『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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本作品におけるオートマトン。
出来ればオートマたんと呼んで頂けば嬉しいです。


その26

 

 

 

I月▼日

 

 期日の1ヶ月まで残り三日を切った今日、今度こそ本当の意味で自分が制作するISは完成したと言っていいだろう。

 

問題だった擬似太陽炉の有毒性も調整を重ねる事によって無効化させ、遂に動力源と出力に問題なく、且つ人体に影響が出ない所にまで漕ぎ着ける事に成功した。

 

本物とは大きく異なるサイズの差、出力調整や各武装との連動率、駆動率等々を全てを同一させなければならないので最初の頃は作業も中々捗らなかったが……ある日、自分は多元世界にあったGNドライブにまつわるもう一つのシステムを思い出し、自分はグランゾンに蓄積されたデータから引っぱりだした。

 

そのデータというのが“ツインドライブシステム”二つの太陽炉を連結させて作動させるGNドライブ搭載機の中でも異色の力を有するシステム。

 

一方の擬似太陽炉で出力、動力で作動させるのに対し、もう一方の擬似太陽炉で調整、調節を計ってみた所……なんと予想以上の出力を叩き出し、更に安定性まで見事確保してみせたのだ。

 

その後もどちらか一方に出力、調整を任せるのではなく、互いに出力を出し、調整させる事で更に効率は上がり、運用性も桁違いに上がっていた。これならば単騎で大気圏を突破、突入した後も余裕は生まれ、宇宙空間での活動も大幅に上昇傾向で見直される事になるだろう。

 

ただ、逆を言えばMSクラスのサイズには擬似太陽炉は一つで充分だが、ISサイズで作る時は太陽炉は二つ必要になってくるという事、しかもツインドライブとして両立させなければいけないからISの方が手間が掛かるという話になる。

 

その辺りは今後の課題になりそうだが……今は機体を完成させた事を喜ぶとしよう。“例のシステム”もツインドライブを同調させる事により一分から三分へと時間を伸ばす事を達成出来たし、皆のお陰で成功、完成させる事が出来たのだから。

 

 そう、今回のIS制作で最も貢献してくれたのが、オートマトンこと自分の子供達だ。思考の方も大分成長してきており、一人で出来ない所を二人で協力し合う事を覚え、その姿を見て自分はツインドライブシステムを思い出す事に成功した。

 

無論、コアの中にいるアリカちゃんに対しても感謝している。電子面で彼女が手助けしてくれた事によりツインドライブシステムが制御し易くなったのだ。彼女本人は大した事はしていないと謙遜していたが、そんな事はないと自分は胸を張って言える。彼女の頑張りのお陰でツインドライブはコアとの適合率も見事にマッチしているし、武装との連動率も過去最高数値を記録している。

 

ここにいる皆のお陰で完成した自分のIS。完成したハイテンションに身を委ね、自分は暫く悶えていた。オートマトン……いや、モモやハナ、ミンミンちゃん達の機体もピカピカに磨いたし、アリカちゃんにも最大限の喜びを伝えるためにコアネットワークに電脳ダイブして彼女に直接会って感謝を伝えた。

 

………うん、冷静に考えたら普通にキモイやこれ。格納庫で佇むグランゾンの冷ややかな視線で我を取り戻したが、うん。やっぱりキモイな。

 

早めに我を取り戻してよかった。あのまま本能のまま動いていたらアリカちゃんや子供達にまでどん引きされてしまっていたかもしれないけど……まぁそれは兎も角、取り敢えず今回で自分のISは完成した。後は最後の二日は綿密な調整を続け、最後の仕上げに入りたいと思う。

 

少し早いが、今日はゆっくり眠ろうと思う。火星に来てから四日に四時間のペースでしか睡眠を取っていないので、流石に頭が疲れている。シュウ博士からは寝過ぎと呆れられてしまったが……まぁそう思われても仕方ないよね。多元世界にいた時は一週間起きてても平気だったし、やっぱり体動かしてないのが原因なのかなぁ。一応日課の鍛錬は欠かさなかったけれど……やっぱ肉体的疲労と精神的疲労は違うのだなと思った。

 

 そうそう、ウチのオートマトンとコアのAIの娘、名前が無いと色々不憫だと思いそれぞれに名前を付ける事にしました。

 

オートマトンの三機はモモ、ハナ、ミンミンと名付け、A子ちゃん(仮)はアリカと名付けた。オートマトン達は自分のインスピレーションに従っての命名で、アリカちゃんの方はAIのAから取っている。

 

本当はアリスという名前にしたかったのだけれど、それだと例のウサ耳メルヘン女を思い出してしまい却下、そこから一文字だけモジってアリカという名前を付けてみたのだ。

 

アリカちゃんも存外悪く思ってないらしく、自分の名前を覚えるように何度も反芻していた。オートマトン達の方もいつもより賑やかに動いていたし、皆喜んでくれた事だと思う。

 

