『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回はやや大人しめ


その33

 

D月(゜Д゜;)日

 

 修学旅行まであと一ヶ月を切り、一年生の皆も修学旅行を期待で胸を膨らませていた今日、自分の目標の一つである学園の防衛システムが遂に完成した。尤も、ネットワーク等の電子面は兎も角として防衛の為のバリアシステムの方は借りられる訓練機に限りがある為に稼働範囲は限定的なモノとなっているのだけどね。

 

訓練機に搭載されたISコア同士による連結と、その相乗効果によって生まれるバリアフィールドシステム。本当なら完成までもう少し時間が掛かると思われていたが、電子生命体のアミカちゃんが覚醒した事が大きな起因となっている。

 

アリカちゃんだけでは他の訓練機への対話する期間は長かったのだが、アミカちゃんという新たな因子が対話に加わった事により、説得力が大いに強まって訓練機のISコアも協力的になってくれたのだという。

 

 学園側から借りた訓練機は三つ、アリーナに使用許可を貰い早速試験運転を行った所……見事に防衛としての機能を発揮させる事に成功した。

 

ISコアの連結させた事による相乗効果を受けたシールドバリアの強度は中々で、一年の専用機持ちの子達が総掛かりで攻撃してもビクともせず、またシールドエネルギーの方も三機がそれぞれ補い合っている為、消費量の方も最低限のモノとなっている。

 

唯一例外となっているのが一夏君の専用機、白式に搭載されている雪片弐型のシールド無効化攻撃なのだが、ラウラちゃんの専用機によってその問題は解消された。

 

ラウラちゃんのIS、シュヴァルツェア・レーゲンにはアクティブ・イナーシャル・キャンセラー───通称AIC、または慣性停止結界と呼ばれ、これは元々ISの基本システムであるPICを発展させたもので、簡単に言えば物体が運動する際に生じる慣性を停止させる能力で、これによりミサイルやマシンガンといった実弾系の武装に対して絶対的な効力を発揮する。

 

慣性を止められるのでその効力はISだけではなく全ての事象に適応されるし、一度捕まれば蒼鴉ですら抜け出すことは難しいだろう。欠点があるとすれば停止結界の発動中は身動きが取れない事と光学兵器には弱いという事、それと停止させる対象が一つだけというものだが、それは乗り手の腕と機体の出力次第でどうとでもなる為、あまり問題にはならないと考えている。

 

 そんなシュヴァルツェア・レーゲンを組み込んでの稼働実験、それによって齎した結果は中々面白いモノとなった。これまで攻撃を防ぐだけだった三機のシールドバリア、そこへラウラちゃんのISが加わった事によりある変化が起きたのだ。

 

僅かではあるもののISのシールドバリアの中からAIC、即ち停止結界と同様の性質をもったエネルギー数値を検出されたのだ、

 

原因は恐らくシュヴァルツェア・レーゲンという新たな情報を得て電子生命体が学習し、AICの再現をISを通して試みたと考えられる。

 

AICはPICの発展型、基本構造が似ていると思い、コア内部にいる彼女達がラウラちゃんの専用機の真似を試みたのだと思われる。

 

今回の試験運転で得られた結果と情報を多く得られた。ラウラちゃんの助力のお陰で今後自分の想定する防衛システムは大きく変わる事になるが……まぁ、これもISの更なる発展を思えば安いもの、オートマトン達の力を借りながらやり遂げてみようと思う。

 

理想的な構造はAIC、シールドバリア、そして絶対防御による三段階層の防御壁。今回の件で絶対防御の稼働限界時間も大幅に引き延ばせる可能性も出て来たし、本当に今回の試験は色々為になった。

 

ただ、その為に三機の訓練機に少しばかり不具合が起きた。どうやらラウラちゃんの専用機と無理に結合しようという意志が働き、三機ともオーバーブロウ───過剰出力によるちょっとした熱暴走を起こさせてしまった。

 

アミカちゃんとアリカちゃんが言うには三機──いや、この場合は三人か──が、目を回して気絶しているだけで大事はないと言っていたが、自分は少しばかりハシャぎすぎたなと猛省する事にする。

 

彼女達は電子“生命体”だ。アリカちゃん達のようにコア内部でも怒ったり笑ったりしている。自分が行っている実験は人体実験と変わりないのだ。

 

故に、今度はもっと安全性を高めていこうと思う。使用する人間に対してだけではなく、コア内部に存在している彼女達の事も考えた上で……シュウ博士からは甘いと言われたが、自分はこのスタンスを崩さないようにいこうと思う。

 

 そういえば、ラウラちゃんのAICってドイツが開発したシステムなんだよな。今度ロジャーさんの所へAICの使用……いや、応用か? それの許可を貰いに行った方がいいかもしれない。

 

ラウラちゃんからは許可を貰ったけれど、やはり国家の代表候補生なのだから国家元首にも説明をした方がいいだろう。筋を通す的な意味も含めて。

 

それに、あれからドイツ国内では結構揺れているみたいだし、そこら辺の事も含めて話を聞きにいってみようと思う。一応自分が原因だしね、そういう意味でも話をした方がいいだろう。ロジャーさん自身とも話をしてみたかったし。

