『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回、とあるオリキャラが出てきます。

ご容赦のほど、宜しくお願い致します。


その63

 

 

 

??月α日

 

 重力室で修行を続けて早くも一月が過ぎた。目標の100倍の重力に耐え続け、10倍の界王拳にもある程度耐えられるようになったこの頃、今日も今日とて鍛練に励んでいた自分の所にダ・ヴィンチちゃんから通信が入った。

 

何でもこれ迄の例の如く、とある小さな特異点が出現した為にこれの対処に当たって欲しいのだとか。観測した限りでは、立香ちゃんやマシュちゃんだけでも対処できそうな規模だが、金時が嫌な予感がするといって同行を願い出たのだとか。

 

他にも、先日召喚された風魔小太郎も金時同様に嫌な予感をひしひしと感じているらしく、念の為に自分も参加して欲しいと頼まれた。

 

坂田金時や風魔小太郎という伝説の忍までが予感を察しているのだから、それはもう確実と言っていいだろう。ダ・ヴィンチちゃんからの頼みを引き受けた自分は鍛練を一時切り上げ、身嗜みを整えてから管制室に向かうと、既に立香ちゃん達が待っていた。いつも待たせてしまってすみません。

 

 金時や小太郎君もいるし、改めて話を聞こうとしたのだけど、ダ・ヴィンチちゃんから待ったが掛かった。なんか自分の新しい礼装が完成したから着てくれとの事。

 

何だと思いながら一旦着替える為にロッカールームに戻ると、その衣装に驚いた。

 

ゴジ◯タ。よりにもよってこの天才、ゴ◯ータが着ている(正確に言えばメタモル星人の服)を造りやがった。何でも昨今カルデア内で流行っているDBブームに肖り、劇場版を観ていた際に思い付きで造ったらしいのだ。色合いといい、素材といい、完成度高過ぎる出来映えに自分も驚いた。いや、しっかり着替えておいてなんだけどね。

 

で、今回はこの礼装を着用して欲しいとの事。立香ちゃんばかりバリエーション豊富で自分だけが代わり映えのない山吹色の胴着で味気ないという。頑丈に出来ているし、気分的にどうかと訊ねてくるダ・ヴィンチちゃんに自分は快く受け取った。

 

理由はどうあれ、折角万能の天才が自分の為に造ってくれたのだ。下手に断って突っ返すより、有り難く受け取った方がダ・ヴィンチちゃんも嬉しく思うだろう。

 

ただ、皆の前で渡すのは少々勘弁して欲しい。金時もそうだけど小太郎君まで羨ましそうに此方見てくるのは微妙に堪えるからね。嬉しいけども。

 

 そんな訳で新たに礼装を手に入れた自分達はロマニから事の経緯の説明を受け、特異点修復の為にレイシフトをするのだった。

 

転移先は日本の昔話で有名な鬼ヶ島。そう、あの有名な鬼ヶ島である。

 

………そう言えば茨木童子と酒呑童子の二人、見掛けなかったけどどうしたんだろう? 普段は酒を呑んでたりエミヤとロビンさんからお菓子を貰ったりしている二人が大人しいのは………なんというか、違和感があるな。

 

 

 

??月β日

 

 疲れた。肉体的には然程疲弊してはいないけど、今回の特異点は精神的に疲れた。最初は例の如く皆とはぐれた所に転移したけれど、何時ものごとくスルー出来た。道中鬼と化物達が襲ってきたけれど、大した強さじゃないから適当にあしらう事が出来た。

 

問題はその後、適当に小鬼達を蹴散らしていると、唐突に女剣士が勝負を仕掛けてきたのだ。名前は新免武蔵藤原玄信、あの日本最大の大剣豪こと宮本武蔵が腹ごなしに勝負を仕掛けてきたのだ。

 

カルデアのボイラー室の隣で、信長と一緒にいる新撰組の沖田総司に続く女剣士。師父から修行を付けて貰う際に度々出てきた偉大なる剣の達人である。

 

 そんな大剣豪がまさかの女性である。アーサー王といい、大王アルテラといい、そして沖田総司といい、最近実は女でしたー、みたいな事例多すぎない? いや、第六天魔王の織田信長が女性だった時点で今更感半端ないけど。

 

で、そんな大剣豪から挑まれて仕方なく応戦し、アームロックで身動きを封じた時、自分はある事に気付いた。

 

この宮本武蔵、弱い。失礼なのは重々承知しているけど、アルトリアさんやアルテラさんと手合わせした事のある自分は彼女達と比べて目の前の剣豪が弱く見えた。特に剣の技に限って言えば佐々木小次郎の足下にも及ばないだろう。

 

まるで完成前の城を見ているような感覚。自分も修行中の身だから偉そうな事は言えないが、この時勝負した彼女は何となく未完成な状態に思えた。て言うか若い、て言うかそもそもサーヴァントですらなかった。年齢に言えば中学生位だろうか?

