『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回も日常編。
主に主人公と他の面々との遣り取りがメインとなっております。


その18

 

 

 

※月π日

 

 自分達がアルゼナルに合流して一日目、まだサラちゃん達……都での話し合いが続いているのか、自分は今日一日アルゼナルを見て回るだけとなってしまっている。

 

一応まだ物資が残っているのかアルゼナルの食堂に出される材料は豊富だ。水も近くに川が流れているから不足にならないし、食用に出来る動植物も生息している事から食べ物にも困らないだろうし、今の所不具合な所はない。

 

現在は待機状態となっているアルゼナル。戦うべきドラゴンも協力関係を結んでいる事から襲って来る事はないし、現在ノーマ達は平和な時間を過ごしている事だと思う。

 

そんな平穏な時間の中、何もしないというのも気が引けるので上記でも述べた通り自分はアルゼナルを見て回りながら各施設のお手伝いを開始した。

 

まず最初に手を出したのは……食堂、どうやらここアルゼナルでは当番制で食事が作られており、日々彼女達はここで栄養を補給しながら戦いの毎日を乗り越えて来たのだという。

 

ただ、目的が栄養の補給である事からあまり味付けは考慮していないらしく、どれもみんな酷いモノだった。唯一マトモそうなのがエルシャさんのカレー位なものなので見かねた自分は飛び入りする様に厨房へ乗り込み、料理を揮わせて貰った。

 

 限りある食材と自分の腕を以て揮われた料理は彼女達の口にあったらしく、中にはお代わりしてくる娘も出てくる程に盛況なものとなった。

 

本当なら自慢の麻婆豆腐も振る舞いたかったのだが、肝心の豆腐が品切れだった為断念、仕方なく海老チリで中華類はこれで穴埋めとなった。

 

他にも数々の料理を提供した事で食堂のメニューも増え、ノーマの皆にも好評な昼食会となった。アンジュちゃんも元皇女だった為にグルメな舌を持っていたらしいが、それでも自分の料理は中々のものだと褒めてくれたりと自分にとっても有意義な時間となった。

 

……ただ、アンジュちゃんの従者であるモモカちゃんは自分をライバルとでも認識しているのか、味付けが濃いなどと姑みたいな事を言ったりと結構ツンケンな態度だった。

 

 その後もジャスミン女氏が経営するジャスミンモールと呼ばれる雑貨店に顔を出して棚卸しを手伝ったり、マギーさんの所に行って負傷者の治療を手伝わせて貰ったりした。

 

その際にマギーさんから改めて自分が刺された部分を治療してくれたし、“情けは人の為ならず”っていう言葉の意味を痛感する事が出来たりするなど、貴重な体験を経験する事が出来た。

 

 今の自分は居候の身、出来る事があるなら進んでやらないとね。因みにタスク君はアルゼナルの整備班と一緒にパラメイルの整備をしていた。本当なら自分も手伝ってやりたい所だけど、何故か断られてしまった。

 

まぁ、自分とタスク君は数少ない男性だ。普段は見ない男を前に変に警戒しているのだろう。整備班長のメイちゃんはまだ幼い子供みたいだし、そういう事情が絡んでこれ以上男を増やさないようにしているのだろう。

 

機体の整備は精密な作業だ。断られた以上は長居しても邪魔になると思い、そそくさとその場から退散させてもらった。

 

そして最後にグランゾンの整備を終え、今日の出来事は終了となる。この世界に来てから色々あってずっと手を着けないでいたグランゾンの整備、いつまたエンブリヲの襲撃が来るかは分からないのでこの日は入念に相棒の調子を整える事にした。

 

 しかし、本当にエンブリヲの奴は何故自分達に何もしてこないのだろうか? 奴なら世界の壁なんて楽々越えられそうなものだけど……今頃は良からぬ事を考えているのかもしれない。

 

グランゾンの一撃で破壊された次元の壁もいつの間にか修復されていたし、もしかしたら向こう側で既に動いているかもしれない。

 

……こちらもそろそろ対抗策を考える時期かもしれない。

 

 

PS.

どうてもいいけど、ジャスミンモールって色々売ってあるのね。女性物の下着から列車砲まであるとか……。

つーか飾ってあったあの兵装、どこかで見たことあるんだけど……気のせいかね?

