『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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天獄篇キタァァァァッ!!
レーヴァキタァァァァァ!!!
……え? ガルガン? お、おう。


その29

D月π日

 

 所属不明のIS無人機、ゴーレムなる存在達がIS学園に襲撃してきて早数日、学園の敷地内にあった破損個所は大体修理を終え、生徒達も落ち着きを取り戻していた。

 

幸い生徒達の中には怪我人はおらず、教職員の方々も大した事はなく、専用機持ちの皆の奮闘のおかげで学園の損壊も思ったほど酷くはなく、修理の方はさほど時間は掛からなかった。

 

生徒達の方もこれまで無人機や禁止指定システムを搭載した機体の暴走等様々なトラブルに遭遇した為か心身共にタフな物となり、たった数日しか経過していないのに普段と変わらずに生活している。

 

やはり人間環境に慣れるものだなと安心していた一方、自分は自分で少々面倒な事になっていた。

 

 IS技術資格を持つ人間は長期に渡って属する国から離れる際、政府に報告する様義務付けされているのだという。山田先生が言うにはこの制度は技術者の安全を保つ為のものであるとされ、一ヶ月以上音信不通の場合は国が各治安機関に通達し、その身柄を確保する為に動き出すと言うのだ。

 

まぁこの世界の中心となっているISを研究し、開発する人間は世界全体を見てまだまだ少ないみたいだし、先も言ったけれどここではIS技術者の拉致や誘拐は珍しい事ではないので政府が懸念するのも理解出来る。

 

技術者の端くれを名乗り、コアを使ってISを制作した以上政府の意向にはある程度従うべきだろう。そう思い、出張から帰ってきたという連絡を政府へ通達を入れると、政府は自分に対して記者会見という場を開いて話を聞かせて欲しいと言ってきたのだ。

 

まぁ、女性にしか適合されない筈のISが男の自分に適合されたという話を聞けば、奴さん達が慌てるのも無理はないのだろう。記者会見を開いて欲しいというのも、メディアを通して全国にIS適合について話して欲しいというのが本音だろう。

 

一ヶ月前に記者会見を開いたばかりなので多少は抵抗あるが、確かに自分の言う事を世間に聞いて貰うためにはそれが必要だと思う為、了承する事にする。

 

場所はやはりIS学園、今度も十蔵さんや教職員の皆さんの力を借りて用意する事にした。途中で政府の人達が手伝いに来たけれど………彼等が到着する頃には既に作業は終わっていた。別に頼んだ覚えはないので悪くは言わないが、やってきた政府関係者の中にやたらと偉そうな人がいたのが少し気になった。

 

何でもその人はドイツの偉い立場にいる政治家さんで日本政府とも深い繋がりのある人物とされていて、彼の言葉一つで国が動くと言われており、この時までは自分の中ではただの偉い人が視察に来ているのだなという見解だった。しかし、この政治家さんはどうやら少し毛色の違う人間で、女子生徒や女性教職員の人達を下品な目つきで見つめているのだ。

 

挙げ句の果てには公衆の面前でセクハラを働く始末。織斑先生がいない所を見計らって山田先生の臀部に触れたその人を自分は躊躇なく追い出した。

 

その最中、お前は唯では済まないぞとか言っていたが……そんな事は知った事じゃない。権力に物を言わせて好き勝手やる人間に遠慮をする必要など微塵もない。

 

ただ、今後逆恨みされては今後の自分の活動に差し支える恐れがあるので、その日の夜に例の政治家さんよりも上の人と───国家元首の人と話をし、彼を政界から追放させて欲しいと伝えた。

 

 最初はいきなり何者だと警戒されたが、ドイツに関しては盛り上がる話題が事欠かないので、ドイツの国家元首さんは自分の話に耳を傾け、聞き入れて貰えた。

 

しかも国家元首さんによると自分の話した幾つかの事例は全く知らないモノであったらしく、特に試験管の……デザインベイビーの話については素で驚いていた様子だった。

 

どうやらドイツも一枚岩ではないらしく、国家元首さんも知られていない事実があり、突き詰めようにもいつも後一歩の所で逃げられてしまうと愚痴っていた。

 

しかもあの政治家も関わっている事から決め手となる手段もなく、今まで歯痒い思いをしていたと言っていた。そこで現れた自分からの情報提供に国家元首さんはこれで決め手が出来たと喜んでくれた。あの政治家を政界追放する事を約束し、通信を切った。

 

これでドイツの方もある程度の膿は出せる事だろう。後はロジャーさん次第だが(多元世界のあの人ではない)……まぁ、あの人なら心配ないだろう。見たところかなりのやり手っぽいし、自分の印象はシュナイゼルと多元世界のロジャーさんを足して2で割った感じだ。

 

