『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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そう言えば、ISのアクションゲームが出てくるみたいですね。



その39

 

 ───修学旅行最終日。日本の古都京都で歴史文化を学ぶ為に訪れていたIS学園一年生達は修学旅行最後の旅を楽しんでいた。

 

各班に別れての行動。二日目と同じ自由行動となた今日、街のアチコチでIS学園の制服を身に纏った女子生徒を見かけられていた。

 

そしてISを操縦できる唯一の男性である織斑一夏も他の生徒同様、修学旅行の最終日をカメラを片手に楽しんでいた。

 

皆との思い出を作る為に彼はカメラ係として選ばれており、時には他の班と行動を共にしたり、時には違うクラス、或いは教師達と一緒にいたりと彼は幅広く行動範囲を広げていた。

 

そんな彼は現在ある一人の少女と共に行動していた。紅葉で満ちる並木街道、一夏は隣を歩く少女に声を掛けた。

 

「所で、本当に良かったのかタンポポちゃん。俺と一緒に行動していて、修司さんの所へ行かなくてもいいのかい?」

 

「いいんです。気にしないで下さい。一夏さんを今日一日お守りするのがお父さんから課せられた使命ですから」

 

「でもさ、他の娘達は修司さんの所に行ってるんだろ? 幾ら長女だからって別に何でも我慢する必要はないんじゃ……」

 

「いいえ、どうやらお父さんは今日も何か大事な用事があるとの事で一人で行動しています。朝出掛ける時までは一緒でしたけど、それ以降は私もお姿を見かけていませんので……」

 

「そ、そうなんだ」

 

「はい。ホント、参っちゃいますよね」

 

隣で笑顔を浮かべながら気にしないでと口にする元オートマトンだった少女に一夏の胸中が罪悪感で痛む。まだまだ親である修司に甘えたい年頃だろうに、必死にそれを隠そうとする彼女に一夏は居たたまれなくなった。

 

今日一日彼女に護衛されながら京都の街を歩き回ってみたが、依然として特に変わった様子はなく、前の時みたいに無人機に襲われる事もなかった。

 

そろそろ集合時間の時刻に差し掛かる頃合いだろうし、せめて最後くらい父親である修司と一緒にいさせて上げたいと考えていたが……。

 

「でも、お父さんは言ってました。私達はまだまだ学ぶ事が多くあると、自分だけに拘るのではなく、広い視野と思考を持つ為に君達は多くの人と交流すべきなのだと──きっと、お父さんは自分以外の人と触れ合わせる事で私達の成長を促したいのだと思います」

 

「………そっか」

 

嬉しそうにそう語る彼女に一夏はそれ以上語る事はなかった。彼女達の行動をちゃんと考え、彼女達の為になる事を真摯に考えるその姿勢に一夏は修司の事を改めて見直した。

 

「それに、今の私にはアミカちゃんとアリカちゃん、二人のISが付いていますので厳密には私一人ではないんですよ」

 

「……え?」

 

「ほら、あそこです」

 

タンポポの言葉に一瞬呆然となる一夏、彼女の指さす方向に視線を向けると一本の木の枝に止まる梟と燕の姿があった。向こうも自分の事に気付いたのか、視線を向けてくる一夏を見るとパタパタと翼を振って挨拶をしてきた。

 

……手を振っているであろう彼女に一夏も引きつった笑みを浮かべながら手を振り返す。

 

「現在、私はお父さんの指示で彼女達の装備基準第一位になっています。万が一危険が迫ってきた時は私が蒼鴉を装備してお守りします」

 

「そ、そうなんだ」

 

タンポポの平然と自分も使えます発言に驚きつつも、一夏は流石は修司と自分に言い聞かせて納得させる。しかし、それでは修司は現在自分の身を守る術はないのではないか? 不安に思って一夏はタンポポに訊ねると、彼女はひきつった笑みを浮かべて露骨に視線を逸らし……。

 

「それは、その……結論を言えば大丈夫、と言えなくもないのですが」

 

「?」

 

「もしお父さんに危険が迫った時、どちらかと言うとその危険の方が危ないと言うか、ご愁傷様というか……」

 

いまいち要領の得ない言葉を呟くタンポポに一夏は不思議に思い首を傾げる。何か拙い事を聞いたのか、タンポポは一夏の質問にマトモに返そうとはしなかった。

 

「と、兎も角、お父さんの方は大丈夫ですから、一夏さんは自分の身の安全だけを考えて下さい」

 

「お、おう」

 

