『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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久し振りのほのぼの回。



………関係ない話だけど、久し振りに進撃の巨人2をプレイして思った。

プレイヤーである主人公は鎧の巨人に両親を殺され、それ故に鎧の巨人を倒す事を決意する。

つまり………。

主人公「お前を殺す」

ライナー「!?」デンデン!テレレテレレ……

つまり進撃の巨人2は実質ガンダムWだった?




その45

 

 

 

※月※日

 

 ───気付いたら、自分はベッドの上で寝ていて医務室の天井を眺めていた。どうやらあの後、特異点から帰還した自分は気を失ったまま医務室に担ぎ込まれ、治療を受けた後丸二日も眠っていたらしいのだ。

 

最後に覚えているのは現れた魔神柱を前に、満身創痍の自分達の所にジャンヌさんと王様が駆け付けてくれた所だけだから、あの後どうなったのかはドクターから教えて貰った。

 

結果的に言えば聖杯は無事に回収され、特異点も修復されたという事。報告書に記載された文字ではいつもと変わらない最上の結果だが、今回は相手が相手だった為に自分としても胸を撫で下ろす思いだ。

 

 で、今回の特異点での戦闘は今までの比較にならない程の激しいモノであった為、自分を含めた立香ちゃんやマシュちゃんも当面の間は安静に過ごすようにドクターから“命令”された。

 

命令なんて強い言葉を使うものだから一瞬唖然としたけど、そう言えばロマニってオルガマリーちゃんの代理なんだよな。謂わばカルデアのトップ、カルデアという限られた施設での立場としては立香ちゃんや俺よりも断然上な役職の人間だった。普段から気弱な優男って印象が強かったから忘れてたけど、彼は一応ここの責任者なんだよな。

 

そんな彼から目の覚めた俺を見て安堵するのも束の間、眉間に皺を寄せて小言を言ってきた。その小言の内容も専ら自分の身を案じるモノばかりで、彼の言うことはほぼ間違いないので取り敢えずは大人しく聞き入れる事にした。

 

 その後、自分の容態について改めてロマニに訊ねると、自分が寝ている間に受けた諸々の治療の成果もあって診断書は全て正常となっていた。折れていた骨や断裂していた筋肉も元通りになっており、寧ろ以前より柔軟且つ頑強になっているらしい。

 

驚きと呆れの言葉がドクターから告げられたが、昔から回復力には定評があった為、自分はそんなに驚いてはいない。

 

折角目を覚ましたし、ご飯を食べた後にシミュレーターで適当に体を解そうかと思ったが、ドクターからストップを掛けられた。幾ら目を覚まして体調も回復したからといって、いきなり体を激しく動かすのは許可できないとの事。

 

心配性………いや、一組織を率いる人間として当然の判断か。今回の特異点でのヘラクレスとの戦いは殆んど自分の我が儘を押し通した形となった訳だし、今日くらいは大人しくしておこう。

 

 その後、飯時になるとエミヤが食事をトレーに乗せて持ってきてくれた。病み上がりの人間に適切な食材で作られた胃に優しい品々、自分も食堂のコックとして役割があるのに律儀な奴だ。

 

と、最初はそう思ってたのにこの男、ここぞとばかりに小言を連発してきやがったのである。やれこれに懲りたら少しは自重しろとか、やれ人を猪扱いしたり、挙げ句の果てには人を宇宙最強の戦闘民族扱いしてきたりと、反応に困るからかいをしてきたのである。

 

その後も見舞いに来てくれたジャンヌさんにも小言を言われるハメになったのだが………まぁ、今日くらいは甘んじて受け入れるとしよう。実際心配を掛けたのは事実だし、何よりまだ体には疲れが残っている。

 

エミヤの料理を食べて、今日の所は大人しく寝ておこう。………そう言えば、こうして何もせずに寝て終わるのって、久し振りだな。

 

 

 

 

 

 

「おやロマニ、彼のカルテを凝視してどうしたんだい?」

 

「……ねぇダ・ヴィンチ、本当に彼は唯の人間なのかな?」

 

「───まぁ、君が懸念に思うのは分かるよ? 白河修司、魔術回路を持たず魔術師には絶対になり得ない凡庸の人種。人並みの外れた知識と科学技術を持っていたりするが……残念な事に、正真正銘の人間さ」