しかし、篠ノ之博士が作ったAIに自分が勝手に名前を付けて良いのだろうか? それだけが不安に思うが……アリカちゃんは構わないと言っていた。

 

ISのコアは原則として適合者から離れる場合企業や篠ノ之博士といった技術者に初期化される為、名前を付けられる事はないという。

 

通常は専用機の名前をそのまま自分の名前として認識されるようだけれど、個人で名前を付けられたのは自分が初めてだとアリカちゃんは言う。

 

……初期化かぁ、やっぱりそれって彼女達にとって殺人に近しい行為なのかもしれない。記憶を自我諸共消されればそりゃISのコアが成長する筈もない。折角自分という自我を持てて適合者と一緒に空へと飛び立てるのだから、その時の景色は永遠に覚えていたい事だろう。

 

消される運命、それが嫌だから白騎士のコアは初期化されきれずに白式のコアとして今も生きている。そう考えると……何だか凄く運命を感じてしまい、同時に切なくなる。

 

ISの初期化の義務、これも何とかしてあげたいと思うのは、果たして自分のエゴだろうか。

 

けれど、ISのコアに命が存在していると知れば、地球の皆も少しは考えを変えるかもしれない。都合の良い解釈だと博士は笑うだろうけど、自分は信じてみたいと思う。

 

まぁ、それもこれもこれからの自分と一夏君次第だ。ISに搭乗し、アリカちゃんを通して他の娘達に男性の事について理解して貰うために、まずは目の前の事を着実にこなしていこうと思う。

 

 

 

I月Ω日

 

 とうとう期日は残すところ後一日となった。火星から場所を変え、現在自分は待機状態となったISと共に月の基地へと赴いていた。

 

最後の仕上げの場所として使用する事にした月の仮設基地、地球から近い事もあってこの場所にやってきたのだが、ちょっと驚くべき事があったので記しておく。

 

自分が月に建てた仮設基地、最初は精々休憩拠点として使用するつもりだった掘っ建て小屋が……なんと、IS学園の一年の学生寮並の大きさとなって聳え立っていたのだ。

 

マジ驚いた。確かにオートマトンのAIには自分の建設の独自理論をデータとして入力しておいたが、まさか1ヶ月そこらでこれほど立派な基地を作り上げるとは思ってもみなかった。

 

一応火星でも様子が見れるよう監視カメラを設置していたけど、最初の場所以外取り付けてはいなかったので余り詳しいことは分からなかった。取り敢えず三機とも元気に稼働していたし、供給用の設備も簡易だが置いてあったから燃料も困る事はないと、そう思っていたが……まさか、自分が来るまで建築作業を止めないとは思わなかった。

 

当然三機ともボロボロとなり、不具合を起こした箇所が幾つかあった。資材は幾らでもあったが体力知らずのオートマトンだって消耗するのだ。月に来て自分がしたことはボロボロとなった子供達のオーバーホールから始まった。

 

躯の部分の幾つかを新しいモノに付け替えて、汚れた箇所を徹底的に洗浄し、元の状態へと戻してオートマトン達を休ませた後に自分は考えた。

 

何故オートマトン達は休まなかったのか。機械だって人間よりも頑丈といっても、そこまで差違がある訳でもない。使えば使うほど消耗し、関節部分は磨耗するのだ。それはグランゾンとて例外ではない。

 

AIに不具合が生じたのかと危惧したが、どうやらそれは杞憂らしく、整備を終えて全快したオートマトンはそれぞれ問題なく稼働していた。

 

ひとまず三機とも今後は無茶をしないように教え込ませてその場それで終わったが……どうも不安だ。オートマトン達は自分が作った初めての人工知能搭載型のマシンだ。元となったデータの劣化版に思えるかもしれないが、それでも自分にとっては胸を張れる子達なので……どうか、長い間元気でいて欲しいものだ。

 

ブラックオックスを作った不乱拳博士もこんな気持ちだったのかな。今は休んでいるオートマトン達を見て、何となくそう思う自分がいる。

 

兎も角、あの子達には今後無茶をさせないよう徹底的に教え込む必要がある。自分のISも今日で一段落した事だし、明日の最後の一日はこの子達の為に使おうと思う。

 

そうそう、一応名前も考えた。ここにある三機はそれぞれサキ、メイ、タンポポと火星の三機と同様自分のインスピレーションに従って名付けた。

 

センスは兎も角として、どれも自分なりに気持ちを込めた名前だ。特に1号機のタンポポには自分の好きな花の名前を付けたので今後も無理しない範囲で頑張って欲しいものだ。

 

……というか、自分オートマトン達を女の子である事を前提に名前を付けちゃったけど、問題あるかな。アリカちゃんからは気にしなくても良いと言われたけど、流石に無関心ではいられない。男女両方に使える名前は思い付かず、ネーミングセンスの無い自分をこの時程恨んだ事はなかった。

 