 

そんな彼女は自分の事を師匠と仰ぎ、矢鱈と付いて回るようになっていた。師匠なんて呼ばれるのは抵抗があるから名前で呼んでと言っても、頑なに師匠呼びを止めてくれない。

 

 その後、彼女の事情を訪ねると、クソ親父から逃げ出して家出の真っ只中だという。宮本武蔵の父親というと新免無二だったか? 彼と喧嘩をして家を出てムシャクシャしながら走っていると、気付けば此処にいたという。

 

で、お腹が減っていたから近くの飯処でうどんをいただき、親父にギャフンと言わせたいが為に帰るまでに強くなろうと手っ取り早く強い奴と戦おうとした所で、自分に出会ったという。

 

───なんというか、破天荒な奴だ。宮本武蔵という人物は結構ハチャメチャな逸話が遺されているが、それが無ければ到底信じられないハチャメチャっぷりだ。よく言えば効率的、悪く言えば短絡的。勢いに任せたくなる年ごろとは言え、もう少し理性的に行動しても良いのでは? と、自分は思いました。

 

 で、話を聞いて彼女が嘘を吐いていない事を確信した自分は一つの仮説を思い浮かべた。現在この世界はソロモンってクソ野郎がやらかした人理焼却によって燃やされてしまっている。

 

その影響は過去にも繋がり、宮本武蔵が生きていた頃の時代にも及び、彼女が今回の特異点に巻き込まれたのもそう言う経緯だとするなら、割りと辻褄は合うかもしれない。

 

どちらにせよ、未成年である彼女を放ってはおけない。自分の事を師匠と呼んで慕ってくる以上、無視するわけにもいかないし、一先ず彼女を保護しながら立香ちゃん達との合流を目指すことにした。

 

 未来の大剣豪であって子供ながら動ける武蔵ちゃん。脇差し位の刀を両手に持って暴れるだけあって、その腕力は並の子供を遥かに凌駕している。小鬼程度なら簡単に倒せる程度には強いが、流石に見上げるほどの大鬼の相手をさせる訳にはいかなかった。

 

しかもこの大鬼は門番らしく、その側には玉藻さんが控えていた。明らかにカルデアにいる玉藻さんとは別人らしく、自分の事を知らないみたいだったから、手加減なしで相手をする事にした。

 

というかかめはめ波で諸とも消し飛ばした。二対一だし、玉藻さんてば後衛特化のサーヴァントだし、下手に引き伸ばせば此方が不利になるかもだし、先手必勝の気持ちで会敵した瞬間に門ごと吹き飛ばしておいた。

 

武蔵ちゃんからはあんなのアリなの? て聞いてきたから、相手の有利になる状況をワザワザ見逃す理由はないとだけ言っておいた。いやだって此方は武蔵ちゃんも抱えているし、万が一の敗北も許されないんだから別に良くね? 一応切嗣さんから太鼓判押された戦法だよ? いや言い訳じゃなくて戦術的に。

 

 その後、門を破壊して島の奥へと向かっていた自分達に立香ちゃん達が合流してきた。予想通り二人の所には金時と小太郎君がいたからこれで全員が集合した事になる。何か金時が格好を変えてクラスもライダーになっていたんだけど……クラスってそんなお手軽に変えられるもんなの?

 

とはいえ、お互い無事だったのだから細かい事は気にせず、その後は武蔵ちゃんとの自己紹介が行われた。この時、やはりというか予想通りというか、あの宮本武蔵が女性だった事にロマニ達は酷く驚いていたし、自分を師匠と呼ぶ事にも動揺していた。

 

その後、互いに経緯を説明しながら奥へ進み、道中襲ってきた鬼達を蹴散らし、途中で何故か此方に来ていた茨木童子と酒呑童子と合流し、更に島の奥へと進んだ。

 

 そして最後の門番らしき大鬼を倒して島の最奥へ辿り着くと、そこでは一人の女性が待ち構えていた。源頼光、源氏の棟梁にして数多くの妖怪達を討ち滅ぼしてきたとされる侍大将。

 

嘗ての天皇を守護してきたとされる侍集団の長が女性である事にも驚いたが……宮本武蔵とか酒呑童子が女性という事もあり、然程動揺はしなかった。

 

そんな頼光公は現在もう一つの側面である牛頭天王こと丑御前の影響もあって、酷く不安定な状態らしいのだ。酒呑童子と茨木童子が鬼ヶ島に来ていたのもその影響らしく、先の羅生門での異変も彼女が大元だったらしい。

 

 丑御前の狙いはまつろわぬ者共の復権。つまりは妖怪達の復活、らしい。如何にも後付けな理由の裏にはやはり彼女が不安定が故の言動なのだろう。

 

