『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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お待たせしました。


その32

 

 

D月@日

 

 女性権利団体の人達の襲撃を受けて三日、無事に弾君を家へと送り届けた自分は再び弾君達のいる五反田家に赴いた。理由は詳しい事情を彼の家族に話す為にある。

 

幾ら弾君を怪我なく送り届けたとはいえ、相手は真っ昼間から人を襲う集団だ。自分に巻き込まれた形になったとはいえ、今回の件で弾君が狙われる可能性もゼロではない。家に彼を送り届けた後、すぐに織斑先生に連絡を入れて政府に話を通し、弾君の家の周りを警護してもらった。

 

 その後、女性権利団体の人達や政府の人達に話をしていた為に碌に事情を説明できず、今まで放置する形となってしまっていた。

 

弾君や五反田家の人達には本当に申し訳ないことをした。特に厳さんは食堂の店主という立場もあり、自分の説明にも終始表情をしかめていた。

 

まぁそれも当然だ。幾ら数人のSPが影ながら見守る程度の警護だからって四六時中監視されてたら誰だって気が付く、厳さんからしたら営業妨害に等しい行為だろう。

 

本当はもっと大々的に人員を動かして欲しかったけれど、諸々の事情があって数人程度しか動かせなかったのはキツい、弾君は一夏君の親友でもあるのだから、安全面はしっかりして欲しかったんだけどなぁ。

 

 どうやら女性権利団体の連中は自分が思っていた以上に大きな組織らしく、あの日起きた昼間の事件は全て無かった事にされている。各メディアから政府中枢に至るまでとあらゆる機関に根深く存在し、裏側で色々手引きしているらしいのだ。今回の件について問い質しても彼女達は知らぬ存ぜぬの一点張りで此方の話をまるで聞こうともしなかった。

 

しかも、連中はIS学園にもある程度の発言権があるらしく、あまりしつこいと学園に圧力を掛けるぞと遠回しの脅迫をしてきやがった。

 

何者からも干渉される事は条約で禁止されている筈なのに……もう、権利団体というより一種のカルト教に思えてしまっていた。最終的には何も起きていないのだから五反田家を警護する正当性がない。

 

連中の代表格の女性は自分にそう言い切ったのだ。これには流石の自分もプッツンしそうだったが、ここでキレては向こうの思う壺と思い、情けないと思うもグッと堪えることにした。

 

けれど、それだけで済ませるには自分は兎も角として五反田家の皆さんとしては納得がいかない所があるだろうと思い、巻き込んだ事に対するせめてもの償いとしてアリカちゃんを監視役として五反田家の皆さんの所へ送った。

 

並のISならばアリカちゃんだけでも対応できるし、万が一連中が強行手段をとっても通信で自分に連絡が来るよう教えたし、此方でもある程度の状況把握が出来るようにしてある。何よりも弾君と触れ、話をしたことで自分や一夏君以外の男性についてある程度理解したアリカちゃんは限定的でありながら他の男性とのISの使用制限を解除できる様になっている。

 

いざというときは弾君が蒼鴉の使用者になって貰うつもりだったが……幸いそう言った出来事はなく、自分としてはホッとしていたりする。

 

 ともあれ、五反田家の人達に多大な迷惑を掛けてしまった自分は頭を下げて非礼を詫びてこれからも監視と警護を継続するというお願いと事情説明を行った。

 

幸いにも五反田家の皆さんは人柄の良い人達ばかりで、戸惑いながらも自分の説得に応じてくれた。厳さんもSPの人達に関しては店の料理を食べてくれたり、時々手伝いをしてくれるなら何も言うことはないと聞き入れてくれた。

 

SPの人達にも自分がお願いをすると意外にも聞いてくれた。彼等も自分の仕事に対して誇りを持っているようで、任せて下さいと張り切ってくれていた。女性権利団体というふざけた連中もいれば、こうして助け合ってくれる人もまた存在している。トレーズさんみたいな事を言うつもりはないが、人間の世の中というのはままならなくも暖かみのあるものだとシミジミ思う自分でした。

 

 そうそう、あの日自分達に襲いかかってきた女性権利団体の刺客達が有していたIS、そのコアは無事抜き取ったのでコレを使用してオーライザーの作成に入ろうと思う。

 

