『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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ガンブレ2に備えて再びガンブレを始めました。

ガーベラでねぇぇぇ!!


その30

 

 

 

 ────白河修司。年若い年齢でありながらIS最上級の資格を唯一個人で修得した鬼才の人間。当初は総合IS管理資格という企業でしか持ち得ない資格を個人で修得した事で世間を騒がせたが、今回の記者会見で用いられた彼の一言により世界は再び震える事になった。

 

“ISが男女共有化される可能性”現在は女性にしか扱えないとされるIS、常識として、一般知識として知られている世論が根底から覆される事を提示する白河修司の発言に世界は様々な反応を見せた。

 

ある専門家は判断つかないと言葉を濁し、ある評論家は否と、またある批評家は若者の妄言と断じ、夢物語と一蹴した。しかし、どんなに白河修司の言葉を否定しても、彼がこの世界における二人目の男性IS適性者であることは揺るぎない事実である事は変わらない。

 

世界の常識を根底から揺るがした白河修司なる男、彼の者をどうにかしようとあらゆる組織が狙う事になるが、その悉くが失敗に終わった。

 

貴重な男性適性者、本来ならモルモットとして様々な実験に使いたいと外道な事を考える科学者もいるが、彼自身が非常に優秀な技術者である事や、どんな干渉も認められないIS学園に所属している為、国や企業も手を出す事は出来ないとされている。

 

それならばと手段を問わずに強攻策を用いる者達もいたが、いずれも全て失敗。学園に潜入した工作員のその悉くは行方不明者となっている。

 

一体あの学園では何が起きているのか、学園の外で常に監視を行っている様々な国々の政府組織の面々は依然として掴めない修司の存在に一種の不気味さを抱いていた。

 

 他にも、IS委員会から渡されたコアを受け取って何の成果も挙げられていないと一部の女性は修司を強く非難するが、流石に一ヶ月程度でISなど完成する筈もなく、その女性は無茶を言い過ぎだと逆に非難される事になる。

 

しかし、第二の男性IS操縦者が現れた事により一番揺れて、そして憤慨したのは彼女たちだろう。ISによって築かれた“女尊男卑”の社会、これが覆されてしまう可能性を突きつけられた女尊男卑の思想に染められた彼女達は近い将来トンでもない強攻……いや、凶行に乗り出すかもしれない。

 

果たしてその時、白河修司はどのような行動を取るのか、その事も含めて世界は彼の動向に注目するのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

D月β日

 

 記者会見から数日が経って季節も秋に差し掛かってきた今日、自分は用務員と技術者の仕事の両方を何とかこなしていた。

 

午前は用務員として、午後は技術者として活動している自分の生活は毎日が目まぐるしく過ぎて行ったが、それに比例して充実した日々を送っている。

 

それに目まぐるしいと言っても、火星と月からそれぞれオートマトン達を連れてきている為、仕事の方は滞る事なく進んでいる。最初の頃は戸惑った生徒も多かったが、皆オートマトンの可愛いさに心を許し、今では学園の人気者として愛されている。

 

いつまでも人気のない月や火星に置いておくのも忍びないと思い、AIの成長を促す為に連れてきたが……うん、今はそれが正しかったと思っている。

 

最初の頃は学園にいる人の多さにオートマトン達も戸惑っている様子だったが、日が経つに連れて徐々に慣れ始め、今ではすっかり生徒達と打ち解けている。

 

因みにオートマトンを連れてきている合間、火星と月に設置した基地はそれぞれ自分なりのやり方で隠している。火星の方は元々地中深くに建設していた為に見つかる事はなく、月の方も光学迷彩の領域を広く設置した事により肉眼では見えない事になっている。

 

基地のシステムは基本的に落としているし、至る所に自分の生体データがないと動かせない仕組みとなっており、無理に稼働させようとすると基地自体が爆発する仕組みとなっている。オートマトン達が一生懸命に作り上げた基地だが、悪意を持った人間に好き勝手使われるよりはマシと思い、このシステムを導入した。

 

 ───さて、話を戻して……AIの方も環境が劇的に変わった為に判断力が向上したのか、現在は掃除や窓拭き、ゴミ捨てまで用務員の仕事をこなしている。これでは自分の仕事が無くなってしまうと十蔵さんは嘆いていたが、そう言う割には嬉しそうにしていた。

 

学園の方もオートマトンの存在は受け入れて貰えたし、今度は懐の深い学園の為に一肌脱ごうと思う。まずは前々から懸念されていた学園の防衛システムについてだが、織斑先生達の助言もあって大体形にすることが出来た。

 

まずは外側への防衛機構、先のゴーレム達の襲撃で学園の防衛力が低いと判断した自分は、学園内にあるISコアを用いて学園全体を覆う遮断シールドの構築案を考えている。

 

