『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回原作主人公と初邂逅!


その3

 

 

 

◇月Σ日

 

 桜が舞い散る麗らかな季節、春。新入生達も無事このIS学園に入学し、それぞれ新たな生活をスタートさせていた。

 

本当ならこの日は毎年変わらず、教員の皆さんは忙しそうにしているのだが、今回はその忙しさは度合いが違っていた。

 

“織斑一夏”これまで出現する事のなかった人類初の男性IS適性者。女性にしか扱えなかったISを男が乗れるという事で一躍時の人となった彼は……なんと、織斑先生の弟だという。

 

初代ブリュンヒルデの弟、一夏君までもがISを扱える事に作為的なモノを感じるが、どうあれ彼はこの世界の最重要人物の一人となってしまった。

 

織斑先生は一夏君をISに関わらせるつもりはなかったと話していた。ISとはスポーツ競技に使用される代物だが、世界に対する影響力は限りなく大きい。

 

故に、このIS学園には毎年有能な操縦者を獲得しようと勧誘を試みる国の幹部、或いは企業の偉い人が学園の催しに必ず参列されるという。

 

 女性にしか扱えなかったとされるIS。それが織斑一夏というイレギュラーが加わった事で、世界のパワーバランスは崩れる危険性を孕む事になる。

 

当然、今までISは自分達の物だと考えていた女性達は面白く思わないだろう。過激な思考の持ち主なら一夏君を亡き者にしようと考えたりもするかもしれない。

 

本人がどんな意図を持ってISに搭乗したのかは分からないが、これから一夏君は世界から狙われる立場に置かれてしまった。条約によって外部からの干渉を防ぐ事の出来るIS学園なら、卒業まで手出しされる事はない……と、思いたい。

 

どちらにせよ、今後の彼の人生は大きく変わる事だろう。織斑先生の弟君という事もあるし、自分も暇があれば様子を見てみようと思う。

 

……所で、新入生の女子っていうのは皆あんなにキャーキャー騒ぐ物なのだろうか。外にいる自分まで喧しく思えるとか、相当なものだぞ。

 

 

 

◇月γ日

 

 今日、学園の屋上を掃除していたら偶然一夏君を見かけた。テレビで見るよりも男前な彼は自分を見るなり連れの女の子を放って自分の所に駆け寄ってきた。

 

彼が言うには自分以外に男がいるとは思わず、嬉しくなったと言う。クラスには常に女子の視線が突き刺さり、休み時間も他のクラスの女子が押し掛けて来て堪ったものではないと一夏君が嘆いていた。

 

まぁ、分からなくはないかもしれない。いきなり女子校であるIS学園に叩き込まれた一夏君は異世界に叩き込まれた異邦人に等しい。彼の心境は自分も理解出来るので相談位なら乗ると励ました。

 

目に見えて明るくなった一夏君はその事で自分に礼を言うと時々宿直室に遊びに行きますとだけ言い残し、教室へと戻っていった。

 

思ったより明るく、素直な子だと感心した。あの分なら邪な考えでISに関わった訳ではないだろう。今後は彼に色々協力してみてもいいかもしれない。

 

ISについては自分もまだ分かっていない事が多いので知識面では役に立てないが、身体的能力については色々アドバイスは出来るかもしれない。

 

客観的に見た感じ、一夏君は剣道に携わっているのだろう。足運びや体捌きが剣に関係した動きのソレだったからだ。

 

織斑先生程鍛えている訳ではないので詳しくは分からないが、それでも一度彼の身体的能力を拝見してその上でアドバイスした方がいいのかもしれない。

 

 十蔵さん以外男のいないこのIS学園、同じ男同士仲良くしていきたいものである。

 

ただ、連れの女の子をそのまま放っていくのは少々頂けないと思う。お陰であのポニーテールの少女に睨まれてしまったではないか。

 

もしかして彼女は一夏君に対し何らかの想いを抱いているのだろうか? だとすれば悪いことをしてしまったなぁ。

 

 その後、自分は一年の学生寮に赴き、1025室の壊れた扉の修繕作業に取り掛かった。十蔵さん監視の下で行われた作業は特に問題なく終了した。

 

手際が良いと十蔵さんは褒めてくれたが、自分としてはただ扉を外してはめ込んだりしただけなのでなんだかこそばゆい感じだ。

 

 

 

◇月β日

 

