『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回は序盤という事で駆け足気味です。
ダイジェストっぽいですが、宜しくお願いします。


その33 第三特異点

 

 

 

 

 ────カルデア・中央管制室。

 

第一、第二と続き新たに特定した第三の特異点の座標が遂に特定された。詳しい説明を聞くために万全の状態で管制室に向かった修司は、そこで既に先に来ていたダ・ヴィンチと立香達に合流する。

 

「あ、修司さん来たー!」

 

「おはようございます修司さん、その様子だと気持ちよく眠れた見たいですね」

 

「あぁ、お陰さまでな。そう言う二人はキチンと眠れていたか? まぁ、その様子だと快調みたいだな」

 

「はい! 朝ごはんもしっかり食べてきました!」

 

「先輩、朝からモリモリ食べてましたもんね。ご飯二杯も、エミヤさんも呆れてましたよ」

 

「うぐ、だ、だって隣でアルトリアさんが美味しそうに食べてるからつい………」

 

「………アルトリアさんにはいつか食事制限掛けた方がいいんじゃないのか?」

 

 前々から思っていたがアルトリアさんは健啖家という枠から少し外れている気がする。自分が彼女と顔を会わせる時は大抵鍛練のためのシミュレーションや食堂だ。

 

特に食堂にいる時はいつも何か食べている気がする。サーヴァントは太らないみたいだが、それでも少し過食すぎないかと心配になる時がある。エミヤは許容範囲というが幾ら腹ペコ王でも限度はあるだろう、特異点修復後にカルデアに戻ったら一言物申してもいいかもしれない。

 

───閑話休題───

 

「まぁ、そこら辺はおいおい話し合うとして、特定された場所はこれまた厄介な所だ。1573年。見渡す限りの大海原だ」

 

「海………ですか?」

 

「うん。しかも特異点を中心に地形が変化しているらしい。具体的に“ここ”という地域が決まっている訳ではなさそうだ」

 

「それはつまり……太平洋でも大西洋でもなく、インド洋でもない定まっていない海って事か?」

 

「ニュアンス的には間違っていない。あぁでも安心してくれ、君達のレイシフト先は何としても安全な場所にしてみせるから、レイシフトした先で壁に埋まって詰み。何て事には絶対にしないから安心してくれ」

 

「まぁ、そこの修司君なら壁の中だろうと深海だろうと平然としていそうだけどね」

 

「コラ! 駄目じゃないかダ・ヴィンチ! 本当の事でも言って良いことと悪いことがあるぞ!」

 

「お前ら仲良いな」

 

 特定された座標地点は15世紀の大海原、特異点の影響で地球上のどの海なのかは定かではないが、それでも無事にレイシフトさせるロマニの言葉に嘘はなかった。

 

勿論、修司達もそこに疑っているつもりはない。修司も冗談混じりに弄ってくるダ・ヴィンチに苦笑いを浮かべているが、仮に壁の中や深海、宇宙空間であろうともどうにか出来る用意が修司にはあった。気を纏えば宇宙空間でも多少は活動出来るし、深海にだって要は浮上すればいいだけだから何とかなる。

 

 修司達が危惧しているのは先の特異点でレフが見せた魔神柱なる悪魔の姿。今回も元凶となる輩の事もそうだが今修司達が気になっているのは七十二柱の魔神の有無とその背後にいる黒幕のことだ。

 

「で、ロマニ実際にどう思う? 前回の魔神柱フラウロスを見て、黒幕は例の王様(・・)を召喚していると思う?」

 

「うん。その可能性も否定出来ないけど、それでも七十二柱の魔神なんて信じられないかな?」

 

「それは何故? 実際に立香ちゃん達は戦ったのに?」

 

「だからだよ。送られてきたデータは確かに“悪魔”と言われるに相応しい数値だった。でも、何て言うか………あまりにも伝説通り過ぎる。悪魔の概念は彼の王よりももっと後に誕生したものだ」

 

「仮に、本当に彼の王が英霊化したとしても、その宝具はもっとシンプルでスマートな筈だ。あんな現代人が知っているような禍々しい魔神を使役できるとは思えない」

 

「うーん。その辺りは確かになぁ。名前を騙っているだけ、という可能性も高いか」

 