 

「そうなんだ。彼は人間、神の血を引いている訳でも神代の神秘を帯びた生命体でもない。分類的に彼が人類なのは間違いない、けれど、だからこそ解せないんだ。そんな唯の人間がどうしたら彼処まで強くなれるんだ」

 

「追及、してみるかい?」

 

「………いや、止めておこう。彼が僕達に隠し事をしているのは分かっているし、彼自身もそれを申し訳なく思っているのは何となく伝わってきている。誠実で真面目な人格も演技ではないだろう、彼が真実を口にしてくれる事をもう少し待つことにするよ」

 

「因にだけど、一部のサーヴァント達は彼の事を知っているっぽい事については?」

 

「え? なに? 何か言った?」

 

「………面倒ごとに巻き込まれたくないって、素直に言えたらいいのに、立場ある人間は大変だねぇ」

 

 

 

 

 

@月δ日

 

 ドクターストップから翌日、本日から完全復活を遂げる事となった自分は、朝食を摂り栄養を補給した後、早速鍛練を始める事にした。

 

鍛練といってもあくまで体の調整を促す程度、先の特異点では自分でも相当無茶をした自覚はあるし、今日までは基本的なトレーニング辺りで済ませておこうと思う。安心と実績のあるケイローン先生の監修の下、自分は体の調子を整える事にした。

 

結論から言えば、無茶をする前の状態と全くと言って良いほどに体は調子がよく、そして軽くなっていた。これならまた以前のように、或いはそれ以上に戦えるだろう。

 

体の調子も万全、これなら明日からでも本格的に鍛練を始められる事だろう。ただ問題なのは鍛練をする際に使う場所だ。

 

シミュレーター室でもいいが、基本的にここは立香ちゃんが他のサーヴァント達と一緒に戦闘訓練を行う場所、連携や戦いに対する免疫を付ける場所でもあるシミュレーターはジックリと追い込みを掛ける修行場には向いていないと自分は考えている。

 

 いや、別にシミュレーター室が鍛練の場に向いていないという訳ではない。サーヴァントの皆との模擬戦は為になるし、実戦形式での鍛練は一人でするよりも余程実になる。

 

ただ、あの戦いを振り返って思ったのだ。今の自分はまだまだ弱い、今後またあのヘラクレスと同等か、それ以上の敵がいつ出てくるか分からないし、そうなった時に自分がまた勝てるとは限らない。

 

立香ちゃんもマシュちゃんも特異点を乗り越えることで逞しくなっているし、そんな彼女達を足手まといに思うことはないし、寧ろ頼りにしている。けれど、そんな二人を全ての特異点を修復させるまで辿り着かせるには自分自身の強化も必要と感じたのだ。

 

 自分を強くする。具体的に言えば自分を自分で追い込める環境が欲しい。とするなら、やはり今後必要となるのはやはり“アレ”だろうか。

 

アレは作るのに自分の元いた世界でも結構な時間を要したし、何より"相棒"の力が必要になる。未だ相棒の事を皆に話せていないから一体どうやって説明するかが今の自分の宿題である。

 

 

 

 

「………そう言えばケイローン先生さ、俺の事恨んでねぇの?」

 

「え? 君に何か恨みを持つ様な事されましたっけ?」

 

「いや、ヘラクレスって一応先生の弟子だったわけでしょ? 幾らそうするしかなかったとは言え、教え子を殺されたのならば、師匠として思う所があったりするんじゃないかと……」

 

「いやいや、流石にこの状況でそんな勝手な事を宣う程、私は耄碌してませんよ? 互いに譲れないモノがあり、貴方はそれに勝った。正面から正々堂々と、ならば私から言う事はありませんよ」

 

「そ、そういうモノなのか?」

 

「そういうモノですよ。ただ、一つだけ言うことがあるとすれば……」

 

「?」

 

「ありがとう。ギリシャ最強と謳われる彼をその重圧から解放してくれた事に、彼と正面から戦ってくれた事に………彼の、新たな目標となってくれた事に」

 

「え? そ、そう?」

 

「そして、そんな君は今後、多くの英雄達から追われる立場となった。頑張ってください。英雄とは往々にしてしつこいですからね」

 

「…………え”?」

 

 

 

@月√日

 

 昨日、鍛練を終える際にケイローン先生から英雄達に狙われるみたいな事を言われたのだが、今日になってその理由が嫌と言うほど理解した。

 

現在カルデアに召喚に応じてくれたサーヴァント達、その多くが自分に勝負を挑んでくるようになったのだ!

