『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回はほのぼのです。


その31 

 

 

※月◯日

 

 第二特異点の修復、定礎復元も無事に終わり次の特異点へ備えるために今日も自分は自分に出来ることをこなしてきた。

 

といっても、自分のやることは体を鍛えるためのトレーニングや適度な休息を取ったりする程度、ケイローン先生曰く、まだ特異点を修復して二日と経っていないのだから今日まではゆっくり休むようにとの事だ。今日のトレーニングは明日からの本格的な鍛練の為の慣らしみたいなもの、事務作業や書類仕事も休むようにと割りと強めに言われてしまった。

 

自分としてはまだまだやれるのだが、人理焼却は未だに払拭できず不測の事態に備えてマスターが万全な状態で保っているのも充分な仕事だという。賢者ケイローン先生にそこまで言われては自分もとやかく言える訳がなく、取り敢えず今日までは大人しく生活しておこうと思う。

 

 立香ちゃんとマシュちゃんには第二特異点での出来事について改めて謝罪し、どうにか許してもらえた。向こうもあの時はあれが最善であった事に理解してくれたらしく、苦笑いを浮かべながらもどうにか受け入れて貰えた。

 

そんな彼女達の優しさに報いる為、自分が最も得意とする料理を振る舞おうとしたのだが………何故かエミヤとクー・フーリンの二人に阻まれてしまった。それも物凄い形相で止めろと怒鳴ってくるのだから自分も困惑してしまった 。

 

せめて普通の料理にしろと言われたので、立香ちゃんの口にも馴染みのあるオムライスを作ることにした。幸いカルデアの材料にはまだまだ余裕がある、卵、玉ねぎ、ソーセージといった各種素材を用いての料理は思った以上の出来映えとなった。

 

卵のフワフワ具合も文句なし、いざ実食といった所でマシュちゃんがドクターを連れて食堂にやって来た。折角なので二人の分も作ってやると、三人とも何とも美味しそうに食べてくれるのだから作った甲斐があるというもの。

 

この分ならエミヤを料理長の座から引きずり落とすのも時間の問題か? なんて冗談を口にすると、いつでも相手になってやると真剣な眼差しで返された。コエーよ、何処まで本気なんだよコイツ。

 

 ブーディカさんも特異点を修復したお陰か召喚に応じてくれ、今ではエミヤに続く厨房の支配者になりつつある。この分だと自分が厨房で料理を振る舞う機会も何れは減っていくかもしれない。

 

それに少しずつ寂しく思いながらも自分用の麻婆豆腐を作り、皆と一緒に食べるのだった。その際に麻婆豆腐を頬張る自分にエミヤとクーは信じられないモノを目の当たりにした様子で自分を見てくるが………いちいち言動が失礼過ぎんかねあの二人。

 

 

 

※月α日

 

 本日の召喚、相変わらずサーヴァント召喚に勤しむ立香ちゃんだったが、今日はある三人のサーヴァントを喚び出してくれた。

 

一人はジャンヌ=ダルク。第一特異点でも、そして自分のいた世界でもその守護の力で活躍してくれたフランスの聖女がカルデアに参戦してくれた。

 

最初は自分達の事や第一特異点での記憶はない全く別のジャンヌさんかと思ったら、なんと彼女は俺の世界から来たジャンヌさんらしいのだ。憶えている内容も記録としてではなく、実体験によるものだと語っているし、何より俺しか知らない筈の向こうの世界の出来事をスラスラと語ってくれた事で彼女の言っていることが事実だと確信した。

 

原理は分からないがどうやら自分とジャンヌさんの間にある縁が強く反応した結果らしい。と、エルメロイⅡ世さんはそう解釈している様だ。

 

 そう、先の特異点で戦った彼もジャンヌさんと同様に俺との記憶を保持した状態で召喚されたのだ。根拠は召喚された際の表情、最初こそは冷静沈着な先生みたいな顔をしていたのに自分の顔を見るなりゲェッ!? と表情を変えたのを見て確信した。

 

神霊やら英霊として格のあるサーヴァントなら覚えているかもしれないが、此処までハッキリと記憶された状態で召喚されるのは事例がないという。まぁ自分は魔術師でないから英霊召喚に関する知識もない為、取り敢えずエルメロイⅡ世さんの話で納得することにした。

 

因みに、二人には自分が世界移動をした異邦人である事は自分が話すまでカルデアの皆に黙ってくれる事になった。召喚された最初の反応は特異点での記憶が僅かながら残っているという理由でごり押す事になり、意外なことにそれがすんなり受け入れられた。

 

 そして三人目、セイバーオルタことアルトリアさん(黒)が来てくれたのだが、自分の姿を視認した瞬間ネコみたいに翻り、立香ちゃんの後ろに隠れて威嚇してきた。

 

どうやら、彼女も自分との戦いを覚えていたらしく物凄く怯えた様子で終始自分を威嚇していた。ドクター曰く特異点での記憶が僅かながら座に残っていたらしい。そんな彼女の様子もあって先に述べたエルメロイさんの話にも説得力が増したらしい。

 

………まぁ、皆が納得してくれたなら別に良いんだけどさ、オルタさん少しビビり過ぎじゃない? 何で俺と話をするだけでエミヤやアルトリアさんの後ろに隠れるのさ、仕方ないだろ! そもそもの原因は彼女にあるんだから!

