『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回は結構飛ばします。

所謂ほのぼの回です。


その6

 

 

◇月(;´Д`)日

 

 リザーディアさんからアルゼナルへの座標地点を受け取って数日、ここ暫くの合間に起こった出来事を順を追ってまとめていこうと思う。

 

まず最初にアルゼナルへ向かう為にグランゾンを走らせて目的地に辿り着いた自分は司令官であるジルさんに出会った。当然アポイントなんか取っていなかった自分は蒼のカリスマという怪しさ全開の格好でいた事もあって速攻通報されそうになったが、どうにか聞き入れて貰えた。

 

この時自分とジルさんが話した内容は主にドラゴンとの戦闘の事、ドラゴンと戦う為に作られたこのアルゼナルという施設には数多くのノーマが収容されており、彼女達はドラゴンと戦う為だけに生かされている。……なんとも胸糞悪い話だが、本題からズレてしまう為感情論は少し横に置いておく。

 

で、そのドラゴンとの戦いに関する話だが、自分はジルさんとドラゴン側……つまりサラちゃんや大巫女様達とで手を結んで欲しいというお願いをジルさんに思い切って打ち明けてみた。

 

ノーマの人達はこの世界の人類様によって強制的に戦わされている。ジルさんの執務室にあった報告書を不躾に思いながら調べて見たら、つい先日第一中隊なる部隊で三人もの犠牲者を出してしまったと記されている。

 

ノーマ達はこの世界の人間達によって強制的に戦わされている。だが、ドラゴン自体には恨みはない筈。当然殺し殺されという憎しみはあるだろうけれど、そこら辺は自分が徹底的にフォローに回って何とかしていきたいと思う。

 

対するドラゴン……サラちゃん達はアウラ奪還という目的の為に此方側の地球に日々攻撃を仕掛けている。此方もアウラをエンブリヲから取り返す為に侵攻しているだけであって別にこの世界を滅ぼすつもりはない。

 

それにサラちゃん達ならばきっとアルゼナルの人々とも分かり合える筈だ。異世界からの転移してきた自分に対しても色々気に掛けてくれたのだ。時間は掛かると思うがきっと分かり合えると信じている。

 

ノーマ、そしてドラゴン。今は戦い合う二つの存在だがこの二つは好きで戦っている訳ではない。お互いに少しずつ歩み寄ればきっと分かり合う事が出来る。ジルさん達の企てている目的にも釣り合う事だし、悪くない提案ではないかと思われた自分のこの案は……『くだらない戯言だ』と一蹴にされてしまった。

 

……まぁ、ダメだとは思ったよ? いきなり部屋へと侵入した不法侵入者が物知り顔で(仮面被ってたけど)あれこれ語ったら誰だって不審におもうでしょうよ。

 

ジルさんの対応は間違ってはいない。……けど、もう少し穏便に済ませてくれてもいいと思うんだ。言葉で断るならいざ知らず、鉛玉のオマケ付きとかホント洒落にならん。

 

しかもその後結局通報されたし……まぁ、あそこの施設って割と抜け道多かったから特に苦もなく抜け出せたから別にいいんだけどね。

 

 しかし、どうにかしてドラゴンと人間との戦いは止められないものか。いや、ドラゴンも人間なんだけどね。

 

サラちゃん達も恐らくは此方に侵攻してくるのも止めないだろうし……根拠? もしスパイの一人や二人潜り込んだ所で攻撃が止まるならとっくの昔にサラちゃん達は此方の地球に攻め込んではいないからだ。リザーディアさんという皇室にまで潜り込んでいながらドラゴン達の攻撃が止まないのはそういう事だ。

 

ホント、マジで何とかしたいものだ。人間同士の殺し合いがどれだけ虚しいのか、多元世界から嫌と言うほど見せられた自分としては放って置くわけにはいかない。

 

それに、この人間同士が殺し合っている構図、自分にはどうも作為的なモノを感じる。多元世界でもアイム=ライアードが裏で色々やっていたように何者かが意図して作り出しているように見える。恐らくはこれもエンブリヲなる輩が考えた策略なのだろう。

 

ノーマという反社会適性者をドラゴンと戦う道具に仕立て上げ、アウラを取り戻そうとしているドラゴン達を迎撃する。……何とも合理的で吐き気のする構造だ。

 

このままではエンブリヲとかいう奴の思惑どおり人間同士で殺し合いは続き、いずれは共倒れしてしまう。ジルさんはその事を理解しているのだろうか?