ロジャーさんはこの借りは返すと言ってくれたが、その必要はないと自分は答えた。何せ後一歩の所まで連中を追い詰めた人だ。合成なしの証拠映像や、復元された研究記録まで渡せば後はどうとでもなるだろう。

 

しかしラウラちゃんには本当に同情する。自分が生まれた経緯にあんな輩が関わっていると知ったらタフな彼女でも気持ち的に滅入る事だろう。今回の事は彼女に伝えない方がいいな。うん。真実を知ることも大事だが、世の中には知らなくても良いこともあるのだと自分は思う。特に、どうでも良い話は。

 

それにしても、ロジャーさんてばダンディーな人だよな。多元世界のロジャーさんと顔とか全然違うけれど、どことなく雰囲気が似ていた。黒い服も似合ってたし、ロジャーと名のつく人は皆あんな感じなのだろうか?

 

 ───あ、そうそう。ラウラちゃんという事で思い出したが、ラウラちゃんが今日自分に会うなりいきなり頭を下げて謝ってきた。

 

なんでも前にアリーナでいきなり砲撃をぶっ放した際、自分に傷を付けた事を気に病んでいて軍人としてのけじめを付ける為に自分が帰ってくる日を見計らって謝罪したかったのだという。

 

 いやー、良い子だなぁラウラちゃん。最初の頃は酷く尖っていたけれど、今は全くその様子は見えないし、今日も終わった事なのにワザワザ謝りに来てくれている。

 

やはり軍人とはいってもラウラちゃんも女の子、あの頃は慣れない外国で気が張っていたんだな。こうして謝ってきてくれた事だし、怪我も大した事なかったから、自分は素直にラウラちゃんの謝罪を受け入れた。

 

────ただ、その時ラウラちゃんが白装束を纏っていたのが気になった。彼女が言うには部下からの助言を参考にしているとだけ言っていたが……一体何を言ったらあんな風に思い詰めた表情になるのだろう?

 

謝罪も受け入れた後も酷く狼狽していたし……けど、部屋から出て行く頃にはすごく晴れやかな表情していたから別に良いか。

 

 

 

D月@日

 

 記者会見を明日に控えた今日、自分は用務員の仕事を早めに切り上げさせて貰い、織斑先生の計らいで蒼鴉の整備を行っていた。

 

やはり蒼鴉に搭載された擬似太陽炉とISのコアとの連動率は高いが、いざトランザムを使用するとなると太陽炉側にシステムが持っていかれ、どうしてもIS側が弾かれてしまう。無理に同調させようとすれば過剰な相互干渉により暴走に陥ってしまい、蒼鴉が自爆してしまう可能性が出てくる。

 

アリカちゃんは自分の力不足と言うが、そもそも擬似太陽炉のトランザムは半ば暴走状態にあるようなものなので気にする必要はない。問題があるとするならばこれを作っておきながら打開策を見つけていない自分にあるのだ。

 

尤も、その打開策は今日見つける事が出来た。二つの擬似太陽炉におけるツインドライヴ、これにISコアを並列に使用する為には間を繋げるモノが必要になる。

 

ツインドライヴによるトランザム状態は謂わば手綱のない暴れ馬の様なモノ、アリカちゃんと一緒に作動させるにはアリカちゃんがトランザム状態のツインドライヴを乗りこなす必要があり、その為には手綱が必要となってくる。

 

ISコアとツインドライヴとトランザム、これらを繋ぐ為に必要なモノ───即ち、“オーライザー”の存在だ。

 

オーライザーとは再世戦争にて刹那君の駆るダブルオーの専用支援機で、これらが合体する事によりツインドライヴシステムはより安定された稼働率を誇り、トランザムを使用した際は恐るべき性能となっている。別に蒼鴉もそれほどの性能が出せるとは思わないが、ツインドライヴによるトランザムとISコアが完全に同調すれば、かなりの性能向上も見込める事だろう。

 

 蒼鴉のツインドライヴは現時点でも安定した稼働を行えているが、それでもトランザム状態となった時は少しとは言え危うさが残る。別にトランザムの使用に拘る必要はないかもしれないが、それでも自分以外の人間が扱う事を想定するのであれば、不安要素は可能な限り無くさなければならないのも、また事実である。

 

アリカちゃんもあまり無理はさせたくない。篠ノ之博士によって生み出された存在ならば、彼女は篠ノ之博士の娘とも呼ぶべき存在だ。篠ノ之博士の娘さんであるならば、いち技術者である自分も敬意を持って接し、大事に扱うべきだろう。

 

いや、扱うべきなのだ。電子とはいえ彼女には意志があり心がある。ならば無闇に初期化という疑似殺人をするのではなく、経験を重ねて自分達人間を知ってもらうべきなのだ。明日の記者会見の時はそこら辺を丁寧に説明したいと思う。

 

 さて、そんな訳で見つける事が出来た今後の課題。取り敢えず蒼鴉に合ったオーライザーを作成する事にしたが……ここで一つ問題が出てきた。

 

