『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今週のクロスアンジュを見て一言。

エンブリオ様プレイボーイ過ぎだろ。


その2

 

 

○月×日

 

 今日、再びドラゴン達と出会してしまった。縄張りを刺激しないようグランゾンを使用せず徒歩で歩いていた所に見つかってしまい、今日も一日追いかけ回される事になってしまった。

 

空中三角跳びの影響で右足が筋肉痛で満足のいくパフォーマンスは出来なかったが、昨日同様かくれんぼモードをフルに活用した為、どうにか振り切る事が出来た。

 

おかげで永田町から離れる事に成功出来たし、これでドラゴン達から追いかけ回される事も無くなるだろう。尤も、ドラゴン達の生態系が分かっていない以上、本当に引き離したかは疑問の残る所だが……。

 

 しかし解せない。何故ドラゴン達は自分をああも付け狙うのだろう? 縄張り意識が強いから? 一応昨日出会した時から縄張りを刺激しないよう出来るだけの配慮をしてきたつもりなのだが……うーん、分からん。

 

しかもドラゴン達の動きがかなり練度の高いモノになっていた。取り巻きの小型ドラゴンが大型のドラゴンに命令された様に動き、自分をしつこく追ってきた時は驚いた。あそこが複雑に入り組んだビル街の都心ではなく開けた場所だったら、恐らく自分は捕まっていた事だろう。

 

一体、どうしてドラゴン達は自分を目の敵にするのだろうか? 漫画やアニメなんかではドラゴンは知性の高い生命体であるとされているから、もしかしてそれが原因で自分を知らない存在=敵として認識しているのだろうか?

 

……そう思うとやや凹むが、悔やんでも仕方がない。今後はドラゴン達には自分の事を理解して貰う事を目標に少しずつコミュニケーションを取っていこうと思う。

 

まぁ、それは当分の目標として、今は新たな拠点作りに専念しよう。例のラブホテルにはまた来るかも知れないという事で発電機を置いたままだし、取り敢えず安心して眠られる場所を作る所から始めなければ。

 

今自分がいるのは草木が生い茂る森の中、グランゾンの索敵によって周囲にドラゴン級の巨大な熱源反応は感知されなかったし、当分は落ち着いて生活出来ると思う。

 

まずはセーフハウスを作る事から始めよう。ここは木々がある森、良い木材が沢山あるので拠点となる家も性質の良いモノになる事だろう。

 

近くには川もあるし、周囲には兎の様な小動物も多く生息している。食べられそうな木の実も今後調べていけば分かりそうだし、今後は楽しみながら探索を続けられそうだ。

 

 

 

○月α日

 

 都心だった廃墟から離れ、森の奥深くに居を構えて数日、今の所自分は健康状態に異常なく毎日を過ごしている。

 

川の水も有毒な細菌の有無を調べた後ろ過、加熱を繰り返す事で使える様になり、木の実も有害なモノでないことから食用に使える事も発覚し、兎や猪の様な動植物達も自分の命の糧として有り難く頂戴している。

 

勿論食べる時はこの世の食材に感謝をする所作も忘れてはいない。破界事変の頃、暗黒大陸にてキタンさん達黒の兄弟から徹底して教わった事のあるソレは今も自分の血肉となって生きている。

 

こういうサバイバル生活をしているとつくづく思い知る。一個体として生きていける生命体なんてこの世に存在せず、一つ一つの命が支え合って生きていて初めて世界は成り立っているのだという事を。

 

大袈裟だと以前の自分なら鼻で笑うけど、今はそうは思わない。今日狩った猪らしき動物、その命を喰らった事により今日も自分は生き長らえているのだから……。

 

一度滅んだ世界、自分以外人間が存在しない世界。弱肉強食がこの世界のルールであるならば自分はその摂理に従おうと思う。自分しか人間がいない世界、だからこそ自分はこの世界で矜持をもって生きなければならないのだ─────(日記はここで途絶えている)

 

 

 

○月β日

 

 ……やっちまった。昨日散々あんなご高説な事を食っちゃべっていたのに、その直後暴れ回ってしまった自分が嫌になってしまう。

 

実はあの後、気持ちのいいまま日記を終えようとした自分の所に突然ドラゴン達が襲ってきたのだ。お陰で自分のセーフハウスは滅茶苦茶、折角丸一日掛けて建築した拠点が一瞬にして潰れてしまった事と、そのドラゴン達が例の都心で襲い掛かってきたドラゴンと同種である事から自分はブチ切れてしまい……つい、やっちゃったんだZE★

 

うん。反省している。幾ら相手がドラゴンとは言え生き物なんだ。話し合いこそは出来なくてももう少し冷静に対処すべきだったと後悔している。

 