 

“リベルタス”なんて計画を練っている位だし、当然分かっているのだと思うけど……もしかしてノーマである自分達で成し遂げなければ意味がないとか、そんな拘りを持っていたりするのだろうか。

 

気持ちは分からなくもないけれど、あんまり意固地になるのは良くないと思うなぁ。あの計画、素人の自分から見てもかなり強引なモノだし。

 

それにどんなにお題目を並べてもノーマを利用して戦おうっていうのだからそれはこの世界の人間と同じ事、絶対反発する子が現れると思うのだけど……大丈夫だろうか?

 

まぁ断られた以上自分が彼女達にあれこれ言える資格はない。一応サラちゃん達にも連絡を入れる事にして今日は終わろうと思う。

 

 ……そう言えば、例の皇女殿下様。随分印象が変わってたな。髪もバッサリ切ってたし、野性的になった感じがする。

 

けれど、どうやら他の娘達とは仲良く出来ていないみたいだ。遠巻きからだったから良くわからなかったけど、複数の女の子と言い争っていたし、とても友好的とは見えなかったな。

 

あのままじゃボッチ街道まっしぐらだぞ? まぁ、これも自分ではどうしようもないし放っておく事しかできないんだけどね。

 

……ひとりぼっちは寂しいんもんな。

 

 

 

◇月(´д`)日

 

 今日、とある無人島でサラちゃん達に連絡を入れて例のノーマ達との和解策について話をしたんだけど……なんというか、もう大体自分の予想通りの答えに通信中であるにも関わらず笑いそうになっちゃったよ。

 

どうもサラちゃん達の所にいる大巫女様の側近達は自分を嫌っているらしく、自分の案に大多数の人達から反対されてしまった。

 

理由はアウラ奪還を一刻も早く成し遂げたいとか色々あったけど、多くに挙げられたのが自分が余所者だという事だ。

 

しかも自分がミスルギ皇国で騒動を起こしていた件も既にリザーディアさんから知られていた事もあって自分の言葉を信用出来ない者も少なくはなかった。

 

その為に自分はサラちゃん達から非常に疎まれており、一部の人間は自分をエンブリヲの遣いとまで言ってくる人が現れる始末だ。サラちゃんは流石にそこまで疑っている様子ではなかったけど、自分の軽率な行動の所為でアウラの捜索に影響を与えかねなかったので今後自分はミスルギ皇国に近寄る事を禁じられてしまっている。

 

……まぁ、仕方ないよね。自分の勝手な行動で工作員仲間の足を引っ張るようではそんな工作員は必要としない。寧ろこの程度の扱いで済んで良かったと言うくらいに思った方がいいのかもしれない。

 

 しかし、これでいよいよ自分に出来る事は少なくなってきた。ノーマとドラゴンの和解もアウラの捜索も手伝えなくなった以上、自分にやれる事はマジで無くなってしまった。

 

いっその事、リザーディアさんがアウラを発見次第蒼のカリスマとなりグランゾンと共に無理矢理奪い返すのもありかなと思えてきた。……流石にこれは最後の手段ですので迂闊に使う事はしないけどね。

 

となるとやはり当初の予定通り諸国巡りのオチになるのかな。名前の方は尋問(という名の拷問だったけどね。主に鞭打ちとか)を受けても教えなかったし、世界にバレているのは顔だけ、蒼のカリスマとして動くのならばそう難しい事ではないからこれは別に良しとする。

 

それに自分はエンブリヲという輩の素性を未だ知っていない。アウラ探しはリザーディアさんに任せるとして、今後自分はこのエンブリヲを探した方がいいのかもしれない。

 

というか、それ位しか出来る事ないな。うん。もしエンブリヲという奴と遭遇したら話をそこそこにしてBHCブッパでもいいかもしれない。

 

聞く限りかなりヤバい奴みたいだし、油断なく、確実に倒すよう勤めていこうと思う。

 

 あ、そうそう。最初無人島にいると言ったけど、アレは訂正させてもらう。厳密に言うと自分以外にもう一人利用者(?)がいました。

 

タスク君。何でも冒険家と名乗る彼はこの無人島を拠点に世界巡りをしているとの事、なんだか多元世界にいた頃の自分と似たような事をしているし、何だか親近感の沸く子である。

 

最初は見知らぬ自分に警戒心を抱いていたけど、皇女を殴って島流しにされたという半分嘘を混ぜた誤魔化しに最初は驚かれたけどそれ以降警戒される事はなかった。

 

尤も、そこに至る詳しい事情を話すまで手にした銃を下ろす事はなかったけどね。けれどタスク君が自分の価値観と同じで良かった。此方の世界の野郎には胸糞悪い所しか見せられていないので彼の様な好青年は貴重だ。