 

と言っても関係が改善される事はないので、取り敢えずこの後ご飯を作って気分転換でもするとしよう。

 

 

 

「───む? こんな所にバーガーが? エミヤが作ってくれたのか。ふむ、匂いも悪くない。誰もいないのだから摘まみ食いしてもいいだろう」

 

「む? セイバーオルタ、そのハンバーガーは一体何処から………ブーディカ氏が作ったものか?」

 

「え? 私知らないけど………」

 

「キャットも知る由がないワン」

 

「ならば、一体だれが………」

 

「おーいエミヤ、ここに置いてた俺の特製麻婆バーガー知らね?」

 

「「「!?」」」

 

←To Be Continued.

 

 その日、一人の英霊が座に還り掛け、白河修司は当分の間麻婆関連の料理を作ることを禁止にされた。

 

 

 

※月β日

 

 昨日、何だか不思議な夢を見た。ジャンヌさんが火刑に処される場面に遭遇する所、当然自分は周囲の人垣を押し退けて彼女を救出し、その場から彼女を連れて行こうとした所で………ジャンヌ・ブラックがファンキーな自称悪魔と一緒に現れた。

 

何故第一特異点で戦った彼女が今更出てくるのか不思議に思ったが、まぁ夢だし、過去の敵が現れるのも何か分かるし、まぁいっかと納得するのだが、そう言えば自分はジャンヌ・ブラックとはマトモに戦ってないんだよな。

 

なんか矢鱈とジャンヌさんを煽ってくるし、昔は潔く死んだくせに今回は醜く生き残ろうとするか、なんて宣うものだからついカッとなってブラックの旗をへし折ってやった。あと剣も。

 

人を煽るくせに武器をへし折られた程度で泣き出すとか、少しメンタル弱すぎね? いや、夢の話なんだけどさ。

 

そもそも、ジャンヌさんが死を望もうと望むまいとそんな事は過去の話と何ら関係ないだろう。それはそれこれはこれ。死にたくなったら勝手に死ねば良いし、死にたくないなら助ければ良いだけの話。何をそんなに複雑そうに話を歪めるのか、これが分からない。

 

尤も、仮に死にたいと本人が願っても俺は勝手に助けるけどね。どんなに罵倒されたり罵られようが結局俺は自分のしたいことをするだけである。

 

勝手に死にたいのなら、勝手に助けるまで、そう泣きわめくジャンヌ・ブラックに言い放った所で夢は終わった。

 

 ………なんか、夢の話なのについ熱くなってしまった。ジャンヌさんが関わっているから? まぁ否定はしない。俺にとってジャンヌさんは既に身内みたいなもの、彼女が理不尽に苛まされるのなら、それを駆逐するのが弟分の役目だろう。

 

そんな訳で気持ちを改めて一日を過ごしていたのだが、何故か唐突にメフィストに呆れの溜め息を吐かれた。一見感情的に見えて正論を暴力に変える自分こそが悪魔だとか。

 

え? なに? 最近のサーヴァントは人にいきなり喧嘩を売るのが主流なの?

 

 

 

 

『な、何よ、どうしてアンタはジャンヌ=ダルクを助けるのよ!? そいつは英雄かもしれないけど、同時に多くの人間を死に追いやった魔女なのよ!』

 

『関係ねぇよ。ジャンヌさんが過去に何をしようが、そんなもの俺が助けに入らない理由になりはしない。俺が彼女を助けるのは偏に俺自身がそうしたいと思ったからだ』

 

『い、いいの!? そんなことをしたら、フランス全てが敵になるのよ!? イングランドも、下手をすればイギリスの全てがアンタの敵に───』

 

『関係ない。そう言った筈だぞ。国が、世界が、この世の全てが敵に回ろうと俺は俺の大事なものを取り零しはしない。数多の理不尽が彼女を殺すのなら、無限の不条理を以てその運命を捩じ伏せよう』

 

『そんな、そんなふざけた生き方───一体、いつまで続けるつもりよ!?』

 

