『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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ほのぼのって書いてて和みますよね。


その4

◇月J日

 

 一夏君がイギリスの代表候補生に決闘を挑む事になって早一週間、いよいよ決戦の日がやってきた。箒ちゃんや自分も一夏君を勝たせるようあれこれ助言をしたりしたのだけれど、やはりISというモノをイマイチ理解出来ていない一夏君では理論的特訓を施す事はなかなか出来なかった。

 

箒ちゃんも剣の手合いという事で一夏君の為にアレコレ尽力してくれたみたいだけど、やはり相手が代表候補生というだけあって不安は拭えないようだ。

 

代表候補生というのはその名の通り、その国を代表するIS操縦者の候補生達の事だ。過酷な審査や試験を乗り越え、国家代表の一歩手前にまで登り詰めた強者達。ISの専用機を持ち、錬磨を絶やさないできた彼女たちはISに関しては紛れもなくエリートの存在だろう。

 

そんな代表候補生の一人であるセシリア=オルコットちゃんは紛れもなく強敵だ。彼女の価値観や考え方は兎も角、一夏君の勝率は限りなくゼロに近いだろう。

 

自分も力になれれば良かったのだが、生憎この世界に来て自分はまだ日が浅い。ISのコアネットワークや量子変換機能については未だ分からない点がある為、下手に口出す事は出来なかった。

 

精々訓練機である打鉄の使用許可の申請や箒ちゃんとの剣の打ち合いの際にチョロッと口出しする程度である。日本政府から専用機が渡されると一夏君から聞かされたが、その合間にISに触れないというのは余りにハンデが大きい、許可の降りた機体で練習試合をさせたりしたのだが、やはり時間が足りないのが痛かった。結局満足な手助けも出来ず、一夏君を送り出してしまう事となった。

 

 もうじきセシリアちゃんとの決闘が始まる。現在自分は休憩中の為、宿直室の映像端末から試合の行方を見守ろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────勝負の結末は結果的に言えば試合は一夏君の敗北に終わった。一夏君も良い具合に代表候補生と渡り合えていたのだが、あと一歩の所で負けてしまった。

 

後から箒ちゃんから聞いた話によると、何でも一夏君の専用ISである“白式”の武装である雪片弐型は当たると一撃必殺の威力を誇るのだが、ISの防御壁であるシールドエネルギーを大量に消費してしまう欠点の存在する使い勝手の難しい武装なのだとか。

 

その為に雪片弐型の特性を理解出来なかった一夏君はセシリアちゃんの懐に飛び込み、一撃を放とうとした所でエネルギー切れを起こし、自滅という形で試合に幕を引いた。

 

……なんというか、色々残念な結果となってしまったなぁ。織斑先生は機体特性も理解せずに調子に乗ったアイツが悪いと言っていたが、自分は流石に無理があると思った。

 

昨日今日ISに触れたばかりの素人にぶっつけ本番で機体を理解しろとか、無茶振りにも程がある。何も知らない子供にマニュアル無しで機動兵器に乗り込み歴戦の戦士(パトリックさんとか)に勝てと言っているようなものだ。

 

流石に無理難題だろうと思うけれど、これから一夏君に待つ数々の試練を思えば、織斑先生が彼に厳しく接するのも仕方がないのかもしれない。

 

人類初の男のIS操縦者、その肩書きはこの世界に於いて色んな意味で重い。学園を卒業する迄には自分の身は自身で守れるようにならなくては……。

 

頑張って欲しい。一夏君には、是が非でも。

 

 ……所で、セシリアちゃんのIS“蒼の雫(ブルー・ティアーズ)”の武装にあった自立機動兵器、あれってアムロさんやキラ君の使うファンネルやドラグーンに似てるよね。

 

いや、形状からしてドラグーンかな? 確かグランゾンにストライクフリーダムの戦闘データとかあったから、もし彼女が拒否しなければこのデータを提供してもいいかもしれない。彼女も自身の機体を十全には使いこなせていないし、参考になればいいかな。

 

敵に塩を送るようだけれど、一夏君には好敵手が必要だ。自身の実力を高めて貰う為にも彼と戦い、且つ同じクラスであるセシリアちゃんには一夏君の良き好敵手になって欲しいから。