「つまり、黒幕は純粋に魔神柱を召喚しているのではなく、伝説に記述された通りの悪魔を召喚している模倣犯でもあると?」

 

「或いは、それら全部ブラフか。ったく、分かっちゃいたけど魔術師ってのはどうしてこうも面倒な手段をしてくるかなぁ」

 

「あはは、まぁそこら辺はこれからも解析を続けていくからさ、今は横においておこう」

 

魔神柱なる存在が出てきて黒幕の正体が少し明るみに出るかと思ったが、どうやらそう簡単にはいかないらしい。多すぎる可能性と憶測は却って此方の判断を鈍らしかねない。魔神柱とその黒幕の考察を程ほどに切り上げ、修司達は改めてロマニに向き直る。

 

「では、三度目の聖杯探索を開始しよう! 皆、用意はいいね!」

 

「「はい!」」

 

「フォーウ!」

 

「おう」

 

これから向かうのは未開の大海、そこで待つ脅威と冒険に不安とワクワクを抱きながらコフィンへと入っていく。

 

その途中、ふと視線を感じた。見上げるとスタッフ達のいる管制室に此方を見送るジャンヌとエルメロイⅡ世の姿があった。

 

どうやら見送りに来てくれたらしい。手を振ってくるジャンヌに修司も拳を突き出して挨拶を済ませると、立香達に続き修司もコフィンへと乗り込んでいく。

 

先のレイシフトでも聞いたアナウンスが流れてくる。いよいよ始まる三度目の聖杯探索、いざレイシフトが始まると言う所でまたもや視線を感じた。

 

見ればロマニ達の遥か後ろ、中央管制室の出入り口に黄金の王がいた。扉に寄りかかり、不敵な笑みと共に見送ってくれる英雄王は、やはり自分の知る人と何処までも同じだった。

 

 帰ってきたらまた話をしよう。今度の冒険もきっと凄いものだと半ば確信しながら………落ち行く意識に身を委ねた。

 

 

 

 

アンサモンプログラム スタート。

 

霊子変換を開始 します。

 

レイシフト開始まで あと3、2、1………

 

全工程 完了(クリア)

 

グランドオーダー 実証を 開始 します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────結果的に言えば、カルデアによるレイシフトは成功した。以前のように空からのダイブではないし、深海からのスタートでもましてや宇宙空間からの始まりでもなかった。

 

修司達が降り立ったのは海上を往くとある船の上だった。見渡す限りの大海原の中でこの地点でのスタートは過去のレイシフトの中でも最上の成果とも言えるのではないだろうか。

 

尤も、そこが見知らぬ海賊船でなければの話だが。

 

「お、島が見えてきたぞ。あそこが例の海賊島か」

 

レイシフト直後に始まる戦闘、ノリと勢いで襲ってきた海賊達を修司とマシュの二人で一瞬の内に無力化し、同時に海賊船を制圧。マシュはいい加減なことを宣うロマニにお冠、一方で修司は海賊達の語るアテにしていたという島が見えてきた事を皆に伝える。

 

修司とマシュの武力によって沈められた海賊達は揃って二人に従順となっていた。船の上で無用な争いはご法度、それが格上相手ならば尚更だと海の怖さを知る海賊は二人の指示に文句ひとつ言わず、テキパキと作業をこなしていく。その一方、立香は立香で船酔いをしなくなった自分に安堵していた。

 

 そうしてやって来た海賊島。船を座礁しない程度まで島に近付けると修司達は船へと降り立った。一旦この島へ立ち寄り、情報収集でも行おうかとした所で……。

 

「ヒャッハー女だ! 獲物だ! 狩りだ! 楽しそう!」

 

やはりと言うべきか、予想通りと言うべきか、カトラスと単発銃を手にノリと勢いで襲ってくる海賊に再び修司とマシュは迎撃、当然のごとく瞬殺である。

 

その後、三下口調でキャラ立てを意識する1人の海賊に事情を知っているであろう”姉御”なる人物───否、大海賊フランシス=ドレイクの元に案内されることになった。

 

「先輩、修司さん。気を付けてください。相手は世界最大の大海賊。大食漢で大巨人、酒樽を片手で掴んで一気呑みするような豪傑と想像されます」

 

「ま、マシュ?」

 