『無論、死ぬまで』

 

 

 

※月√日

 

 今日も結構な数の英霊達が召喚に応えてくれた。スパルタクスさんや荊軻さん、レオニダスさんと言った数多くのサーヴァントが来てくれたお陰でカルデアもすっかり大所帯となった。

 

特にローマ勢。あの薔薇のチビッ子皇帝ことネロやカエサル氏、カリギュラ、そしてロムルスさん等ローマの名だたる皇帝達。当初は時々ローマ組を感情のない目で見つめるブーディカさんにドキマギしたが、どうにか今は何とか抑えられているとの事。

 

何とかそのまま抑えていて欲しいものだが……難しいだろうなぁ。サーヴァントと言えど皆、嘗ては生きていた人間、その間に生まれた感情の痼はどうやったって消えない時がある。もし万が一ブーディカさんが自分を押さえられなくなった時、その時は俺と立香ちゃんで何とかしよう。というのが俺と彼女の見解である。

 

カルデアの多くのサーヴァントは立香ちゃんをマスターとしているが、一応俺もマスターなのだ。サーヴァントの問題はなるべく俺と立香ちゃんとで対応していこうと思う。

 

 それはそれとして………ネロの奴、早速エリちゃんとユニット組みやがった。彼女達の歌声のヤバさはカルデア一同全員が理解している。今はカエサルさんがその優れた弁舌で彼女達のコンサートを阻止してくれているが、彼も何だかんだでネロには甘い。今の彼のネロに抱いている気持ちは可愛い娘、もしくは孫娘に強く出れない父のソレだ。

 

ロムルスもカリギュラもそう、というかローマ組のほぼ全員がネロに甘い! いつか来るその時が来るまでに何とか対策を講じなければ!

 

なんて悩んでいるとクーの野郎から「テメェの麻婆食わせれば一発で黙るだろうよ」なんて言ってきやがった。

 

俺の麻婆にそんな便利な機能がついてるわけないだろ! いい加減にしろ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、ネロとエリザベート。この二人のデュエットを何とか阻止できる良い考えはないモノか」

 

「そうだね、もし万が一施設内で歌われたらその瞬間。カルデアは甚大な被害を受けるだろうね。そうならない為に現在ダ・ヴィンチが全力で専用の防音設備を造っているよ」

 

「流石、万能の天才。そのうち重力制御室とか作っちゃいそう!」

 

「うん、気持ちは分かるけど何故そこで俺を見るのかな? 立香ちゃん?」

 

「え? やらないんですか? 例の修行」

 

「いやまぁ、いずれはカルデアでもやりたいと思ってるよ? 実際地元にいたときは特殊な設備(グランゾンによる重力制御)でやってたし」

 

「いや実践済みかよ!?」

 

 ロマニからのツッコミも聞き流し、修司と立香はサーヴァント召喚の為の準備に入る。カルデアの戦力は大分潤沢してきたが、それでも人理焼却を覆すための戦力は未だに足りていないと言える。

 

不測な事態、突発的な異常事態、人理を焼かれ世界的に何が起きるか分からない現在のカルデアにて対処できるサーヴァントは多い方がいい。そう自分達なりに考えて召喚のサークルが回り始めた時、それは起きた。

 

「お、おぉ! 凄いよ立香ちゃん! またもや虹回転が来た!」

 

「凄いですよ先輩! 今月で既に三回目です!!」

 

「え、えへへ? そう?」

 

「ウワースゴイナー、アコガレチャウナー」

 

ジャンヌとエルメロイⅡ世(諸葛亮)に続く大物サーヴァントの登場の予兆に誰もが期待に胸を膨らませる中(その内一人は死んだ目をしている模様)、その英霊は高らかに謳い上げた。

 

「フハハハ! この我を呼び出すとは、運を使い果たしたな雑─────あ」

 

それは、偉大なる黄金の王。全ての英霊達の元祖であり頂点である英雄王が遂にカルデアに召喚された。

 

 

 

 




保護者、登場。

Q.カルデアのサーヴァントのマスターは立香だけなの?

A.基本的には立香一択です。今回ボッチがジャンヌと夢を見たのは偏に二人の縁が強い故に、といった感じです。

こんな感じで今後はボッチとの縁に連れて記憶持ちのサーヴァントが出てくるかもしれません。

Q.セイバーオルタは記憶持ちなの?

A.聖剣折られた記憶しかありません(笑)

それでは次回もまた見てボッチノシ




自分、型月関係は良く知らないのですが、ブラックバレルって元々月姫から出てきたらしいですね?

………そう言えば、スパロボにも似たようなのがいたっけ。

黒き銃神って言うんだけど。

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