやるからよぉ。

 

……いや、まぁ良いけどね。そんなに期待して無かったし、サーヴァントと一緒に友情深めあったり、時には喧嘩して絆を育んで行こうとか考えてないし、寂しくなんかないし。

 

その後、立香ちゃんがサラッとエミヤとか召喚してたけど気にしないし、ジークフリートとかケイローンとか何か凄そうなサーヴァントが続々と来て挙げ句の果てにはあのアーサー王も来てたけど別にいいし。

 

立香ちゃんから気まずそうに謝られたけど別に気にしてないし、俺にはグランゾンって相棒がいるから別にいいし………。

 

 まぁ、冗談はさておきドクターからサーヴァント召喚に辺り重要な話をされた。サーヴァント、即ち英霊は“座”という所に記録されており、あくまで彼らは記憶保存された状態であり召喚される度に嘗ての記憶は消去されるらしいとのこと。

 

つまり、今後の知り合いらしき人が召喚されても自分の事を覚えている事はないという。どうりでエミヤやあのアーサー王が自分とは初対面な挨拶をするわけだよ。

 

まぁ、王様も自分の事は覚えていないと思うと少し、いや大分堪えるけど………仕方ないよな。

 

 

 

δ月√α日

 

 何やら日本に新たな特異点が発生したらしい。特異点というのは増えるのかと一瞬身構えた自分だが、ドクターとダ・ヴィンチが言うには人理焼却に直接関わりのある特異点では無いらしいのだが、この特異点が今後どのような悪影響に繋がるか予測出来ないため、出来るだけ早く修復して欲しいとの事。

 

当然自分達は了承した。今後の憂いになるのなら断ち切るには早い方がいいし、何より自分達の故郷である日本が舞台だ。黒幕への手懸かりに繋がるかもしれないし、それだけでもレイシフトする理由はある。

 

立香ちゃんも乗り気だし、マシュちゃんとフォウ君も連れて日本の特異点にレイシフトする事になった。因みに、エミヤ達サーヴァントの皆には必要になった時随所で召喚するという手筈になっている。一緒にレイシフトするには多大な負荷が掛かるから人数はある程度絞られるが、戦闘の間だけの召喚は然程ではないらしい。

 

 それでその特異点にレイシフトするとなんか金髪グラサンの体格の良いお兄さんがいた。坂田金時、あの日本で最も知られている童話の一つである金太郎その人である。

 

熊と相撲とっていただけあって凄まじい筋肉質な彼の肉体、ドクターもモニター越しで暑苦しいと騒いでいるが、個人的には自分もこれくらいの筋肉は欲しい所である。

 

 その後、金時さんと色々と話をしていると物凄い酒の臭いが辺りに充満した。酒とは心と体を解すモノであって何もかも蕩けさせるモノではないと金時さんは言うが、自分も全く同意である。

 

酒は飲んでも飲まれるな。自分は深呼吸をすることで体の調子を整える事ができるが、立香ちゃんはそうではない。どうにかして避難させるかと考えていると、意外なことに立香ちゃんは平気そうだった。ドクター曰く防御に特化したマシュとパスで繋がっているから毒類に対してかなり強い耐性を獲得しているらしい。サーヴァントと繋がっているだけで毒類に強くなるとか、普通に凄くね?

 

そんな訳でこの異様な酒の臭いのする場所が特異点の元凶であると睨んだ自分達は金時さんと共にそこへ向かった。

 

辿り着いた先に待っていたのは大きな門。現代の日本でもそうお目にかかることのない立派な門が聳え立っており、屋根の上には一体のサーヴァント………否、鬼が立っていた。

 

その名は茨木童子。日本に住む人間なら一度は耳にする大妖怪、まさか英霊だけでなく妖怪まで顕現しているとは、サーヴァントとは凄いものである。尚、その大江山の首魁の鬼は外見は見事なチビッ子だったけど。

 

で、なにやらこの茨木童子さんは捕らえた酒呑童子を喰らうつもりだとか、金時さんが言うには彼女は彼処までメチャクチャでは無かったらしい。食物連鎖のルールは守るし、鬼としての範疇なら寧ろ真面目な方なのだとか。

 

気になる事は色々とある今回の異変、取り敢えずそれは後回しにして今は暴れる茨木童子の相手をする事となった。

 

 マシュちゃんが防いで俺と金時さんが攻撃する。時々立香ちゃんが俺を除いた二人に魔術で援護するという単純だけど割りと堂に入った連携で茨木童子を追い詰めていった。

 

端から見れば幼女を集団でボコボコにする集団だけど、彼女もデカイ手とか使ってるし………別にいいだろ。そもそも彼女は鬼であって人間じゃないから苛めにはならないしね。

 

………まぁ、そんなのは嫌だから途中から自分と彼女の一対一(タイマン)に持ち込んだんだよね。通信越しにドクターから止めてくれと呼び止められたが、ここで仮に集団でフルボッコにしても彼女が敗北を認めるとは思えない。

 

絶対に負けないから安心してくれと熱弁すると、ドクターは渋々ながら承諾してくれた。いい人だ。彼には今度お詫びに何かご馳走してやらないとなと思いながら立香ちゃん達にも手を出さないようお願いすると、彼女達も苦笑いを浮かべながら了承してくれた。