 

……いや、もしかしたら彼は今のこの世の中が嫌で世間から飛び出したのかもしれない。マナが使えないという理由だけで迫害し、差別するのはあまりにも理不尽だからと。

 

まぁ、余所様の事情を詮索するのはこれ以上はマナー違反なので今日はここまでにしておく。現在自分はタスク君のご厚意に甘えて彼のセーフハウスに厄介になっております。

 

洞窟を利用したセーフハウス。これはこれで趣があるなと感心しながら今日は終わろうと思う。

 

 

 

◇月*日

 

 ここ最近、なんだか色々ハプニングな出来事が多かった。エンブリヲを探す為にグランゾンと一緒に世界中を巡っていた帰り、ある機体が島に流れ着いていたのだ。

 

“パラメイル”アルゼナルに配備されている対ドラゴンの機動兵器。何故ここにこんなものがあると疑問に思いながらタスク君がいるアナグラに戻った所……何ともまぁうらやまけしからんな出来事が起こっていた。

 

縛られている裸の女性、そしてその女性の股間に顔を埋めているタスク君。自分としてはどう反応していいか分からず、取り敢えずごゆっくりとしか言えなかった。

 

しかもその相手が元ミスルギ皇国の第一皇女様と来たものだ。やるねぇタスク君。まさか君がここまでプレイボーイとは思わなかったよ。……爆ぜろ。

 

 後から分かった事だけど、どうやらアンジュリーゼ改めアンジュちゃんは同じ部隊の娘に嫌がらせを受けており、今回もその一環として海に落とされたのだという。

 

……どういう過程でそうなったのかは知らないが、嫌がらせの一つとして済ませていい話じゃないよね? 女の子ってマジこぇぇ。

 

で、彼女のパラメイル……ヴィルキスが直る。もしくは仲間が迎えに来てくれるまで彼女はここに住むことになったのだが、少し困った事が起きてしまった。

 

どうやら彼女、自分に殴られた事をまだ根に持っているらしく、事ある毎に自分に襲いかかってくるのだ。……性的な意味ではない。正真正銘命を狙った意味でだ。

 

ある時は素手、ある時はナイフ、流石に拳銃を持った時はそれなりに仕置きをしているが、彼女は何度も自分に向かってきた。……鬱陶しい。と、最初は思ったけど今は自分に向かってくる度に強くなっていく彼女を楽しみに思っている自分がいたりする。

 

けれど元がお嬢様だった為か、まだまだ雑な部分が多い。負けん気が強い性格らしいから呑み込みは早いが、跳ねっ返りも強い為自分の言葉を聞きやしない。おかげで動物に芸を仕込む調教師みたいなやり方で彼女と稽古をする日々を送っている。

 

自分もこの世界に来てからあんまり動いていないから準備運動として助かっているが……もう少し素直になれないものか、こんな調子だから敵ばかり作って今回みたいに仲間からも狙われるって事を彼女は理解しているのだろうか? ……してないんだろうなぁ。

 

 けど、あのお嬢様がここまで野性的になれた事が個人的には驚きだ。人の事を「化け物」とか「怪物」とか、それ以外にもお下劣な台詞が彼女の口から出て来た時は目をパチクリさせてしまう程に驚愕した。

 

……逆を言えばそれほどになるまでの衝撃的な出来事が彼女に起こったという訳だ。

 

彼女はメイルライダー。パラメイルのパイロット、ドラゴン達と戦い殺す機械に乗っている少女。ノーマとして生まれ、ノーマとして生きていく彼女には今後も大変な事だろう。

 

だったら、自分はせめて彼女を少しでも生きながらえさせる術を叩き込むとしよう。彼女が生き残るという事はそれだけドラゴン達を……サラちゃんの仲間を殺す事に繋がるが、それでも自分は死なせないよう徹底させるつもりだ。

 

アンジュリーゼ……いや、アンジュ。どうか彼女に人並みの幸せがあらんことを……。

 

て、魔人が神頼みってのもおかしな話か。

 

 

 

 

 




アンジュ「遂に見つけたわよこの暴力男!」
ボッチ「拳を振り回している人の台詞ではありませんね」
アンジュ「この、この! どうして当たらないの!」
ボッチ「闇雲に振り回しても当たりませんよ」(ナイフブンブン)
アンジュ「だったらこれならどう!」(拳銃を構えて)
ボッチ「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ! 猛羅総拳突き!!」
アンジュ「ウボアっ!?」
ボッチ「安心しろ、峰打ちだ」
タスク「峰……打ち?」


次回もまた見てボッチノシ

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