『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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リアルが忙しくて遅くなりました。


その44

 

 

 

 ───京都上空で行われていたIS同士の戦闘。最初は空に浮かぶ光を花火か何かと錯覚していたが、聞こえてくる爆音と炸裂音が普通と違うと知り、人々はそれがテロリストによる行いだと知る。

 

千年の歴史を持つ京都がISという兵器によって破壊されてしまう。住民達はその事に恐怖し、一時はパニックに陥り掛けたが、駆けつけた自衛隊と警察の的確な避難誘導によってパニックは沈静化された。

 

上空で続いていたテロリストとの戦闘もやがて収まり、人々は安堵のため息を零した。

 

 だが、まだ終わっていない所があった。京都の街から離れた郊外、森林に覆われた深い山の中で彼女達は戦闘を続けていた。

 

「どうしたのぉ? もうお終いなのかしら? 見た目の割には淡泊なタイプなのねアナタ、トンだ期待外れだわ」

 

いや、それは正確には戦闘とは呼べなかった。片方の存在が片方の存在に対して一方的に攻撃する様は蹂躙という言葉に相応しい光景だろう。

 

ボンテージ姿の女が蛇腹に変形する鉄の鞭で蜘蛛の女をいたぶる。重くも鋭く、ISを纏っていながら確かなダメージを負わせてくる。女王の風格を持った女はその表情を恍惚に染め上げながら防御している蜘蛛女をなぶり続けた。

 

「ほらほらほらほらぁ! もっと私を楽しませてよ、もっと醜く抗って私を滾らせて頂戴!」

 

『ぐ、このっ! クソアマがぁっ!!』

 

「アッハハハ! 蜘蛛の癖に人間の言葉喋ってるぅ~、やだー、気持ち悪~い」

 

常に変化を続け、軌道を読ませない鞭の攻撃、それにより既に蜘蛛の関節を使用しての特殊兵装は全て破壊されてしまい女が残された武装は近接用のブレードただ一つ。勿論この武装にも篠ノ之束の手が加わっている為に普通のブレードではないのだが、相手が一定の距離まで近付いてこないのでそれを披露することも叶わない。

 

防戦一方。為す術なく打たれ続けるオータムは悔しさと憎しみの声を洩らす。そんな彼女の声が心地良いのか、女王様───モモは至上の悦びを感じながらもっと聞かせてと鞭を揮う。

 

「まだまだ終わらないわよぉ? 鈴ちゃんやシャルちゃんを大勢で寄ってたかって虐めるんだもの。さぁ、更に上げていくわよぉ!」

 

『あ、あぐぁぁぁっ!!』

 

「アッハハハハハハ!」

 

遂に防御を破った鞭の一撃がオータムに向けて放たれる。直撃を受けたオータムは苦悶の表情を浮かべるが、モモはそんな彼女の苦痛を糧にして、何度も何度も鞭を揮う。

 

そんな光景を見ていたシャルロットと鈴音、二人の代表候補生は内心で思う。

 

((どっちが悪者だっけ?))

 

一方になぶり続けるモモを見て二人はそんな疑問を浮かべる。何故彼女がいきなりあんなにも成長したのか、その武装は何処からだしたのか、他にも疑問に思う事は多々あるが、目の前で殴られ続けるオータムを見てそんな疑問は既に頭の隅へと追いやられてしまった。

 

テロリスト相手にSMプレイを楽しむモモ、そんな彼女にドン引きしていた二人はセンサーが関知するある異変に気が付いた。

 

“ゴーレム”IS学園にとって因縁の多い存在が背後からモモに攻撃しようと攻めてきたのだ。オータムに攻撃することに夢中で気付いていない様子のモモに声を上げて伝えようとするが、時既に遅く、彼女の背後には森林を突き抜けてきたゴーレムが一機、モモに向けて銃口を向けていた。

 

背後に迫るゴーレム、その様子を一部始終見ていたオータムはこれは好機だと口元を歪める。ゴーレムの銃口に集まる光、危ないとシャルロットが声を上げた時─────桜色の閃光がゴーレムの胸部を貫いた。

 

音を立てて崩れ落ちるゴーレム、予め知っていた風な態度を取りながらモモ(女王様)は視線だけ背後に向ける。

 

「もぅ、あんまり焦らすものだから少し焦っちゃったじゃない。サキちゃんてばテクニシャンなんだから」

 

『仕方ないでしょ。ここからじゃそっちの様子はよく見えないんだから、ったく、マスターもトンだ鬼畜ね。一番高い所から狙い撃てだなんて……ここからそこまでドンだけ離れていると思うのよ。五キロよ五キロ! 全く、私はゴ○ゴじゃないってのに』

 

耳朶に聞こえてくるサキの声、生みの親に対する文句や愚痴が聞こえてくる中、自分達の所にも聞こえてくる彼女の声に鈴音とシャルロットは困惑の表情を浮かべる。

 

一体彼女は何をやっているのか、サキの愚痴や文句の中から聞こえてくる単語から察するに援護射撃を行っている様子。

 

最早何が起こっているのか分からない状態。そんな二人を察してかサキはシャルロットと鈴音にある言葉を送った。

 

『あー、多分そこにいる鈴達は分かっていないようだから端的に説明するわね。私達は有事の際に備えてマスターからある程度の訓練を受けているの。有事の際には的確に対処するようにって、……まぁつまり一言で言うと』

 

『言うと?』

 

『これも白河修司って奴の仕業なんだよ』

 

 ───一瞬だけ、ほんの一瞬だけ時が止まる。サキの白河修司という男の存在を一言で表したその言葉にシャルロットと鈴音、オータムすらも固まる。

 

唯一モモだけはあんまりな扱いの父に腹を抱えて笑っているが……誰もその事に突っ込む者はいなかった。

 