 

金時さんは意外とすんなりと受け入れてくれた。まぁ、彼も元々は一人で妖怪退治とか出来る人だし、自分の事を見極めるつもりでいるのだろう、やばくなったら手を出すという条件の下で俺は単身で茨木童子の前に出た。

 

 そして、やはりというか自分の事を舐めていると思い込んだ茨木童子が怒り狂う。気炎を立ち昇らせて怒りを露にする彼女に自分もまた力を解放させた。邪竜と戦った時、或いはそれ以上の力を解放させて舐めてはいない事を示す。

 

すると、自分の訴えに茨木童子は納得してくれたのか、怒りの炎は瞬く間に鎮静していく。良かった。これでお互い存分に戦えるなと安堵した自分は彼女に勝負を挑んだ。

 

相手は日本の妖怪の中でも最強に位置する大妖怪、一瞬で間合いを詰めた後茨木童子の顎に拳を捩じ込んで彼女を中に浮かばせると、そのままかめはめ波を叩き込む。

 

しかし、彼女もまた特異点の元凶らしく凄まじき回復力を誇っており、自分の与えたダメージは瞬く間に回復させていく。邪竜の時と同じように不死性を持つ彼女と耐久戦へと突入した。

 

かめはめ波、ギャリック砲、気円斬に操気弾。自分の得意とする奥の手を除いたありとあらゆる技を叩き込んでいると、意外と早くに決着は付いた。

 

 泣きじゃくりながら山に帰ると逃げていく茨木童子、イマイチ勝ったと喜べない展開に首を傾げていると、ケラケラと笑う声が聞こえてきた。

 

酒呑童子。茨木童子と並ぶ大江山の大妖怪がいつの間にか目を覚まし、のらりくらりと歩きながら此方に近付いてきた。「あんさん、なんやおもろいなぁ」と口にしながら近付いてくる彼女に自分は戸惑いながらも身構えた。

 

 この酒呑童子という鬼は金時さんが言うように掴み所がなく、何とも不思議な印象を持ってしまう。友人のように親しみがあり、かといって人間とは相容れない残虐性を併せ持つという何とも言えない矛盾。

 

しかし、当の彼女には敵意がないらしく今回の異変の原因となった“願いを叶える酒”とやらの場所へ案内してくれるのだとか。

 

酒呑童子には興味もない杯らしいのだが、特異点の元凶となるそれを破壊できるのなら是非もない。皆と一緒に彼女の後を付いていくと、そこにはやはり聖杯があった。

 

その後、聖杯を破壊してカルデアへと自分達は戻るのだが、何だか色々と腑に落ちない点が多くある異変だった。

 

この聖杯は一体だれが持ち込み、誰が特異点として生み出したのか、金時さんはまだ終わっていないと言っているが、先と同様自分もこれで全てが終わったとは思えない。

 

取り敢えず、今は一つの特異点を終わらせたとして由としておこう。

 

 ………因みに、その後立香ちゃんが何となくサーヴァントを召喚すると金時さんと茨木童子ちゃん、酒呑童子ちゃんが来てくれました。自分? 依然として変な礼装しか来ませんが?

 

もうね、戦力増強の為の召喚は彼女に一任しようと思うの。

 

追記。

 

最初、色々と問題のあった茨木童子ちゃんだったけど、この間来てくれたロビンさんがうまい具合に彼女を手懐けてくれました。

 

茨木ちゃん、どうやら洋菓子が好みのよう。しかもエミヤが作った奴。今度自分も作って上げようかな。

 

なんて厨房で言ったら、ご飯前には上げるなよと釘刺された。いやお母さんかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほ~ら、茨木童子。お菓子だぞー、奪ってみろ~」

 

「フシャー!」

 

「なぁ大将、修司の旦那は何してんだ?」

 

「なんか、自分のお菓子を食べさせようとしてるんだって、エミヤさんのばかり食べてるのが面白くないみたい」

 

「それにしては、矢鱈と怯えられているみたいだが……」

 

「あぁ、まぁ、そりゃあ………ねぇ?」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

とある羅生門前。

 

「かめはめ波ー! からのギャリック砲! 気円斬に操気弾! まだまだいくぞぉぉっ!」

 

「も、もうやだー! 吾、お山に帰るぅぅぅっ!!」

 

「こ、コイツぁ……ヘビーだぜぇ……」

 

「「おっふ」」

 

 

二人から変な声が出た。

 

 




Q.どうしてボッチにはサーヴァントが来ないの?

A.重力の魔神の仕業

尚、基本的にボッチのサーヴァントはそんなにいません。多分片手で足りる程度かと思われます。
因みにこの内の一人は確定しています。








今回は殆んど日記形式でした。イベント話や日常回はこんな風にダイジェスト気味に飛ばしていきますので、宜しくお願いします。



それでは次回もまた見てボッチノシ




………ふと思った。このままセイレムまで進んだらどうしよう。仮に主人公が魔女裁判に掛かったら、どうなるんだろう……。

某死刑囚になりそうで怖い。


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