「そして、腕の一振りで大気は震え、地震が起きて津波を引き起こす。そう、大海賊フランシス=ドレイク、彼女こそが世界を滅ぼす力を持った大海賊です」

 

「誰!? うちの可愛い後輩にワン◯ース読ませたの!? まんまイメージが白◯げに固定されちゃってるんだけど!?」

 

「いや、その………別にそこまで人間離れしてないというか、強運はすげぇよ? でも大巨人と言われるとその……」

 

「ほらもー! 海賊の人恐縮しちゃってんじゃん! 気まずそうにさせちゃってるじゃん!」

 

『いやー、しかしこの作者すごいね。色んな伏線が張り巡されていて考察が尽きないよ。因みに皆は主人公の夢はなんだと思う? 因みに私は海賊王はあくまで通過点であって本命は別にあると睨んでいるけど………』

 

「お前の仕業かダ・ヴィンチちゃんンンン!!」

 

「………なんか、楽しそうッスね」

 

「うちの子達が騒がしくてすみません」

 

 何故だろう、本来なら危険極まりない海賊の人から生暖かい目で見られると自分達が酷く場違いな気がする。いや、実際に異邦人であり場違い感がありまくるのは当然かもしれないが………。

 

騒ぎたつ立香達にそれとなく注意しつつ、案内されること数分。辿り着いた野営地にいたのは一目で分かるほどに快活で、それでいて美しい女性だった。

 

ただ、思っていた様な大巨人ではなく、寧ろ武装したマシュよりも若干小柄な人。その手にはラム酒の入った杯を片手に他の海賊達とドンチャン騒ぎをしていた。

 

「姉御ー! 客人を案内してきましたー!」

 

「あぁ? 役人か? なんだい折角の酒宴に……」

 

振り返る先に見えた顔には大きな傷跡、女性の顔に傷というデメリットを抱えて尚、その女性は美しかった。

 

そして、そこから話が始まること数分。酒盛りをしていただけあって些か以上に酔っていたドレイクは何を思ってか修司に一対一による決闘を仕掛けてきた。理由は単純、自分達に話を聞かせたければ力を示せというケルト勢もニッコリな暴力的理論によるものだった。

 

しかし、大海賊として知られるドレイクは酔っていながらも修司の強さを的確に見抜いていた。目の前の山吹色の男は強い、カルデアの一味と名乗る連中の中で最も手強い奴であると判断した彼女は二挺拳銃をフルに活用し、その軽快な体術も合わさってマシュから見ても動きの読めない挙動となっている。

 

 これが大海賊の実力。そう立香達が戦慄するのも束の間、早々にドレイクの動きを看破した修司がその掌底打を以て昏倒させる。

 

大振りとなった蹴りを避けて腹に一撃、加減こそしているが相手は生身の人間。そして受けた掌打の衝撃は当然のごとく彼女の胃袋をこれでもかと刺激し……。

 

「うっぷ、オロロロロ………」

 

フランシス=ドレイクはこれまで飲み食いしていたこれ迄のモノを、修司の足下に盛大にぶちまけ。

 

「て、テメェ! 良くも姉御をゲロインにオロロロロ………」

 

「ば、バカ野郎! こんなところで吐くバカがオロロロロ……」

 

ドレイクを初めとした海賊達は全員が酒盛りに騒いでいた者達ばかり。故に、負の連鎖(貰いゲロ)は留まる事を知らず………辺り一面悲劇に見舞われる事になり。

 

『立香ちゃん! マシュ! 今すぐその場から逃げるんだ! このままでは二人ともゲロの海に呑まれてしまうぞ!』

 

嘗てない剣幕で退避を促すロマニに反論する者などなく、マシュは口を抑えて青くなる立香を抱え、フォウと共にその場から一時離脱。

 

唯一、残された修司は……。

 

「俺、悪くないよね?ねぇ、ねえってば!!」

 

一人その場に残る彼の目には大粒の涙が浮かんでいた。───尚、その後修司は一人で海賊達の介抱をした模様。

 

第三特異点初日。その日は兎に角酸っぱい一日であったと後に修司は語った。

 

 

 




ドレイク船長は自分がfgoをやってて初めて引いた星5サーヴァントでした。
今でも周回で使ってたりします。


それでは

封鎖終局四海オケアノス~熱戦・烈戦・超激戦!!~

始まります。


次回も、また見てボッチノシ



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