 

特にケルト勢! 更に言えばその女王!! なんなのあれ、どうして自分が行く先々で絡んでくるのかなぁ!? 前からその様子はあったけど、自分が回復して鍛練に励むようになってからよりその傾向は強くなってきやがった!

 

幾ら止めろと言っても聞きはしない。それどころか「儂の様な美女に此処まで言わせても応えんとは……よもや貴様、不能か?」なんてセクハラ交えて挑発してきやがった!

 

あぁ分かったよ、相手すりゃいいんだろ!? 半ばヤケクソ気味に彼女との戦闘訓練をするのだがこの女、よりにもよって自分に界王拳を使わせようとしてくるのだ。後でクー・フーリンに聞いた所、どうもあの戦いの様子を録画していたらしく、繰り返して見る度にヘラクレスを羨ましく思っていたとか。いや知るかよ、何で女性からバトルの話で嫉妬されなきゃならないんだよ。悲しいわ。

 

 そして、仕方なく始まったスカサハとの対戦。降り注がれる槍の雨、間断なく攻められる応酬。流石はケルトの中でもトップクラスのサーヴァント、前もそうだが技の引き出しが半端じゃない。しかもルーン魔術とやらが思っていた以上に厄介で、彼女の指先が動く度に変に警戒してしまい、意識を剃らされてしまう。

 

純粋な戦闘能力も高いが、技の駆け引きも相当に上手い。巧みな技の応酬に俺もまた技を繰り出した。

 

その名も太陽拳。文字通り太陽の如く輝きを発して相手の目を眩ませる技、ぶっちゃけて言えば初見殺しである。突然人が物理的に光るのだから彼女も最初こそは動揺したのだが、次の瞬間には見えないことを関係なしに対応してきやがった。

 

最終的には前のように気絶させて結果的には自分の勝ちとなった訳だが、やはりケルトは化け物だ。持ち前の戦闘能力もそうだが、対応力も化物染みてやがる。アレで強さに打ち止めされたサーヴァントとか、本当魔境だな過去の英霊というのは。

 

次に彼女と戦う際は本当に界王拳を使わざるを得なくなるかもしれない。

 

 それからというものの、頻繁に他のサーヴァントとも模擬戦を行うようになった。ランサーだったりセイバーだったり、主に三騎士と呼ばれるサーヴァント達が自分との模擬戦を所望してきた。なんだかんだ彼等との戦いは得難いモノがあるし、例のアレも作る目立てが立ててない今、今の環境は最適かもしれない。

 

因みにバーサーカーの皆は一対一の決闘染みた勝負より、一緒に筋トレする事が多かったりしている。金時とかスパさんとか、あとはランサーだけどレオニダスさんとも割かし一緒にトレーニングしている。

 

………理性のない筈の狂戦士の方が紳士的且つ自重してるってどういう事?

 

 あ、でもアルトリアさんは青も黒も模擬戦の誘いもなかったな。なんかここ最近ずっと塞ぎ込んでたみたいだけど……どうしたんだろ?

 

 

 

 

「皆さん、修司さんとの勝負に夢中ですね」

 

「当たり前だ。今や奴は新しく誕生した現代の英雄、しかも勝利した相手は半神半人の大英雄。血気盛んな雑種どもには奴への興味は尽きぬだろうよ」

 

「………ドヤ顔している所申し訳ありませんが、彼の担当は貴方ですから、有事の際はお願いしますね」

 

「……………」

 

「……マルミアドワーズが………私の、憧れの剣が」

 

「こ、粉々に……」

 

「こっちは此方でダメージが酷いな」

 

「相変わらず、多方面に傷跡を残す奴だな」

 

 

 

 

 

@月α日

 