……ただね、言い訳させて頂くならば向こうがしつこいという事も原因の一つだと自分は思うんだ。ドラゴン達に刺激を与えないようワザワザ遠く離れた所に移動したというのに、これでは意味がないではないか。

 

しかもいきなり殺る気満々の攻撃も仕掛けてくるし……しかし驚いた。この世界のドラゴンって攻撃する時はブレスだけではなく魔法みたいな攻撃も仕掛けてくるのね。おかげで今回は逃げ回る事も出来ず自分も反撃するしか無かったんだけどね。

 

せめて慰めになるのは今回の戦闘でグランゾンを使わなかった事かな。向こうも取り巻きの小型ドラゴンが少なかった事から森中に張り巡らせた罠もフル活用出来たし、周囲にさほど被害を出さずにドラゴン達を殺さずに制圧する事が出来た。

 

小型ドラゴンの方は……まぁ両手足で頸部分を締め上げて落としたり、頭部に強い衝撃を与えて気絶させる事が出来たから良いとして問題は大型の方だ。

 

先も述べた様に大型のドラゴンは口から火を吐き出すだけじゃなく魔方陣を開いてそこから光の弾丸を飛ばしてくるものだから苦戦を強いられてしまった。しかも好き勝手暴れ回るモノだからここで再びプチンと来た自分は大型ドラゴンの脳天にある技を叩き込んでしまったのだ。

 

それも“不動砂塵爆”、ガモンさんから教わった空手の必殺とも呼べる技の一つで自分はコレをドラゴンの脳天に思いっきり叩き込んでしまったのだ。

 

あの時はデカい図体だしこの位平気だろってノリで喰らわしたのだが、この技は内側へダメージを通すモノだから生身の相手に使用する際は慎重に選べって釘刺されていたんだよなぁ。

 

ドラゴンも不動砂塵爆を受けた直後、激しく痙攣して倒れてしまい以降ピクリとも動かない。呼吸はしているだろうから死んではいないだろうが……正直、不安で一杯です。

 

別に勢い余って殺しても向こうが殺す気で来る以上良心は痛まないが……昨日無益な殺生は控えると誓った今、いきなり無用に命を奪うのは抵抗がある。というか、仮に殺したとしてもその先になにがある。ドラゴンの肉なんて食えるかどうか分からないし、もし自分がドラゴンを殺した事を他のドラゴン達に知られてしまえばそれはドラゴン達との戦争を意味することになる。

 

そうなればグランゾンも使わざるを得ないし、そうなってしまえば大虐殺を行ってしまう。流石にそれだけは避けたい。

 

やはり逃げるしか無いのだろうか。けれど仮に逃げたとしても一体何処へ……ここもダメだとするならば今度は相当遠くへ逃げなければならなくなる。

 

それはそれで後の面倒を避けるのに良いかもしれないが……うーん、分からん。兎も角今はこのドラゴンの様子を見ながら考える事にしよう。

 

 グランゾンをいつでも出せる準備をしながら自分はドラゴン達の様子を看ている事にした。

 

 

 

○月γ日

 

 今、自分はとあるコンテナ内部にいる。この一日で何が起こったのか混乱に思う事だから順を追って説明しようと思う。

 

まず第一に────朝日が昇る頃、一人の女の子が自分の所に訊ねて来てくれたのだ。女の子、そう、人間の女の子だ。長い黒髪に独特の民族衣装を身に纏った女の子が自分の所にやってきたのだ。

 

自分しか存在しない筈の人間、突然現れたその少女に当然自分は驚いた。何せ500年前に滅んだとされる人類が生きていたのだ。

 

当然自分は内心でテンションが最高潮だった。あまりの嬉しさに思わず笑みが零れてしまったが、初対面の人相手に失礼だなと思いすぐさま表情を引き締めた。

 

女の子の名前はサラマンディーネ。フレイヤ族という由緒ある家柄の出身の娘で自分を都に迎える為にこうして来たのだと言う。

 

都、つまりは自分以外の人間が数多く存在することを意味するその言葉に自分は嬉しくなり、感極まってしまった。人類は滅んでなんかいなかった。あの人工知能め、嘘を吐いたなとこの時自分は憤ったが、それは仕方がない事だなと後から気付く。

 

何せあの人工知能────管理コンピュータひまわりちゃんはシェルターに存在する人類は存在しないとだけ言ったのだ。よくよく考えれば500年もの間人類が同じ場所に居続ける筈がない。汚染が無くなったのであれば外に出て独自の文明を築く事だって出来る事だろう。

 

地球上の人間は滅んだと言っていたが、あれだってシェルターに存在する生体反応を基準にしての事だって思えば納得もいく。

 

騙された様な気もするが、こればっかりは言葉の意味をちゃんと理解しなかった自分が悪い。恥ずかしくなる思いだがこの事は自分の胸の内にしまって置くことにしよう。

 