 

新たに生まれた今後の課題、そこにやりがいを感じながら今日はこれで終わりにする。

 

 

 

V月(´Д`)日

 

 それは数日前、用務員の仕事がお休みの為に午前中から蒼鴉のデータ取りとオーライザーの制作作業に入っていた時、途中で一夏君の来訪によって作業は中断される事になった。

 

何でも一夏君のISは度重なる戦闘によってダメージが蓄積されているらしく、あまり良くない状態らしいのだ。このままでは大事に至る可能性が出てくる為、急遽自分の所にメンテナンスを頼む事にしたのだという。

 

自分としてはいっこうに構わないのだが、一夏君の白式は倉持技研のモノだ。自ら誘いを断っておきながら余所様のISを勝手に触れるのは抵抗があったが、一夏君が言うには、そこら辺は織斑先生が話を付けてくれたらしく、自分が白式のメンテナンスをしても構わないという許可が予め出ていたのだという。

 

恐らくは自分がどの程度ISに詳しいかお手並みを拝見させて貰う的な思惑が絡んでいるのだろう。資格を取ったりコアを頂いたりしているが、未だにISの発表とかしていない事が一部の人間に反感を抱かせているのだろう。

 

謂わば、今回のコレは一夏君の機体の整備を通して自分の技術者としての腕前を確かめる抜き打ちテストみたいなものだ。

 

だったら全力で挑むしかないなと自分は意気込み、オーライザーの作業は一時中断にして自分は白式の整備をする事にした。

 

 急な事だった為に突貫作業となってしまったが、それでも集中して整備を行った為、かなりの出来映えであると自負している。

 

外装をすべて外しての徹底整備、日数にして約四日程の時間だが、オートマトン達やアリカちゃん達の協力を得て、最高の仕上がりとなった白式。

 

それに、今回はサプライズとしてあるモノを一夏君の白式に仕込む事が出来た。コアとの適合率も問題ないし、稼働する事も出来るだろう。

 

“サイコフレーム”月にいた頃に偶然の産物として生まれたソレはISのまるまる一機分だけ精製する事に成功した。このサイコフレームなら一夏君の白式も最大限の……いや、それ以上の性能を誇る事が出来るだろう。

 

かなり遅れた一夏君への誕生日プレゼント。その説明は一夏君がサイコフレームを発現させた時に話す事にしよう。

 

 ……あー、ダメだ眠い。流石に丸四日一睡もしないのは流石に堪える。これまでもあまり睡眠時間は取らなかったし、コレを気に少し眠ろうと思う。

 

まだ夜の10時だし、明日の朝までゆっくり眠ろうと思う。

 

おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────私は、篠ノ之束様の人形。あの人に命を救われた時から私はあの人の為にすべてを費やしてきた。

 

あの人の為なら単独で各国の主要基地に潜入し、破壊工作もしよう。あの人の役に立てるのであれば今水面下で動いている亡国企業にも特攻しよう。ありとあらゆる存在があの人の前に立ちふさがるのならば、私はそれを破壊する爆弾にもなろう。

 

………だけれど、アイツはダメだ。白河修司。あの男は私たちの理解の外側にいる存在だ。紫炎の様に揺れる頭髪、白衣の下から見える肉体は幾つもの死地を潜り抜けてきた戦士のソレ。

 

だが、奴を奴たらしめているのはそんなモノじゃない。奴の背後にいる“モノ”それこそが奴の本性であり奴の真の姿だ。

 

アレの前では現存する全ての兵器は無力となる。核も、ISも、奴が出て来た瞬間全てが無価値となる。

 

……束様はアレの存在を知っているのだろうか。もし全てを知っていてアレと敵対するのなら、正直私程度では役に立てる自信がない。

 

アレは魔なる者だ。アレも、そしてアレを使役する白河修司も、揃って人の枠組みから外れた人外の者達だ。

 

幾ら女性権利団体の連中を焚きつけても意味が無かった訳だ。あんな化け物、逆立ちしたって勝てるものではない。私の生体ISを通して知ったあの光景、私は生涯忘れる事はないだろう。

 

 私に出来ることはただ一つ、束様の為の刃や楯、爆弾になるのではなく、一日も早くあの化け物がどこか遠くへ行ってくれる事を……願うばかりである。

 

 

 




Q主人公はこの世界に来てから大体睡眠時間はどれくらいなの?
織斑千冬:クラス担任やら寮長、そして主人公のお願いも聞いたりするので一日平均4時間未満
山田真耶:副担任なので千冬同様仕事に追われ、時々主人公の無茶ぶりにも対応しなくてはならないので一日平均五時間弱
白河修司:自作のISの整備及び完成、学園の防衛システム、オートマトンの量産と配備、他にもグランゾンの定期整備や月、火星基地の管理やその他諸々と用務員の仕事を含めて大体一時間。
多くて二時間。寝ない日もザラにある。
但し全員休みの日は除く。


今回も忙しくて返信出来そうにありません。
本当に申し訳ない。


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