その後、結局は丑御前と敵対し戦う事になるのだが………正直、金時を戦わせるのには抵抗があった。頼光公は金時にとって親代わりみたいなもの、慕ってこそいても憎いとは思えない相手に戦いを強制するのには流石に忍びない。

 

だから自分が代わりに矢面に立とうとしたのに、このゴールデン野郎、笑って拒否しやがった。「親の不義理は子が背負うもの」なんて格好いい事言っちゃって。

 

小太郎君もやる気だし、仕方ないから俺と金時と小太郎君の即興のチームで対応する事になった。茨木と酒呑の二人は武蔵ちゃんと立香ちゃん達の護衛に務めて貰うことにした。二人を丑御前の標的にならないように立ち回ったのだから、それくらいしてもらってもバチは当たらないだろう。

 

 そして始まった鬼ヶ島での決戦。着ている礼装の事もあって気分は劇場版のDB、金時はバイクを取り出し、小太郎君は分身し、俺は界王拳を使って丑御前と戦った。

 

結果を言えば戦いは俺達の圧勝だった。如何に丑御前と言えど元はサーヴァント、ロマニは魔神柱クラスの天災と言っていたが、途中段階とはいえ100倍の重力を克服しつつある自分と手の内を知り尽くしている金時相手に勝てる道理はない。最後は金時の手を汚さないように俺が見よう見まねのソウルパニッシャーで止めを差す事になった。

 

丑御前を退き、正気を取り戻した頼光公は自分達に謝罪しながら消滅。顕れた聖杯を回収し、鬼ヶ島という特異点は修復された。

 

 その際に武蔵ちゃんがいつか自分もそう言ったものを断ち切れる剣士になると息巻いて消えていったから、恐らくは元の時代に戻ったのだろう。

 

恐らくは彼女のここでの記憶も元の時代に戻った事で失われるだろうが………まぁ、その方が彼女の為だろう。下手な先入観は彼女の今後の人生にどんな影響が出るか分からないしね。少し寂しい気もするけど、これでいいのだ。

 

………しかし母親か。全てに決着が付いて自分も元の世界に戻ったら、墓参りに行こうかな。

 

 その後、この特異点の縁でカルデアに頼光公も召喚される事になるのだが、なんか自分を見掛ける度にあれこれ世話を焼こうとしてくる。

 

酒呑童子や茨木童子には生前の因縁もあって殺伐とした雰囲気なのは相変わらずなのに、何故か自分には母として───と言って世話を焼いてくる。立香ちゃんにも同様の反応しているみたいだが、自分に対してはなんというか、それだけじゃない気がする。

 

どちらかと言えば、金時に対する対応に近い感じがする。何かと世話を焼いてくれる頼光公は優しくてイイ人なんだろうけど………その、距離感が近いッス。

 

流石に重力室には来ないけど、最近では避難させて欲しいと金時が良く遊びに来るようになった。

 

いや、お前が何とかしろよ。お前の上司兼親代わりでしょうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………何だろう。すごい夢を見ていた気がする」

 

「どうしたクソ餓鬼、まだ寝惚けてやがるのか?」

 

「………なぁ、クソ親父殿。人って悪いモノを祓ったりする力を持ってたりするのか?」

 

「あぁ? なんだ急に」

 

「例えば虹色の光が人の手から出てきて、悪いモノに取り憑かれた人にぶつけると、パァッと祓ったりするのかって話」

 

「────何を言うかと思えば、人間にそんな真似出来るわけねぇだろ。それが出来るのは「  」を切れる正真正銘の剣人か……或いは」

 

「或いは?」

 

「………神仏の類いだろうよ」

 

「………そっか、えへへ」

 

「今度はニヤニヤしやがって気持ち悪ぃ、一体なにが言いてぇんだ」

 

「いや? 私のお師匠は凄い人だったんだなぁって………」

 

「あぁ師匠? テメェ如きに? ハッ、物好きな奴もいるもんだな」

 

(「  」を切る。私にはそれがどういう事なのかてんで分からないけど、師匠には出来たんだ。何だか、少し嬉しいや)

 

 見上げる先にあるのは遥かに遠い空、今はまだ小さい天元の蕾が、近い将来大輪の華を咲かせる事になるのは────まだ少し、遠い未来の話。

 

 

 





と言うわけで、今回出てきたのは宮本武蔵(リリィ)でした。

この出会いが今後どういった繋がりになるのか、お楽しみに。

そして、今回で出番を奪われた牛若丸と常陸坊さん、ごめんなさい。

バビロニアで大活躍するから……許してくれるよね?


それでは次回もまた見てボッチノシ



Q.ボッチは本当にソウルパニッシャーが使えたの?

A.昔、彼の師父から自分の望むものを殴れるよう訓練されてきたので、その応用で気の力で使えるようになった模様。

当然ながら、本物とは威力の差が天と地ほど離れているため、参考にはしないように。

Q.今後、ゴジ◯タ礼装は出てくるの?

A.イベントの時に使う模様。


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