遂には無理矢理に話を終わらせてしまう始末。ツッコミ所は多々あるが、修司という人間の異常性をこれでもかと知っている為、一夏もこれ以上問い詰める様な真似は避ける事にした。

 

「と、所で一夏さん。他に行きたい所はありませんか? 集合時間までまだ少し時間はありますし、宜しければ付き合いますよ」

 

「そうだな。皆との写真は一通り撮ったし、後は何処か景色の良いところとか回ってみたいかな。近くに良い所があればいいんだけど」

 

「分かりました。ではお父さんから渡されたこの旅のしおりを頼りに散策してみましょう。簡単な地図も表示されていますから、迷う事はないので安心して下さい」

 

さり気なく見え隠れする修司の親バカぶりに一夏に苦笑いが浮かぶ。先頭をタンポポに任せ、いざ進もうとした時。

 

「───貴様が行くべき所など、一つしかあり得ない」

 

「っ!」

 

「なんだ、おまえ?」

 

一夏達の前に現れる黒い影、ローブを羽織ったその人物は不敵な笑みと共に顔を上げ……。

 

「私の名前は織斑マドカ。貴様を殺す者の名だ」

 

マドカと名乗る少女の顔、彼女の姉とそっくりな顔とその手に握られた拳銃を見て、一夏はその目を大きく見開かせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人気のない石垣道。周囲には竹林で囲まれており、人の姿はどこにもない。そんな場所に白河修司はいた。

 

「……そうですか。やはり列車には爆弾が仕掛けられていましたか」

 

『一応解体は済ませたわ。ボーデヴィッヒさんの停止結界のお陰で解体作業も落ち着いて出来たし、騒ぎもさほど大きくならなかったわ』

 

「お疲れさまです。では、アナタはそのまま駅を中心にもう一度警戒態勢に当たって下さい。他の先生方も既に行動に移しているでしょうし、それに合わせる形でアナタも動いて下さい」

 

『……それは別にいいけれど、一夏君の方は大丈夫なの? 確かにアナタの作ったISは強力でしょうけど、だからといって完全に安心できるって訳じゃ……』

 

「タンポポには私に教えられるIS操縦技術の全てを叩き込んであります。加えて現在蒼鴉の主は彼女に設定している為、有事の際はISを装着出来るよう許可を出しています。加えて、一夏君の現在位置は待機状態となっている蒼鴉を通して各教師達の携帯端末に送られる仕組みとなっています。何か異常を関知すれば近くの先生がすぐに駆けつけてくれる事でしょう」

 

『……毎度毎度思うのだけれど、いつのまにそんな通信設備を作っていたの? 一応、アナタからも目を離したつもりはないんだけれど?』

 

「時間というモノは一見無限にありますが、その時の中で生きる生物は有限です。時は金なり。時間を消費する時は何事も有意義に使用する方が得だと私は思いますがね」

 

『……質問の答えになってないけど、まぁいいわ。それじゃあ私は引き続き街の見回りに行ってるから、何かあったら────』

 

「……楯無さん? どうしました?」

 

 突然通信端末から発せられるノイズに通信回線が一方的に切断される。突然の事態に修司は一瞬戸惑うが、すぐさま原因解明に思考を回転させた。

 

通信端末の故障? それとも楯無の方で何かトラブルでも起きたか? 考えられるあらゆる可能性を模索する中、修司はある結論に到達した。

 

手にした端末を白衣の内ポケットへと仕舞い込み、確信しながら背後へと振り返る。彼の視線の先に立つのはエプロンドレスを身に纏う一人の女性が佇んでいた。

 

「ヤッホー、しーちゃん久しぶりー♪ 元気だったかなぁ~?」

 

「………お前は」

 

笑顔で手を振ってくる一人のアリス。満面の笑顔で悪意を振りまきながら佇む彼女に修司は自然と警戒を強める。

 

しかし───。

 

「もう、そんなに警戒しなくても、私の事は束ちゃんって呼んでくれても構わないんだよ。……まぁ、実際呼んだら殺すけどね」

 

不気味に微笑みながらそう口にするアリスに修司は驚愕に目を見開くのだった。

 

 

 




主人公視点
束(?)「やぁやぁ、久しぶりだねしーちゃん」
主人公「お巡りさんこっちです」

束視点
束「良くも束さんの邪魔をしてくれたな!」
主「フッ、アナタの時代は終わったのですよ」

第三者視点
束「白河修司、お前を───殺す!」
主「あまり強い言葉は吐かない方がいい。───弱く見えるぞ?」

みたいな感じ(笑)


次回、『確信』



次回もまた見てボッチノシ


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