 

 ただ、口では厳しい事いってたけど、織斑先生は頑張った一夏君に対して人知れず微笑んでいた。やっぱり優しい所もあるのだと、不器用な優しさを持つ織斑さんに自分も吊られて笑ってしまった。

 

その直後、何がおかしいと睨まれてしまったけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────正直、俺はISに興味はなかった。女性しか扱えないISに幾ら拘っても意味はないと、そんな風に考えていた。

 

ふとした切っ掛けでISに乗れるようになった俺は、あれよあれよという内にIS学園へと入学させられていた。

 

望んだ訳でもないのにこんな所に連れ込まれ、興味もないISに関わって、女子達には珍獣扱いされる。……幼なじみの箒がいなかったら、多分心が折れていたと思う。

 

セシリアに喧嘩……ISによる決闘を挑んだのも、半分は自棄だったのかもしれない。どうにでもなれと、そんな思いで箒と特訓をしていた時、意外な人が助っ人に現れた。

 

白河修司さん。このIS学園で数少ない男性で俺と年の近い男の人、千冬姉より若いその人はセシリアとの決戦の日まで殆ど付きっきりで特訓につき合ってくれた。

 

自分だって用務員の仕事があるのに俺の面倒を見てくれて、ISの事だって俺にも分かるように教えてくれた。山田先生も教え方は上手かったけれど、それでも修司さんの教え方はすんなりと頭に入ってきた。

 

ISは人間の体の延長。機械として扱うのではなく自身の体の一部として扱うのだと教えてくれた修司さん。箒も昔やっていた剣道の勘を取り戻すべく放課後はいつも付き合ってくれたし、部屋も同じだからってISについて自分の知る限りの事を俺に教えてくれた。

 

 戦う相手、セシリアのISに関する情報を持ってきてくれたのも修司さんだった。仕事で忙しい中、訓練機の用意だってしてくれたのに……負けてしまった。

 

あれだけ協力して貰ったのに、二人とも付きっきりで教えてくれたのに……俺は、そんな二人の期待に応える事が出来なかった。

 

機体の特性が理解出来なかった。素人だから、なんて言い訳はしない。俺が負けたのは……俺が弱かったからだ。

 

情けなくて、悔しくて、誰もいないロッカーで、俺は……久し振りに泣いた。それが気取られるのが嫌で、箒には先に寮に帰って貰った。

 

修司さんは次は勝とうと言ってくれた。千冬姉には何度も負けるなよと言われた。箒は次こそ勝とうと言ってくれた。

 

……負けたくない。この日の敗北を、俺は絶対に忘れない。

 

だから……。

 

「箒」

 

「な、何だ一夏、戻って来るなりいきなり……」

 

「俺、次は勝つよ。勝って見せる。けど、俺はISに関しては素人も同然だ。だから───」

 

「…………」

 

「これからも、俺を助けて欲しい。力を貸して欲しい。頼む」

 

俺は、この日から前を向こうと思う。自分の立場やこれからの事を、逃げないで見つめ続けようと思う。

 

その為に、強くなろうと思う。誰の為でもない。まずは……自分の為に。

 

「ま、まぁお前がそこまで言うのなら仕方がない。暇がある時は私も出来るだけ協力しよう。だ、だが勘違いするなよ! お前に協力するのはあくまで同じ門弟であるお前が情けないからで───」

 

「あぁ、分かってる。俺は弱い。色々迷惑を掛けると思うけど……宜しく頼むよ」

 

「───っ! そ、そんな顔で笑うな! ……私がバカみたいじゃないか」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「な、何でもない。……全く一夏め、急に大人っぽくなって、何だあの笑顔は、反則ではないか」

 

何やらボソボソと呟いている幼なじみ、恐らくは今後の剣道の鍛錬メニューを考えてくれているのだろう。数年会わなかった仲だけれど、箒も頼もしくなったものだ。

 

(修司さん、俺、頑張るよ)

 

今度こそ修司さんの期待に応える為、自分の大切なモノを守れる様になる為、明日から頑張ろうと思う。

 

……そう言えば、どうして修司さんはあんなにISに詳しいんだ? IS学園にいる人は皆あんなに詳しいものなのだろうか?