 

 

 

※月Ω日

 

 サラちゃん達が都の方へ戻ってから三日、今日ここアルゼナルに大巫女様の遣いとして再びサラちゃん達が戻って来てくれた。

 

なんでも向こうでの出来事を話している内に少しばかり遅くなってしまったと語るサラちゃんは大巫女様に会って欲しいと言ってアルゼナルの司令官であるジルさんと第一中隊の面々、そして自分が選ばれる事になり、大巫女様の所で話をする為、明日都へ向かう事になった。

 

 ドラゴン達の巣とも呼べる都に向かう事になった第一中隊……特にロザリーちゃんとクリスちゃんは不安と緊張で震えていた。まぁ、今まで殺し合いをしてきた彼女達からすれば幾ら協力関係を結ぶ為とはいえ、心の内ではまだ抵抗意識があるのだろう。

 

自分もそれとなく気を紛らす様声を掛けたりしたけど、どうも二人からは堅さが消えない。ヒルダちゃんが何とかすると言ってくれたから大丈夫だとは思ったけど、やはりちょっと心配だ。

 

 心配という事でもう一つ気になる事があるのだが、どうもジル司令官はこの世界に来てからというものの、少しばかり様子がおかしい気がする。頻りにエンブリヲの名前を忌々しそうに呟いたり、ヴィルキスがどうのとか口にしたりして今一つ情緒が安定していない様子。

 

第一中隊の隊長であるサリアちゃんも様子のおかしいジル司令官に不安を抱いているのか、それとなく声を掛けているみたいだが、ジル司令官はマトモにサリアちゃんを見ようともしない。

 

自分がそれとなくフォローをしておいたけど、あまり効果はなさそうだ。捨てられた子犬みたいに俯く彼女をこのまま放置するのはどうかと思い、取り敢えず世間話をしたりして気分を変えて貰おうと 色々話をしたりした。

 

その中で自分の蒼のカリスマとしての格好について聞きたい事があるとサリアちゃんは質問してくるのだが……いやー、まさかサリアちゃんが蒼のカリスマの衣装に興味を持つとは思わなかった。

 

しかも蒼のカリスマたる仮面に目を着けるとは中々いいセンスをしておられる。今あの仮面は自分用の一つしかないから上げる事は出来ないが、要望があれば好きなデザインを持ってきて貰い自分の手製の物で手を打って貰うことにした。

 

サリアちゃんも楽しみにしていると言っていたし、作る側である自分も同じ仮面仲間であるサリアちゃんの今後の活躍を楽しみにしていきたいと思う。

 

なんだかジル司令官の話しから大分逸れてしまったが、サリアちゃんが元気になった事で取り敢えず今回の話しはこれで良しとしておく。

 

 ……それと、これは割とどうでもいい話なのだが、アルゼナルの監察官だったエマさん。どうも彼女はアルゼナルで同じ人間から命を狙われた事が相当堪えているのか、酒浸りの毎日を送っている。

 

マギーさんも治療班の班長という立場からエマさんの飲酒を止めようとしているが、酔っ払いの彼女には言葉が届かず、中々言うことを聞いてくれないと困り果てているらしい。

 

今も食堂にある調理用の酒を煽っているみたいだし、流石にこれ以上は放置できないのでこれから自分も彼女の説得に向かおうと思う。

 

グランゾンの掌に乗せてそこら辺を一周すれば元に戻るだろう。酒によって浮かれた熱は夜風で冷やすのが一番良い。エマ監察官も落ち着けば話を聞いてくれる人間だし、酔いが醒めた後は自分がつきっきりで話をしようと思う。

 

 

 

※月(゜Д゜)日

 

 色々あった。今日はこの一言に尽きる一日だったと思う。昨日サラちゃん達の言うとおり都へ向かう事になった自分達は都の心臓部である神殿内部へと案内され、大巫女様との話し合いの下、ノーマとドラゴンは同盟を結ぶ事になった。

 

これだけで済めばこれからの対エンブリヲ対策を二つの陣営で建てていく方針になるのだが……一体何がいけなかったのかここでちょっとした問題が起きてしまった。

 

大巫女様の下に集う神官達。旧くからアウラとその直結の子孫達に仕えてきた彼女達が突然自分にグランゾンについて説明するよう求めてきたのだ。なんでもサラちゃんからグランゾンの力に付いて話を聞いたらしく、当時の彼女達の口調は物凄く剣呑としたものだった。

 