 一夏君がイギリスの代表候補生と決闘する事になった。

 

……うん、訳が分からないね。何がどうなれば昨日今日ISに関わったばかりの子がいきなり代表候補生と勝負をする事になるんだろう。

 

山田先生曰く、クラス代表を決める際に皆が一夏君を推薦し、納得がいかないと怒り心頭のイギリスの子が暴言を吐いたのが事の発端らしい。

 

やれ日本は後進的だとか、やれ猿にそんな役割をさせるなとか、感情的に色々暴発してしまったらしいのだ。

 

……なんだか一夏君よりもそのイギリス代表候補生の子の方が心配になってきた。何故ならIS開発者の篠ノ之束博士は日本出身、IS関係で総本山とされる日本で敵に回す様な発言をかましてくれたのだ。これによる危険性はこの世界に来て日が浅い自分でも理解出来る事だ。

 

もし万が一彼女の発言が録音されていたりしたら大事だ。織斑先生が現在抜き打ちで寮の各部屋に乗り込み持ち物検査を行っている事から、結果が出てくるのは早いだろう。

 

生徒のフォローにまで回る織斑先生、大変だとは思うがどうか頑張って欲しい。

 

 そして肝心な一夏君の方はと言うと……正直、代表候補生に勝てる見込みはかなり低いと思う。技量もそうだが彼はISに対する知識が余りにも足りていない。

 

ISは兵器に分類される代物だ。正しい知識と正しい扱い方を身につけなければいつか手痛いしっぺ返しを受ける事になる。自分の立場を今一理解出来ていない一夏君は、いつか悲惨な事故に巻き込まれてしまうかもしれない。

 

IS学園の数少ない男性をそんな形で失うのは余りにも忍びない。自分も何か手助けが出来ればいいのだが、生憎今の自分はただの用務員。あまり出過ぎた真似は出来ない。

 

このまま対戦日まで不干渉を貫くしかないのか、そう思った時、意外にも十蔵さんからOKを貰った。織斑先生からも贔屓にならない程度で面倒を見て欲しいという事で自分も時間の許す限り一夏君の協力者になることとなった。

 

 早速今日から始めたいと思い、まず始めたのが……幼なじみの箒ちゃんによる剣道の稽古だった。

 

何でも箒ちゃん───篠ノ之箒ちゃんは中学の剣道大会で全国優勝する腕前であり、一夏君とは幼い頃同じ道場で剣道をしていたのだという。

 

全国優勝を果たした箒ちゃんに対し、中学時代は帰宅部だったという一夏君。二人の力量差は歴然で箒ちゃんに終始一方的に叩き込まれる形でその日の特訓は終了した。

 

後から聞いた話によると、一夏は幼い頃両親に捨てられ、織斑先生に育てられてきたという。中学に入りあることがきっかけで一年程一人暮らしを始めたという一夏君は少しでもお姉さんの負担を軽くさせるよう必死にバイトをしていたのだとか。

 

 まだ遊びたい盛りだろうになんて良い子なんだろうか。そりゃ織斑先生も頑張る訳だよ。以前の酒の席でも一夏君のことそれとなく褒めてたし。

 

やれ帰ってくると暖かいご飯と共に笑顔で迎えてくれるのが嬉しいとか、掃除洗濯なんでもこなせる万能主夫だとか、普段は見せないにやけた顔で自慢してきた時は驚いたけれど、そりゃそうなるよ。

 

たった二人の家族。今後一夏君には頑張って欲しいものだ。

 

 ともあれ、自分も参加する事になった一夏君の特訓。自分も知識不足だが、それでも何とか一夏君を支えたいと思う。

 

目指すは打倒セシリア=オルコットちゃん。

 

 

PS

そういえば、前に扉を壊した犯人は箒ちゃんだったらしい。学園の備品は大事にしようねと懇切丁寧にお願いした所、快く承諾してくれた。

 

何度も首を縦に振って二度としないと誓ってくれたし。やはり、人間に対話って必要だよね。

 

 

 

 

 

 

 




Q一夏の特訓に参加させていいの?

A十蔵さんや千冬先生は二人の年が近い事から一夏の良き相談役になって欲しい……
という程度に思っています。



主人公視点

「学校の物は大切に扱ってね?」

箒視点

「次同じ事をしたら……分かってるな?」


次回もまた見てボッチ!

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