アリカちゃん。蒼鴉のコアとなっている彼女が最近は自分の事をマスターと言って止めないのだ。前に何度も止めようとしたが、そうすると今度はお父様やらお兄ちゃんやらと余計変な呼び方になってしまう。

 

自分はまだ父親という歳でもないし、お兄ちゃんと呼ばれて喜ぶ特殊性癖の持ち主でもない。名前呼びでも構わないのにアリカちゃんは頑なに頷こうとしない。仕方がないのでマスターという呼び方にして貰っているが……別に自分がアリカちゃんのマスターじゃないんだけど、なんとかならないかな。

 

 

 

D月α日

 

 疲れた。今日は本当に疲れた。主に精神的な意味で。

 

政府からの要望で再び学園の体育館で行われた記者会見、会見の時間は一時間も満たない短い間のモノだったが、会場を埋め尽くす人だかりに自分は若干吐き気を催していた。

 

終始カメラのフラッシュが立ちこめる体育館の会場内、記者関係者達が次々と投げつけてくる質問に答え、時にはISの事について報告したりしながら時間をしていたが、その度に記者連中は驚きの声で体育館を震わせた。

 

もうね、鼓膜が破けるかと思ったよ。驚く気持ちは分かるけど、まだ授業中のクラスもあったんだ。もう少し落ち着きを持って欲しいモノだ。体育館に張られた特殊強化ガラスに皹入るとかドンだけだよ。あれ貼り替えるの何気に大変なんだぞ?

 

それと、当然自分のISについて質問されたが……答える事は出来ないと告げた。難色を示すメディア連中だが、現在自分のISはまだ完成されていないのだ。試作段階の機体データを開示させた所でIS委員会や学園に迷惑を掛ける事になるだろう。

 

それに、他の国から情報偽造だと難癖付けられるのも癪だ。別に決めつけるつもりはないが、色々裏で怪しいことをしている世界だ。下手に隙を見せずにちゃんと正しい情報を開示するべきだと思う。

 

それに、IS委員会からも情報を開示すべきISは原則として完成されたモノにするとされている。IS自体は完璧とは言えない存在だが、それでもコンセプトに沿った機体を完成させるのがIS開発に携わる者の義務というものだ。それが出来ていない自分はまだまだ未熟者という事なのだろう。

 

 けれど、今回で自分が果たすべき義務は終えた。政府への報告も済ませたし、IS委員会への理論提出も完了した。後は技術者の末端として、用務員として働いていくだけである。

 

寧ろ、これからの方が大変だ。蒼鴉の改修に用務員の仕事、それに学園の警備システムの強化の事もあるし、やることは目白押しである。

 

そうそう、蒼鴉の待機状態の事も報告があった。色々悩んでみたモノの、アリカちゃんという電子生命体がコア内部に存在して意志と意識がある以上、彼女の事も尊重するべきと思い、自由に動ける動物タイプにしてみた。

 

モデルは梟。フクロウのクロウと鴉の別の名称であるクロウを掛けたモノで待機状態の蒼鴉は蒼い梟へと変化させている。

 

これならアリカちゃんも独自で動けるし、空を飛ぶことも出来るという代物だ。アリカちゃんも喜んでくれたし、自分としても満足出来る代物である。

 

自衛の為に一応待機状態でも一部の武装は使用可能としてあるが……まぁおいそれとそんな事態には陥らないだろうし、そんなに心配する必要もないだろう。

 

 ───それにしても、IS委員会も早く結論を出して欲しい所だ。先のゴーレム襲撃の際に回収したISコアの件について未だに返事が貰えていない。今は自分が責任持って管理しているけれど、海に沈んだゴーレム達のコアの回収もしなければならないのだから、早くして欲しいものである。

 

まぁ、あちらも彼方の都合もあるし、自分は自分の出来る事をしようと思う。

 

 それと、何だか山田先生を始めとした先生達の顔色が最近悪い。山田先生に至っては倒れたという話も聞いているし、やはり先のゴーレム事件で気持ち的に参っているのだろう。山田先生も教師として生徒の事で常に気を張っていなければならないし、やはり大変なのだろう。

 

織斑先生も心なしか疲れた顔を時折見せているし、皆さんの負担を軽くする為にも用務員として頑張っていこうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記者会見から数日後、白河修司の名は全世界に知られる事になる。

 

『白河修司が予言!! ISはいつか男女共有になる!?』

 

記事に載った写真と共に大きく報じられるこの言葉、これにより世界は再び大きく揺れ動く事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もうすぐガンブレ2の発売日。
もうすぐネプリバ3の発売日。

……ふぅ、財布が軽くなるぜ。


Q主人公は熱血型? それとも冷静型?
A本人は熱血型のつもり。



次回も主人公が精一杯頑張るので、宜しくお願いします。ノシ


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