 話は変わるが、そろそろIS学園では専用機持ち同士によるタッグマッチが開催しようとしている。本当は簪ちゃんの為にアリーナで応援していたかったが……どうしよう、今から行って様子だけでも見てこようかな。

 

いやでも、期日までまだ一日あるし、それが終わるまでに戻っても『本当に出来たのか?』と変に疑われるかもしれない。十蔵さんに無理言った休暇だからちゃんと消化しないと不味いだろうし、あぁでもやっぱり皆の姿を間近で見たいと思う自分がいるわけで……。

 

ホントどうしよう。あと一時間したら試合も開始されるだろうし、早く決断しないと────(日記はここで途絶えている。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────IS学園・アリーナ。本来なら専用機持ち同士によるタッグマッチが行われる筈だった場所、この日の為に切磋琢磨し続けてきた専用機持ち達の独壇場になる筈だったのだが、現在、IS学園は危機的状況に陥り、それどころではなくなってしまった。

 

アリーナを含めて数カ所の場所で学園の敷地内で暴れる化け物、幾つもの腕を生やしたその風貌は以前のクラス対抗戦で見せたゴーレムの面影があった。

 

コキャコキャと嫌な音を立てながら襲い来る無人機のIS、襲い来るゴーレムの魔の手を一閃の下で両断する人物の姿があった。

 

「簪! 無事か!」

 

「私は大丈夫! それよりも一夏は他の皆の所へ行って上げて!」

 

「分かった! 頼んだぞ!」

 

ゴーレム……いや、ゴーレムⅢを横一閃に切り裂いたのはIS学園の一年生、更識簪とその愛機打鉄弐式だった。

 

迫り来るゴーレムⅢから生徒達を守るべく動く、機体性能をフルに活かして刃を揮う。彼女の持つ薙刀の“夢現”は白河修司の手が加わった事により特別性となり、その切れ味はリミッターを外せばシールドバリアーを切り裂き、纏った装甲ごと斬り捨てる鋭さを持っている。

 

普段は絶対に使用することはない力、けれど相手が手段を選ばない無人機なのであれば話は別、簪がISの腕を揮う度に、ゴーレムⅢの躯は切り裂かれ、なにも言わぬ骸と化した。

 

 学園に撒かれたゴーレムⅢの数は既に計り知れない数になっている。指揮官である織斑千冬とオペレーターの役割を担っている教員達も総動員して事に当たっているが、それでも数の差によって徐々に学園側は追い詰められていた。

 

乱戦となった状況、学園の施設は所々から煙を上げていて学園敷地の至る所から戦闘による轟音が響いてくる。

 

今の所は他の生徒達に怪我人が出たという情報はない。しかし数で此方が劣り、しかも乱戦で皆と離ればなれになってしまった以上、劣勢であることは否めない。

 

このままでは皆が危ない。冷静な思考でそう判断する簪が急いで他の皆の所へ合流しようと打鉄弐式を急がせた────その時。

 

『つ、続いて海上からゴーレムⅢの増援! 数は……そんな、27!』

 

「っ!?」

 

通信で聞こえてくる山田真耶の報告に簪の表情が焦りで歪む。ゴーレムⅢは唯でさえ装甲が厚くて近接戦闘以外ダメージが通りにくい厄介な無人機、それが更なる数を持って押し寄せてくる現実に心が折れそうになる。

 

だが、ここで諦めてはいけないと誰もが意気込んだ。一人は目指すべき人の背中に追い付く為、一人は自分の願いを勝ち取る為、そして簪も己の目的を果たす為に弱腰の自分に喝を入れる。

 

逃げちゃダメだと、簪は向かってくるゴーレムⅢ群に単身で迎撃しようとアリーナから飛び立った……その時だ。

 

 此方に向けて海上を疾走するゴーレムⅢ、それを一柱の光が貫いた。

 

『っ!?』

 

突然の光景に学園内にいる全員が驚愕で目を見開いた。爆散し、光の中へと消えていくゴーレムⅢの群、撃ち漏らしはあるようだがそれでも彼女達にとっては異様な光景だった。

 

一体何が起きた? 当然沸き上がる疑問を全員が抱いた時───。

 

『が、学園の敷地に新たな熱源が接近! これは……あ、ISです! 場所は───上!?』

 

耳朶に響いてくる山田真耶の声に全員の視線が上に向けられる。あるのは真っ青な空だけで他は何もない───と、思われた時。

 

『お待たせしました』

 

遙か上空で橙色の光が瞬いたと同時に、この一ヶ月聞くことの無かった人物の声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さ~て、次回のボッチ君は?

千冬だ。最近ウチの学園の用務員の片方がおかしな事になっている。
どうにかしないといけないと思うのは私だけだろうか?

次回、『G』の異世界漂流日記

“バンカー(拳)”は男のロマン!
とあるボッチの超荷電粒子砲(バスターライフル)
それゆけGN合唱団

の三本です。

来週もまた、見てくださいね~。ジャン・ケン・ポン(チョキ)

ウフフフ(CVボッチ)


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