 ここ最近サーヴァントとの模擬戦の毎日な自分だが、今日新たに別のサーヴァントが参戦してきた。

 

英雄の名はアキレウス。ヘラクレスと並ぶ有名な大英雄であり、ギリシャ“最速”の豪傑でケイローン先生のお弟子さん。相変わらずな立香ちゃんの引き寄せっプリに最早笑いしか出てこなくなったよ。ハハ…。

 

そんでこの韋駄天君、自分がヘラクレスを倒した男だと聞くと速攻勝負を仕掛けてきやがった。流石ギリシャ最速、行動が速い。アタランテの姐さんもそうだが、スピード特化のサーヴァントって結構血気盛んな奴が多い気がする。

 

 まぁ、別にいいんだけどね。何だかんだサーヴァントとの戦いは自分にとって経験になるし、別に命の取り合いとかはしないし。

 

そんな訳でアキレウスとの勝負なんだけど……いやー、速かった。流石はギリシャ最速、自分も速さには自信があったけど、彼の場合はまさに韋駄天。純粋なスピードならサーヴァントの中でもトップクラスなんじゃないか?

 

殆んど瞬間移動染みた移動能力。自分が彼の強さに対応できたのは偏にあのヘラクレスとの戦いのお陰だろう。奴と戦う前の俺だったらきっと、もっと苦戦を強いられていたと思う。

 

ケルトの影の女王もバケモンなら、アキレウスも化物だった。………やっぱ、今後は自分自身の強化も必要か。

 

 

 

 

「いやー、負けた負けた。流石はヘラクレスを倒しただけはある。この現代の中でよく彼処までの強さを手に入れたもんだよ」

 

「おや? アキレウス、負けた割にはスッキリした顔ですね。何か、得られるモノはありましたか?」

 

「あぁ、………最初、あの男を見たときはヘラクレスを倒した奴には到底見えなかった。最初の印象は凡庸、何処にでもいる普通の人間に見えた。正直ガッカリしたよ、あのヘラクレスがこんな奴に負けるまで弱かったのかって」

 

「………それで?」

 

「───震えたよ。相対した瞬間、奴は化けやがった。唯の人間と思っていた奴が次の瞬間、化物になりやがった。最初は戸惑っていた俺のスピードにも瞬く間に適応し、対処しやがった」

 

「────」

 

「しかもアイツ、あれでまだ全力じゃねぇんだろ?」

 

「手加減されたと思いますか?」

 

「あぁ思うね。更に言えば遠慮もされた。けれど、それはそう引き出せなかった俺自身の未熟さにある。………たまんねぇな、仮にもギリシャに名を馳せた俺が、自分の未熟さを痛感するなんてよぉ」

 

「ふふ、楽しそうですね」

 

「あぁ、久し振りにできた目標だ。精々、励ませて貰うぜ」

 

(───ヘラクレスに続き、アキレウスまでも降しますか。白河修司、貴方は一体………何処まで強さを求め続けるのですか)

 

 シミュレーターを後にするアキレウス、敗北を知りながらも尚熱くなるその姿に頼もしく思いながらケイローンは思う。

 

白河修司。人間でありながら人を超えつつある人類の頂点、彼は一体何処まで強くなり続けるのか。ケイローンには少し………ほんの少しだが、修司の行く末に一抹の不安を覚えた。

 

 

 

 

 

 

@月※日

 

 李書文先生キターーー!!

 

 

 

 

 

 




次回も日記編になります。


Q.結局英雄王はどんな立ち位置になったの?

A.記憶持ちという事は取り敢えずジャンヌとエルメロイ二世、そしてエミヤだけが知る事になり、他の皆には伏せられることになり、修司本人にも英雄王の強い希望により伝わっておりません。

その代わり修司が何かをやらかした際には最優先で対処する事になっています。

尚、きよひーにも伝わっておらず、彼女自身そこまで気にしていない模様。

Q.ヘラクレス撃破後の修司の立ち位置は?

A.新たな英雄の誕生に多くのサーヴァントがオラワクワクすっぞ状態に。特にケルト勢(影の女王)は修司の切り札である界王拳を使わせようと躍起になってる模様。

尚、最近はそこにアキレウスも追加されました。

それでは次回もまた見てボッチノシ


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