これは学園内にあるISを連結させる事で学園の敷地内をシールドバリアで覆うモノであり、これにより外側からの攻撃をある程度は防げるという構成だ。勿論これは言う程簡単ではないし、この防衛システムを作るためにはまず敷地内にバリアを展開させる装置が必要になってくる。

 

バリア装置の方は此方で何とかなるが、問題はISの方だ。現在アリカちゃんがコアネットワークで学園内の訓練機に搭載されたコアに赴き、一つずつ話をしていて、彼女達全員と話を終えるのは少し時間が掛かると言っていた。

 

 コア同士を連結させる事によって学園を覆う強力なシールドバリア、理論だけ言えばその強度は核を撃たれても耐えきれる代物であり、敷地内にいる生徒達の安全とされるモノ。

 

しかし、この案には当然の如く欠陥が存在している。連結させて同調する事により強固になるシールドバリアだが、それを可能とするにはコア同士による意志疎通が必要となり、コア達が一致団結しなければこの防衛システムは成り立たないのだ。その為にアリカちゃんが現在必死にコア内部にいるA子ちゃん(仮)達を説得しているが……先程も言ったようにまだ時間が掛かりそうである。

 

まだコアの事は誰も話していない今、これは慎重に扱うべき案件だ。織斑先生辺りに相談してみようと思うが……織斑先生も修学旅行に備えているのか、最近忙しそうだからなぁ。あまり負担をかけたくはない。

 

記者会見の時もそうだったが、自分はISコアの秘密について明確な事は一切話していない。いやね、ここの世界の連中──特に科学者の連中は裏で結構ゲスな事を考えているっぽくて、コアの解析に余念がないっぽいんだよね。前に一夏君からも聞いたけど、彼の場合は自分がISが動かせると知られて数日後に解体させてくれというバカな事を言う輩が出てきたみたいなんだよね。

 

そんな連中にコアの秘密を話してみろ、絶対善からぬ考えを抱きながら善からぬ手段で持って実行し、ISを無理矢理支配下に置いたりするぞ絶対。賭けても良い。

 

そんな訳で現在ISの女子校説は未だ世間に発表してはいない。記者会見ではISの男女共有化に関する可能性と初期化する事によるリスクの関連性を少しばかり話しただけだ。

 

この学園でもその事について話しているのは織斑先生と山田先生、あとは信用の出来る人達に限られている。アリカちゃんもそう言った人達以外の所では喋らないよう注意している。窮屈で申し訳ないと思ったが、アリカちゃんは笑顔一つで了承してくれた。

代わりと言ってはなんだが、待機状態の時の彼女にはある程度の自由を約束している。改修する時とかは呼んでいるが、それ以外の時は基本的に不干渉で通っている。

 

その所為か空を自由に飛んでいたり、街までいって人間を観察したりするなど、彼女なりに楽しい事を見つけている。時々渡り鳥の群と遭遇して一緒に空を飛んでいる時はとても楽しいと言っていた。

 

 ────ISコアというのは適合者と共に成長するモノ、ならば余計な手出しをせず、ゆっくりと変革を促せばいいのだ。白式のコアの娘やアリカちゃんもそうする事で男性を理解しようとしてくれている訳だし、慌てずに進んでいけばいい。

 

勿論、ISが男女共有化されるように自分も頑張っていこうと思う。篠ノ之博士も今の世界に変わって欲しいという思いを抱いていると思うから。

 

と、何だかだいぶ話がズレてしまったが、アリカちゃんが他のコアにいる娘達と話を終えるまでこの案は保留と言う事にしておこうと思う。

 

……そう言えば、織斑先生に白騎士について話をしたかったのだが、これまで忙しい日々だったからつい聞き逃していた。

 

まぁ、さっきも書いたけど最近の織斑先生は修学旅行の準備やらで忙しそうだから、話を聞くのはもう少し後にしてもいいかな。

 

 

 

D月F日

 

 今日、織斑君を始めとした専用機持ちの皆に蒼鴉のデータ取りに付き合って貰った。付き合って貰ったと言っても別に模擬戦とかした訳じゃない。

 

部分展開とかISを操縦する際に必要な技術、そう言ったモノを学ぶ為に今日は皆をアリーナに呼ばせて貰った。一応頭では理解しているが、こういった訓練は体に直接叩き込んだ方が理解が早いし、自分の操縦技術が常に蒼鴉にアップロードされ、アリカちゃんもそのデータを下に学習し、成長を促す事に繋がってくるのだ。

 

けれど、ただ手伝うだけでは皆も割に合わないだろうから、操縦技術を教えてくれた後、模擬戦をする事で蒼鴉のデータを取らせて上げる事にした。

 

