『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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短い上に話が進まない………。

多分、盛り上がりに欠ける話になるかと思います。
拙い作者ですみません。




その52 第四特異点

 

 

 

 

「あの、モードレッド卿。少しお話いいでしょうか」

 

「あん?」

 

 霧の中で待ち構える敵勢力を薙ぎ倒していく一行、襲ってくる敵の数が揺るやかになり歩みを進めると、ふとマシュがモードレッドに問いを投げ掛けた。

 

「あの……えっと」

 

「あぁ? 聞きたいことがあるならハッキリ言えよ。お前に遠慮されるのはなんというか………イラッとするからよ」

 

「そりゃお前がそんなチンピラ口調が原因だろうが。騎士ならもちっと礼儀を慮れよ」

 

「うっせぇ、俺は元々こうなんだよ。ガレスみてぇな事言ってんじゃねぇよ」

 

「え? つまり俺って円卓にいてもなんら不思議な人間じゃないってこと?」

 

「ハッ」

 

「鼻で嗤いやがった!?」

 

言い出し辛そうな面持ちのマシュに少しでも渡し船を出そうとする修司だが、モードレッドの痛烈な返しに敢えなく撃沈。地面に項垂れる修司を立香だけが肩ポンして慰めた。

 

「怒らないで聞いて欲しいのですが。どうしてモードレッドさんはこの街を、ロンドンを守ろうとしているのですか? 私には………その、何故か違っているように思えてしまって」

 

 何故マシュが疑問に思ってしまうのか、それはマシュ自身が良く分かっていない。だが、彼女の言わんとしている事は何となく理解している。

 

モードレッド。円卓の座に騎士として名を連ね、そして反逆の騎士として称される事となったブリテンを終わりへと追いやった原因の一人。

 

そんな騎士がロンドンを守っている。滅ぼした騎士が今度は守護する為に戦っている事にマシュ────或いは彼女の内にいるサーヴァントがその矛盾が気になった故の質問。

 

そんな彼女の問いに反逆の騎士は快活に即答する。

 

「ンだよ、そんな事か。決まってるだろ、ムカつくからだ」

 

「え?」

 

父上(アーサー王)が守った地を、俺以外の奴が好き勝手するのは許さねぇ。王の守ったモノを台無しにするのはこの俺、モードレッドだけだ」

 

 嘗て自分を拒絶し、息子と認めなかったアーサー王。そんな王に反旗を翻し、国を滅ぼした反逆の騎士モードレッド。

 

王に反逆するのは自分だけだと、そう声高に告げる彼女にマシュはただ圧倒されていた。

 

「ねぇ、修司さん。モーさんの言ってる事って……」

 

「あぁ、間違いない。奴はベ◯ータ系だ。驚いたな、まさか円卓の中に此処までベジ◯タ要素を詰め込んだ奴がいたとはな」

 

「ソコォッ! グダグダうるっせぇぞ!」

 

「元気だなコイツら」

 

そんなモードレッドの矜持とも呼べる拘りをツンデレ扱いする修司と立香は、やはり現代っ子なのである。

 

 そして、そんなグダグダなやり取りをしながら進むこと数分。漸く目的地へ到達した修司達はそこで待ち受けていたサーヴァント、メフィストを撃破した。

 

ヴィクター=フランケンシュタインは自分が殺した。そう語りながら、面白可笑しく、登場から退場まで終始此方を嘲笑い続けた悪魔の名を持つ殺人鬼。奴の最期は修司に胴体を蹴破られ、モードレッドに頚を刎ねられる事で絶命し、消滅していった。

 

その後、ヴィクターの屋敷へ足を踏み入れるが、やはり屋敷内に人の気配は無く、手分けして探索していたその際に修司が目にしたのは殺害現場らしい暴散した部屋だった。

 

やはり、あのメフィストはヴィクター博士を殺害していた。カルデアにいるメフィストも狂言回しの所があるから今回もそう言ったモノだと内心で期待していたが………眼前に広がる光景を前にそれはないと思い知らされた。

 

ヘンリーからへの報せに心苦しくなるが、今は少しでも有益な情報を少しでも多く見付けようと現場を後にする。

 

 立香達の気配を追って書斎………もしくは研究所らしき部屋の奥へ進むと、其処には立香達の他にも一人の女の子が其処にいた。

 

名をフランケンシュタイン。かの小説で怪物として語られている麗しき少女がそこにいた。

 

「悪い皆、少し遅れた」

 

「あぁ、ご苦労だったな。その様子だと……やはり」

 

「うん。やっぱりダメだった。あのメフィストの言う通りヴィクター氏は殺害されていた」

 

「そっか……」

 

 ヴィクター氏が殺された事は事実、その現実に酷く落ち込む立香だったが、彼女が落ち込む理由は他にあった。メフィストフェレス、そのサーヴァントはカルデアにも在籍し、色々と言動に悩ませる事もあったが、それ以上に共に戦う仲間として頼りにしてきた英霊の一人である。

 

そんな彼が敵として人を殺し、敵として自分達に襲い掛かり消滅した。サーヴァントというのは召喚された時代によって立場や在り方が僅かに変わってくる、カルデアに在籍しているサーヴァントがレイシフト先でも味方である可能性は高くはない。