『そっかー、うん、分かったよ』

 

やがて時が動き出す。サキの言葉を耳にして瞳から光を失ったシャルロット=デュノアは乾いた笑みと共に納得する。

 

学園祭の時の様に壊れた笑みを浮かべるシャルロットを不憫に思いながら、凰鈴音は目尻に涙を浮かべる。悪くはない。お前は何も悪くないんだと鈴音は必死にシャルロットに呼び掛ける。

 

最早テロリストの事など忘れ去ってしまっている二人、そんな二人に悦な笑いを浮かべているモモは思い出したという風にオータムへ振り返る。

 

「ごめんなさいねぇ? シャルロットちゃん達があんまりにも面白いモノだからついアナタの事を忘れちゃってたわぁ」

 

『こ、このアバズレがぁ……』

 

何度も鞭打たれて既に機体はボロボロ、自身も満身創痍の為に最早逃げる事もままならない。

 

このドSがと、オータムは内心で毒づく。このままやられたままで終わらせないとオータムは通信でゴーレム達を呼び寄せる。

 

さっきは狙撃手で一撃で沈められたが、今度は複数で襲わせる。街中に散らばったゴーレム達を呼び寄せようとするオータムだが、一行に向かってこないゴーレム達。

 

何故こない。言うとおりに動かない人形達に苛立ちを募らせながら何度も呼び掛けるオータムだが、ここで再びサキから声が掛けられる。

 

『───あー、折角手下を呼び寄せている所悪いんだけど、それ無理だから』

 

『……あぁ?』

 

『アンタが街を焼き払う為に分散させたゴーレム達だけど、こっちの方で処理させて貰ったから』

 

『なぁっ!?』

 

信じられない。自律思考のない人形といえどゴーレム達は篠ノ之束によって作り出されたどれもこれも一級品の性能を持っている。

 

これまでIS学園に何度も襲わせた事によりゴーレム達は学習し、その度に恐ろしい力を持つようになっている。その力は既に代表候補生を凌駕し、国家代表クラスと渡り合えるまでに成長している。

 

そんな怪物とも言えるゴーレムをあっさり……信じられないと否定したいオータムだったが、次に聞かされる通信の音声により彼女の絶望はより深いモノとなる。

 

『ミンミンだよー! こっちは終わったー!』

 

『メイだ。少々手間取ったが……まぁ父上に作られた私にとっては造作もない事だがな!』

 

『死ぬぞー、僕を見た奴は死んじまうぞー! ……あり? もうお終い?』

 

通信越しから聞こえてくる陽気な声、その声色からしてミンミン、ハナ、メイの三人らしき少女達の声が聞こえる。それぞれがゴーレムは片付いたという報告が聞こえると同時に各所から爆発音が聞こえてくる。

 

それが此方の全ての兵力が破壊された事だと知ると、オータムの表情は驚愕に染まる。

 

『そう言うわけだからモモ、後はアナタの方だけだからあんまり時間は掛けないでよ』

 

「え~? それじゃあつまんないじゃない。折角だからサキちゃんも来なさいよ~、一緒に可愛がってあげるから」

 

『冗談。今のアンタに近付くほど、私はバカじゃないわ。それじゃね』

 

「あん。もう、サキちゃんてば照れ屋さんなんだから~。……さて、それじゃあ私の方もフィニッシュとイクとしようかしら~?」

 

『っ!?』

 

「あらぁ? どうしてそんなに怯えているのかしら? もしかしてこれで終わりだと思った? ざ~んねん、まだまだ終わらせないわよ~♪」

 

満面の微笑みを浮かべながらオータムへ一歩、まだ一歩近付いていくモモにオータムの表情が恐怖で歪む。心の底から沸き上がる恐怖心、同じ感覚をついこの間体験したオータムは二重に襲い来る恐怖に震え……。

 

「さぁ、続きを始めましょう。もう二度とこんなお痛が出来ないように────徹底的に、ね」

 

『────ひっ!』

 

 心の底からの悲鳴は掠れる程に小さかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都の街にある文化遺産に登録された由緒ある建築物、五重の塔。歴史的文化遺産であるその建物の屋上で少女が一人佇んでいた。

 

「────さて、これで大体の厄介毎は片付いたかな。後はマスターの方だけみたいだけど、まぁ心配するだけ無駄か。後は織斑先生達と合流して事情説明をしないと」

 

 手にした狙撃銃を肩に掛け、これからの自分の行動を確認するサキ。水色の髪を揺らしながら塔から降りようとした時、彼女の正面に電子モニターが映し出される。

 

モニターに映し出されているのは日本の全体地図と日本を囲みながら接近してくる無数の赤い点滅。これが現在近付いてきているミサイルだと察したサキはすぐさま修司に連絡入れようとした────その時。

 

「────目覚め(おき)なさい。グランゾン」

 

京都の街に現れる巨大な魔神を前に、サキはただ一言。

 

「………うわぁ」

 

その言葉には彼女の胸中にある様々な感情が収束されていた。

 

 

 

 




G「やぁ皆元気かい? グランゾン兄さんだよ!」
一同「アイェェェェッ!?」

大体こんな感じ。



以下、オートマたん達の武装(簡易版)

サキ:狙撃銃を主体にした遠距離タイプ。モーションモデルはガンダムデュナメス。

ミンミン:手足を駆使した接近戦。モーションモデルは鉄人28号。

メイ:大剣を装備した接近戦。モーションモデルはデスティニーガンダム。

ハナ:大鎌を装備した接近戦。モーションモデルはガンダムデスサイズ。

Qどこから武装を取り出した。
A修司「これも量子変換機能のちょっとした応用さ」

次回でいよいよ修学旅行編ファイナル。(予定)

次回もまた見てボッチ。

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