それでサラマンディーネちゃんの誘いを断る理由も無い為自分は受ける事にしたのだが、ここで一つ問題が発生した。

 

何でもサラマンディーネちゃん達現在の人類はドラゴン達と共存している関係にあるらしく、ドラゴン達をノシてしまった自分に大層驚かせてしまったのだ。

 

そりゃそうだよなぁ、共存している者達を倒してしまったと聞けば誰だって不快に思う事だろう。それが長い間共に過ごしてきた存在だとするならばその怒りは自分の比ではない。

 

侍従らしきナーガちゃんとカナメちゃんが怒りを表すのも無理のない事だなと思った自分だが、サラマンディーネちゃんはそんな自分を許してくれた。どうやら自分の事情を聞き入れてくれてその上で仕方がない事だと判断してくれたらしいのだ。

 

器の大きな娘だなぁ。流石名家の令嬢だと関心しながら自分は用意されたコンテナに入り、大型ドラゴンによって都に向けて出発している。

 

一体都にはどんな人達がいるのだろうか。サラマンディーネちゃんという礼儀正しい娘もいるのだからきっと良いところに違いない。

 

 あ、そうそう。例のノシてしまったドラゴン達なのだけれどサラマンディーネちゃん達が来た時と同時に目を覚ました事を追記しておく。

 

どうやら彼等はドラゴンの中でも気性の荒い者達らしく、よく他のドラゴン達と喧嘩しているらしいのだ。けれど名家であるサラマンディーネちゃんの言うことには素直に従うらしく、彼等はそれ以降特に暴れる様子もなく大人しくしている。

 

ドラゴンと人間の共存、まるでお伽の国の話だなと思いつつ都に期待を膨らませながら今日の所は終わりにしようと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ナーガ、目標の様子は?」

 

「依然として沈黙を保ったまま、特に暴れる様子はないみたいです」

 

「そう」

 

 大型ドラゴンの頭部、そこに立つ彼女達はドラゴンの首に掛かったコンテナを一瞥する。

 

どこからともなく現れた謎の男。ドラゴン達を使って彼の行方を追っていたが彼女達───サラマンディーネとその従者二人はある時遂に彼の行方を掴む事に成功した。

 

けれどその男は気性の荒いバハムート族に追われ、現在地から離れ、山奥の中へと消えていった。バハムート族は気性が荒い上に粘着質として知られる一族、戦場では頼もしい存在だが同時に厄介者でもある彼等に狙われては一人の人間なんて紙切れに等しい。

 

急ぎバハムート族を追い、男の行方を追った彼女達が辿り着いた先には……信じられない光景が広がっていた。

 

蹂躙された森林、大きく窪んだ大地の中心にはバハムート族の大型ドラゴンが仰向けになって倒れていた。取り巻きの小型ドラゴン達も同様に倒れていて、更にその傍らで佇んでいた例の男を見てサラマンディーネ達は我が目を疑った。

 

悠然とドラゴン達を見下ろす男、その男の服装は焦げ目こそ付いてはいるものの、傷らしいものは一つとして見当たらない。目の前の状況からして分かる事はただ一つ、荒くれ者のドラゴン達がたった一人の人間体の男によって無力化されていたという事。

 

しかも命を奪わず意識だけを刈り取って……信じられない事実に当初彼女達は目の前の男が同じ人間とは思えなかった。

 

人の形をした怪物ともいえる存在にサラマンディーネは声を掛ける事を躊躇ったが、神殿で自分が対処すると大見得切った以上何もする訳にもいかず、思い切って声を掛けた。

 

いきなり出て来て付いてこいと言う自分の言葉に対し、男は二つ返事で了承した。本来なら檻の意味でもあるコンテナにも彼は何の疑いも見せず乗り込んで行ったのだ。

 

……気味が悪い。従者であるナーガとカナメ、二人の不安を少しでも軽くする為にサラマンディーネは言葉を尽くして安心させようとするが、彼女自身不安で心許なかった。

 

(……もしかしたら、私達はトンでもない存在に出会ってしまったのかもしれない)

 

隣で飛翔するバハムート族のドラゴン達はあれから暴れる様子はなく、寧ろ酷く脅えた様子で時々コンテナの方へ視線を向けている。

 

あれだけ気性の激しい彼等がどんな目に遭えばあそこまで脅えるのか、それが一層彼女達に不安を与えながら一行は大巫女のいる都へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 




クロスアンジュ風予告

ボッチ「遂に見つけた新たな人類、新たな出会いと別れに期待と不安が入り交じりながら今日も張り切って頑張るぞ!」
ボッチ「次回クロスボッチ、“この都で男は俺だけ!?”絶対に見てくれよな!」
アンジュ「………え? なにこのノリというか私の出番は!?」



次回もまた見てボッチノシ

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