おかしい、確か自分はアンジュちゃん達の世界に向かう時にグランゾンを見せた筈、何も騙してはいないではないかとその時自分は思ったが、よくよく考えれば詳しいスペックとか伏したままだったと思い出し、後日グランゾンの性能に付いてのレポートを提出したいと思う。

 

で、その後無事に同盟の締結を行い、晴れて戦い合う関係になれた両陣営、自分も用意された部屋でグランゾンのレポートを書き写していると、突然乱入者が部屋へと乗り込んできたのだ。

 

銃を持って乗り込んできた乱入者はジル司令官。ノーマ側の代表とも呼べる彼女の乱入に自分は一瞬驚いたが、向けられた銃口にすぐさま反応し、彼女を気絶させる事でどうにか騒ぎを鎮める事に成功した。

 

“拳眼鉄砲打ち”側頭部に拳を当てる事で無力化させたのだが、近くを通りかかったサラちゃんに気付かれてしまったため事情を話し、ジル司令官を拘束する事になった。

 

同盟を結んだばかりだというのに突然襲うジル司令官を不審に思ったサラちゃんは大巫女様達に気付かれないよう秘密裏に彼女の事情を知る者を集め、自分の部屋で急遽話し合いをする事になった。

 

その時に集められたのが第一中隊の隊長サリアちゃんにアンジュちゃん、アルゼナルからジル司令官の親友であるマギーさんとアルゼナル前司令官であるジャスミン女史、そしてタスク君だった。

 

なんでもジル司令官は前のリベルタス……ノーマの反抗作戦が行われた際のメンバーの中心人物でエンブリヲを倒す為に皆からの期待を全て背負っていたらしく、第一次リベルタスが失敗に終わってからはエンブリヲ抹殺の為に前以上の執念でリベルタスの準備に取り掛かってきたのだという、

 

けれど、自分とグランゾン、そして奴のラグナメイルの放つ光によってリベルタスの計画は水泡に帰そうとしている。アルゼナルもそして古の民が使用していたとされる艦、アウローラが此方の世界に来た事によりリベルタスを発動する際に使用する拠点を無くし、そしてリベルタスの中心的役割を持つヴィルキスとアンジュが自分達の計画に反対している。

 

ここまで何一つ思い通り事が運ばない現状に苛立ちを覚えたジル司令官は遂に自分を殺そうとする凶行を企てる事になった。

 

 何故自分を狙うのか、恐らくそれは自分の愛機であるグランゾンが奴の機体と互角に戦った事が理由だと思われる。ヴィルキスが使えないのであれば自分を殺し、グランゾンを自分のモノにしようと考えたのだろう。……無鉄砲に思えるが長い間蓄えてきた自身の作戦が突然現れた何者かに台無しにされればそりゃ怒りもするなと自分は一応納得できた。

 

ただ、彼女のあの様子だと他にもまだ理由がありそうだが、ひとまず騒ぎは納まった事だし、取り敢えず今回はこれで終わりにしようと思う。今後は彼女に近衛隊の人達が監視に付くみたいだし、彼女も今回の様な行動は控えるだろう。サリアちゃんも心配していたし、自分としてもあまり無茶な行動は止めて欲しいものである。

 

 大きく分けてこの二つが今回の出来事だった。どちらも大事な案件だし、早急に対処していきたいと思う。

 

で、本当ならここで終わる所なのだがもう一つ事案が発生したのでそこら辺を追記していきたいと思う。

 

その事案というのは……タスク君だ。この世界では人間体である青年男性は殆ど見かける事はなく、珍しいという事で裸にされてベッドに縛り付けられている所にアンジュちゃんと共に遭遇、助け出そうとするアンジュちゃんだったがここでTo LOVEるな(トラップ)が発動し、タスク君は半殺しな目に遭う。まぁ、結果的には助かったし、別にいいよね。

 

 けど、あんな目に遭ったのが彼で良かったと思っている自分がいる。タスク君には悪いがあんな標本みたいに扱われては自分は羞恥心等の感情でおかしくなり、都諸共吹き飛ばしていたと思うから。

 

……因みに、そのあとボロボロとなったタスク君を回収し、部屋へと戻る所にクリスちゃんと遭遇。やたらと目をキラキラさせて息遣いが荒い彼女がちょっぴり怖かった。

 

 

 




次回もこんな感じになると思います。


……もし、この主人公がTo LOVEるったら果たしてどうなるのか?

…………考えたくないですな(笑)

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