向こうから何も知らないと言っていたし、この三つのコアは自分が散歩していたら偶然見つけたという事にしておこう。その方があちらさんにとっても都合の良い話だろうしね。返還を求めてきた場合は何故自分が持っているのかと逆に問い詰めればいいだけだし。

 

それでも難癖付けてきた場合は……まぁ、その時は本気で考える事にしよう。

 

 しかし、ゴーレム襲撃の時の13個のコアと今回の三個、更に海に沈んだコアも回収中だから今後はもっと増える事になるな。アリカちゃんは姉妹が増えて嬉しいと喜んでくれていたけれど……日本政府の皆さんは大変だろうなぁ。一応あそこは学園の敷地内の範囲らしくて今の所余所の勢力が干渉してくる様子はないが、早いところ全部回収してしまおうと思う。

 

それにしても弾君か。一夏君同様、彼も好青年みたいだし、今度個人的に何らかのお詫びをした方がいいかもしれない。自分の身を守ると言う意味でも何か自衛装備でも作ってみようかな。

 

弾君はシューティングゲームが得意みたいだし、それをコンセプトとした装備……となるとケルディム辺りの装備がいいかな。まぁ、流石に今すぐは無理だから彼に対する非礼の詫びは今後時間のある時にチョクチョク進めていこうと思う。

 

 さて、明日も早い事だし、そろそろ眠るとしよう。明日は道端に落ちていた三つのISについて調べなければいけないから。

 

襲い掛かって来た女性達? さぁ? 自分は何の事やら……ただ、そろそろ寒くなってくる季節だし、この時期の太平洋横断は中々気骨のある人達だなとだけ言っておく。

 

 しかし、織斑先生達にも申し訳無い事をした。自分が不甲斐ない所為で先生方にも迷惑を掛けたし、十蔵さんにも余計な気苦労を与えてしまった。こんな事がもう起こらないよう、女性権利団体の人達とは近い内にケリを付けておこうと思う。

 

 そう言えば、自分が拉致された所から学園に戻ってくる時、弾君を家に送った後一人の少女が自分に声を掛けてきたんだよね。月明かりに照らされてラウラちゃんみたいに綺麗で長い銀髪が印象的だったから今も覚えている。

 

その時の自分は襲われた事もあり少しばかり気が張りつめていたから名前以外覚えていないのだが、確か……クロエちゃんだったかな? 彼女にも悪いことをしたなぁ。一言だけとはいえ思いっきり怒りをぶつけちゃった訳だし。

 

何だか彼女、自分に用があるみたいだし、今度会う時があればちゃんと謝ろうと思う。

 

 

 

 

 

D月(・д・)日

 

 今日、織斑先生から護衛につける人間について幾つか話をされた。何でも先の拉致事件で深刻な状況と考えている一部の先生方が自分を警護する人間を付けたらどうかと意見を出している様なのだ。

 

……もうね、申し訳なくて頭が上がらないよね。心配掛けた事もそうだが、こうして自分の事を気に掛けてくれている学園の皆にはどんなに言葉を尽くしても足りない様な気がする。

 

織斑先生の気遣いは普通に嬉しいし、有り難い気持ちも当然あるのだけれど、その心配は一夏君に向けて欲しいと言い自分は織斑先生の提案をやんわりと断る事にした。

 

今回の拉致事件……実際は何も起こらなかったと闇に葬り去られたが、それでも女性権利団体の連中からしたら面白くない話みたいだし、今後は八つ当たり気味で一夏君まで狙う可能性もある。だから彼を鍛える意味でも腕利きの人間を彼の側に置いておくといいだろう。

 

特に生徒会長である楯無ちゃん。彼女ならば一夏君の良き指導者になれるし、彼女の影響を受けて他の生徒達の良い刺激にもなるだろう。ラウラちゃんも楯無ちゃんの腕前を賞賛していたし、簪ちゃんもISの操縦指導は大したモノだと素直に認めていたのだから、期待も自然と大きくなる。

 

自分はほら、こう見えて破界事変や再世戦争をどうにか生き抜いて来たし、その気になればワームホールで脱出なり逆襲するなり出来るから心配はいらない。いざという時になれば蒼のカリスマにでもなってグランゾンを出せば良いだけだし、一人でも大抵の状況はどうとでもなる。