 

更に言えばメフィストはサーヴァントの中でも“悪”として分類される英霊だ。カルデアのサーヴァントでなければ自分に召喚された訳でもない奴が此方に協力せずに敵対するのは………ある種、火を見るより明らかだ。

 

 分かっていたが、だからと言って呑み込めるほど立香は戦いに身を置いている訳ではない、そんな彼女に何て言っていいのか分からずに修司達が頭を悩ませていると、意外な人物から激を飛ばされる。

 

「なに落ち込んでンだよお前、あんなピエロにそんな心を割く余裕がお前にあるのかよ」

 

「モーさん……」

 

「それになんだ、お前んとこのカルデア? にも似たような奴がいるんだろ? だったらソイツに言ってやればいいだろ、お前に似た奴をブッ倒したけどお前より全然弱かったってな」

 

「そ、それでいいのかな?」

 

「いいんだよ。サーヴァントってのはドイツもコイツも自分こそが最強! なんて思い込んでる奴が不特定多数いるもんだ。そんな奴が現地にいる自分がカルデアにいる自分よりも強かったなんて思われてみろ。割りとソイツに対する侮辱になるからな?」

 

「そ、そうなの?」

 

「あぁ、だからあのピエロを倒した事にテメェが負い目を感じる必要はねぇ、寧ろ率先して教えてやれよ。お前の方がより悪辣だったってな」

 

「………うん。ありがとうモーさん、なんか元気でた」

 

「そうかよ」

 

 自分の知るサーヴァントを倒した事に対する気落ち、様々なサーヴァントと出会い、現在藤丸立香は史上希に見る数多の英霊と縁を結んでいる。それでも彼女は人並みの感性を持っている為、知り合いを倒した事に罪悪感を覚えていた。

 

そんな彼女に自分なりの励みを口にするモードレッドに立香は幾らか元気を取り戻した。カルデアにいる仲間の為にも目の前の障害を乗り越える。そう気持ちを切り替えて再び立香は立ち上がった。

 

元気になった立香を見て修司もまた安堵する。と、それはそれとして先ずは目の前の彼女をどうにかするのが先決だ。

 

「んじゃ、その子をヘンリー氏の所に連れていくか。エルメロイ先生、帰りの護衛もお任せしますね」

 

「おい、担いで行く気か?」

 

「そのつもりだけど…………あ、なんだったら立香ちゃん達も乗ってく? こっから一回ジャンプすれば速くヘンリー氏の拠点に戻れるけど?」

 

「いや、それは止めておこうよ修司さん。もしかしたら空にも敵がいるかもしれないし!」

 

「そ、そうですよ! 千里の道も一歩からと言いますし、急がば回れという格言もあります。慎重に徒歩で行くのがベストかと!」

 

『そうだね! 僕も同じ意見だよ! 何事も石橋を叩いて渡るつもりでいかないとね!』

 

「えぇ……」

 

 活力の乏しいフランケンシュタイン───改めフランを背負って一緒に行くかと提案する修司だが、第二特異点での出来事を思い出した二人は止めた方がいいと必死の様子で丁寧に却下する。

 

そんな二人に折れた修司はフランを背負ったまま跳躍する事なく、ションボリとしながら大人しく二人にペースを合わせるのだった。

 

「───コイツ、ここでもこんな調子なのかよ」

 

「あぁ、胃が痛い」

 

「フォフォーウ!」

 

一度ヘンリーのアパルメントへ戻る事にした一行はヴィクター氏を助けられなかった事を悔やみながら屋敷を後にする。

 

その時、ふと何か気になる事を思い出した修司は後ろ髪を引かれる思いで一度だけ屋敷へと向き直る。

 

「───魔霧計画、か」

 

 それはメフィストが溢した計画であり、ヴィクター氏が書き遺してくれた計画とやらの名称。

 

魔霧計画。計画の内容は未だに明らかにされず、また推察も出来ようがないほどに情報はないが、それでも修司にはこの計画の名称に引っ掛かりを覚えていた。

 

「偶然にしては、些か出来すぎているよな」

 

魔霧───或いはマキリ。今回の黒幕はもしかしたら自分の知る奴なのかもしれない、そう思うには充分な計画の名称に修司は拳を握りしめるのだった。

 

 

 

 

 

 





次回、悪い幼女の尻は叩くもの。(嘘)


それでは次回もまた見てボッチノシ





──オマケ──


もしもボッチが打出の小槌の被害に逢ったら?



「おい大変だ! 修司の奴が打出の小槌とやらの影響で小さくなっちまったぞ!?」

「今すぐ奴を屋内に隠せぇ! 満月の下に絶対出すなよ!」

「尻尾の確認も急げぇ! 生えてたら即座に切り落とせぇ!」

「大変だぁ! トンチキ聖女(ジャンヌ)が暴れ始めたぞぉっ!」

「どきなさい! 私はお姉ちゃんですよ!!」

「しかもアーチャーの方じゃねぇか!? だ、誰かぁぁ! 英雄王か諸葛エルメロイを連れてきてぇぇぇ!」

『『引きこもります。探さないで下さい』』

「あの二人逃げやがった!?」

「随分、賑わった所じゃのう」

「師匠、達観している場合じゃないですよ」

チャンチャン

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