本当は非常時以外蒼鴉を戦闘に使用したくはないが、此方から頼んでいる以上ある程度の譲歩は必要だ。まだまだ完成には届かない蒼鴉だが、この機体のデータによってセシリアちゃん達の国のIS開発に少しでも役立てるなら幸いだ。

 

───と思っていたのだけれど、どうやら皆今日は体調が悪いらしく、一夏君と簪ちゃん以外の子達は揃って辞退されてしまった。

 

体調が悪いのなら無理する必要はないのに……これも国家代表候補生の義務だと言ってくれるセシリアちゃん達は本当に良い子なんだなと改めて実感した。何も見返りはないのに協力的なセシリアちゃん達、彼女達を代表候補生にした国の政府の人は人の見る目があるのだと思う。

 

そんな訳で始まった専用機持ち達によるIS操縦技術。基本的には皆の見せる軌道を再現するというやり方だが、予想以上に皆の見せるIS操縦が見事だった為、自分も再現にさほど苦労する事は無かった。

 

超高速飛行による姿勢制御といった戦闘姿勢はグランゾンを通してこれまで何度も行ってきたからその辺りは問題ないが、ISとしての操縦技術は初心者だった為、皆が見せてくれた飛行技術は物凄く為になった。

 

これならZEXISの戦闘モーションも幾つか再現が可能かもしれない。……いや、もしかしたらISの操縦飛行とZEXISの戦闘モーションを融合させて新たな機動、旋回技術も生まれるかもしれない。

 

例えば、瞬時加速からのバルキリーの旋回技術とか、デスティニーの回避モーションからのアクセル・ターンとか、他にも様々な動きが生まれてくるかもしれない。

 

操縦技術のモーションが増えればそれだけ宇宙での活動範囲が広くなる。ISの新たな発見に自分はテンションが上がりまくりである。付き合ってくれた一夏君達には本当に感謝しても足りない。

 

 ただ、その後ちょっとした問題が起こった。厳密に言えば問題ではない話だが、自分が一夏君と簪ちゃんと模擬戦しようとした時に、意外な人物が待ったを掛けてきたのだ。

 

その人物の名は更識楯無。なんでも自分の蒼鴉のデータ取りに生徒会長自ら付き合ってあげると言われたのだ。

 

生徒会長やロシア代表、そして更識家の当主として色々忙しい筈なのに、ワザワザ協力を申し出てくれた楯無ちゃん。IS学園の中でも随一の実力を持つ彼女なら操縦技術の腕前も卓越されたものだろうと思い、これを受けた。

 

最初は付き合ってくれた一夏君達に申し訳ないと思ったけれど、セシリアちゃん達から気にしないで下さいと言われたので、自分はこの厚意に甘える事にした。しかし、自分から呼びつけておいてこの対応は剰りにも失礼なので、今度セシリアちゃん達には何らかの形でお詫びしたいと思う。

 

 ────しかし、楯無ちゃんも随分と回りくどい事をするものだ。ISの操縦技術を見せてくれるだけで良かったのに向こうは日時を告げるだけでアリーナから出て行っちゃうし、やっぱり生徒会長やお家の仕事が忙しかったりするのだろうか。

 

とはいえ、折角学園最強の人が自分の為に協力を申し出てくれたのだ。定められた日時の日まで自分はゆっくりと楽しみながら待ち望む事にしよう。

 

何せ自分はISを稼働させて20時間にも満たない時間しか動かせていないのだ。代表である楯無ちゃんのIS操縦技術は今後の自分に多くの事を学ばせてくれる事だろう。

 

その日に備えて、蒼鴉の整備も淡々と進めておく事にしようと思う。

 

 ………それにしても、やっぱ蒼鴉の支援機にする予定のオーライザーもISコアが必要になってくるなぁ。

 

二つのISコアとツインドライブシステムによる力は未知数だが、理論だけなら安定された運用と更なる出力の向上も見込める筈。

 

政府からどうにかしてもう一個貰えないか申請してみようかな。でもなぁ、まだ結果を出せてないし、通るのは無理っぽいよね。

 

独学でなんとかできるかなぁ? それとも、博士に相談してみるか? 『それ位自分で考えなさい』と一蹴にされそうな気もするけど。

 

兎も角、焦らずに頑張っていこうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




天獄篇も発表されたし、そろそろ時獄篇を書くべきか。



主人公視点
主人公「生徒会長なのに自分の為に時間を割いてくれてありがとう」

楯無視点
主人公「君が私のウォーミングアップに付き合ってくれるのかな?」
楯無「上等よ、ウォーミングアップで終わらせてあげるわ!」
主人公「よろしく」

的な感じ。(笑)

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