 

というか、一人でないとその手段が使えないんだよね。他の人と一緒だと余計なリスクを負いかねないし……。

 

────あれ? もしかして俺、自分からボッチになりに行ってるんじゃ……。

 

……………。

 

 ま、まぁそんな訳でひとまず護衛の話は断る事にしたのだし、暫くは外出を控えて学園内で大人しくしておこうと思う。

 

自分の身を案じてくれて護衛の話を出してくれた先生方には後日食堂で自分の手料理を振る舞う事で謝罪と感謝の言葉を送りたいと思う。

 

 

 

D月(っ´ω`c)日

 

 今日、散歩の途中で手に入れたISコアを解析していた所、アリカちゃんと同じく意志を持った電子生命体の少女と遭遇した。

 

名前はアミカちゃん。アリカちゃんと同様AIの頭文字からとってこの名前を付ける事にした彼女はアリカちゃんとは違い、おっとりした天然っぽい女の子だった。

 

目覚めて間もない所為でその時は話の殆どは聞けなかったが、どうやらアリカちゃんとは事前にコアネットワークで知り合い、ある程度自分の事について聞いていたらしくて自分に協力すると自ら申し出てくれたのだ。

 

 そしてアミカちゃんが完全に覚醒した後、彼女をオーライザーに搭載させるか否かアリカちゃんを交えて話をしてみたら、なんと即答で了承を貰えた。

 

何でも前のISに搭載されていた頃は乱暴に扱われていた事をうろ覚えながら記憶しているらしく、戦闘に関与しない自身の待遇に満足し、自分の計画に協力してくれるそうなのだ。

 

しかもアリカちゃんと協力してコアネットワークを通して学園内のコアに男性について教えてくれそうなので、そちらの方も大変助かる事になった。

 

ただ、学園の所有物を勝手に使用するのは流石に拙いので織斑先生を初めとした先生方にも事情を説明して学園の訓練機、打鉄とラファールに搭載されたコアのネットワークを介した接触の話をする事にした。

 

織斑先生や山田先生といった一部の先生にしか伝わっていなかったISコアのネットワーク事情。最初の内は納得していなかったのか殆どの先生達が眉間に皺を寄せていたが、自分が懸命に説明している内に皆理解してくれて結果的には許可を頂く事に成功した。

 

ただ、訓練機を使用する際は放課後に限り、その時生徒達とぶつかった時は自分達で話し合って決めるよう条件を付けられた。

 

別に自分としては構わない。寧ろ、学園の所有物を自分にも使わせてくれた事に対して嬉しさと罪悪感のある自分としては万々歳である。アミカちゃんもこれからオーライザーの制作に協力してもらう事になるし、訓練機のネットワークに接触する時は諸々片付けた後になりそうだ。

 

 しかし、毎回織斑先生にはお世話になっているし、そろそろ自分も何かしらお返しを考えた方がいいのかもしれない。前の時のような他の先生方に振る舞った手料理も良いかもしれないが、織斑先生には特に負担を掛けさせてしまっているみたいだし、もっと手の込んだ料理を振る舞うしかないのか。

 

無論山田先生も、最近また疲れた顔をする時が多いみたいだし、何か元気の出るモノを差し上げた方がいいのかもしれないな。

 

 ………そう言えば、一夏君てば誕生日を既に迎えているんだよね。ここの所忙しくて彼の訓練にも顔を出せていなかったし、プレゼントを渡す序でに彼の成長ぶりを見に行こうと思う。

 

学園の防衛システムもネットワーク面では完成したし、息抜きも兼ねて明日はゆっくり休んでもいいかもしれない。

 

 

 

 

 




Q主人公はクリスマスどう過ごすの?
Aリモネシアでのんびり過ごすのか。
それとも新日本で紅蓮の少女に追いかけ回されるのか。
はたまたスナイパーボインに狙い撃ちされるのか。
もしかして幼女元皇帝と付き添って中華連邦に狙われるのか。
なんだかんだで某黒い兄妹の末っ子のマネージャーとして働くのか。
結局ボッチで過ごすのか

それは誰にも分からない。



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