 

ISの特性だけじゃなく重力制御の事、後は量子変換機能にもかなり突っ込んだ話をしていたし、相当ISに関して理解しているんだろうなぁ。

 

気さくで、物知りで、頼りがいのある人。

 

俺も、あの人みたいになれるのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

α月○日

 

 新入生も新たな環境に馴染み、日々の生活に慣れ始めた頃。自分も自身の環境に漸く慣れ始めてきた。

 

最初の頃は自分と十蔵さん、そして一夏君しか男性がいない学園で珍獣扱いされてきた自分達だが、流石に時間が経過すれば女生徒の皆も慣れ始め、日々の生活も穏やかさを取り戻しつつあった。

 

尤も、一夏君はクラス委員にもなった事で他クラスの女子からは注目されているので、平穏を手にするのは当分先になりそうだが……。

 

そうそう、先の試合で行われたセシリアちゃんとの決闘なのだが、あれ以降一夏君とセシリアちゃんは和解したらしく、良くアリーナで箒ちゃんと一緒に一夏君の特訓に付き合ってくれているらしいのだ。

 

最初はどちらが先に始めるか少しばかり揉めたらしいが、一夏君がその日の必要に応じて箒ちゃんとセシリアちゃんにそれぞれ頼んでいるらしい。

 

自分の足りないもの、必要なものに対して自分から進んで挑んでいく。前とは変わった気構えに自分も安堵し、織斑先生も一皮剥けた一夏君に相変わらず厳しくありながらどこか嬉しそうに話していた。

 

授業態度も真剣で、分からない事があれば休み時間に山田先生に聞きに行ったりするなど積極性を見せていたり、クラス委員の責任感から良くクラスの生徒達から頼られているらしい。

 

時々ミスをしたり、危ない所も見かけるみたいだが、意識変革を果たした一夏君を取り敢えず見守っていくつもりのようだ。

 

山田先生も副担任ながら頼られたりする事が嬉しいらしく、学園で顔を合わせた時は良く一夏君の話を聞いたりしている。セシリアちゃんとの試合で一夏君は負けたが、代わりに得るものも多かったようだ。

 

 セシリアちゃんという事で思い出した事がある。以前話していた自立機動兵器関連のデータの件、モノは試しにストライクフリーダムの戦闘データをIS関連用に変換し、自分なりに手を加えてセシリアちゃんに渡してみたのだけれど、受け取ったセシリアちゃんはデータ内容を見るなり酷く狼狽し、戸惑っていた。

 

やはり見ず知らずの男からいきなり戦闘データを見せるのは拙かったか、このデータを何処で手に入れたのか等質問してくるセシリアちゃんに、自分もISには興味があるからと誤魔化したが、流石に誤魔化し切れず、渋々データを受け取りつつも疑いの眼差しは晴れる事はなかった。

 

まぁ、別に良いけどね。疑われる事を知った上で渡した訳だし、データを受け取ってくれたという事はそれだけ自分を受け入れてくれたという事に他ならない。

 

仮に自分の素性が疑われて他国から狙われたとしても、このIS学園にいれば表向きは干渉される事はない。もし裏で干渉してきたとしても、その時は穏便に話し合うだけだ。

 

どんな相手でも対話というものは必要である。それが多元世界で自分が学んだ事の一つだ。

 

そう言えば、今日ツインテールの女の子に学園内を案内させられた。学園の制服を来ていた事から……恐らくは転校生なのだろう。

 

背が小さいのに態度は大きいものだから、それが可愛くてつい笑ってしまった。

 

 

 

 




Qどうして主人公は一夏に協力的なの?

A多元世界に来たばかりの頃の自分と似ているから。


主人公視点

「これ、良かったら使ってみて」

セシリア視点

主「アナタに、コレが使いこなせますかね?」

ストフリの戦闘データを見て

セッシー「こんなんどうしろと!?」(゜Д゜;)


次回はゴーレム襲撃編。

はたして主人公は活躍するのか!?

……多分無い(ェ?

次回もまた見てボッチノシ




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